妹に撃たれない方法   作:Brooks

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第192話 SS ララァ、はじめての敵対的TOB

 ニュース端末の画面の中で、艦が燃えていた。

 

 艦そのものというより、艦のまわりから先に壊れていく。逃げる小型艇。遅れてひらく爆発。白い火花。姿勢を崩した艦体が、重力でもあるように、いやにゆっくり傾いていく。

 

 映像は荒く、音も少し遅れていた。それでも嫌なものは嫌だった。画面越しでも分かる種類の破壊がある。

 

「またかよ……」

 

 アムロが、机の上に広げた部品箱を見たまま言った。

 

 顔は端末の方を向いていない。だが、指先だけが止まっていた。さっきまで器用に動いていた手が止まる時は、だいたい頭の中で別の計算が始まっている。

 

 その声には、また始まった、だけではなく、また足りなくなる、まで入っていた。

 

 ミライが腕を組む。細い指が肘をつかむ力が少しだけ強い。

 

「またじゃ済まないわよ。こういうの、一隻沈んで終わりじゃないもの」

 

「補修、補充、警戒、全部前倒しになるわ」

 

 セイラが画面から目を離さず言った。言い方は静かだが、目が冷えている。数字と日程と必要量を、もう頭の中で並べ始めている顔だった。

 

 アムロは、テーブルの上に置かれた分解済みの通信機を指先でつついた。外装は無事だ。基板も、たぶん何とかなる。だが、その奥にある小さな透明部材だけが、見事に割れていた。

 

 大きいものは平気な顔をしているくせに、全体を止めるのはたいていこういう小さなやつだ。

 

「結局こういう時に足りなくなるのって、本体じゃなくて、こういう妙な細かい部品なんだよな」

 

 ミライが身をかがめてのぞき込む。長い髪が肩から流れ、端末の光を受けて頬の横で揺れた。

 

「そうそう。派手に壊れたところじゃなくて、“それ一個ないと全部だめ”ってやつ」

 

「代わりがききにくいものほど、いちばん遅れるのよ」

 

 セイラが言う。言葉が乾いているぶん、現実味があった。

 

 壊れた部材は、つまんでみると軽かった。軽いのに、ないと全部黙る。そういう小さいものは、少し腹が立つ。

 

 その横で、ララァは端末を見ていた。

 

 静かに。

 

 とても静かに。

 

 まばたきまで少ない。

 

 アムロは、それだけで嫌な予感がした。ララァが静かな時は、だいたい何か見つけている。しかも本人だけが、それを嫌な話だと思っていない時の静けさだった。

 

「……何見てる?」

 

 ララァが顔を上げる。大きな瞳はいつも通り澄んでいて、そこに悪気というものがひとかけらもない。

 

「オジキの動画です」

 

 アムロは眉間を寄せた。

 

「またか」

 

 ミライが吹き出す。

 

「まだオジキなのね」

 

「みなさん、そう呼んでいます」

 

 ララァは本当にそう思っている顔だった。

 

 アムロが嫌そうな顔のまま画面をのぞく。

 

 画面の中のオジキは、今日も元気だった。

 

 いや、元気というより、勢いが多い。

 

 背後にチャートを背負って、いままさに歴史の急所を自分だけ見つけた、という顔で両手を広げている。

 

「いいですか皆さん! 未知の技術が見つかった時、何が上がると思いますか!」

 

「完成品だけじゃない!」

 

「その技術に必要な部品を扱う会社です!」

 

 アムロが嫌そうに眉を寄せる。

 

「もう危ない」

 

 オジキは止まらない。

 

「いいですか皆さん! もし、ミノフスキー粒子下で通信できる方法が見つかったりしたら、どうなりますか!」

 

「戦場の情報の流れが変わる! 指揮が変わる! 全部ひっくり返る!」

 

「気づいたときには、買い占めておきましょう!」

 

 アムロが天井を見る。心の底から疲れた時だけやる仕草だった。

 

「言い切ったよこの人」

 

 ミライが肩を揺らして笑う。

 

