ジャンプはジャンプでも   作:通りすがりの最下級大虚

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啓明来る

 5番組に配属されてそれなりに時間が経ちました。

 蝦夷組長からのセクハラにも慣れ、対処もできるようにはなりました……いえ慣れてはいけないのですが。

 

 醜鬼を殲滅し、遭難者の護送も任せて頂けるようになった。そんなある日の事でした。

 

「遭難者が二人でたって。場所も違うし、そっちは任せたよ」

 

 蝦夷組長が一人で片方の対処を、もう片方は私と所山さんで向かうことになりました。五木副組長は寮の防衛の為に残った組員と残っています。

 現場に急行すると、そこには遭難者と思われる女性が居ました。

 

「魔防隊です! お怪我はありませんか?」

 

 女性には外見上傷は見当たりませんが、魔都は未だに解明が出来ていない部分の多い領域。どのような悪影響が身体を蝕むのか分かりません。

 

「お一人で動くことが難しいようでしたら私の手を―――」

 

 その場にしゃがみこんで動く気配のない女性に手を差し伸べようとして――直後に感じた違和感に従って咄嗟に飛び退きました。

 私が直前にいた空間を質量のある物体が勢いよく通り過ぎました。

 

『あーあ。モーちょっとで仕留められたのにナァ……』

 

 俯いて見えなかったその顔が見えた時、私も所山さんも思わず固まってしまいました。

 その顔には異様な仮面が顔の一部を覆い、目は黒く変色していました。

 彼女が合図をすると地中から次々と現れる醜鬼の姿。

 

「――ッこちらB地点、応援を」

 

『オット、組長級を呼ばれるのは御免だネ』

 

 取り出した通信機が飛んできた光線によって破壊され、飛来した方向を見るとそこには掌を翳した彼女、いえ敵の姿。

 ……定期連絡が来ないことを不審に思った組長、或いは組員が不審に思って応援に駆け付けるのは恐らく1時間。

 車も現れた醜鬼に破壊されたので、逃げる手段もない。

 

 私達は1時間近くをこの醜鬼と敵の攻撃を凌いで応援が来るのを待つしかありませんね……。

 

「生憎と組長が居なければままならない程、私達魔防隊員は弱くありません。寧ろ此処の醜鬼を殲滅して貴方を捕縛する気でいますので覚悟を」

 

 願わくば吐いた軽口の4割方は出来ればよいのですが。

 

 

 一体どれだけの時間が過ぎてのでしょうか。

 刀を握る手は震え、羽織っていた服もボロボロ。所山さんも応戦は出来ていますが、スタミナが切れるのも時間の問題。

 だというのに、私達を囲む醜鬼の数は一向に減る様子がありません。それに――

 

『アハハハ如何した如何しタ! この醜鬼ども殲滅シてオレを捕まえるんだロ!?』

 

 醜鬼の影を縫うように襲い掛かる襲撃者の一撃も私達の余裕を奪い去ります。

 時間を追うごとに、彼女の一撃の威力も重くなっていますし身体も次第に異形に変貌しています。

 

『奪っタ!!』

 

「あっ――」

 

 疲労からくる不意の脱力を狙われた襲撃者の一撃が、私に襲い掛かりました。

 幸運なことにその一撃は刀によって弾かれましたが、刀を握る手の握力が弱まっていたせいで手の中から刀が抜ける感覚を感じます。

 脳が命の危機を察知したのか、その瞬間がゆっくりと流れる様子が視界に移ります。凶暴な笑みを浮かべた襲撃者の次の一手もよく見えます。

 横を見れば、私の最期を目撃する所山さんの悲壮感と絶望の表情。

 

 これが私の終わりでしょうか。案外早く死地というのは来るものですね……。

 

「それでいいのですか?」

 

「――え」

 

 本来ならば聞こえるはずのない声が、私の耳に届きました。

 

「本当にそれでいいのですか?」

 

 深い悲しみと、諦めと、そして酷い疲労を感じる掠れた声なのに、やけに耳に残るあの声。

 

「――貴女、は」

 

 夢の中で私に語り掛ける彼女の姿が、そこに在りました。

 気が付けば周囲はあの夢の中と同じ、一面が白い砂の砂漠。

 

「貴女は、此処で終わりでも良いのですか?」

 

「――ッ」

 

 良いわけが、無いでしょう。

 

「貴女の、貴女自身の思いはここで終わることを良しとするのですか?」

 

「良いわけがないでしょう!!」

 

 問いかけに、私は今までにない大声を出してしまいました。

 

「私は東の家の者です! その東の者が敵を前に死ぬなど――」

 

「妾にとって貴女が東の家の者であることは関係が――」

 

「ないとは言わせません!! 私の力の一部である以上、関係ないとは言わせません!!」

 

 私の言葉に彼女は目を見開いて驚愕します。

 

「気付いていたのですか」

 

「どれだけの時間を過ごしていたと思っているのですか」

 

 桃の能力が現れて以降逢う事から半信半疑でしたが、今この瞬間に確信に変わりました。

 私の能力にはまだ先がある。

 

「その鍵を握っているのは、貴女なのでしょう?」

 

「そうです」

 

 こともなげに私の言葉を肯定した彼女は、いつもの如く私に近づくと今度は私の身体に腕を回し抱きしめます。

 

「本当は、このような事態は避けるべきでした。あってはならないこと、交わってはいけないこと。ですが妾の正体を見抜き、力を求めるなら教えましょう」

 

「そのあってはならないこと、とは――」

 

「知らなくても良い、いえ()()()()()()()()()()()()

 

 毎回必ず口にするその言葉の真意を問いただす前に、彼女は私の唇に指を当てると一切の声が口から出ることはありませんでした。

 

