妹に撃たれない方法   作:Brooks

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主人公大活躍の巻


第221話 連邦認証に優先する

 

 ダカールの情報室は、夜の底に沈んでいた。

 

 照明は落とされ、壁面地図だけが白く光っている。南米の内陸へ伸びる赤い点が、時間とともに増えていた。投降基地、通信途絶地点、燃料を持ち出した部隊、弾薬を積んだ輸送車両。別々の報告だったものが、地図の上で一つの向きを持ち始めている。

 

 ジャブロー。

 

 その名が部屋に落ちてから、誰もすぐには口を開かなかった。

 

 マチルダ・アジャン中尉は、左脇に緑色のファイルを挟んだまま、補給記録の紙片を見ていた。ブライト・ノアは通信士の横に立ち、端末の認証表示を確認している。レビルは腕を組み、地図の一点から視線を外さない。

 

 エドワウは、画面の外にある何かを見るような目をしていた。

 

 アムロは黙っていた。指先だけが、卓の縁に触れている。ほんの少しだけ、力が入っている。

 

 通信士が顔を上げた。

 

「発信元はズムシティ。総帥府直通暗号です」

 

 ブライトがすぐに聞いた。

 

「認証は」

 

「偽装ではありません。サイド3政府の正式暗号です」

 

 レビルは一拍だけ置いた。

 

「つなげ」

 

 画面にギレン・ザビの顔が映った。

 

 挨拶はなかった。

 

 ギレンは、まるでこちらの沈黙も地図も、既に見ていたかのような顔をしていた。声は平らだった。急いでいる者の声ではない。急ぐ必要のない者の声だった。

 

「レビル大将。ジャブローへ入るなら、遅い」

 

 レビルは表情を変えなかった。

 

「なぜサイド3がジャブローの話をする」

 

「ティターンズは地球を捨てる。捨てる時に、何を残すかは読める」

 

 ブライトが口を開いた。

 

「何を残すと?」

 

 ギレンは短く答えた。

 

「核時限爆弾だ」

 

 部屋の空気が固まった。

 

 マチルダの指が、ファイルの角を強く押さえた。ブライトの目がわずかに細くなる。アムロの手が、ほんの一瞬だけ止まった。

 

 前の記憶の奥にある白い熱。

 

 それが、言葉になる前に胸の中で立ち上がった。アムロは何も言わなかった。言えば、声の中に余計なものが混じる。

 

 ブライトが確認する。

 

「設置場所を把握しているのですか」

 

「知らん」

 

 あまりにも即答だった。

 

 短い沈黙が落ちた。

 

 ギレンは続けた。

 

「知る必要もない」

 

―――――

 

 レビルは画面を見たまま言った。

 

「場所を知らずに止めると言うのか」

 

「爆弾を止めるのではない。起爆する順番を壊す」

 

 ブライトが聞き返す。

 

「順番?」

 

「核は、ただ置いただけでは核にならん。正しい時刻、正しい順番、正しい電気信号で起爆されて初めて核爆発になる。そこが狂えば、核にはならない」

 

 ギレンの声は変わらなかった。

 

 技術説明をしているというより、既に処理済みの事務手順を読み上げているようだった。

 

「ティターンズが持ち込む爆弾の位置は知らん。だが、ジャブローの中で精密な電子起爆を行うなら、周囲の接地、計測、保守検査、電力安定の線を無視できん」

 

 マチルダが、ファイルから顔を上げた。

 

「建設時の線ですね」

 

「そうだ。ジャブローは地下大要塞である前に、大規模建設区画だった。地盤計測、振動検査、溶接部の非破壊検査、排水ポンプ、搬入口監視、電力安定化。そのための線が全域に入っている」

 

 エドワウが静かに言った。

 

「図面ではなく、線の行き先」

 

 ギレンは、画面の中でわずかに目を動かした。

 

「図面を盗ませたのではない。建設時の接地線、計測線、保守検査線を覚えさせた」

 

 レビルの声が低くなる。

 

「そこへ何をする」

 

 ギレンは短く言った。

 

「流す」

 

 誰もすぐには言葉を返さなかった。

 