「でも、勢いでちょっと信じそうになるのよね」

 

 ララァは真面目に言った。

 

「まっすぐです」

 

「うるさいけどな」

 

 アムロが返す。

 

 そのすぐあとだった。

 

「近くならありますよ」

 

 部屋が止まる。

 

 アムロがゆっくりララァを見る。

 

「何が」

 

「ミノフスキー粒子下で通信する方法です」

 

 ララァは静かに答えた。とんでもないことを言った本人だけが、少しも騒がない。

 

 それから、少し考えるように首をかしげて付け足す。

 

「でも、石がいります」

 

「また石か!」

 

 アムロが叫ぶ。

 

 ミライが笑う。

 

「好きねえ、石」

 

 ララァは気にせず続けた。

 

「きれいで、強くて、削っても精度が死なないものです」

 

「あと、磨くものもいります」

 

 セイラの表情が変わった。目つきだけで、話を冗談から実務へ切り替える。

 

「……特殊光学部材と、その加工工程ね」

 

 アムロは頭を抱える。

 

「何で石だけでそこまで通じるんだよ……」

 

「悔しいけど分かるのよね」

 

 ミライが笑いをこらえたまま言う。

 

 アムロは、割れた小さな部材を指先でつまんだまま、ふと手を止めた。眉が寄り、目だけが遠くを見る。頭の中で部品表と配線図と運用条件が一度に並んだ顔だ。

 

「待てよ」

 

 全員がそちらを見る。

 

「もし通信できるなら、うちのシステムにも組み込める」

 

 少しだけ空気が変わる。

 

 ミライが姿勢を正した。

 

「今やってる中継と連携のあれ?」

 

「そうだよ。今のままだと、粒子が濃いところで結局詰まる。届かないか、届いてもぶれるか、途中で切れるかだ。そこが少しでもまともになるなら、全然違う」

 

 言っているうちに、アムロの声に熱が乗ってくる。機械の話になると、顔つきが一段若くなる。

 

「夢物語じゃなくなるわね」

 

 セイラが言う。

 

 ララァは真顔でうなずく。

 

「はい。だから石がいります」

 

「そこへ戻るな!」

 

 アムロが叫んだ。

 

――――――――――

 

「じゃあ、上がるのは通信の会社じゃなくて、その石の会社?」

 

 ミライが腕を組み直す。今度は笑い半分ではなく、本気で考える姿勢だった。

 

「オジキ理論だとそうなるな」

 

 アムロが端末を操作しながら言う。

 

 ララァは首を振った。黒い髪が肩でさらりと揺れる。

 

「この会社ではありません」

 

「また来たなその言い方!」

 

「その前です」

 

「今日は“前”が多いわね」

 

「話は聞いたよ」

 

 そこでエドワウが入ってきた。

 

 足音が静かすぎて、全員が一拍遅れて振り向く。いつの間にかいた、という出方がこの男は似合いすぎていた。

 

「いつからいた」

 

「“近くならありますよ”のあたりからだ」

 

「一番大事なところじゃない」

 

 ミライが言う。

 

 エドワウは端末をのぞき込み、机の上に置かれた通信機にも視線を落とした。

 

 部品に向ける目と、人に向ける目の温度があまり変わらないのが、この男の厄介なところだった。

 

「なるほど」

 

「だから、その“なるほど”が分からないんだって」

 

 アムロが言う。

 

「完成品は後からでも間に合う」

 

 エドワウは静かに言った。

 

「だが、その前にあるものは席が少ない」

 

「席?」

 

 ミライが聞く。

 

「供給できる側の数が限られている、ということね」

 

 セイラが補う。

 

「ああ……」

 

 アムロがようやく少し分かった顔になる。

 

「材料とか加工とか、そこが詰まるのか」

 

 ララァは端末の一覧を見ながら、ぽつぽつ指す。

 

「この会社は石をきれいにしています」

 

「これは削っています」

 

「これは運んでいます」

 

「これは、あとで混みます」

 

「説明が全部雑!」

 

 アムロが叫ぶ。

 

