黒江真由に一目惚れした三年生男子吹奏楽部員の話 作:日向陰陽
―――8月14日、プール場。気づけばプール場で着替えてスマホを片手に立っていた。ハッと我に返る。今日は水着姿の真由さんを写真に撮りまくる大事なイベントの日だ。ボーっとしている場合ではない。視界にパーカーを羽織った真由さんの姿が映りこちらにやってくる。
真優「どうしたの?さあ、パーカー脱いで。」
真由「だって…やっぱり恥ずかしくて…。」
真優「恥ずかしいことなんてないよ。彼氏に見せつけるつもりで…お願い!」
真由「そう言ってくれるなら…。」
真優「おおお…!」
真由さんがゆっくりとパーカーを脱ぐ。白い素肌に黒いビキニ姿が良く映えている。最高に美しい。例の如く前後左右に亘って撮りまくった(特にお尻を)。色々なポーズをとってもらい写真に収めた(特にお尻を)。座って開脚ポーズもしてくれてスマホでズームして撮った。サービス精神旺盛な彼女を持てて幸せだと思った。女子集団に会った気がするがよく覚えていない。プールで持ち上げる隙にお尻を鷲掴みにした気もするがよく覚えていない。気が付けば帰りの電車に乗っていた。
真由「もう…!恥ずかしかったんだからね!」
真優「どうして?部屋の中ではあんなに積極的だったのに。」
真由「それはそれ、これはこれ。」
真優「そういうものなの?」
真由「そういうものよ。」
真優「明日も勉強会だから真由さんの家に戻っていい?」
真由「始めからそのつもりだから気にしなくていいよ。両親にもそう伝えてあるから。泊っていってね。」
真優「お言葉に甘えさせていただきます。」
真由「うん!こういう時はどんどん甘えてね!」
真由さんの家に戻り、改めてお母様に挨拶をしてから真由さんの部屋に籠って勉強を始めた。夜になるまで勉強を続け、晩御飯をご馳走になっている最中にお父様が帰宅なされ改めて挨拶をしお風呂もいただいて歯磨きもして勉強を続け睡魔に抗いながらも勉強を続けて真由さんにベッドで眠るように言われて情熱的なキスをしてから眠りについたところまでは覚えている。朝、目が覚めて真由さんのパジャマが乱れている気がしたが考えるのはやめた。
8月15日、予定通り、勉強会が続いた。朝ごはんもご馳走になりお父様を見送った。世話になりっ放しも申し訳ないと思い食後の食器洗いをお母様と一緒にやった。「真由のこと、よろしくお願いね。」と言われ「はい!」と返事をした。歯磨きをして気合いを入れた。真由さんの部屋に戻り勉強を続けた。
真優「あっ忘れてた。」
真由「どうしたの?」
無言で立ち上がり彼女の隣に跪いて抱きしめてキスをした、彼女も俺を抱きしめる。思わず片手が豊満な胸や下半身に向きそうになるが我慢して抱きしめ続けた。何分か経過して彼女の動きが止まる。
真優「ビックリした?」
真由「うん…でも…嬉しい…!」
真優「それは良かった、毎日でもしないと落ち着かなくてね。」
それからお昼ご飯もご馳走になり朝と同じく食器洗いを手伝った。そして歯磨きをして気合いを入れ直した。真由さんの部屋に入る、直後に真由さんがキスをしてきた。彼女が満足するまで続けた。
真優「朝のじゃ足りなかった?」
真由「一日に何度もこういうのするのも最後だと思うと寂しくて…。」
真優「じゃあもっとしよう。」
俺からキスをした。彼女の動きが止まるまで続けた。
真優「満足した?」
真由「うん…!」
それからは勉強が捗った。気づけば夕方だった。名残惜しいがこれで最終日だ。家に帰る準備もした。彼女が寂しそうな顔をする。また明日、いつもの場所で会おうねと告げた。
真優「っと、その前に…。」
