妹に撃たれない方法   作:Brooks

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第182話 SS ララァ、電気代を株で消そうとする

 

 サイド7の居間には、生活というものの音がしていた。

 

 窓の外では、搬送車両が短い警告音を鳴らしながら曲がっていく。建設用のモビルワーカーが、長い資材を抱えたまま器用に向きを変える。遠くでシャトルの減速音が響き、そのたびに窓ガラスが、ぶうん、と小さく鳴った。まだ作りかけのコロニーらしい、金属と樹脂のにおいが換気口から薄く流れ込んでくる。

 

 そんな中で、ミライは卓上端末の明細を見て、ううん、と唸っていた。

 

「食費も上がってるのよねえ」

 

「また?」

 

 アムロが顔をしかめる。

 

「また」

 

 ミライは真顔だった。

 

「輸送費が上がれば食べ物も上がるし、人が増えれば足りなくなるし、足りなくなればまた上がるし」

 

「嫌な話だなあ」

 

「嫌な話よ。しかもね」

 

 ミライは端末を指で送る。

 

「電気代もじわじわ上がってるの」

 

 アムロが身を乗り出した。

 

「うわ、本当だ」

 

「まだこれからよ」

 

 セイラが静かに言った。

 

「仮設区画も増えるし、空調も照明も搬送設備も使う。人が増えれば、そのぶん消費も増えるもの」

 

「つまり」

 

 アムロがまとめる。

 

「何をしても高くなる?」

 

「雑だけど、だいたいそうね」

 

「最悪だ」

 

 ララァは、少し離れたところで端末を見ていた。

 

 画面の中では、例の日本人のおじさんが、やたらと安心させる声で話している。

 

「いいですか、皆さん。物価が上がるとき、何が起きるか」

 

 アムロが横目で見る。

 

「また見てるのか」

 

「はい」

 

 ララァは素直にうなずいた。

 

「分かりやすいです」

 

 画面の中のおじさんは続ける。

 

「支出は増えます。でも同時に、その流れで伸びる会社もあります」

 

「流れで伸びる会社」

 

 ミライが、つい画面を覗き込む。

 

「例えば電気代が上がる。そうすると、電力会社や関連企業はどうなるか」

 

「単純に考えれば、利益が増える可能性があります」

 

 セイラが小さくうなずいた。

 

「理屈としてはそうね」

 

「つまり」

 

 おじさんは、ここぞという顔になった。

 

「払うだけではなく、その流れに乗る、という考え方もあるのです」

 

 ララァが、そこでぱち、とまばたきをした。

 

 それから、静かに言った。

 

「……電気代が上がります」

 

 アムロが顔をしかめる。

 

「その言い方やめろよ。妙に本当っぽいんだよ」

 

「本当です」

 

「やめろって!」

 

 ミライが、こわごわ聞く。

 

「どのくらい?」

 

「少しずつですが、続きます」

 

 セイラが明細を見たまま言う。

 

「需要増、設備負担、資材高。十分あり得るわね」

 

 ミライは深いため息をついた。

 

「節約しないと」

 

 ララァがすぐに言う。

 

「では、無駄を減らします」

 

「お」

 

 アムロがちょっと感心した顔をする。

 

「今のは普通だな」

 

「普通ね」

 

 セイラも同意する。

 

 ララァはすっと立ち上がると、まず照明を一つ落とした。

 

 次に、誰も使っていない端末の待機状態を切った。

 

 続いて、空調の設定を一段だけ見直す。

 

 それから少し考えて、台所の補助灯を消そうとして、ミライに止められた。

 

「それはだめ。料理の時に困る」

 

「はい」

 

 また少し考え、今度はアムロの机の上の作業灯に手を伸ばした。

 

「それもだめ!」

 

 アムロが慌てて止める。

 

「今いじってる途中なんだよ!」

 

「でも、今は使っていません」

 

「あとで使うんだよ!」

 

「あとで」

 

 ララァは素直に手を引っ込めた。

 

 それから部屋を見回して、しばらく本気で考え込み、やがて言った。

 