「でも何となく分かるのよね」

 

 ミライは口元を押さえて笑っている。

 

 セイラが言い換える。

 

「精製」

 

「研磨」

 

「光学部材」

 

「精密加工」

 

「輸送」

 

 エドワウは、一社一社ではなく流れで見ていた。

 

 資源。精製。加工。部材。輸送。

 

 その線がどこで集まるかを追っていく。

 

 端末を操作する指が速い。迷いがない。迷いがない時のエドワウは、だいたい人に優しくない結論へ行く。

 

「……ここか」

 

 セイラが画面を見る。

 

「完成品の後ろにいる会社を順に追うと、どこかで必ず名前が出てくる会社よ」

 

「どこですか」

 

 ララァが聞く。

 

「ブッホ・コンツェルンだ」

 

「知らない」

 

 アムロが言う。

 

「私も」

 

 ミライも続く。

 

「目立たないけれど、流れの真ん中にいる会社ね」

 

 セイラが言う。

 

 その時、ララァが資料の一点を見て言った。

 

「この人です」

 

「誰だよ」

 

「真ん中にいる人です」

 

「……会長?」

 

 ララァはうなずく。

 

「ヨコシマです」

 

「言い方!」

 

 アムロが即座に突っ込む。

 

 ミライが苦笑する。

 

「急に人相見みたいになったわね」

 

 ララァは少し考えてから、静かに続けた。

 

「マナウスにいた人たちと同じです」

 

 その声だけ少し低かった。

 

 思い出したくないものに触れた時の、硬い静けさだった。

 

「どんな人たちだったの」

 

 ミライが聞く。今度は笑っていない。

 

「ヤクザの元締めです」

 

 部屋が止まる。

 

「急にど真ん中へ行くな!」

 

 アムロが叫ぶ。

 

 ララァはそのまま言った。

 

「笑っています。でも、自分で全部は持ちません。

 流れる場所を握ります。」

 

「何をしたら誰が困るか、そこを持っています。」

 

「この人達に縛られている人たちも、大勢います」

 

「……会社の中に?」

 

「はい」

 

「働いています。でも、自分で決めていない人が多いです」

 

 ララァの目は端末の向こうを見ていなかった。昔見た別の場所を見ている目だった。

 

「逃げたくても逃げられないのね」

 

 ミライが低く言う。椅子の肘掛けに置いた手に、少し力が入っていた。

 

「はい」

 

「怖い人は一人です。でも、困る人はたくさんいます」

 

 短い沈黙。

 

 それを破ったのは、エドワウだった。

 

「……ブッホを儲けさせるのも癪だな」

 

 口調は淡々としているのに、そこだけ本音がのぞいた。

 

「お、珍しく感情が出た」

 

 アムロが言う。

 

「そこなのね」

 

 ミライが言う。

 

「なら、どうするの」

 

 セイラが聞く。

 

「本体は太らせない」

 

 エドワウは静かに答えた。

 

「外せないところだけ、先に取る」

 

「それって」

 

「……敵対的TOB?」

 

 セイラが言う。

 

「静かな、ね」

 

「静かな敵対的TOBって何だよ」

 

 アムロが顔をしかめる。

 

「やさしい乗っ取りですか」

 

 ララァが真顔で聞く。

 

「やさしくない!」

 

 アムロが即座に叫んだ。

 

――――――――――

 

  そこから先は、妙に早かった。

 

 財閥側は、最初からブッホ本体を正面から食い破るつもりではなかった。

 

 先に動いたのはララァだ。

 

 ブッホ本社の株に信用売りを入れる。

 

 それだけではない。精製、研磨、光学部材、精密加工、輸送。通信部材の生産に欠かせないブッホ傘下の子会社にも、順に信用売りを入れていった。

 

「値下がり前に売ります」

 

 ララァが言う。

 

「その言い方、ほんとに怖いのよ」

 

 ミライが額に手を当てた。

 

「しかも本社だけじゃないのかよ」

 

 アムロが端末をのぞき込み、顔をしかめる。

 

「子会社までまとめてやるの?」

 