「一度でよい。大きな過渡負荷を流す。核時限爆弾の電子起爆回路、防衛砲台の射撃管制、格納庫扉、弾薬搬送、通信中継、発進管制。精密な制御系はまとめて死ぬ」

 

 ブライトは、反射的に自軍側の通信機器とMSの電子系を思い浮かべた。味方も巻き込まれる。切るべき機器、守るべき機器、諦めるべき機器。その区別をつけなければならない。

 

 マチルダは、補給記録の束を見た。

 

 建設資材が、いつ、どの搬入口から入り、どの区画へ運ばれたのか。これまで荷物の流れとして扱っていたものが、今、戦場の線に変わろうとしている。

 

 エドワウは、ギレンが何を見ていたのかを理解した。

 

 砲台ではない。

 

 装甲ではない。

 

 完成した要塞ではなく、完成するまでに残った継ぎ目を見ていたのだ。

 

 アムロは、深く息を吸った。

 

 爆発そのものを止めるのではない。核爆発として成立する条件を壊す。そう聞いて初めて、胸の奥の白い熱が少しだけ遠ざかった。

 

―――――

 

 ジャブローの建設資料が、壁面地図の横に表示された。

 

 竣工図。施工記録。増設計画。搬入口。地下水路。格納区画。反応炉区画。弾薬庫。退避路。建設用接地線。計測線。保守検査線。電力安定線。建設第七区画の検査端子。南側搬入口の接続盤。地下水路ポンプ区画の保守線。格納庫床下の荷重監視線。

 

 情報室の空気が、紙と端末の光で重くなった。

 

 ブライトは記録用端末を手にした。

 

「開示範囲を記録します。エドワウ氏とアムロ氏には、搬入口、補給動線、MS運用上の危険区画に限定します」

 

 レビルが頷いた。

 

「よい」

 

 マチルダは、緑色のファイルから数枚の記録を抜き出した。

 

「南側搬入口から入った遮蔽材と冷却部品の記録があります。日付も一致します」

 

 エドワウが地図の一点を示した。

 

「この搬入口は広い。だが奥で車両が詰まります。大型MSは通せない」

 

 アムロはその先の通路を見た。

 

「ここで格納庫扉が止まったら、MSは外へ出られません。動けても詰まります」

 

 ブライトが、別の線を地図上に引く。

 

「通電する区画と、こちらの突入経路は分ける必要があります」

 

 ギレンが言った。

 

「当然だ。味方の電子機器も死ぬ。通す前に切るべきものは切れ」

 

 レビルは短く確認した。

 

「一度だけ流すのだな」

 

「二度流せば、施設を壊す。一度で手を焼け」

 

「手?」

 

「防御側が起爆し、撃ち、出撃し、逃げるための手だ」

 

 その言い方は冷たかった。

 

 人を殺すと言っているのではない。

 

 しかし、人が戦うために必要な動作を奪うと言っていた。

 

 ブライトは通電時刻の欄に空白を作り、開示範囲を記録した。マチルダは補給記録と建設資材搬入記録を照合する。エドワウは、実際に荷を通した搬入口と、図面上は通れるが現場では使いにくかった通路を指摘していく。アムロは、敵MSが詰まる場所と、味方MSを入れてはいけない場所を見ていた。

 

 レビルは、それぞれの動きを黙って見ていた。

 

 ギレンは画面の中で、何も急がなかった。

 

―――――

 

 その頃、ジャブロー内部の退避管制区画では、赤い非常灯が壁を照らしていた。

 

 搬送ケースが並べられ、通信士が短い報告を読み上げている。壁面にはジャブロー内部の区画図が表示されていたが、一部は伏せられていた。誰が見ても分かる図ではない。見るべき者だけが見る図だった。

 

 ティターンズ技術兵が、端末を見ながら報告した。

 

「時限装置、搬入完了。所定時刻に移行可能です」

 

 バスクは腕を組んでいた。

 

「追ってきた連中ごと焼けばいい」

 

 ジャミトフは区画図を見ていた。

 

「焼くのは最後でよい。先に入れろ」

 

 バスクが横を見る。

 

「入れてから、ですか」

 

