黒江真由に一目惚れした三年生男子吹奏楽部員の話   作:日向陰陽

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第7話 真「雰囲気に流されない女子、黒江真由」

―――合宿は終わっても練習は続く。合宿時の滝先生の説明と橋本先生と新山先生のフォローもあって以前ほどのピリついた雰囲気は和らいだ気がする。だが不満が完全に消えたわけではない。未だに部長がソロから外れたことをガタガタ言う奴がいる。到底聞き逃せない発言だったし以前に真由さんについて文句言う奴がいたら俺が守ると彼女に発言したのでひと言モノ申したい衝動に駆られたが黙って見逃がしてやることにした、と同時に真由さんに心の中で詫びた。合奏練習がひとまず終わり休憩に入った。音楽室を出た。聞き覚えのある叫び声が聞こえた。またか…と溜息をつきながら声の発生場所へ向かった。

 

「私のせいだっていうの⁉ あんたが仏の副部長とか言われて甘い顔してるから…⁉」

 

「それとこれとは別の話だ。部長が治めようとしてるのに、ああいう声に一々反応するなって言っているだけだよ!」

 

「放っておくほうがよっぽど問題!なあなあにしていたらこっちが非を認めることになる!」

 

「正論で言い負かして不満が消えると思うか⁉」

 

「だからって…⁉」

 

真優「おい無能幹部ふたり、聞こえてんぞ。黙れ。」

 

声を押し殺して音楽室に聞こえないようにふたりに話しかける、ふたりが黙り込む。音楽室の扉を閉めてから狭い廊下を突き進み、麗奈が後ずさる。

 

真優「お前らな…『部員たちが動揺して演奏が乱れたり空気悪くなったらどう責任取るつもりなんだよ。』って何回言われりゃあ理解できんの?脳ミソきちんと働いてるか?」

 

俺のこめかみを拳でノックする。再度溜息をつき

 

真優「お前らが動揺煽ってどうすんだよ。いったい何考えて発言してんの?俺には理解できねえよ。責任とれよ。」

 

麗奈「……。」

 

麗奈が黙って立ち去ろうとする。

 

真優「また無言ですかドラムメジャーさん。」

 

振り向いて俺を睨む、俺も睨み返した。目を逸らして立ち去る。

 

秀一「悪い、言い合うつもりは無かったんだけど…。」

 

真優「幹部が足引っ張んじゃねえよ、無能もいい加減にしろよ仏の副部長サマ。」

 

真由さんが廊下に立っている、氷のような冷たい無表情と目で幹部ふたりを見ていた。俺はホッとした。『コンクールメンバーを辞退する』とか『ソロ辞退する』と言いそうな表情には程遠い様子で安心した。

 

真優「ごめん真由さん、未だにソロの件でゴチャゴチャ言う奴がいて呆れてモノが言えなくなって言い返せなかった。」

 

真由「謝らなくていいよ、真優くんの気持ちは分かってるつもりだから。」

 

真優「じゃあお詫びに…」

 

廊下に誰もいないことを確認して唇を重ねた。同時に片手の指で背中をなぞり首筋に、耳に手を這わせた。真由さんが背中を反らし身をよじる。物凄く扇情的だった。やがて唇を離す。

 

真優「機嫌直った?」

 

真由「うん、気持ちよかった。興奮して…どうでもよくなっちゃた。」

 

真優「これからもああやった方がいいかな?」

 

真由「でもお尻も触ってほしいし…全部して。」

 

真優「分かった、そうするよ。」

 

そんな感じで日々を過ごし8月31日、夏休み最終日にして関西大会当日。楽器の運搬に精を出してチューニング室に入り音合わせと、とりあえずの合奏をする。滝先生の止めの合図と共に音が止む。

 

滝「いいですね、素晴らしい。私は北宇治の音楽が、皆さんの演奏が素晴らしいものであると信じています。結果は気になるでしょうが、まず…自分たちの納得のいく演奏にしましょう。」

 

「「「「「はい‼」」」」」」

 

久美子が「あの!少しだけいいですか!」と挙手をする。先生が「もちろんです。」と場を譲る。

「部長の黄前です!」と言った後、何やらブツブツと言い始めた。独り言が漏れていることを葉月がツッコミ、周囲に笑いが起きる。

 