「はい」

 

 ララァはうなずいた。

 

「あとで買いやすくなります」

 

「やってることは分かるけど、言い方がひどい!」

 

 アムロが叫ぶ。

 

 だが、そこから先はララァ一人の売りでは済まなかった。

 

 市場は、あの少女の売買を見ている。

 

 証券会社も、機関も、短期筋も見ている。

 

 そして今まで何度も、あの小さな手の先にあるものを見せつけられてきた。

 

 だから、反応は早かった。

 

「……来るわね」

 

 セイラが低く言った。

 

 ララァの信用売りを見た連中が、一斉に売りを重ねてきた。

 

 あの少女がここで売るなら、何かある。

 

 その読みだけで十分だった。

 

 本社も下がる。

 

 子会社も下がる。

 

 しかも板の薄い子会社の方が、崩れ方は早かった。売りが売りを呼び、投げが投げを呼ぶ。値段がひとつ落ちるたびに、その下にいた買いが消える。支えようと出た板が食われ、さらにその下へ抜ける。

 

「うわ……」

 

 アムロが息をのんだ。

 

「これ、止まらないぞ」

 

「止まりません」

 

 ララァが静かに言った。

 

「みんな、見ています」

 

「その“みんな”の中に、ろくでもない連中が山ほどいるのよね……」

 

 ミライが疲れた声で言う。

 

 値は崩れた。

 

 本社も落ちる。

 

 子会社も落ちる。

 

 そしてついに、子会社のいくつかが先に張り付いた。

 

 ストップ安だった。

 

「……ひどい」

 

 ミライが思わずつぶやく。

 

「本当にひどいのはここからだ」

 

 エドワウが言った。

 

 声はいつも通り静かだったが、その静けさがかえって嫌だった。

 

「ブッホは全部を守れない」

 

 端末の表示を見ながら、エドワウが続ける。

 

「本社には議決権がある。看板がある。支配権がある。まず守るのは本社だ」

 

 セイラがうなずいた。

 

「ええ。面子も統治も、本社を落とした時点で終わるものね」

 

「だから、向こうは本社の防衛を優先する」

 

 エドワウが言う。

 

「だが、そのぶん子会社まで資金は回らない」

 

 精製会社。

 

 研磨会社。

 

 光学部材会社。

 

 精密加工会社。

 

 輸送会社。

 

 通信部材を形にするまでの途中を担う会社が、画面の上に並んでいた。

 

 どれも地味だ。

 

 だが、どれか一つ止まれば全部が止まる。

 

「本社を守ってる間に、下の会社を持っていかれるのね」

 

 ミライが言う。

 

「そういうことだ」

 

 セイラが答えた。

 

「看板だけ残しても、材料も加工先も運び手も失えば、後ではもう元に戻せない」

 

 エドワウはそこで初めて端末から顔を上げた。

 

「拾うぞ」

 

 それだけだった。

 

 だが、その一言で部屋の空気が切り替わる。

 

 ララァが小さくうなずく。

 

「はい」

 

 財閥側の口座が動いた。

 

 値崩れした子会社を、安値で拾っていく。

 

 本社には手を出さない。

 

 ブッホが死にもの狂いで守っている場所へは、あえて深く踏み込まない。

 

 そのかわり、子会社を押さえる。

 

 精製。

 

 研磨。

 

 光学部材。

 

 精密加工。

 

 輸送。

 

 ひとつずつ。順番に。通信部材の生産に必要なところから先に買っていく。

 

「えげつないな……」

 

 アムロが言う。

 

「真正面から殴らないのね」

 

 ミライが言う。

 

「正面は向こうが守るからな」

 

 エドワウが答えた。

 

「守らせている間に、下を取る方が早い」

 

「うわ、嫌」

 

 ミライが顔をしかめる。

 

「すごく嫌」

 

「でも筋は通ってるわ」

 

 セイラが淡々と言う。

 

「ブッホが本社に資金を集中すればするほど、子会社は空く。そこを拾えばいい」

 

「理屈は分かるけど、やっぱり嫌だよ」

 

