妹に撃たれない方法   作:Brooks

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第13話 静かな失踪

 

 

翌朝、屋敷の空気はいつもより整いすぎていた。

 

整いすぎた空気というのは、たいてい誰かが徹夜で隠し事をしたあとの空気だ。絨毯はきれいで、給仕は静かで、廊下の歩幅まで揃っている。そういう朝は、だいたい誰も昨夜のことを最初に口にしたがらない。

 

私は食堂へ入る前に、セシリアから一枚だけ紙を受け取った。

 

確認事項は三つ。子どもたちの所在は不明。アストライアは昨夜から自室を出ていない。使用人の間では、まだ「静養のための移動」という理解で止まっている。

 

「よく止めたな」と私は言った。

 

「止められるところまでは」とセシリアは答えた。「問題は、今日の午前以降です」

 

「父上か」

 

「はい」

 

「キシリアは」

 

「もう気づいています」

 

それはそうだろうと思った。あの女は、家の中の温度が一度変わると、だいたい先に気づく。

 

食堂へ入ると、父はすでに席についていた。ドズルはまだ来ていない。ガルマはいつもより静かで、キシリアは静かすぎた。そして父の頭頂部には、昨夜のうちにもう一度グレイトグロウが塗布された気配があった。希望というのは、危機の翌朝ほど補充したくなるものらしい。

 

「遅いな」と父が言った。

 

「書類を見ていました」

 

「便利な返事だ」

 

「実際に便利です」

 

父は新聞の代わりに報告書を折りたたみ、私を見た。その目は、すでに知っている目だった。完全ではないにせよ、朝の時点で相当のところまで察している。

 

「子どもたちが見当たらんそうだな」と父は言った。

 

ガルマが顔を上げ、ドズルがちょうどそのタイミングで入ってきて、足を止めた。キシリアだけがパンにバターを塗っていた。その手つきがやけに丁寧で、私は嫌な予感がした。丁寧な手つきのキシリアは、だいたい人を追い詰める。

 

「そうです」と私は言った。

 

父は短く息を吐いた。

 

「説明しろ」

 

私は席につかず、そのまま立っていた。こういう話は、座って始めると長くなる。

 

「昨夜、港湾側の監視記録から二名の小柄な影が消えています。偽装は花屋の搬送。補助はクラブ・エデン側。ルートの整備には港湾実務者が関与。ジンバ・ラルは別ルートへ流され、同行していません」

 

ドズルが低く言った。

 

「止められなかったのか」

 

「止めることはできた」と私は答えた。

 

「じゃあ、なぜ」

 

その問いはまっすぐだった。ドズルの問いはいつもまっすぐだ。だから時々いちばん厄介だ。

 

「大声を出すな」と父が言った。「まだ何も決まっておらん」

 

「決まってるだろう」とドズルは言った。「逃げられたんだ」

 

「違う」とキシリアが言った。「兄上は逃がしたのよ」

 

食堂の空気が一度止まった。ガルマが驚いてキシリアを見た。ドズルは私を見た。父は表情を動かさなかった。つまり、父も同じ疑いを持っていたということだ。

 

「そうか」と父が言った。「その方が早いな。ギレン、どうだ」

 

私は父を見た。こういう時、嘘はだいたい無駄だ。家族は証拠より、顔で判断する。

 

「半分はその通りです」と私は言った。

 

ガルマが息を呑んだ。ドズルは顔をしかめた。キシリアは笑わなかったが、満足そうではあった。

 

「半分?」と父。

 

「止め切らなかった。ただし、全面的に見送ったわけでもない。私は、ここに閉じ込める方が将来高くつくと判断しました」

 

ドズルが言った。

 

「将来って何だ」

 

「神話だ」と私は言った。「檻の中の遺児は、いずれ誰かの旗になる。丁重に扱えば扱うほど、美しく育つ。私はそれを避けた」

 

「外へ出したら、もっと危ないだろう」とドズル。

 

「そうだ」

 

「じゃあ何だそれは」

 