久美子「思っていることを話します!正直に!そのまま!私は、1年生も3年生もそのまま同じ土俵で競い合えてひとつの目標に向かって進める北宇治が大好きです!その北宇治で全国金を獲りたい。2年間ずっと思ってきたけど…でもどうしてもそこに届かなかった。ここにいる2年と3年…そしてきっと滝先生も思って…何でだよって。だから何かを変えなきゃいけない、幹部でそう考えて今年はこのオーディション形式を採用しました。それが間違っていたとは思いません!より北宇治らしい方法だとも思いました。ただ、そのことで戸惑いを感じた人がいたのも事実です。部長としてこの場で謝らせてください。すみませんでした‼」

 

久美子が頭を下げる、と共に秀一と麗奈も立ち上がり頭を下げた。

 

久美子「今更謝られても納得できない人だっていると思います。でも、それでも私は北宇治で全国金を獲りたい!我儘かもしれない、でもここにいるメンバーと不満も戸惑いも全部吹き飛ばす最高の演奏をして全国に行きたい。1年間、みんなの演奏を見て思いました。こんなに練習して上手くならないはずない。こんなに真剣に向き合ってるのに響かないはずない。北宇治なら獲れる!私たちならできるはず!だから自信を持って今までやって来たことを信じて…だから…えっと…私の伝えたいことは…。」

 

葉月が足を踏み鳴らしみどりが拍手する。「私も全国行きたいぞ‼」「みどりもです!」「私も!獲ろう!全国金!」「絶対に行こう!全国!」と次々に声が挙がり室内が拍手に包まれる。たまにはいい仕事するじゃねえかと見直した。

 

久美子「それでは御唱和ください!北宇治ファイト~!」

 

「「「「「おー‼」」」」」

 

俺も気合いを入れて叫んだ。

 

北宇治の名が呼ばれ舞台の椅子に座る。深呼吸する、緊張はない。滝先生の指揮の下、緩やかなクラリネットから始まる、そして終盤…麗奈のトランペット共に透き通るような綺麗で美しくてでも音は少し控えめな真由さんらしいユーフォの音が奏でられる、聴き入った。やれるべきことはやった。後は結果を待つのみ。

 

観客席に座る、隣には真由さん。手を握った、彼女の手は汗ばんでいた、興奮した、しっかりと手を繋いだ。「18番、京都府代表北宇治高等学校、ゴールド金賞。」第1関門突破、残るは関西代表の3校、1番目も2番目も聞きなれた学校が発表され歓喜の声が上がる…残る1枠…「3校目、18番、京都府代表北宇治高等学校。」北宇治も歓喜の声に沸いた。ドサクサに紛れて情熱的なキスをした。こうして10月に開催される全国大会の出場権を獲得して関西大会を終えた。

 

翌日、練習の時間になり真由さんの演奏の評判の良さに同じ部員として彼氏として誇らしかった。自慢の彼女です‼と叫びたかったが我慢した。いくらかの練習日を過ごして全国大会向けのオーディションが行われた。楽器名、学年、名前を告げて椅子に座る。例の如くあっさりと終った。

 

翌日、オーディション合格発表が松本先生から読み上げられた。俺の名を呼ばれ真由さんも呼ばれた。そしてソロ…ユーフォ奏者は久美子、真由さんの順で呼ばれた。後日、全部員の投票による再オーディションが行われると宣言された。肝心なところは部員に丸投げか…と2年前の忌まわしいトランペットソロ再オーディションの件を思い出した。またこの展開かと内心溜息をついた。

 

練習が終わり真由さんと一緒に帰る。

 

真優「再オーディションっつってもなー、真由さんの演奏なら聴いて一発で分かるしやる意味あんのかね?」

 

真由「ふふっ、それは真優くんだけだと思うよ。」

 

真優「そうかな?」

 

真由「そうだよ。」

 

真優「あっ忘れてた。全国大会出場のご褒美。」

 

真由さんを抱きしめキスをする。お尻を揉みしだきやがて背中、首、耳と手を這わせる。一度唇を離した後、首を入念に舌を這わせた。真由さんの体がのけ反る。左右に舐めた後、うなじを攻める。真由さんの息遣いが荒くなる。もう一度キスして舌を絡めた。やがて唇を離す。