 アムロが言った。

 

「理屈の通った嫌な話だ」

 

 ブッホ側も防衛で買った。

 

 かなり買った。

 

 本社を落とさないために、高い値段でも買った。

 

 だが、子会社までは守り切れない。

 

 売りが集中し、板が薄く、しかも数が多すぎる。

 

 守る範囲が広すぎた。

 

 その隙に、財閥側は子会社を拾い終えていく。

 

 結果、通信部材の供給線は、静かに切り取られた。

 

 ララァが真顔で言った。

 

「乗っ取り成功ですね」

 

「言い方!」

 

 アムロが叫ぶ。

 

「成功しちゃったのね……」

 

 ミライが半分笑い、半分呆れた顔で言う。

 

「静かな敵対的TOBだよ」

 

 エドワウが言う。

 

「静かじゃない!」

 

 アムロが返す。

 

 ブッホ側も防衛で株を集めた。だが、集めきれなかった。

 

 しかも高いところで抱えた株は重く、守るために投じた資金は、守りきれないまま損失に変わった。

 

「ずいぶん痛いわね」

 

 セイラが言う。

 

「だろうね」

 

 エドワウは静かに言う。

 

「これで後の買い物はかなり減る」

 

「買い物って規模じゃないだろ」

 

 アムロが顔をしかめる。

 

 だが、本当にその通りだった。

 

 後にこの家が買うはずだった大きな場所、大きな計画、大きな移動、それらのいくつかは、ここで痩せた。

 

 さらにその先、妙な髑髏じみた名の流れに繋がる未来まで、ずいぶん細くなる。

 

 誰もわからないが、のちのフロンティアIVはまもられたのだった。

 

 一方で、子会社は安値で持っていかれた。

 

「ずいぶん痛いわね」

 

 ミライが言う。

 

「痛いどころではない」

 

 セイラが静かに言った。

 

「後から同じものを作ろうとしても、前みたいには揃わない。材料も加工先も輸送も、もう前ほど自由じゃない」

 

「つまり、欲しくなってから慌てても遅いのね」

 

 ミライが言う。

 

「そういうことだ」

 

 エドワウが答えた。

 

「試作はできる。だが量産で詰まる」

 

「連邦、ティターンズも?」

 

 アムロが聞く。

 

「もちろんだ」

 

 エドワウは言う。

 

「同じ発想に辿り着いても、必要な部材を同じだけ集められない。図面があっても、それだけでは足りない」

 

「兵器は図面では飛ばない、か」

 

 セイラが低く言った。

 

「ああ」

 

「材料と加工が揃って初めて飛ぶ」

 

 短い沈黙のあと、ララァが真顔でまとめた。

 

「石がないと困ります」

 

「最後だけ急に雑になるな!」

 

 アムロが叫ぶ。

 

 今度こそ、居間に笑いが戻った。

 

 ララァは端末を見て、ほんの少しだけ満足そうだった。

 

「資産がおおきく増えました」

 

「そこはほんとにぶれないわね……」

 

 ミライが言う。

 

「おうちにもはいります」

 

「全部一列で報告するな!」

 

 アムロはもう、どこから疲れていいのか分からない顔だった。

 

 エドワウは珍しく機嫌がよかった。

 

 供給線が手に入った。向こうは痩せた。新しいシステムに必要な足回りも押さえた。

 

 満足する理由が、本人の中ではきれいに並んでいるのだろう。

 

 セイラは、意味が分かるぶんだけ疲れていた。

 

 ミライは、心配と呆れと笑いで、かなり消耗していた。

 

 そんな居間の空気を切り裂くように、端末の中のオジキがまた言った。

 

「いいですか皆さん! 黙って買っておけば大儲け!」

 

 アムロが頭を抱える。

 

「一番だめなところだけ実現した!」

 

 外では、搬送車両が短い警告音を鳴らして曲がっていった。

 

 居間の中では、ララァが静かに端末を見ていた。

 

 その静かさが、誰よりも騒がしいのだと、アムロはもう認めるしかなかった。

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