「さあ、貴女はもう戻るべきだ。此処は刹那を悠久に変えるが永遠には出来ない。砂粒程であっても時は確かに流れゆくのだ」

 

 その言葉を聞いた瞬間、私の視界は何倍にも引き延ばされました。

 

「さあ、現世(うつしよ)に戻り妾の名を叫びなさい。妾の名は―――」

 

 引き延ばされ、周囲の景色が白く塗りつぶされる最中、最後に聞こえた言葉に私は従い――― 

 

「黎明来りて悉くを照らせ―――――

 

 

 

阿加保之(アカボシ)!!」

 

 

 

 

 

 その日、魔都の一角で眩いばかりの光が空から降り注いだ。

 魔都を覆う暗雲を切り裂き降り注ぐその光は柔らかく、見る者の心が洗われるような神聖さを持っていた。

 

「これは……」

 

 その光の中心、東桔梗は周囲、そして自身の身体の変化を見て驚愕する。

 黒い装束は白い法衣に包まれ、その手には大太刀と変貌し、炎を纏う自身の刀。

 そして、周囲で蠢く醜鬼が悲鳴を上げながら溶けている。

 

『ドウ、なって、いる……ッ!!』

 

 その中には襲撃者の姿も有り、片膝を突き身体から煙を上げている。

 

「――所山さん!!」

 

 その様子を見た桔梗が所山サキを見ると、そこには醜鬼と同じように苦悶の声を上げる彼女の姿――ではなく、寧ろ活力を得たように醜鬼への攻撃を激しくしている姿が。

 敵は苦しみ、味方は回復している。

 そこで桔梗は自身の能力が味方を強化し、敵に責め苦を与える能力だと気が付く。

 

「所山さんにだけ張り切らせるわけにもいきませんね……!」

 

 自身も醜鬼の殲滅に加わるが、直後に驚愕することになる。

 振るった大太刀が軽いというのに、醜鬼は無くそこに何もないかのように抵抗なく両断され、切られた面からは遅れて血が噴き出した。

 

 苦しみながらも抵抗をする醜鬼の攻撃から一歩、跳躍する。

 自身の認識よりも長い距離が彼我の間に生まれた光景に桔梗は再度驚愕した。

 これは、周囲だけでなく自身も強化されている。

 

 それに気が付いた彼女は今度こそ気を持ち直して敵に向きなおる。

 

『ふざけるな……フザケルナヨッ!!!』

 

 襲撃者は先程までの優越の感情は何処へやら、眼前の光景に悪態をついていた。

 

『余裕ダッタジャナイカ!! それがコンナ土壇場で戦況ガヒックリ返る!? ソンナことがアリエテ堪るカァ!!!』

 

 襲撃者はこの光景を造り出した張本人――東桔梗へ最後の足掻きを見せる。

 その姿を完全に異形に変え、凄まじい速度で彼女に接近する。

 

『テメェダケは殺シテ――』

 

 しかし、今の桔梗の命を奪う脅威にはなり得なかった。

 襲撃者の速度を上回る速さで振るわれた大太刀の峰が彼女の胴を強かに打ち付け、毬のように地面を跳ねながら転がっていく。

 

「貴女には聞くべきことが山ほどあります」

 

 桔梗は激痛で動けない襲撃者に近づくとその身柄を確保するための拘束具を取り出し、彼女の身体に掛ける。が

 

『悪イが……テメェ等に話すコトなんて無イ! 魔防隊ニ災いアレ!! 八雷し―――」

 

 襲撃者が吐き捨てるように叫ぶ最中、文様が浮かび上がる。

 不穏な気配を感じた桔梗が距離を取った瞬間、文様が禍々しい光を放ち彼女の身体を無残に破壊しつくした。

 再び桔梗が彼女に近づき脈を取るが、既に命は失われていた。

 

 残ったのは彼女が最後に遺した『八雷』という単語。

 それが桔梗の脳内で疑問を生んでいた。

 この襲撃者は誰なのか。彼女の様子はまるで誰かの元で動いているようだった。なら一体誰が裏に居るのか。

 

 これから始まる一連の大きな事件に巻き込まれる事を彼女たちはまだ知らない。




色々候補はありましたが、結果これになりました。

以下ボツ案です。

案1
 始解:解号「舞え」倶利伽羅神楽。巫女服を纏い、鬼(実際は不動明王)の面を模した面頬を被り、大太刀を担ぐ。異常な怪力と治癒力を持つ。刀剣には炎が奔り、切りつけた相手は瞬時に灰になって持ち主の周囲を舞う。文字通り神楽と共に剣を振り続けると火力が上がる。但し、自身の心に邪な心がある場合は自身も燃やされる。
 卍解(ミスリード):天焦・倶利伽羅神楽。最大限まで火力の上がった倶利伽羅神楽。その周囲は熱で自然発火し、本人の舞と共に躍り、周囲を舐めるように焼き尽くす。卍解ではなく、始解の全力状態。
        ↓
本当の卍解:加具土命神楽。焔そのものとなり、敵のみを一遍残らず焼き尽くす。また焔には浄化・再生効果もある為、味方の治癒に転化可能。

案その2
 始解:「栄えよ」ナルカミ神楽。効果:周囲へ回復効果のあるフィールドを出す。霊力が続く限り効果は発揮。
 卍解:『錦上添花 上神楽』(きんじょうてんかなるかみかぐら)。
 効果:死んだ敵を糧に、味方の回復や強化を。死んだ味方には再度の復活を。

 昨日の時点では案1にしようと思っていたのですが、名前が安直すぎる・仏教と神道がごっちゃになっているので却下しました。採用した始解の名前も安直ですが考えた結果なので許してください! 何でもしますから!!

R-18 (余裕があれば)

  • 欲しい
  • 別にいいかなって……
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