ジャンプはジャンプでも   作:通りすがりの最下級大虚

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読者の皆様方に置かれましては大変混乱していることと思われますが、熟考した結果誠に勝手では御座いますが、新章は一から書き直しという形で再度掲載させて頂く形でスタートさせて頂きます。大変申し訳ありませんでした。


魔防隊入隊編
新しい朝が来た希望の朝……かなぁ?


 目が覚める。そこは一面まっさらな空間だった。

 足元を見ると僅かに沈んでいる。真っ白な地面は砂だった。

 嗚呼――いつもの光景だ。

 そして私の先に居る人影も、いつもの光景だった。

 

「今日もまた、来てしまったのね」

 

 鬼の面頬で顔下半分を隠した、白い和服の女の人。

 深い悲しみと、諦めと、そして酷い疲労を感じる掠れた声なのに、やけに耳に残る。

 

「本来なら在ってはならない物、そして交わってはいけない存在。だけども、この身は此処に在る。ならば、何度でも伝えましょう」

 

 姿が一瞬で消え、再び現れた時は目の前で―――

 

「妾の名は――――。また、次の泡沫の時に会いましょう」

 

 胸を彼女の手が貫いて、視界が暗転した。

 

 

 

「……ん」

 

 今度こそ本当に目が覚める。窓から降り注ぐ朝日、小鳥の囀り、道路を走る車の音が私に現実を教えてくれる。

 此処は東家の私に与えられた一室。

 敷布団を片付け、寝間着から胴着へ着替えて、髪の毛を最低限動かしやすい形に整えて廊下に出る。

 

 早朝の冷えた空気が沁みる時間だというのに、忙しなく動く使用人さん達に挨拶をしながら一階の庭に向かうと、そこにはこの家の当主――東海桐花様と私の義母である東風舞希様がいた。

 

「おはようございます!」

 

「ウム! 毎朝きっちり時間通りに来るとはなかなか殊勝じゃの!」

 

「はい、宜しくお願いします!」

 

 海桐花様は今でこそ魔防隊の総組長という座から退いているものの、東家当主という立場である以上多忙なのは変わりない。寧ろ、総隊長との二足の草鞋を履いていた時よりも一層東家に力を入れているせいか日中は殆ど家に居ないことの方が多い。

 一方の風舞希様も9番組副組長から組長へと昇進し、現場だけでなく後方での書類仕事もこなす日々。当然家に帰る頻度だって少ない。

 だというのに、時間の空きを見つけてはこうして特訓を付けて下さるのだ。

 そんなご厚意を無駄にしたくはない。

 一礼して風舞希様の前に立つ。

 彼女は自身の能力である槍を構えていた。私も能力を発現させると手元に刀が現れ、私の身体に左を前に合わせた袴が被さる。

 

「……いつ見ても面妖だの。お前の能力は」

 

 自分でもそう思う。

 海桐花様の言葉に内心で呟きを漏らし、刀を抜く。

 何の変哲もない刀身は陽光を浴びて薄ら青く反射させる。

 

「来なさい―――」

 

 風舞希様の開始の合図と共に私は彼女に肉薄する。

 

 私――東桔梗の一日が始まった。

 

 

 

 

 

 

「以前よりも太刀筋が良くなっているわ。でも、まだ動きが直情的。貴女の性格上仕方のないことかもしれないけども、遊びを入れなければ簡単に読まれてしまいます」

 

「とはいえ、最後の一撃はよくやった。魔防隊に入ったとて弛まずに精進せいよ」

 

 特訓が終わり、お二人から言葉を頂く。やはり実感している通り動きを読まれやすいのが今の課題だ。先ほどの打ち合いでもこちらの太刀はほぼ防がれていた。

 だから最後の一撃はこれまでの型を捨て、突きを狙ったのだがそれが認められるのは嬉しかった。

 

「はい! 本日はお時間を頂き、ありがとございました!!」

 

 貴重な時間を下さった二人に礼をする。

 

「よいよい、桔梗は東の鬼札。この程度の労力、何とも思わん」

 

「そうね、義理とは言え娘が成長する姿を見られるのは嬉しいわ。貴女のこれからの活躍に期待ね」

 

 二人に見送られながら私は庭から退出する。

 その足で自室に戻り、備え付けられている簡易シャワーで汗を流して学校の制服に着替える。

 

『桔梗サマー。可愛い貴女の使用人がご飯の時間をお伝えに来ましたよー』

 