「……でも、必要な分は減らせません」

 

「そうなのよ」

 

 ミライが即座に答えた。

 

「そこなの。無駄は減らせても、必要な分ってあるのよ」

 

「生きてる限り電気は使うしな」

 

 アムロが言う。

 

「だから厄介なんだよ」

 

 ララァは少しだけ黙った。

 

 画面の中のアサクラが、ちょうど言う。

 

(なおこの動画主はジオンのアサクラとは別人である。胡散臭さは似ているが。)

 

「払うだけではなく、その流れに乗る」

 

 ララァは、その言葉に、はっとしたように顔を上げた。

 

「……では、減らすのではなく、増やします」

 

 部屋が静かになった。

 

 アムロがゆっくり聞く。

 

「何を」

 

 ララァは真顔で答えた。

 

「電気代です」

 

 さらに静かになった。

 

 ミライが瞬きをする。

 

「ごめん、もう一回」

 

「電気代を増やします」

 

「全然分からない」

 

 アムロが言う。

 

「意味が分からない」

 

 セイラだけが、少し考えてから言った。

 

「……電力株ね」

 

 ララァがそちらを見る。

 

「はい」

 

 ミライがセイラを見る。

 

「待って、どういうこと?」

 

「払う分が増えるなら、その前に、その流れで上がる会社の株を少し持っておく」

 

 セイラは落ち着いて説明する。

 

「電気代の上昇そのものは止められなくても、そこで出る負担を、別の形で相殺するという考え方ね」

 

 ミライが、あ、と顔をした。

 

「払うお金を、先に稼ぐってこと?」

 

「そう」

 

 セイラがうなずく。

 

 ララァも真面目にうなずく。

 

「はい」

 

 アムロは頭を抱えた。

 

「理屈は分かる。分かるけど、やってることは怖い」

 

「怖くありません」

 

 ララァが言う。

 

「電気代です」

 

「そこなんだよ! その言い方が怖いんだよ!」

 

 アサクラは画面の中で、にこにこしている。

 

 何だか少し腹が立つ。

 

―――――

 

 その日の午後、テーブルの上には四台の端末が並んだ。

 

 並びだけ見ると、普通の勉強会か家計相談みたいだった。やっていることだけが普通ではない。

 

「いい?」

 

 ミライが腕を組む。

 

「本当に少しだけよ」

 

「はい」

 

 ララァは素直に返事をした。

 

 その素直さが、最近は逆に怖い。

 

 セイラが端末を覗き込む。

 

「同じ“電気”でも会社はいろいろあるわ。電気を作る会社、送る設備に関わる会社、燃料に関わる会社、空調や制御装置を作る会社」

 

「もうこの時点で難しい」

 

 アムロが言う。

 

「初心者向けじゃない」

 

「初心者向けに言うと」

 

 ミライが指を折る。

 

「電気代が上がる時に得しそうな会社、ってこと」

 

「それなら分かる」

 

「雑だけどね」

 

 セイラが言う。

 

 ララァは銘柄一覧を静かに見ていた。

 

 指先が、いくつかの名前の上で止まって、また動く。

 

「これは先に上がります」

 

「うん」

 

 アムロが疲れた顔で返す。

 

「さらっと言うな」

 

「こちらはあとです」

 

「うん」

 

「これは、思ったほど上がりません」

 

「うん……って、何でそんな普通に仕分けしてるんだよ」

 

 ララァは一覧を見たまま答える。

 

「違うからです」

 

「雑!」

 

「でも、そういう答え方する時って当たるのよね」

 

 ミライが言う。

 

「嫌よね」

 

 セイラも同意する。

 

 ララァの指が、一つの銘柄で止まった。

 

「これです」

 

「少しだけよ」

 

 ミライが念を押す。

 

「はい」

 

 ぽん、と軽く触れる。

 

 アムロが身を乗り出した。

 

「ちょっと待て。今ので買ったのか?」

 

「はい」

 

「軽い! やることのわりに動きが軽い!」

 

「少しだけです」

 