「レビルも、ブレックスも、黒猫も、ジャブローを放置できん。彼らは必ず中へ入る」

 

「なら、入ったところで閉じ込めます」

 

「地球での戦いはここで切る。残すものは残し、捨てるものは捨てる」

 

 バスクの目がわずかに動いた。

 

「宇宙へ上がりますか」

 

「まだ終わらん」

 

 ジャミトフは静かに言った。

 

 その静けさが、バスクの怒号よりも不快だった。

 

 ジャミトフはジャブローを守ろうとしていない。バスクはそこをよく理解していた。守るための基地ではない。追ってくる者を中へ入れ、地球での追撃能力を削り、宇宙へ移るための場所だった。

 

 技術兵は端末に目を落とした。

 

「内部時計への移行準備、続行します」

 

 ジャミトフは答えなかった。

 

 沈黙が許可だった。

 

―――――

 

 ダカールの情報室では、ギレンの通信が続いていた。

 

 レビルは画面を見た。

 

「サイド3が、なぜそこまで地球のジャブローを気にする」

 

 ギレンは、少しも迷わずに答えた。

 

「地球の空気は、地球だけのものではない」

 

 部屋が静まった。

 

「スペースノイドにとっても資源だ。水も、空気も、土も、時間をかけねば得られん。ティターンズの敗北処理に、核の熱でくれてやる気はない」

 

 アムロは、地球の空を思い出した。

 

 青く、広く、ただそこにあるものだと思っていた空。見上げればそこにあり、息をすれば肺に入ってくるもの。だが、宇宙で暮らす人間にとって、それは作り、運び、守るものだった。

 

 マチルダは目を伏せた。

 

 補給将校として、彼女は水や食糧や燃料を数えてきた。だが、空気を資源として数える感覚は、地球にいる者にはまだ遠い。

 

 ギレンは続けた。

 

「ジャブローを救うためではない。地球を汚させないためだ」

 

 レビルは短く言った。

 

「結果として、こちらも助かる」

 

「ならば使え」

 

 エドワウは画面の中のギレンを見た。

 

 冷たい。

 

 だが、正しい。

 

 その二つが同じ場所にある時、人は何をどう受け止めればいいのか分からなくなる。エドワウは、その感覚を腹の底に沈めた。

 

 今は、使うしかない。

 

―――――

 

 作戦は、すぐに細かい手順へ落とされた。

 

 南側搬入口の接続盤を確保する。

 

 建設第七区画の検査端子を確認する。

 

 地下水路ポンプ区画の保守線を確認する。

 

 通電前に、味方の電子機器を切る。切れないものは遮蔽する。工兵隊は有線通信と手動装備を持つ。無線に頼らない。自動扉に頼らない。表示灯に頼らない。

 

 マチルダは、緑色のファイルを閉じ、補給班へ指示を出した。

 

「絶縁材、予備ケーブル、手動工具、酸素ボンベ、医療班を南側搬入口へ。電子機器が落ちる前提で動いてください。有線も持たせます」

 

 ブライトは通電時刻と開示範囲を記録する。レビルの横で、若い顔を引き締めていた。

 

「MS側の電子系は」

 

 ブライトの問いに、アムロが答えた。

 

「完全には守れません。通電前に一度下げるべきです。動かすなら終わった後です」

 

 エドワウは別の資料を示した。

 

「南側搬入口の接続盤は、軍の資料より実際の位置がずれています。搬入時に見ました」

 

 レビルは即座に決めた。

 

「そこを使う」

 

 ギレンが画面の向こうで言った。

 

「一度で済ませろ」

 

 レビルは返す。

 

「一度で止める」

 

「止めるのではない。起爆できなくする」

 

 言葉の差が、部屋に残った。

 

 レビルは軍人として、被害を止めると言った。

 

 ギレンは、核爆発として成立する条件を壊すと言った。

 

 同じ方向を向いているようで、見ているものは違っていた。

 

―――――

 

 ジャブロー外縁、南側搬入口付近は、夜明け前の湿気に包まれていた。

 

