妹に撃たれない方法   作:Brooks

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ルシファー商会ってあるけどルシファー財団な?
って何回言っても覚えないChaGpt。
もう良いや。


第168話 連邦奪還軍

 

 

総帥府の執務室には、朝の光が斜めに入っていた。

 

ズムシティの白い外壁が、その光を跳ね返している。工区へ向かう搬送車列は、規則正しく下の通路を流れ、港へ降りるシャトルは短い噴射を引いて降下していく。窓越しに見えるそれらは、いつもの朝と変わらない。だが、卓上に置かれた艦艇一覧だけは、今日が昨日までと違う朝であることを示していた。

 

ギレンの前に広げられているのは、三つの一覧だった。

 

ペガサス級供与一覧。

 

拿捕サラミス級十隻一覧。

 

エゥーゴ現有人員一覧。

 

ペガサス級の欄には、即応二隻、主機点検後一隻、と記されている。サラミス級の欄には、即応三隻、機関整備四隻、砲塔整備三隻、とある。人員一覧には議員、士官、通信担当、補給担当、整備担当の人数が並ぶが、艦長、副長、操舵、砲術、機関、発進管制、甲板作業の欄になると数字が急に細くなる。

 

キシリアは窓際に立ち、その一覧を眺めていた。紫の軍服の袖口に、朝の白い光が細く乗る。

 

「どこまで出しますの」

 

ギレンはペガサス級の欄へ指を置いた。

 

「二隻を先に渡す」

 

「主機点検が済み次第、三隻目も渡す」

 

次に、サラミス級の欄を押さえる。

 

「サラミスは十隻だ」

 

「護衛、輸送護衛、哨戒まで並べて初めて地球へ戻れる」

 

キシリアは、卓上の一覧に目を落としたまま言う。

 

「公国軍の記章を残したままでは使えませんわよ」

 

「残させん」

 

ギレンは短く答えた。

 

「外板の記章も塗りも消す」

 

「艦橋機器と配線は連邦式のまま維持する」

 

「旧連邦の士官が、その日から立てる状態で渡す」

 

キシリアはそこでようやくギレンの顔を見た。

 

「本気ですのね」

 

「ブレックスに演説をさせるなら、その後ろに艦列が要る」

 

ギレンは端末へ手を伸ばした。

 

「レビルを呼べ」

 

「供与一覧も持ってこい」

 

端末の確認音が短く鳴る。部屋の奥に控えていた副官が敬礼し、すぐに出ていった。

 

ギレンは再び一覧へ目を戻す。

 

「議員だけでは地球へ戻れん」

 

「旗を持つ顔と、艦を動かす人間をそろえる」

 

窓の向こうで、工区の高い足場を補修機が横切った。国家は、必要なものが決まった時だけ異様に速い。その速さをギレンは信じていた。

 

――――――

 

レビルが会議室へ入ってきた時、扉の金具が乾いた音を立てた。

 

少し広い会議室だった。壁には地球圏の航路図と、いくつかの港湾位置図が表示されている。窓はない。長い卓上には、四つの一覧だけが並べられていた。

 

ティターンズ結成放送の書き起こし。

 

ゴップ死亡確認。

 

ティアンム死亡確認。

 

ペガサス級・サラミス級供与一覧。

 

レビルは椅子へ座る前に、それを見た。痩せたのはたしかだった。頬の線も深くなっている。だが歩き方はまだ軍人のものだ。足が床を探らない。背が落ちていない。

 

ギレンは遠回しに言わなかった。

 

「地球連邦政府は奪われた」

 

「ゴップは死んだ」

 

「ティアンムも死んだ」

 

「ニューヨークとジャブローの命令番号で、今はティターンズの命令が出ている」

 

レビルは、結成放送の一覧を見て、次に死亡確認へ目を移した。視線の動きは遅くない。必要なところだけを読んでいる。

 

「本当にここまでやったか」

 

「やった」

 

とギレンは言った。

 

「だから艦を出す」

 

ギレンは供与一覧をレビルの前へ寄せた。

 

「ペガサス級二隻即応」

 

「主機点検後一隻」

 

「サラミス十隻」

 

「ブレックスのところへ渡す」

 

レビルの目が、必要乗員数の欄で止まる。

 

艦長。副長。操舵。砲術。通信。機関。発進管制。甲板作業。

 

彼は一覧から顔を上げた。

 

「艦は動く」

 

「だが、立つ人間がいる」

 

「だからお前を呼んだ」

 

ギレンはそう言って、少しだけ身を乗り出した。

 

「ブレックスと並んで、エゥーゴの旗を掲げるか」

 

