って何回言っても覚えないChaGpt。
もう良いや。
総帥府の執務室には、朝の光が斜めに入っていた。
ズムシティの白い外壁が、その光を跳ね返している。工区へ向かう搬送車列は、規則正しく下の通路を流れ、港へ降りるシャトルは短い噴射を引いて降下していく。窓越しに見えるそれらは、いつもの朝と変わらない。だが、卓上に置かれた艦艇一覧だけは、今日が昨日までと違う朝であることを示していた。
ギレンの前に広げられているのは、三つの一覧だった。
ペガサス級供与一覧。
拿捕サラミス級十隻一覧。
エゥーゴ現有人員一覧。
ペガサス級の欄には、即応二隻、主機点検後一隻、と記されている。サラミス級の欄には、即応三隻、機関整備四隻、砲塔整備三隻、とある。人員一覧には議員、士官、通信担当、補給担当、整備担当の人数が並ぶが、艦長、副長、操舵、砲術、機関、発進管制、甲板作業の欄になると数字が急に細くなる。
キシリアは窓際に立ち、その一覧を眺めていた。紫の軍服の袖口に、朝の白い光が細く乗る。
「どこまで出しますの」
ギレンはペガサス級の欄へ指を置いた。
「二隻を先に渡す」
「主機点検が済み次第、三隻目も渡す」
次に、サラミス級の欄を押さえる。
「サラミスは十隻だ」
「護衛、輸送護衛、哨戒まで並べて初めて地球へ戻れる」
キシリアは、卓上の一覧に目を落としたまま言う。
「公国軍の記章を残したままでは使えませんわよ」
「残させん」
ギレンは短く答えた。
「外板の記章も塗りも消す」
「艦橋機器と配線は連邦式のまま維持する」
「旧連邦の士官が、その日から立てる状態で渡す」
キシリアはそこでようやくギレンの顔を見た。
「本気ですのね」
「ブレックスに演説をさせるなら、その後ろに艦列が要る」
ギレンは端末へ手を伸ばした。
「レビルを呼べ」
「供与一覧も持ってこい」
端末の確認音が短く鳴る。部屋の奥に控えていた副官が敬礼し、すぐに出ていった。
ギレンは再び一覧へ目を戻す。
「議員だけでは地球へ戻れん」
「旗を持つ顔と、艦を動かす人間をそろえる」
窓の向こうで、工区の高い足場を補修機が横切った。国家は、必要なものが決まった時だけ異様に速い。その速さをギレンは信じていた。
――――――
レビルが会議室へ入ってきた時、扉の金具が乾いた音を立てた。
少し広い会議室だった。壁には地球圏の航路図と、いくつかの港湾位置図が表示されている。窓はない。長い卓上には、四つの一覧だけが並べられていた。
ティターンズ結成放送の書き起こし。
ゴップ死亡確認。
ティアンム死亡確認。
ペガサス級・サラミス級供与一覧。
レビルは椅子へ座る前に、それを見た。痩せたのはたしかだった。頬の線も深くなっている。だが歩き方はまだ軍人のものだ。足が床を探らない。背が落ちていない。
ギレンは遠回しに言わなかった。
「地球連邦政府は奪われた」
「ゴップは死んだ」
「ティアンムも死んだ」
「ニューヨークとジャブローの命令番号で、今はティターンズの命令が出ている」
レビルは、結成放送の一覧を見て、次に死亡確認へ目を移した。視線の動きは遅くない。必要なところだけを読んでいる。
「本当にここまでやったか」
「やった」
とギレンは言った。
「だから艦を出す」
ギレンは供与一覧をレビルの前へ寄せた。
「ペガサス級二隻即応」
「主機点検後一隻」
「サラミス十隻」
「ブレックスのところへ渡す」
レビルの目が、必要乗員数の欄で止まる。
艦長。副長。操舵。砲術。通信。機関。発進管制。甲板作業。
彼は一覧から顔を上げた。
「艦は動く」
「だが、立つ人間がいる」
「だからお前を呼んだ」
ギレンはそう言って、少しだけ身を乗り出した。
「ブレックスと並んで、エゥーゴの旗を掲げるか」