「選んだ失敗だ」

 

ドズルは私をしばらく睨んでいたが、やがて椅子へ乱暴に腰を下ろした。彼は理解しきれない時、まず座る。立ったままだと殴りたくなるからだろう。悪くない習慣だ。

 

父は指先でテーブルを一度だけ叩いた。

 

「捜索はどうする」

 

そこが本題だった。

 

「公には大きくしません」と私は言った。「アストライア夫人の意向で、子どもたちは静養先へ移された。移送先は非公開。そう扱います」

 

「それで通るか」と父。

 

「通します」

 

「追跡は」

 

「水面下で最低限。ただし、連れ戻しを目的にはしません。所在確認と、誰の手に渡るかだけを見る」

 

キシリアがそこで初めて口を開いた。

 

「兄上、ずいぶん綺麗にまとめるのね」

 

「まとめなければ汚く広がる」

 

「追わないの?」

 

「追う。だが捕まえるためではない」

 

彼女はそこで、やっと少し笑った。「気に入らないけど、嫌いじゃないわ」

 

それは最悪に近い褒め言葉だった。

 

ガルマが小さく言った。

 

「アストライア夫人は……知っていたのかな」

 

誰もすぐには答えなかった。そういう時、たいてい答えたくない者ほど答える。

 

「知っていたでしょうね」とキシリアが言った。「全部ではなくても」

 

私はそれに反論しなかった。昨夜のアストライアの言葉を思い出していた。残ることでしか守れないこともあります。あれは、そういう意味だったのだ。

 

父はしばらく黙っていた。それから言った。

 

「よろしい。ならば騒ぐな。騒げば、こちらが神話を作る」

 

私は少しだけ驚いた。父は時々、こちらが最も言ってほしくない時に、最も正しいことを言う。

 

「ただし」と父は続けた。「カーンには伝えておけ。議会の外側で余計な物語を作らせるな」

 

「承知しました」

 

「あと」

 

父はそこで自分の頭に手をやった。無意識の仕草だった。だが、あの瞬間だけは、国家も遺児も育毛剤も、同じくらい彼の頭の中に並んでいる気がした。

 

「ガルマ」

 

「はい」

 

「お前は今日は何も言うな」

 

「わかりました」

 

その返事は素直だった。だがガルマは、言わないと決めた時ほど顔に出る。それもまた善意の一種だった。

 

食堂を出ると、キシリアが並んできた。

 

「兄上」

 

「何だ」

 

「昨日のうちに、どこまで読んでたの」

 

「七割くらいだ」

 

「じゃあ残り三割は、本当に失敗ね」

 

「そうなる」

 

彼女は満足そうでも不満そうでもない顔で歩いた。要するに、珍しく少しだけ本気で考えている時の顔だった。

 

「アストライアは残る」とキシリアが言った。

 

「そうだろうな」

 

「母親って面倒」

 

「お前が言うと怖いな」

 

「褒めてるのよ。残ることで子どもを守るなんて、私にはあまり思いつかないもの」

 

私はそれに返事をしなかった。返せば余計な方向へ会話が伸びる。

 

執務室へ戻ると、セシリアとアサクラがすでに動いていた。

 

セシリアは新しい公式文面の草案を作っていた。「静養」「移動」「安全配慮」「関係各位への非公開要請」。たいへん綺麗な言葉ばかりで、読んでいると逆に罪悪感が湧いてくる。有能な秘書の文章は、時に人間の恥を薄く伸ばしてくれる。

 

アサクラは追跡の線を別紙へまとめていた。

 

「閣下」と彼は言った。「捕捉目的でないのであれば、監視線を三層に分けるべきかと」

 

「言え」

 

「第一層は港湾。第二層は民間搬送。第三層は、旧ダイクン派と無関係に見える民生ルートです」

 

「なぜ第三層だ」

 

「本当に逃がしたい時、人は政治色のない道を好みます。花屋や医療搬送が典型です」

 

「ずいぶん詳しいな」

 