「その“少しだけ”が信用できないんだって!」

 

 ララァは買付完了の画面を見て、少し安心したようにうなずいた。

 

「これで電気代は大丈夫です」

 

「消えたわけじゃないからな!?」

 

 アムロが言う。

 

「なくなってはいないからな!?」

 

「相殺しようとしてるだけよ」

 

 ミライも言う。

 

 ララァは、はい、とまた素直にうなずいた。

 

 たぶん分かっていない。

 

―――――

 

 証券会社の監視部門は、今日もだいたい退屈で、たまにだけ退屈ではなかった。

 

「またこの口座です」

 

 若い担当が言う。

 

「また?」

 

 隣のベテランが顔を上げた。

 

「また、です」

 

 画面に出た約定履歴を見て、ベテランの眉が少し動く。

 

「今度は電力セクターか」

 

「小口です。でもタイミングが早すぎます」

 

「毎回そうだな」

 

 若手が画面を拡大する。

 

「内部情報でしょうか」

 

「違うな」

 

 ベテランは即答した。

 

「違いますか」

 

「情報を持ってる人間の買い方じゃない。もっと雑で、もっと素直すぎる」

 

「素直すぎる?」

 

「結果だけ見て、そこに触ってるみたいな買い方だ」

 

 若手はちょっと嫌そうな顔をした。

 

「怖い言い方やめてください」

 

「怖いから仕方ない」

 

 ベテランは別の画面を開く。

 

「それよりこっちだ。この銘柄、このあと大きい資金が入る予定の流れになってる」

 

「大口ですか」

 

「ああ。何か準備してる」

 

 若手はララァ口座の小さな買いと、その先に控えている出来高の波を見比べた。

 

「……嫌な予感しかしません」

 

「うん」

 

 ベテランが言う。

 

「今のところ、毎回当たってる」

 

―――――

 

 別の場所では、別の種類の退屈しない人間たちがいた。

 

「この銘柄、先に拾ってる小口がいる」

 

 広い机の向こうで、資料を見ていた男が言う。

 

「前もいたな」

 

 別の男が答える。

 

「同じ口座です」

 

「同じ?」

 

「ええ。以前、資材関連でも、輸送でも、妙に早く入っていた」

 

 短い沈黙があった。

 

 誰かが言う。

 

「情報漏れか?」

 

「そういう買い方じゃない」

 

「偶然?」

 

「偶然にしては回数が多い」

 

 先に気づいた男が、指先で画面を叩く。

 

「……この口座を基準にしよう」

 

「は?」

 

「こちらの予定は変えない。ただ、この口座が先に入ったものは、優先順位を一段上げる」

 

「個人口座を?」

 

「個人だろうが何だろうが、先に見つけてるなら使える」

 

 言い方は軽かったが、やることは軽くなかった。

 

 こうして、ララァの小さな買いのあとに、大きな資金が静かに流れ込むことになった。

 

 ララァは知らない。

 

 知っていたところで、たぶん困るだけだ。

 

―――――

 

 上がった。

 

 しかも、思ったより勢いよく上がった。

 

 ララァは端末を見て、小さく目を丸くした。

 

「増えました」

 

「早すぎる!」

 

 アムロが叫ぶ。

 

「何でそんなすぐ反応するんだよ!」

 

「今回もなの?」

 

 ミライが頭を抱える。

 

 セイラは画面を見て、少し首をかしげた。

 

「でも、今回は上がり方が強いわね」

 

「強いです」

 

 ララァはうなずく。

 

「電気代が出ます」

 

「だから言い方が怖い!」

 

 アムロが言う。

 

「利益だからな! 電気代そのものが生えてきたわけじゃないからな!」

 

「生えません」

 

 ララァが真顔で答える。

 

「そうだよ!」

 

 ミライが吹き出す。

 

「会話が全然整理されない」

 

 ララァは端末を見つめ、しばらく考えたあと、静かに言った。

 

「少し余りました」

 

 アムロが即答した。

 

「余るな」

 

「では近くの人の分も」

 

「やめろ」

 