 密林の葉から水滴が落ちる。土は柔らかく、作業車両のタイヤが浅い跡を残した。重いケーブルが地面に下ろされ、絶縁手袋をはめた工兵が接続盤を探している。

 

 銃声はない。

 

 かわりに、工具が金属に触れる音がした。

 

 マチルダが手配した絶縁材入りの箱が開けられる。医療班が酸素ボンベを確認し、BLL作業員が搬入口の壁を手でなぞる。

 

 工兵が低い声で言った。

 

「資料の位置に接続盤がありません」

 

 BLL作業員がライトを受け取り、壁の奥を照らした。

 

「施工後に移しています。搬入車両が当たるので、奥へ下げたはずです」

 

「奥?」

 

「こっちです。通路の角を曲がったところに、蓋が残っている」

 

 マチルダの声が通信に入る。

 

「照明をこちらへ。手元を明るくして。感電事故を出さないで」

 

 ブライトの声が、有線で届いた。

 

「接続状況を逐次報告。予定時刻より早めるな」

 

 核時限爆弾がある。

 

 誰もがそれを知っていた。

 

 だが、慌てて誤接続すれば、こちらの機材が死ぬ。扉も、通信も、命も、少しの手違いで失われる。

 

 兵士ではなく、作業員の手が戦局を支えていた。

 

 工兵が接続盤の蓋を外す。

 

 中に建設時の番号が残っていた。

 

―――――

 

 ジャブロー内部、退避管制区画に通信が入った。

 

 通信士が振り返る。

 

「サイド3、ズムシティ総帥府より直通通信」

 

 バスクが即座に言った。

 

「切れ」

 

 ジャミトフが片手を上げた。

 

「待て」

 

 バスクが顔を向ける。

 

「罠です」

 

「罠なら、何の罠か見る」

 

 通信士は一瞬ためらった。

 

 ジャミトフの視線を受け、回線を開く。

 

 画面にギレン・ザビが映った。

 

 ギレンは、ジャミトフだけを見ていた。

 

「ジャミトフ・ハイマン」

 

 ジャミトフは冷たく返した。

 

「ギレン・ザビ。反乱軍へ講義でもしに来たか」

 

「反乱軍? 貴様らにその名はまだ立派すぎる」

 

 バスクの頬が引きつった。

 

 ジャミトフは表情を動かさない。

 

 ギレンは続けた。

 

「貴様は軍を率いているつもりだろうが、実際には逃げる荷物の順番を決めているだけだ。燃料、弾薬、通信機材、そして自分の席。実に連邦官僚らしい」

 

「貴様……!」

 

 バスクが踏み出す。

 

 ギレンはバスクを見なかった。

 

「ジャミトフ。地球を焼いて宇宙へ逃げるつもりか」

 

 ジャミトフは、ほんの少しだけ目を細めた。

 

「何の話だ」

 

「核時限爆弾だ。下手な手だ。貴様は地球を憎んでいるのではない。ただ、負けた場所を残したくないだけだ」

 

 ジャミトフは黙った。

 

 沈黙は否定ではなかった。

 

「だが地球の空気は、貴様の敗北処理に使わせるには高すぎる」

 

 ジャミトフの表情が、初めてわずかに変わった。

 

「何をした」

 

「貴様はジャブローを要塞だと思っている。私は、あれを建設区画として見ていた」

 

 バスクの顔色が変わった。

 

 ギレンの声は、まだ平らだった。

 

「図面は盗ませていない。だが、接地線、計測線、保守検査線、電力安定線。どこへ通したかは覚えさせた」

 

 バスクが通信士へ向いた。

 

「通信を……」

 

 通信士の指が端末へ伸びる。

 

 だが、その言葉が命令として形になる前に、ギレンの声が回線を通った。

 

「スペースノイド自治権は、連邦認証に優先する」

 

―――――

 

 その一文は、演説ではなかった。

 

 ジャブロー建設時に残された接地線、計測線、保守検査線、電力安定線へ流し込まれる、最後の符号だった。

 

 次の瞬間、ジャブロー内部の端末が白く瞬いた。

 

 まず照明が一度落ちた。

 