「実務であります」

 

「お前の実務は時々嫌に具体的だ」

 

「ありがとうございます」

 

「褒めていない」

 

「承知であります」

 

私は紙を見た。整っていた。小さい。だが整っている。だから嫌だ。だから使う。

 

「一つだけ確認だ」と私は言った。「もし所在が掴めても、先走るな。回収班みたいなものを勝手に組むな」

 

アサクラは顔を上げた。

 

「そこまで信用がありませんか」

 

「絶対にない」

 

彼は少し考えてからうなずいた。「それは、たいへん健全な評価かと」

 

「お前のそういうところが腹立たしい」

 

「恐縮であります」

 

セシリアが草案を一枚差し出した。

 

「これで外向きは通せます」

 

「読ませろ」

 

私は文面を読み、二箇所だけ直した。「保護」ではなく「配慮」。「移送」ではなく「移動」。言葉の温度は大事だ。あまり厚く塗ると、かえって下の傷が見える。

 

昼過ぎ、マハラジャ・カーンから短い返書が来た。

 

承知した。騒がぬことが今の政治に資する。ただし、騒がぬことと忘れることは違う。

 

その文は、彼らしかった。大人の書いた文だと思った。忘れない。だが今は騒がない。そういう人間が政治の場に一人いるだけで、国は少し持つ。

 

夕方、ランバ・ラルが再び来た。

 

今日は報告だけだろうと思ったが、彼は立ったまま言った。

 

「礼は言わん」

 

私は顔を上げた。「何のだ」

 

「昨夜のことだ」

 

「言われる筋合いはない」

 

「そうだ」

 

それだけだった。私は少し黙ってから言った。

 

「ジンバは」

 

「怒っている。だが、今は手が届かん」

 

「追うか」

 

「追わん」

 

「そうか」

 

「子どもたちは出た。それでいいとは思わん。だが、昨夜ここで止められるよりはましだったかもしれん」

 

私はそれを聞いて、ほんの少しだけ肩の力が抜けた。この男は簡単にこちらへ寄らない。だからこそ、その言葉には値段がつく。

 

「ランバ」と私は言った。「今後もお前を完全には信用しない」

 

「それでいい」

 

「だが現場は任せる。お前が現場で筋を通す限りはな」

 

彼は短くうなずいた。「承知した」

 

それで会話は終わった。短く、乾いていて、必要なものだけが残る。ランバ・ラルはやはりこうでなければいけない。

 

夜、私はダイクン家の住まいへ行った。

 

アストライアは、昨夜と同じ窓辺にいた。それだけで、私はこの人がすべてを知っていたわけではないにせよ、最後の瞬間には知ったのだと思った。

 

「二人は出ました」と私は言った。

 

「そうでしょうね」と彼女は答えた。

 

「驚かないのですか」

 

「母親ですもの」

 

その言い方は穏やかで、少しだけ疲れていた。

 

「止めなかったのですね」と彼女は言った。

 

私は少し考えてから答えた。「止め切りませんでした」

 

「その違いを、あなたは大切にするのですね」

 

「時々」

 

「子どもにはわかりませんよ」

 

「知っています」

 

彼女はしばらく黙った。それから、小さく言った。

 

「でも、いつかはわかるかもしれません」

 

私は返事をしなかった。いつか。そういう言葉は、政治家には向かない。だが母親にはよく似合う。

 

自室へ戻る前に、私は机のメモへ一行足した。

 

神話は、追えば育つ。

 

その下に、さらに一行。

 

残る母親は、去る子どもより強い。

 

書いてから、私はしばらくその字を見ていた。字はいつも、自分が思っているより正直だ。疲れている時ほどなおさらだ。

 

窓の外では、サイド3の人工夜が静かに回っていた。まだ公国ではない。まだ独立もしていない。それでもすでに、未来の敵は外へ出て、母は残り、家の中にはグレイトグロウの匂いが残っている。

 

国家というものは、たぶんそのくらい不格好な材料でできるのだろうと思った。

 

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