「このブロックも」

 

「広げるな!」

 

 ミライも慌てて止める。

 

「ララァちゃん、それはもう家計じゃないの。公共料金の思想なの」

 

「こうきょう」

 

 ララァは少し考える。

 

「大きいですか」

 

「大きいわよ」

 

 セイラが答える。

 

「とても」

 

 ララァは素直にうなずいた。

 

「では、近くの人までにします」

 

「縮めたようで全然縮まってない!」

 

 アムロが言う。

 

 ミライは額を押さえた。

 

「なんでこの子、善意で規模を壊すのかしら……」

 

―――――

 

 証券会社の監視部門では、退屈しない時間がさらに増していた。

 

「入ってきました」

 

 若手が言う。

 

「来たか」

 

 ベテランが画面を見る。

 

 ララァ口座のあとに、大きな買いが何本も続いている。

 

「やっぱり大口が乗った」

 

「この口座、利用されてるんですか?」

 

「逆だな」

 

 ベテランは首を振る。

 

「利用してる側が、この口座を見てる」

 

 若手が引いた。

 

「そんなことあります?」

 

「ある時はある」

 

「嫌ですね」

 

「嫌だな」

 

 ベテランも同意する。

 

「小口の個人口座が、大口にとって“変な目印”になってる」

 

 若手はしばらく黙っていたが、やがて言った。

 

「そろそろ接触を考えた方がいいのでは」

 

「違法の証拠はない」

 

「でも危ない」

 

「危ないな」

 

 ベテランは約定履歴を見て、ゆっくり言った。

 

「口座そのものじゃなく、保護者か責任者に話を通せるなら、その方が早いかもしれない」

 

 若手は口座情報を開き、また嫌そうな顔になった。

 

「未成年」

 

「だろうな」

 

「さらに嫌です」

 

「うん」

 

 ベテランは小さくため息をついた。

 

「すごく嫌だ」

 

―――――

 

 家では、利益確定をめぐって小さな会議が始まっていた。

 

「今回はまだ上がるんじゃないか?」

 

 珍しくアムロがそう言った。

 

「早すぎるかも」

 

 ミライも迷う。

 

 セイラは画面の波を見ている。

 

「誰か大きいのが入っているのかもしれないわね」

 

 ララァは静かにうなずいた。

 

「はい」

 

「はい?」

 

 アムロが聞き返す。

 

「あと少し上がります。でも、そのあと急ぎます」

 

「何が」

 

 ララァは真顔で答えた。

 

「たくさん持っている人たちです」

 

 部屋が少しだけ静かになった。

 

 ミライが、おそるおそる言う。

 

「前にも言ってたわよね、その“たくさん持っている人たち”」

 

「はい」

 

「見えるの?」

 

「動きます」

 

 ララァは簡単に言う。

 

「大きく」

 

 セイラが小さく息を吐いた。

 

「機関の買いを感じてるのね」

 

「普通に言うけど、普通じゃないからなそれ」

 

 アムロが言う。

 

 ララァは画面を見つめ、ちょうどいいところで半分を利確した。

 

 数分後、さらに少しだけ上がった。

 

 アムロが言う。

 

「ほら、やっぱりもうちょっと待てたじゃないか」

 

「でも、このあと揺れます」

 

 本当に、そのあと揺れた。

 

 上がって、下がって、また戻して、忙しい。

 

 ミライが端末を見て目を丸くする。

 

「……嫌になるくらいちょうどいい」

 

「うん」

 

 アムロはもう、ちょっと遠い目をしていた。

 

「嫌になるな」

 

―――――

 

 帰り道、仮設窓口の建物の前を通ったところで、後ろから静かな声がした。

 

「ずいぶん楽しそうだね」

 

 全員が止まった。

 

 アムロは目を閉じる。

 

「来た」

 

 セイラは視線を横へそらす。

 

 ミライは肩をすくめる。

 

 ララァだけが、少し嬉しそうに振り向いた。

 

「エドワウ」

 

 エドワウは四人の前で立ち止まり、ララァの端末に視線を落とした。

 

