ジャンプはジャンプでも   作:通りすがりの最下級大虚

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楽しみにしている作品程消えたり途中更新で止まるのはドウシテ……。


虚編、またの名をプロローグ
自由じゃあ!!


 ……何処此処?

 見渡す限り一面岩と荒れた大地。暗雲が覆う空模様。そこにポツンと一人。

 

 ナニカのドッキリですか? 何てのほほんとした状況でもない。そも、現代の規制でガチガチのテレビ局でそんなことしたら炎上確定だ。

 

 昨日家に帰って、シャワー浴びて、酒飲んで寝た。

 うん、そうだよな? そうだ。

 

 ……多分そうだ。いや、違ったか?

 あれ、家じゃなくて会社で仮眠してたっけ? 最近の記憶が曖昧だな……。

 

 いやでも曖昧であろうが前後不覚状態であろうがこんなとこには来ない筈。

 となれば、アレか? 念願の転生か?

 

 なに、俺あの会社に行かなくていいんか? ほんまに?

 締め切りギリギリになって発生する追加の仕事、毎月総務部に異動する同期、すり減る精神、帰れば出し損ねのごみ袋と空き缶の散乱した部屋。

 あ、あかんわ胃が痛くなってきたから思い出すの止めよ。心が死する。

 

 というか、気付いたんだけど視線高ない? え、俺姿も変わっている感じ? うわ、両手真っ白やんけ。爪長いっていうかめっちゃ鋭い。

 どっかに反射するモンあったら姿見れるんだけどなぁ。無いならしゃーない。

 

「――!!」

 

 んお?

 

「――誰かーたす――」

 

 ……声聞こえるなぁ。気のせいじゃなけりゃ滅茶苦茶切羽詰まってるし、ちょっと様子見に行くか。

 

 

 

 

 魔都――それは日本各地で発生した『門』と呼ばれる穴の先に広がる異界である。

 そこには『桃』と呼ばれる女人のみに特異な力を授ける食物があり、現在は政府の元で管理されている。

 しかし、魔都が齎したのは恩恵だけではない。

 『醜鬼』と呼ばれる異形の存在と、『門』によって発生する様々な被害である。

 

 『門』は一部地域で位置が固定され、恒常的に開かれている物が存在し、それらは専門機関で管理されているがそれ以外の小さな門は突発的に発生し、そこから一般人が迷い込むこともあれば、逆に醜鬼が現世に現れ被害を及ぼすことがある。

 これらを魔都災害と呼び、年間の被害数も少なくは無い。

 

「嫌ッ! 嫌ァッ!!」

 

 今しがた悲鳴を上げているこの女性もまた、魔都災害に巻き込まれた一般人だった。

 今日は大きめのプロジェクトの最終段階の日であった為、普段よりも多忙だった。

 故に自身を労うべく、行きつけのスーパーにて少々値の張るワイン、そして缶酎ハイと様々な肴を買い有給含めた3日間を退廃的で自堕落な時間で埋め尽くす予定で埋めていた。

 

 しかし――今、彼女はアスファルトで舗装された道ではなく、荒れた大地を走っている。その背後には魔都の異形――醜鬼が獲物を追いかけている。

 片やオフィス用のシューズ。片や強靱な肉体を持ち、過酷な魔都に生息している化け物。

 本来であれば一瞬で決着がつくはずの追いかけっこは、しかし数分経った今も続いている。

 彼女の逃げ足が早いのではない。醜鬼がわざと速度を調整しているのだ。

 恐怖と焦りで逃げる彼女の姿を愉しむように、時間を掛けていたぶる為に。

 

「あッーー」

 

 しかし、それも終わる。

 慣れない荒野を走り続けたことで遂に足に限界が訪れ、それによってもつれて地面に倒れた。

 バッグに入っていたワインの容器が割れ、散乱するがそれを気にしている余裕はもはやない。

 

 震える呼吸のままに、必死に身を捩り後ずさるが醜鬼はそれを見つめながら手を出さない。

 無機質に見えるその顔には笑みが浮かんでいるように見える。

 後ずさる。距離を詰める。後ずさる。距離を詰める。

 気が付けば、彼女は切り立った岩に背がぶつかった。

 逃げ場はない。文字通り袋の鼠。それを追いかけていた醜悪な猫達はじりじりと最後の距離を詰める。

 