俺から抱きしめキスをした。俺の舌の味を覚えさせるかのように絡め続けた。忘れずにお尻も揉みしだいた。彼女の息が荒くなる。
真優「満足した?」
真由「うん…!」
真優「それじゃあまた明日!」
真由「うん!」
お母様にも「お世話になりました」「また来てね。」「はい!」というやり取りをした。お礼を伝え別れを告げた。本当に名残惜しいが充実した3日間だった。黒江邸に向かって一礼して今度こそ立ち去った。いくらかの練習日を過ごして合宿に入った。長距離バスに揺られてもうお馴染みの宿泊所に着いた。今日の夜にオーディションだが全く緊張はない。外部指導員の橋本先生と新山先生も見慣れた顔ぶれだ。1年生、ましてや初心者ともなればキツい練習だろうが俺はもう慣れた。真由さんと一緒にカレーライスを平らげ彼女を食堂から連れ出す。誰も見ていないことを確認して舌を絡める。扉が開いてすぐに離した。
真優「今日はまだしてなかったと思ってね。」
真由「私も早くしたかったから…。」
真優「緊張してない?」
真由「してないよ。」
真優「良かった、オーディション頑張ってね。」
真由「真優くんこそ頑張ってね。」
真優「うん。」
そこで真由さんとは別れて歯磨きをして風呂に入った。オーディションの時間に入り静かに待った。学年と名前を名乗って椅子に座った。指定された箇所を吹き続け、あっさりと終った。男子部屋に戻り柔軟体操をしてさっさと寝た。翌日、朝、オーディション結果が発表された。俺の名が呼ばれ気合いが入った。ソロメンバーに代わって真由さんの名が呼ばれた。心の中でガッツポーズした。少しコンクールメンバーが変わり合奏の準備に入る。
真由「久美子ちゃん、場所…変わろっか♪」
久美子「え…?どうして…?」
まだソロから外されたことが認識できていないらしい久美子に真由さんが話しかける。彼女は決して嫌味で言っているわけではない。ただ思ったことを口にしている。
真由「だってソロが変わったんだから場所も代わるのは当然でしょ?違った?」
満面の笑みでそう伝えた。
久美子「あ、うん、そうだね。」
ようやく久美子が場所を代わる。心の中で「チンタラしてんじゃねーよ馬~鹿」と思った。合奏練習に入って一曲終わった後、橋本先生に思う所があるようで話を始めた。
橋本「何ていうか…今年はみんな…無茶苦茶!ピリピリしてるんだよ。ガッチガチに固まってるというか…固い!まあ完全にカチカチ山のたぬきさんだな!一度おっぱいでも飲んで寝んねでもするぅ~?」
場が静まり返った。
橋本「あれ?もしかして僕、ド滑りした? すみません‼」
ささやかだが笑い声がした。
橋本「そうそうその気持ち~!心は柔らかく上級生は耳にタコかもしれないけど音を――。」
滝「楽しむ、と書いて音楽…ですね。」
橋本「本当に分かってるぅ~?」
滝先生は頷き
滝「分かっていますよ。」
と答えた。橋本先生と同意だった。
夜、花火大会の時間になる。真由さんと一緒に花火を楽しむ。背後から声を掛けられた。
真優「求くん、どうしましたか?」
求「すみません、あの…―――。」
真優「ほーーう。なるほどね~。ちょっと行ってくるわ。」
求「先輩⁉」
全力で走った。頭に血が昇っていくのが分かる。舐めやがって…………‼
男子部屋に着いた。荒々しく襖をノックした。返事を待たずに思いっきり襖を開けた。秀一が背中を向けて寝転んでいる。
真優「おーーい愛する黄前久美子部長がソロから外されて反抗期のクソガキみてえな真似しやがって……不貞腐れて後輩困らせてんじゃねえよ『仏の副部長さん』よ。恥ずかしくねえのかよ…てめえ…俺、前に警告したよなあ?」