「見せてくれるかい」

 

 ララァは素直に差し出す。

 

「増えました」

 

「そうだろうね」

 

 エドワウは画面を見る。

 

 約定履歴。

 

 利益。

 

 出来高。

 

 その周辺の流れ。

 

 少しの沈黙。

 

 長くはないのに、まるで長い。

 

「……今回は、誰かが君を見ている」

 

 ミライが青ざめる。

 

「やっぱり?」

 

 アムロが言う。

 

「やっぱりなのかよ……」

 

 ララァは首をかしげた。

 

「見られていましたか」

 

「そこじゃない!」

 

 アムロがすかさず突っ込む。

 

 エドワウは端末を返しながら言う。

 

「君の読みは正しかった。だが、そのあとに入ってきた資金がある」

 

「たくさん持っている人たちです」

 

 ララァが答える。

 

「そう」

 

 エドワウは静かにうなずいた。

 

「そして、その連中が君の動きを目印にしている可能性がある」

 

 ミライが嫌そうな顔をする。

 

「それ、かなり嫌な話よね」

 

「かなり嫌だね」

 

 エドワウも珍しく即答した。

 

 ララァは少しだけしょんぼりした顔になる。

 

「では、買わない方が良かったですか」

 

 アムロが黙る。

 

 ミライも黙る。

 

 セイラが静かにララァを見る。

 

 エドワウはすぐには答えなかった。

 

 その間が、少しだけ優しかった。

 

「目的自体は間違っていない」

 

 やがてエドワウは言った。

 

「だが、やり方は考えないといけない。君が正しくても、周りが正しく動くとは限らないからね」

 

 ララァは小さくうなずいた。

 

「はい」

 

 それから、少しだけためらって言う。

 

「でも、電気代は用意できました」

 

 エドワウが、そこで初めて少しだけ表情を変えた。

 

「……その必要はない」

 

「はい?」

 

 今度はアムロが聞き返した。

 

 ミライも目を丸くする。

 

 セイラは、あ、という顔をした。

 

 エドワウは淡々と言う。

 

「この家の電気代は、すでにこちらで処理している」

 

 沈黙。

 

 風が通路を抜ける。

 

 遠くで搬送車両の警告音が鳴る。

 

 誰も、すぐには何も言えなかった。

 

 最初に声を出したのはアムロだった。

 

「は?」

 

 ミライも続く。

 

「え?」

 

 ララァはきょんとした顔でエドワウを見る。

 

「……では」

 

 少し考える。

 

 かなり真面目に考える。

 

 それから、静かに言った。

 

「利益が残りました」

 

 アムロが天を仰いだ。

 

「そうなるよな!」

 

 ミライが笑いながら額を押さえる。

 

「そうなるわよねえ!」

 

 セイラは口元を押さえて笑った。

 

「本末転倒ね」

 

 ララァは困ったようにエドワウを見る。

 

「いけませんでしたか」

 

「いけない、というより」

 

 エドワウは少しだけ疲れた顔で言う。

 

「方向がずれていた」

 

「でも、増えました」

 

「増えたね」

 

「はい」

 

「そうだね」

 

 アムロが横から言う。

 

「納得するなよ!」

 

 ミライがまだ笑っている。

 

「だって、怒りにくいのよこの子。善意しかないんだもの」

 

「善意で市場を触るなよ……」

 

 アムロの声は、半分くらい本気だった。

 

 ララァはしばらく考え込み、それから顔を上げた。

 

「……では、次は食費を先に」

 

 全員が止まった。

 

 アムロが叫ぶ。

 

「何も学んでない!」

 

 ミライも慌てる。

 

「待って待って、今、米とか輸送とか考えてる顔してる!」

 

 セイラが目を閉じた。

 

「早いわ」

 

 エドワウだけが、深く深くため息をついた。

 

 ララァは本気で善意しかない顔で言う。

 

「必要です」

 

 その必要は、たぶんある。

 

 あるのだが。

 

 あるのだが、それをララァに考えさせていいのかどうかは、また別の話だった。

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