レビルはしばらく黙った。会議室の天井照明が、卓上の一覧に白く反射する。ゴップが死んだ会議室。ティアンムが倒れた通信室。その二つの部屋が、今の地球ではもう向こうのものになった。だからこそ、ここで問われていることは、単なる亡命先の選択ではなかった。
「私は公国軍の軍人にはならん」
レビルはそう言った。
「聞いていない」
ギレンの声は変わらない。
「ティターンズと向き合う側へ行くかと聞いている」
レビルはもう一度、供与一覧を見た。
「ブレックスは宇宙へ出たんだな」
「議員、士官、通信、補給も何人か出ている」
「なら、私が艦橋をそろえる」
レビルは一覧の上へ指先を置いた。
「一番艦に、艦長、副長、操舵、砲術、通信、機関、発進管制を置く」
「そのあとで二番艦だ」
ギレンは聞いた。
「行くか」
レビルはうなずかない。代わりに条件を口にした。
「公国軍の旗を艦に立てるな」
「エゥーゴの声明に、ティターンズ打倒と連邦奪還を入れろ」
「旧連邦士官の配置には私の意見を通せ」
「飲む」
ギレンは即答した。
レビルは一度だけ息をついた。
「なら、行く」
その言葉は静かだった。しかし、卓上にあるどの一覧より重かった。
――――――
その日のうちに、レビルの名で人が動き始めた。
会議室の脇へ運び込まれた端末には、新しい一覧が次々に表示される。
艦橋勤務経験者一覧。
機関勤務経験者一覧。
通信・CIC経験者一覧。
MS発進管制経験者一覧。
候補生一覧。
名前の横には、最後の所属、現在位置、家族の所在、接触の可否が並んでいる。
通信担当の男が、一覧の列を追いながら言う。
「公開声明を読んだあとで宿舎を出た者がいます」
「港湾区画の宿へ移った者」
「外郭コロニーへ移った者」
「整備区画へ身分証を変えて入った者です」
補給担当が別の一覧を出した。
「家族が地球に残っている者には、現金と移送席を先に見せないと来ません」
レビルは個人名より先に必要人数を見た。
「一番艦」
「艦長一、副長一、操舵二、砲術二、通信三、CIC四、機関八、発進管制三、甲板作業十」
次の欄を指す。
「その次が二番艦だ」
「名前を一人ずつ追うな」
「一隻分ずつそろえろ」
さらに、候補生一覧へ目を移した。
士官候補生十一。
操舵科三。
機関科二。
通信科一。
MS候補五。
「ペガサスには経験者を置く」
「サラミスは候補生を育てる艦にする」
レビルの言い方には無駄がなかった。英雄ひとりで艦は動かない。当直表に名前が並んで初めて出られる。そういう現実を、この男は若い頃から知っている。
――――――
エゥーゴの仮設会議室は、昨日より手狭に見えた。
同じ灰色の床、同じ足りない椅子、同じ毛布箱と保温ポット。窓の向こうには宇宙港の誘導灯と整備クレーン。だが卓上の一覧が増えると、部屋は狭くなる。ものも人も、狭い場所へ寄ればそうなる。
ブレックスは一番奥に座っていた。右に士官、左に議員、正面に通信と補給。昨夜エドワウが決めた座り方が、そのまま使われている。
ルシファー商会の担当が封を切り、最初に置いたのはペガサス級の一覧だった。
次にサラミス級十隻の一覧。
士官の一人が立ち上がる。
「ペガサス級二隻即応」
「サラミス三隻即応」
整備責任者が続ける。
「サラミス四隻は機関整備」
「三隻は砲塔整備」
「十隻全部、仕上げられます」
ブレックスがその数字を追った。
「これだけあれば護衛と輸送を分けられるな」
その言葉の直後、扉が開いてレビルが入ってきた。
部屋の中の全員が一瞬だけ静まる。ゴップが死に、ティアンムが死んだあとで、この男がこちらへ来る。その意味は大きい。議会の顔はブレックスが出せる。だが、軍の筋は別だ。
レビルは席へ着くなり一覧を見た。
「旗艦二、護衛三」
「そのあとで整備済みのサラミスを足す」
ブレックスはようやく、背中のどこかに残っていた固さを少しだけ落とした。
「これで議会の会合じゃなく、艦隊の打ち合わせができる」
エドワウはその二人を見ていた。