秀一「……。」
真優「聞いてんのか?」
秀一「……。」
真優「聞こえねえなら耳なんていらねえよなあ。」
大股で急接近する、危機を察したのか振り返り立ち上がろうとしたが遅い。左手で髪を掴み、右手で思いっきり耳を掴み引っ張る。腕力で上回っているので耳がどんどん伸びていく。髪は諦めたのか両手で耳を引っ張る腕を掴む。それでも離さなかった。引っ張りまくった。やがて耳から出血する。部員が大勢、俺に群がり腕を掴み体にも抱き着き強引に引き剥がされた。滝先生も駆けつけた。
滝「何事ですか?」
真優「以前の俺の警告も無視して黄前久美子部長サマがソロから外れて部員の動揺を招いて注意しても無視し続けるので聞こえねえなら耳なんていらねえと思って引きちぎろうと思いました。」
滝「警告とは?」
真優「3回制オーディションに変わった経緯を滝先生自身が説明すべきとか『部長サマが関西大会も全国大会も、ソロから外れて部員たちが動揺して演奏が乱れたり空気悪くなったらどう責任取るつもりなんだよお前ら。』っていうのと『俺の言う通りになったら耳でも目ん玉でも髪でもどこでもいいや。体のパーツがどこか無くなる覚悟はしておけ。』と警告しました。部長サマがソロから外れて反抗期のクソガキみてえな態度取って俺の呼びかけにも無視決め込んで、何か……俺の言うことがハッタリだと思っているようで舐められてると思ったので実行に移しました。」
滝「……。」
麗奈「あんた!頭おかしいんじゃないの⁉」
真優「てめえも何『自分は無関係です』ってツラしてんだよ。ケジメとれよ。顎の骨粉々になるまで殴られてから歯ぁ全部引っこ抜かれるか自分から口開けて歯ぁ全部引っこ抜かれて風通し良くするかどっちか選べ。」
麗奈「……。」
真優「ど っ ち か 選 べ っ て言 っ て ん だ‼」
麗奈「……。」
真優「てめえも耳いらねえか。」
麗奈に飛び掛かろうとしたがその場にいた部員全員に押し止められた。視界の隅に橋本先生と新山先生が映る。橋本先生が割って入る。
橋本「君の気持ちは分かる!でもどうか部のために引いてやってはもらえないか⁉」
真優「あんたに何が分かるっていうんですか?俺の警告も、たった今言ったことも無視され続けて舐められっ放しで虚仮にされて黙ってろっていうんですか?俺の面子はどう立ててくれるんですか?部長がソロから外されたくらいでヘタレるこんなクソ吹奏楽部に舐められたまま部活出来ませんよ。聞いてんですか滝先生?」
滝「私にどうしろと?」
真優「あんたも顧問なんだ。黄前久美子教団の教祖と狂信者の躾くらい御自分でやったらどうですか?もう一度言いますが部長がソロから外されたくらいでヘタレるこんなクソ吹奏楽部に舐められたまま部活出来ませんよ。理解しましたか?」
滝「……。」
真優「理解しましたか?って聞いてんですけど。あんたも耳いりませんか?」
滝「……分かりました。」
視界に真由さんが映った。急激に頭が冷えた。
真優「じゃあどうにかしてください、以上です。それではおやすみなさい。」
男子部屋に戻ってさっさと布団を敷いて寝た。誰とも口を利かなかった。真由さんを除いては、合宿も終わり無言でバスに乗る。隣に真由さんが座る。
真優「ガッカリした?俺のあんな姿見て。」
真由「ガッカリしたのは吹部の方かな。『完全実力主義』なんて言っておきながら部長がソロから外れたくらいで雰囲気変わっちゃうなんて馬鹿みたいだよね。真優くんは間違ってないと思うよ。むしろカッコいいと思った。」
俺にだけ聞こえる声でそうハッキリ言ってくれた。俺は嬉しかった。