 本来であれば救出のための機関-魔防隊-が駆けつける手はずだが距離が遠い為に彼女の生存中に救出することは不可能。

 

 つまり、彼女の命運はここで付きた―――筈だった。

 

―――ドゥルルルルルルルル…………

 

 ネコ科大型肉食獣の様な低い、腹に響くような唸り声が辺りに響いた。

 醜鬼が一体、その声の方を向いた。

 

 

 周囲にいた数体諸共、爆ぜた。

 その轟音は命を奪おうとしていた醜鬼共に命の危機を覚えさせるに十分だった。

 しかし、何かをするには時すでに遅く、動きも緩慢が過ぎた。

 

 命の危機に瀕していた彼女は混乱する思考の中でその様を見る事になる。

 正体を認識する間もなく、数体毎に爆ぜていく。

 一瞬、動きが止まったかと思えばその詳細を見る間もなくまた数体が肉の霧となって消える。

 抵抗を選んだ個体も、逃走を選んだ個体も関係なく、等しく死が訪れる。

 

 かつて自身を追いかけていた捕食者だったものが一体残らず辺りに散乱するのに時間は掛からなかった。

 その全てが地面に転がって、漸く姿の見えない殺戮者は姿を現した。

 

 悪魔が、立っていた。

 血と、肉と、骨の海でその足元だけを血で濡らした悪魔がそこにいた。

 

 2メートルは超えようかという長身は細くも確かな筋肉が付いており、それを白い肌が覆い隠している。

 襤褸布で下半身を覆っている為にその下を見る事は出来ないが、先ほどの惨劇からしてその足がどのようなものか想像に難くない。

 そして、頭の上部を覆うヤギの頭骨の様な仮面と、尾てい骨から生えた尻尾。

 

 誰もがその姿を見れば悪魔だと形容する。そんな存在が、今、彼女の数メートル先に居る。

 悪魔が彼女に身体を向ける。胸元に空いた穴から、その向こうの景色が見える。

 

 その時、彼女は混乱から再び恐怖にその思考を堕とした。

 助かったのではなく、別の捕食者に目を付けられたのだと。それもあれだけいた醜鬼を砂の城を崩す様にいとも容易く血肉に変えた化け物に。

 

「もう嫌ぁ……」

 

 両手で顔を隠し、背後の岩に身体を押し付け、背を丸めた。

 すっかり恐怖と絶望に呑まれてしまった彼女は退行を起こして逃避するしか術は無かった。

 

 視界を塞ぎ、生きる希望を失い死を待つだけの彼女の耳に足音が聞こえた。他でもない悪魔の物だろう。

 一歩、また一歩近づく度に、死の匂いを感じる気がした。

 一歩、また一歩。

 目の前まで近づいて止まった。もう時間は残されていない。後は自身を殺して貪るか、弄ぶか。

 

 しかし、いつまで経ってもその気配はない。

 いや、音はする。しかし、それはガサガサという、袋から何かを取り出す聞きなれた音だった。

 それが収まると、今度はガサッという、ビニールを持ち上げた音が聞こえ、それっきり音は途絶えた。

 

 恐る恐る視界を開けると、そこに映ったのは此方に背を向き自身が労いの為に買った堕落セットが詰まった袋をぶら下げている悪魔の姿。

 一瞬停止し、足を曲げ、跳躍。

 それっきり、辺りは静寂に包まれた。

 何が起きたかわからず放心している彼女の耳に、オフロードタイヤが地面を巻き上げる音が聞こえたのはそれからすぐの事だった。

 

 

 

 

 

 

 rrrrルゥァッキー! 酒とツマミが手に入ったぜぇ~!! ワイン割れてたのは残念だったけどいいや。

 あ、胸に穴空いてるけどこっから漏れたりしないよね? ちょっと不安。




主人公:ブラック企業勤めの結果意識朦朧の状態で心停止→死亡という死に方をした独身中年酒カスヤニカスセルフネグレクトハゲ。虚になった今はハゲじゃない。今は何も考える事が出来ず後先考えていない。

被害者OL:魔都災害に遭った挙句に自分へのご褒美も奪われた不運な人。手続きが面倒くさいから桃を食べていなかったがコレを機に桃を食べる手続きを始めることになる。保護されて色々手続き済ませ、自宅に帰ってからやったことは酒とつまみを買い占めて一人居酒屋。

主人公の奴隷化(原作主人公は消えます)

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