前の人生では、こういう顔合わせはもっと遅かった。もっと削られ、もっと失ってからだった。今はまだ違う。卓上に艦数と必要乗員がある。それだけで、喉の奥に残っていた乾きが少し薄くなった。
――――――
次に置かれたのは、ルシファー商会保有MS一覧だった。
リック・ディアス五十機。
民間護衛仕様。
高危険度航路警備用。
火器管制簡略化。
一部センサー民生仕様。
武装制限状態。
ルシファー商会の担当が、欄を指で押さえながら言う。
「五十機あります」
「三十六機はすぐ戦闘仕様へ戻せます」
「八機は主機点検中です」
「六機は部品到着待ちです」
アナハイムの担当が、別の一覧をその横へ置いた。
「火器管制を軍用へ戻します」
「センサーも標準軍用仕様へ戻します」
「ビーム・ピストル、クレイ・バズーカ、シールドを付け直します」
ブレックスは一覧を見たまま言う。
「民間護衛にしては多いな」
エドワウが答えた。
「危ない航路を通していました」
「今はエゥーゴへ渡します」
余計な飾りはない。そういう返しの方が、ブレックスにはかえって信じやすかった。
「主力はこれだな」
とレビルが言う。
士官がうなずく。
「ペガサスとサラミスで運ぶ」
「前へ出すのはディアスです」
その直後に、アナハイムの新しい決裁一覧が置かれた。署名欄にはメラニー会長の名がある。
既定のネモ十八機。
追加ネモ五十機。
予備フレーム。
補修部材。
整備要員。
ブレックスが顔を上げた。
「五十機も出すのか」
アナハイム担当が答える。
「メラニー会長の決裁です」
「機体だけではなく、予備フレーム、補修部材、整備要員も付けます」
レビルが一覧の数字を追う。
「これで小隊ではない」
整備責任者が配備一覧を広げる。
「ネモ六機を一番艦」
「六機を二番艦」
「残りは訓練と損耗補填です」
士官が補足する。
「リック・ディアスを前へ出す」
「ネモは護衛と先遣に使う」
ここまで来ると、五十、六十八という数字が、ようやく部隊表の数字になった。
――――――
会議室の外、宇宙港の待機通路には若い制服姿が並び始めていた。
簡易ベンチ、白い壁、自販機、受付机。そこへ、鞄ひとつで来た若い男女が立っている。士官候補生、操舵科候補生、機関科候補生、通信科候補生、MS候補生。持っているのは教本数冊、訓練記録、写真一枚。家族ごとではなく、自分だけで来た若者の持ち物だ。
受付係が到着組の人数を読み上げる。
「今日の到着組、候補生十一名です」
「操舵科三、機関科二、通信科一、MS候補五」
少し間を置いて、次の組。
「次の到着組、八名です」
「ジャブロー教導隊出身が二名入っています」
さらに。
「士官候補生六名」
「補給科一、通信科二、航海科三」
ブレックスは窓越しにその列を見た。
「年寄りだけでは当直表が書けん」
「若いのが来るなら、サラミスへ立たせられる」
レビルがうなずく。
「ペガサスには経験者を置く」
「サラミスは候補生を育てる艦にする」
若い顔が並ぶと、部屋の中の温度が少し変わる。昨夜までここにいたのは、追われた議員と疲れた士官と黙った技術者ばかりだった。そこへ、まだ制服の折り目が新しい若者が入ってくる。嫌でも先のことを考えさせられる。
――――――
地球図を引き寄せたのはアムロだった。
ジャブロー周辺。北米。アフリカ。中東。オーストラリア沿岸。広げた図面の上を、彼の指が短く動く。
「宇宙だけならこれでいい」
「でも地球へ降りるなら、MSを運ぶ台が要る」
全員がその指先を見る。
「基地から基地までが長い」
「MSを歩かせると遅い」
「飛べる機体を増やすには時間がかかる」
アムロはそこで机の端を叩いた。
「だから先にベースジャバーを作ってください」
アナハイムの担当が聞く。
「条件は」
「MS一機」
とアムロは答えた。
「離着陸は平地」
「低い高さで前線まで運べればいい」
整備責任者が続ける。