 髪型を整え終えた頃に使用人さんから朝食が提供される。毎日支度が終わった頃にやってくるので恐らく本当にタイミングを計っていると思う。

 

「では頂きます」

 

 

 

 朝食を終えた私は近くにある9番組が管轄している多摩川クナドに向かうために、東の門を潜ります。

 その前に――

 

「……今までありがとうございました」

 

 身体を翻して屋敷の方を向いて一礼。孤児の私を引き取り東の一員として分け隔てなく接して下さった方々への感謝は忘れません。

 

 此処からは私も庇護される力無き者ではなく、市民を護り醜鬼を討伐し魔都の資源を狙う者達を捕らえる魔防隊の一員です。

 故に、今まで付き添ってくださった使用人さんも傍に居ません。

 

「では征きましょう」

 

 覚悟を決めるように自分に言い聞かせて私は新たな一歩を踏み出しました―――。

 

 

 

 此処は何処でしょう?

 

「えっと、多摩川クナドが此処ですから、今は此処の筈……」

 

 気が付けば見知らぬ場所に辿り着いてしまいました。

 携帯の地図を見ながら歩いている筈なのですが、進めば進むほどに目的地から遠ざかっている気がします。

 うう……使用人と共に歩いていた弊害がこうも早く現れるなんて……。

 

「ああっ。また多摩川クナドが遠く……」

 

 なんと迷いやすい街なのでしょうか。ここはさながら現世に現れた魔都です。

 こうなってしまっては、致し方ありません。道すがらであった方か、若しくは交番で道順を尋ねるしか……。

 

「やっぱりこうなってしまいましたかぁ~」

 

 恥を忍んで最後の手段を考えている私の耳が聞きなれた声を捕らえました。

 

「ドモドモ~貴女の使用人がそんな桔梗サマの危機にはせ参じましたよ~」

 

 閉じていると錯覚しそうな程に細い目、首筋まで切りそろえたショートヘア―。

 見慣れた姿の使用人が手を振りながら立っていました。

 相変わらずの軽い口調がこの時は救いを差し伸べる仏の声に聞こえます。

 

「もーしょうがにゃいなぁ、桔梗サマは。私と一緒に多摩川クナド行きましょ」

 

 使用人さんが手を差し伸べます。初めての場所へ行くときはいつも手を握って先導してくださいました。

 しかし、今の私は魔防隊。それももう19という独り立ちしてしかるべき年齢です。この手を取っていいのかという葛藤が私の行動に待ったを掛けます。

 

「おやおや? どうしました? ほら、急がないと入隊式に遅刻しちゃいますよ?」

 

 ニコニコ笑顔のまま手を更に近づけます。

 

「わ、私はこれから魔防隊に入る者として、この程度一人でこなさないと……」

 

 誘惑に負けそうになる心を叱咤しながら抵抗していると彼女は笑みを深くしながら私の抵抗を解く一言を口にします。

 

「それなら心配には及びません。使用人ちゃんも魔防隊の一員なので」

 

 ほら、証拠と言いながら彼女は胸元のポケットから魔防隊の証であるワッペンと身分証を取り出します。

 

「そ・れ・にぃ、初日に遅刻しちゃう方が迷惑かけると思いません?」

 

 二回目の誘惑。正当性のあるその言葉に私は白旗を上げました。

 しかし、それでもこれだけは。この最低限の体裁だけは保たせてください。

 

「せ、せめて横を歩くくらいにしてください……」

 

「駄目です♪ 敗者が勝者に要求する権利は認めませーん」

 

 どうやら私の体裁は当の昔に失われてしまったみたいです。

 結局、私はいい歳をして保護者代わりの方と手を繋いで魔防隊の入隊式に臨むという恥ずかしい姿を見せながら多摩川クナドの門を潜ることになりました。

 

 

 

 

 

「うぅ……恥ずかしいです」

 

 多摩川クナドを通り、そこから来るまで魔都を走ること数十分。総本部である十番組についた私は羞恥心で熱くなった顔を掌で冷やしていました。

 道中隊員の方からは微笑ましい物を見る半分、苦笑い半分、その他色々な目線を向けられ、更には車を降りた後も本部に入る直前まで手を繋がれる始末。穴があったら入りたいとはこのことです。

 

「恥ずかしがっているそこのかっこかわいい新人ちゃん、八雲さんとお話ししーましょ♡」

 

 恥ずかしさで動けない私を誰かが後ろから抱きしめました。

 いきなりの事で固まっているとその抱きしめている方はその手を身体の彼方此方をすべるように動かして、いえコレは……っ!