レビルはしばらく黙った。会議室の天井照明が、卓上の一覧に白く反射する。ゴップが死んだ会議室。ティアンムが倒れた通信室。その二つの部屋が、今の地球ではもう向こうのものになった。だからこそ、ここで問われていることは、単なる亡命先の選択ではなかった。

 

「私は公国軍の軍人にはならん」

 

レビルはそう言った。

 

「聞いていない」

 

ギレンの声は変わらない。

 

「ティターンズと向き合う側へ行くかと聞いている」

 

レビルはもう一度、供与一覧を見た。

 

「ブレックスは宇宙へ出たんだな」

 

「議員、士官、通信、補給も何人か出ている」

 

「なら、私が艦橋をそろえる」

 

レビルは一覧の上へ指先を置いた。

 

「一番艦に、艦長、副長、操舵、砲術、通信、機関、発進管制を置く」

 

「そのあとで二番艦だ」

 

ギレンは聞いた。

 

「行くか」

 

レビルはうなずかない。代わりに条件を口にした。

 

「公国軍の旗を艦に立てるな」

 

「エゥーゴの声明に、ティターンズ打倒と連邦奪還を入れろ」

 

「旧連邦士官の配置には私の意見を通せ」

 

「飲む」

 

ギレンは即答した。

 

レビルは一度だけ息をついた。

 

「なら、行く」

 

その言葉は静かだった。しかし、卓上にあるどの一覧より重かった。

 

――――――

 

その日のうちに、レビルの名で人が動き始めた。

 

会議室の脇へ運び込まれた端末には、新しい一覧が次々に表示される。

 

艦橋勤務経験者一覧。

 

機関勤務経験者一覧。

 

通信・CIC経験者一覧。

 

MS発進管制経験者一覧。

 

候補生一覧。

 

名前の横には、最後の所属、現在位置、家族の所在、接触の可否が並んでいる。

 

通信担当の男が、一覧の列を追いながら言う。

 

「公開声明を読んだあとで宿舎を出た者がいます」

 

「港湾区画の宿へ移った者」

 

「外郭コロニーへ移った者」

 

「整備区画へ身分証を変えて入った者です」

 

補給担当が別の一覧を出した。

 

「家族が地球に残っている者には、現金と移送席を先に見せないと来ません」

 

レビルは個人名より先に必要人数を見た。

 

「一番艦」

 

「艦長一、副長一、操舵二、砲術二、通信三、CIC四、機関八、発進管制三、甲板作業十」

 

次の欄を指す。

 

「その次が二番艦だ」

 

「名前を一人ずつ追うな」

 

「一隻分ずつそろえろ」

 

さらに、候補生一覧へ目を移した。

 

士官候補生十一。

 

操舵科三。

 

機関科二。

 

通信科一。

 

MS候補五。

 

「ペガサスには経験者を置く」

 

「サラミスは候補生を育てる艦にする」

 

レビルの言い方には無駄がなかった。英雄ひとりで艦は動かない。当直表に名前が並んで初めて出られる。そういう現実を、この男は若い頃から知っている。

 

――――――

 

エゥーゴの仮設会議室は、昨日より手狭に見えた。

 

同じ灰色の床、同じ足りない椅子、同じ毛布箱と保温ポット。窓の向こうには宇宙港の誘導灯と整備クレーン。だが卓上の一覧が増えると、部屋は狭くなる。ものも人も、狭い場所へ寄ればそうなる。

 

ブレックスは一番奥に座っていた。右に士官、左に議員、正面に通信と補給。昨夜エドワウが決めた座り方が、そのまま使われている。

 

ルシファー商会の担当が封を切り、最初に置いたのはペガサス級の一覧だった。

 

次にサラミス級十隻の一覧。

 

士官の一人が立ち上がる。

 

「ペガサス級二隻即応」

 

「サラミス三隻即応」

 

整備責任者が続ける。

 

「サラミス四隻は機関整備」

 

「三隻は砲塔整備」

 

「十隻全部、仕上げられます」

 

ブレックスがその数字を追った。

 

「これだけあれば護衛と輸送を分けられるな」

 

その言葉の直後、扉が開いてレビルが入ってきた。

 

部屋の中の全員が一瞬だけ静まる。ゴップが死に、ティアンムが死んだあとで、この男がこちらへ来る。その意味は大きい。議会の顔はブレックスが出せる。だが、軍の筋は別だ。

 

レビルは席へ着くなり一覧を見た。

 

「旗艦二、護衛三」

 

「そのあとで整備済みのサラミスを足す」

 

ブレックスはようやく、背中のどこかに残っていた固さを少しだけ落とした。

 