 遅れて、焦げた樹脂の匂いが通路へ広がる。壁際の制御盤が火花を散らし、すぐに沈黙した。非常灯だけが赤く残った。

 

 防衛砲台の管制室では、射撃管制の表示が消えた。

 

「砲台応答なし!」

 

 管制員が叫ぶ。別の兵が予備回線へ手を伸ばす。そこにも反応はなかった。

 

 MS格納庫では、発進レーンが途中で止まった。

 

 固定具が外れない。格納庫扉は途中まで開いた状態で固まり、再起動を受け付けなかった。

 

「発進レーン停止! 扉が開きません!」

 

 整備兵が叫ぶ。

 

 弾薬搬送レールは、弾薬箱を乗せたまま停止した。搬送員が手で押そうとしたが、ロックがかかって動かない。

 

 通信中継器が焼け、短いノイズが区画内に残った。

 

 時限装置の確認端末の前で、ティターンズ技術兵が青ざめた。

 

「同期が消えた!」

 

 別の技術兵が、別系統の表示を見る。

 

「起爆信号が揃いません!」

 

 タイマーは生きているように見えた。

 

 しかし、核爆発として成立するための信号は揃わなかった。電子起爆回路は順番を失い、同期装置は自分が何を待っているのか分からなくなった。

 

 バスクが怒鳴った。

 

「何をしている、動かせ!」

 

 通信士が、焼けた端末の前で手を震わせた。

 

「制御盤が焼けています!」

 

 ジャミトフは画面を見ていた。

 

 ギレンの通信はノイズに飲まれかけている。輪郭が崩れ、音声が割れた。

 

 その中で、ギレンの声だけが最後に届いた。

 

「貴様は地球を焼けん。敗北だけを持って宇宙へ上がれ」

 

 通信は切れた。

 

 ジャミトフはしばらく動かなかった。

 

 取り乱したわけではない。

 

 ただ、ギレンが自分の手を読んでいたことを理解していた。

 

 兵士は生きていた。

 

 ノーマルスーツも酸素もあった。

 

 だが、防御側は撃てなかった。

 

 出せなかった。

 

 起爆できなかった。

 

―――――

 

 ダカールの情報室にも、短いノイズが走った。

 

 だが、レビル側は予定していた機器を切っていた。重要端末は遮蔽され、現地は有線と手動工具に切り替えていた。損傷は限定的だった。

 

 現地工兵から有線で報告が入る。

 

「通電確認。接続盤、焼損。再使用不能です」

 

 マチルダが補給記録の端に手を置いた。

 

「防衛側の弾薬搬送、止まっています」

 

 ブライトが別の通信を受ける。

 

「砲台管制も沈黙。格納庫扉の応答なし」

 

 アムロは地図を見た。

 

「MSは出られない」

 

 エドワウが短く聞く。

 

「核は?」

 

 通信士が端末を確認する。

 

「爆発兆候なし。ただし通常爆薬系の一部反応は不明です」

 

 レビルは即座に命じた。

 

「突入部隊を進めろ。だが急がせるな。爆弾が死んだと決めつけるな」

 

 情報室の空気が動いた。

 

 勝ったのではない。

 

 ただ、最悪の熱が来なかっただけだ。

 

 その時、別の通信が入った。

 

「南米上空、熱源上昇。大気圏離脱軌道へ移行する機体を確認」

 

 ブライトが顔を上げる。

 

「脱出艇か」

 

 エドワウは地図から目を離さなかった。

 

「ジャミトフか」

 

 アムロは黙っていた。

 

 前とは違う。ジャブローは白い熱に包まれていない。だが、敵が終わったわけでもない。

 

 ギレンの音声が、最後に入った。

 

「逃げるには軌道がいる」

 

 レビルが画面を見る。

 

 ギレンの声は、もう通信の向こうで少し遠かった。

 

「地球から逃げる者は、自由に逃げているつもりで、必ず計算に縛られる」

 

 そこで音声は途切れた。

 

 ジャブローの地下では、撃つ手も、起爆する手も、しばらく動かなかった。

 

 その上空で、ティターンズの残った影が宇宙へ向かっていた。

 

 




何か終わりが見えてきた気がします。
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