「現地でエンジン交換できる形にしてください」
アナハイム担当は一覧へ書き込んだ。
「三日で基本設計」
「一週間で試験フレーム」
「二週間で飛行試験用一号機です」
エドワウは地球図の上の距離を見ながら思った。
前の人生でも、地上の長さは面倒だった。宇宙なら星図の線で足りる。地上はそうはいかない。地面の長さを縮める道具が要る。アムロは、そこをもう見ている。
「二週間で一号機なら、地上先遣隊の訓練に間に合う」
とエドワウが言う。
「間に合わせます」
とアナハイム担当は答えた。
この部屋では、約束はたいてい期限つきだった。その方が信じやすい。
――――――
補給の話になると、卓上の温度が少し下がる。
ルシファー商会の担当が港湾一覧を置いた。
「優先扱いは一日二隻です」
「補給港は今二か所です」
「三か所目をサイド1側で取れれば、ペガサス級二隻、サラミス三隻、ディアス三十六機を先に動かせます」
補給担当が聞く。
「学校区画と診療所区画を避けた搬入路は」
「外周ハッチから入れて、工区裏の路線を使います」
口座担当が別の一覧を差し出す。
「港湾使用料の前払いが要ります」
「現金は十四日分です」
議員の一人が言う。
「放送原稿より港か」
ブレックスが一覧を引き寄せた。
「港がなければネモは着かない」
「ネモが着かなければ護衛艦は兵器だけ載せて岸壁に止まる」
「護衛艦が動かなければ、次の輸送船で議員も技官も上がれない」
彼はそこで視線を上げた。
「最初の放送原稿は今は書かない」
「先に港を取る」
その言い方にはもう迷いがなかった。議会人の顔で、港の順番を決める。そういうところに、この男の強さがあるとエドワウは思った。
――――――
総帥府では、ギレンがサイド1とサイド2から戻ってきた返答を読んでいた。
サイド1は受け入れへ傾き、サイド2は条件つきで乗る。予想通りだった。ギレンは外周図を見ながら、部隊配置の欄へ赤を入れる。
換気塔警備二班。
外周哨戒艇三隻。
港湾ハッチ前監視班。
学校区画、診療所区画への立入禁止。
「三十バンチのあとだ」
とギレンは言った。
「学校と診療所へ近づくな」
「外周だけ見ろ」
キシリアが横からのぞき込む。
「ずいぶん丁寧ですわね」
ギレンはペンを置いた。
「三十日で追い返されたくなければ、最初の三十日を丁寧にやる」
国家が扱うのは、結局いつも場所と人数だ。そこを誤れば、どれだけ正しいことを言っても足元から崩れる。
――――――
エゥーゴの会議室へ戻ると、卓上にはかなりの一覧が並んでいた。
エゥーゴ表題。
参加名簿。
ペガサス級供与一覧。
サラミス級十隻一覧。
艦橋要員一覧。
候補生受付名簿。
リック・ディアス改修一覧。
ネモ六十八機供与一覧。
ベースジャバー試作依頼。
港湾一覧。
必要燃料一覧。
ブレックスがそれを一つずつ見ていく。
「議員はいる」
「レビルも来る」
「艦も入る」
「MSの数も出た」
「候補生も来る」
「港の数字も見えた」
彼はそこで少しだけ間を置いた。ようやく言っていい言葉の形ができたからだ。
「これなら、放送を見ているだけでは終わらない」
「艦を出せる」
「MSを載せられる」
「次の輸送船で人も運べる」
部屋にいた若い士官が、そこで初めて息を吐いた。補佐官の一人が、壁にもたれたまま目を閉じる。技術者は一覧の端へ頬をつけたまま眠っている。窓の向こうでは整備クレーンがゆっくり動いていた。
エドワウはその光景を見ながら思った。
前の人生では、この人に艦が足りなかった。今はペガサス級がある。サラミスも十隻ある。ディアス五十機、ネモ六十八機、候補生の列、ベースジャバーの図まで卓上に並んだ。まだ書き足す項目は残っている。だが、昨日の卓より広い。
それでいい。今日はそれでいい。明日になれば、この数字のいくつかは本当に動き始める。動き始めたものは、もうただの願いではない。