「これで議会の会合じゃなく、艦隊の打ち合わせができる」

 

エドワウはその二人を見ていた。

 

前の人生では、こういう顔合わせはもっと遅かった。もっと削られ、もっと失ってからだった。今はまだ違う。卓上に艦数と必要乗員がある。それだけで、喉の奥に残っていた乾きが少し薄くなった。

 

――――――

 

次に置かれたのは、ルシファー商会保有MS一覧だった。

 

リック・ディアス五十機。

 

民間護衛仕様。

 

高危険度航路警備用。

 

火器管制簡略化。

 

一部センサー民生仕様。

 

武装制限状態。

 

ルシファー商会の担当が、欄を指で押さえながら言う。

 

「五十機あります」

 

「三十六機はすぐ戦闘仕様へ戻せます」

 

「八機は主機点検中です」

 

「六機は部品到着待ちです」

 

アナハイムの担当が、別の一覧をその横へ置いた。

 

「火器管制を軍用へ戻します」

 

「センサーも標準軍用仕様へ戻します」

 

「ビーム・ピストル、クレイ・バズーカ、シールドを付け直します」

 

ブレックスは一覧を見たまま言う。

 

「民間護衛にしては多いな」

 

エドワウが答えた。

 

「危ない航路を通していました」

 

「今はエゥーゴへ渡します」

 

余計な飾りはない。そういう返しの方が、ブレックスにはかえって信じやすかった。

 

「主力はこれだな」

 

とレビルが言う。

 

士官がうなずく。

 

「ペガサスとサラミスで運ぶ」

 

「前へ出すのはディアスです」

 

その直後に、アナハイムの新しい決裁一覧が置かれた。署名欄にはメラニー会長の名がある。

 

既定のネモ十八機。

 

追加ネモ五十機。

 

予備フレーム。

 

補修部材。

 

整備要員。

 

ブレックスが顔を上げた。

 

「五十機も出すのか」

 

アナハイム担当が答える。

 

「メラニー会長の決裁です」

 

「機体だけではなく、予備フレーム、補修部材、整備要員も付けます」

 

レビルが一覧の数字を追う。

 

「これで小隊ではない」

 

整備責任者が配備一覧を広げる。

 

「ネモ六機を一番艦」

 

「六機を二番艦」

 

「残りは訓練と損耗補填です」

 

士官が補足する。

 

「リック・ディアスを前へ出す」

 

「ネモは護衛と先遣に使う」

 

ここまで来ると、五十、六十八という数字が、ようやく部隊表の数字になった。

 

――――――

 

会議室の外、宇宙港の待機通路には若い制服姿が並び始めていた。

 

簡易ベンチ、白い壁、自販機、受付机。そこへ、鞄ひとつで来た若い男女が立っている。士官候補生、操舵科候補生、機関科候補生、通信科候補生、MS候補生。持っているのは教本数冊、訓練記録、写真一枚。家族ごとではなく、自分だけで来た若者の持ち物だ。

 

受付係が到着組の人数を読み上げる。

 

「今日の到着組、候補生十一名です」

 

「操舵科三、機関科二、通信科一、MS候補五」

 

少し間を置いて、次の組。

 

「次の到着組、八名です」

 

「ジャブロー教導隊出身が二名入っています」

 

さらに。

 

「士官候補生六名」

 

「補給科一、通信科二、航海科三」

 

ブレックスは窓越しにその列を見た。

 

「年寄りだけでは当直表が書けん」

 

「若いのが来るなら、サラミスへ立たせられる」

 

レビルがうなずく。

 

「ペガサスには経験者を置く」

 

「サラミスは候補生を育てる艦にする」

 

若い顔が並ぶと、部屋の中の温度が少し変わる。昨夜までここにいたのは、追われた議員と疲れた士官と黙った技術者ばかりだった。そこへ、まだ制服の折り目が新しい若者が入ってくる。嫌でも先のことを考えさせられる。

 

――――――

 

地球図を引き寄せたのはアムロだった。

 

ジャブロー周辺。北米。アフリカ。中東。オーストラリア沿岸。広げた図面の上を、彼の指が短く動く。

 

「宇宙だけならこれでいい」

 

「でも地球へ降りるなら、MSを運ぶ台が要る」

 

全員がその指先を見る。

 

「基地から基地までが長い」

 

「MSを歩かせると遅い」

 

「飛べる機体を増やすには時間がかかる」

 

アムロはそこで机の端を叩いた。

 

「だから先にベースジャバーを作ってください」

 

アナハイムの担当が聞く。

 

「条件は」

 

「MS一機」

 

とアムロは答えた。

 

「離着陸は平地」

 

「低い高さで前線まで運べればいい」

 