 

真優「どうだった?」

 

真由「…気持ちよかった…。でもこれじゃ私ばっかり気持ちよくなって真優くんを全然気持ちよくできてないよ。」

 

真優「それは一緒に大学の合格発表が決まるまでお預けってことで。」

 

真由「いいの?それで?」

 

真優「だってこれ以上のことしたら真由さんに夢中になって勉強どころじゃなくなるもん。」

 

真由「じゃあ一緒に大学の合格発表が決まったら楽しみにしてね。」

 

真優「うん、楽しみにしてる。」

 

真由「……出来れば再オーディションの日もさっきしたことと同じことしてほしいかな。そうしてくれたらもっと頑張れる気がする。」

 

真優「時間を見つけてそうするよ。」

 

そして彼女の姿が見えなくなるまで見送った。

 

再オーディション当日、見慣れたホール、誰が演奏しているか分からないように布で舞台を覆う作業を途中で抜け出し真由さんが待つ場所へ向かった。久美子と真由さんが少し距離を置いて座っている。

 

真優「悪い久美子、真由さん励ましたいから席を外してもらえるかな?」

 

久美子「え、うん、わかった。」

 

足音が遠ざかっていくのを確認し真由さんの正面に立つ。

 

真優「緊張してる?」

 

真由「うん、ちょっとね。」

 

真優「じゃあ落ち着くように。」

 

真由さんを抱きしめキスをする。お尻を揉みしだきやがて背中、首、耳と手を這わせる。一度唇を離した後、首を入念に舌を這わせた。真由さんの体がのけ反る。左右に舐めた後、うなじを攻める。真由さんの息遣いが荒くなる。もう一度キスして舌を絡めた。やがて唇を離す。

 

真優「落ち着いた?」

 

真由「落ち着いたっていうより…気持ちよくてテンション上がっちゃった!もうヤル気マンマンって感じ!」

 

真優「それは良かった、演奏頑張ってね!」

 

真由「うん!頑張る!」

 

走り去ろうとして廊下の曲がり角で久美子とぶつかりそうになる。

 

久美子「ああ、えっと…真由ちゃんと真優って意外と大胆なんだね…。」

 

真優「もっともっと愛情表現したいけど受験生だからね。お楽しみはそれまでお預けってことで。じゃあね、ありがとう。」

 

急いで席に着いた。やがて麗奈のソロに合わせてユーフォの1番目の奏者と2番目の奏者が吹き終える。聴き比べるまでもなかった。この大一番でも綺麗で安定した音、間違えるはずがなかった。

1番目と2番目にそれぞれ良いと思った方に挙手を促す。数を数える1年生が困惑する。

 

滝「どうしましたか?」

 

「数が…合いません。」

 

滝「どなたか挙手をしていない人はいますか?」

 

真優「俺と高坂さんがまだです、公正を期するため、高坂さんから1票お願いします。」

 

滝「……分かりました。では高坂さんからお願いします。決まりましたか?」

 

長い沈黙が続く。

 

麗奈「1番です。」

 

滝「黒栄くん、決まりましたか?」

 

真優「はい。」

 

立ち上がり思いっきり叫んだ。

 

真優「1番‼ 黒江真由さんです‼」

 

周囲がザワつく。

 

滝「では…1番の方は前へ。」

 

真由さんが前に出る。

 

滝「では…全国大会のユーフォニアムのソリは…黒江真由さんに決定します。」

 

周囲がまたザワつく。

 

久美子「これが!北宇治のベストメンバーです!ここにいる全員が決めた言い逃れの出来ない最強メンバーです!これで全国へ行きましょう!そして一致団結して必ず金を!全国大会金賞を獲りましょう!」

 

久美子の宣言と共に拍手が鳴り響く。

 

真由「ありがとう! 真優くん大好き‼」

 

真優「真由さん‼ 俺も大好きだ‼」

 

これで真由さんの綺麗な演奏がまた聴けると思うと身震いがした。これにてユーフォ奏者のソロ決定戦は幕を閉じた。

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