 

「せ、セクハラ……!!」

 

 そしてこんなコトをする方を私は一人しか知りません……!

 

「え、蝦夷組長! このような場でセクハラ行為はおやめください!!」

 

 魔防隊五番組組長、蝦夷八雲さん。

 魔防隊きっての女好きで知られ、本人もそれを隠さずに公表している。そして何より今私にしているセクハラを積極的に狙っていることでも知られ、要注意人物の一人に挙げられている方……ッ!!

 その問題人物は私の抵抗をいなしながら巧みな、いえいやらしい指使いで私の身体を味わうように撫でまわしています。

 

「八雲さんって呼んで欲しいな♪ それに、これは初々しい新入隊員の緊張を解そうという八雲さんの粋な計らいだよ♡」

 

 よくもいけしゃあしゃあとそんな戯言をっ!

 

「ちょ、まっ、あっ――」

 

 そこは――

 

「はいはーいウチの桔梗サマをこれ以上弄らないでねぇ蝦夷組長ー?」

 

 あ、危ない所でした……。間一髪で使用人さんが入って下さらなければ恥辱に恥辱を重ねる結果を招くところでした。

 心なしか険悪な雰囲気を醸し出しながら蝦夷組長の腕を捩じっている使用人さんに内心で感謝していると八雲組長はその拘束から逃れ距離を取りました。

 

「ひゃー危ない危ない。一歩拘束から抜け出せなかったら二回目の病院送りになるところだったよ。それにしても君もなかなかいい身体してるねぇ」

 

 掴まれていた腕を擦りながらも蝦夷組長は懲りずに今度は使用人さんに狙いを定めました。

 が使用人さんは蝦夷組長のセクハラを狙う手を叩き落とします。

 

「申し訳ないけど、使用人ちゃんにはココロに決めたヒトが居るので、蝦夷組長のお誘いに乗ることは出来ないのです」

 

 ……なんと?

 使用人さんの言葉に私は思わず思考が停止してしまいました。

 一方の蝦夷組長も少なからずショックを受けた顔をしていましたが、再び不敵な笑みを浮かべると攻めの手を再開しました。

 

「それならそのヒトと会う前につまみ食いしちゃおうかな」

 

 何時しかその攻め手は激しくなり、それをいなす使用人さんの動きもそれに合わせるようにヒートアップしました。

 気が付けば周囲に人だかりができ、勝負の行方を固唾をのんで見守るようになりました。

 どれほどの攻防が続いたでしょうか。しかし、決着は一瞬で決まりました。

 

「そこまでだよ二人とも」

 

 突然現れた組員の一人が二人の間に割って入り、その腕を掴んでいました。

 

「おっと、八雲さん熱くなりすぎたかな」

 

「全く……こんな時くらい衝動を押えたらどうだい?」

 

「やだなぁりうさん八雲さんの衝動(リビドー)は止まることを知らないのだよ」

 

 冥加りう。一番組組長であり、武術の達人。海桐花様と同時期に入隊した最古参の組員です。

 冥加組長は蝦夷組長の言葉を聞いて、深いため息を吐くと二度柏手を打ち集まった見学人に解散を命じました。

 

『さて、少し想定外なことはありましたが、只今より第■■回魔防隊入隊式を始めます。新入隊員の皆様に置かれましては指定の席に着席し、開会の時までお待ちください』

 

 場の空気が落ち着いたところで、壇上で待機していた進行役の方の案内が入りました。

 私は使用人さんに感謝を伝え、指定された席に座ります。

 これが終われば、すぐに配属先の組員が伝えられ私は晴れて魔防隊の隊員として活動を始めることになります。どのような組に入ろうとも、私は東の人間として恥じない活躍をする所存です―――!

 

 

 

『東桔梗。配属先、5番組』

 

「桔梗ちゃん宜しくねぇ~♪」

 

 早速挫けそうです。




 前書きでも書かせて頂いた通り、新章は書き直しで再度掲載という形にさせて頂きました。

 個人的な経緯を書いたところで言い訳にしかなりませんが、あまりに蛇足過ぎたこと、ペースがスローテンポになること、話の展開が出来なかったこと、そして何よりも大こけしてしまったことが重なりましてこのような対応をさせて頂くこととなりました。

 重ね重ね皆様にご迷惑をおかけすること此処に深く謝罪いたします。
 そして、願わくば当作品を愉しんで頂けたら幸いです。勿論そのための努力も重ねていく所存ですので、引き続き応援の程宜しくお願い致します。

R-18 (余裕があれば)

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