整備責任者が続ける。

 

「現地でエンジン交換できる形にしてください」

 

アナハイム担当は一覧へ書き込んだ。

 

「三日で基本設計」

 

「一週間で試験フレーム」

 

「二週間で飛行試験用一号機です」

 

エドワウは地球図の上の距離を見ながら思った。

 

前の人生でも、地上の長さは面倒だった。宇宙なら星図の線で足りる。地上はそうはいかない。地面の長さを縮める道具が要る。アムロは、そこをもう見ている。

 

「二週間で一号機なら、地上先遣隊の訓練に間に合う」

 

とエドワウが言う。

 

「間に合わせます」

 

とアナハイム担当は答えた。

 

この部屋では、約束はたいてい期限つきだった。その方が信じやすい。

 

――――――

 

補給の話になると、卓上の温度が少し下がる。

 

ルシファー商会の担当が港湾一覧を置いた。

 

「優先扱いは一日二隻です」

 

「補給港は今二か所です」

 

「三か所目をサイド1側で取れれば、ペガサス級二隻、サラミス三隻、ディアス三十六機を先に動かせます」

 

補給担当が聞く。

 

「学校区画と診療所区画を避けた搬入路は」

 

「外周ハッチから入れて、工区裏の路線を使います」

 

口座担当が別の一覧を差し出す。

 

「港湾使用料の前払いが要ります」

 

「現金は十四日分です」

 

議員の一人が言う。

 

「放送原稿より港か」

 

ブレックスが一覧を引き寄せた。

 

「港がなければネモは着かない」

 

「ネモが着かなければ護衛艦は兵器だけ載せて岸壁に止まる」

 

「護衛艦が動かなければ、次の輸送船で議員も技官も上がれない」

 

彼はそこで視線を上げた。

 

「最初の放送原稿は今は書かない」

 

「先に港を取る」

 

その言い方にはもう迷いがなかった。議会人の顔で、港の順番を決める。そういうところに、この男の強さがあるとエドワウは思った。

 

――――――

 

総帥府では、ギレンがサイド1とサイド2から戻ってきた返答を読んでいた。

 

サイド1は受け入れへ傾き、サイド2は条件つきで乗る。予想通りだった。ギレンは外周図を見ながら、部隊配置の欄へ赤を入れる。

 

換気塔警備二班。

 

外周哨戒艇三隻。

 

港湾ハッチ前監視班。

 

学校区画、診療所区画への立入禁止。

 

「三十バンチのあとだ」

 

とギレンは言った。

 

「学校と診療所へ近づくな」

 

「外周だけ見ろ」

 

キシリアが横からのぞき込む。

 

「ずいぶん丁寧ですわね」

 

ギレンはペンを置いた。

 

「三十日で追い返されたくなければ、最初の三十日を丁寧にやる」

 

国家が扱うのは、結局いつも場所と人数だ。そこを誤れば、どれだけ正しいことを言っても足元から崩れる。

 

――――――

 

エゥーゴの会議室へ戻ると、卓上にはかなりの一覧が並んでいた。

 

エゥーゴ表題。

 

参加名簿。

 

ペガサス級供与一覧。

 

サラミス級十隻一覧。

 

艦橋要員一覧。

 

候補生受付名簿。

 

リック・ディアス改修一覧。

 

ネモ六十八機供与一覧。

 

ベースジャバー試作依頼。

 

港湾一覧。

 

必要燃料一覧。

 

ブレックスがそれを一つずつ見ていく。

 

「議員はいる」

 

「レビルも来る」

 

「艦も入る」

 

「MSの数も出た」

 

「候補生も来る」

 

「港の数字も見えた」

 

彼はそこで少しだけ間を置いた。ようやく言っていい言葉の形ができたからだ。

 

「これなら、放送を見ているだけでは終わらない」

 

「艦を出せる」

 

「MSを載せられる」

 

「次の輸送船で人も運べる」

 

部屋にいた若い士官が、そこで初めて息を吐いた。補佐官の一人が、壁にもたれたまま目を閉じる。技術者は一覧の端へ頬をつけたまま眠っている。窓の向こうでは整備クレーンがゆっくり動いていた。

 

エドワウはその光景を見ながら思った。

 

前の人生では、この人に艦が足りなかった。今はペガサス級がある。サラミスも十隻ある。ディアス五十機、ネモ六十八機、候補生の列、ベースジャバーの図まで卓上に並んだ。まだ書き足す項目は残っている。だが、昨日の卓より広い。

 

それでいい。今日はそれでいい。明日になれば、この数字のいくつかは本当に動き始める。動き始めたものは、もうただの願いではない。

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