ジャンプはジャンプでも   作:通りすがりの最下級大虚

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 今回ご都合主義的展開に注意。


つまり魔法使いではなくなったってコト

「やぁ~ッと帰れるぅ~」

 

 一色和美は帰路につく 

 月山大井沢事件の騒動が収まり、裏で暗躍していた議員を失脚させ、その後始末を済ませた彼女に与えられた長期休暇。

 精神的にも肉体的にも壮健な彼女でも流石に答えたのか、帰り道を共にする社会人の群れの中で伸びをしながら歩いていく。

 駅を乗り継ぎ訳30分の道のり。

 大宮駅で降り、駅前の飲み屋街を通り抜けて住宅街へと足を進める。

 マンションへ入るとエントランスの電子装置にカードをかざす。軽い電子音と共にロックが解除される。

 エントランスから階段を上り、3階へ。

 先程のカードをかざすすと室内に入ると帰還の言葉を響かせる。

 

「たぁっだいまぁ~♪ 一色ちゃんが帰ってきましたよぉ~♪」

 

 彼女はその仕事の特性上、異性と付き合うことは無い。

 故に、この部屋に帰ったところでその言葉に帰ってくる声は無い。

 そう、無い筈なのだ。つい3週間前までは。

 

「おかえり」

 

 その言葉と共に玄関から続く廊下の奥から、人影が姿を現した。

 日本人では珍しい2メートルを超える背丈。細身ながらもシャツに隠れている肉体は鍛え上げられ、前回の短い休暇では大いに堪能したものだ。

 

「仕事がひと段落したから長期休暇貰っちゃった」

 

「ほほぅ?」

 

「という訳で、お風呂湧いてる?」

 

「バッチリ。冷えたビールもちゃーんと揃えていますとも」

 

「んじゃ、お風呂入ってくるねぇ~ん♪ あ、一緒に入る?」

 

「ご飯の支度あるから、また今度。鞄持っていくよ」

 

 打てば響くような軽口の応酬を繰り広げながら、二人は部屋の中へ入っていく。

 一色和美。年齢25歳。政府の情報部を纏める長。最近の趣味は行き場のない男性を飼い、休暇の度に“ストレス発散”をすることである。

 

 

 

 

 

 いやぁ~快適快適。

 眼前に広がる街並み、行き交う車に色んな格好の人々! 室内を通り抜ける空調の風!

 現代文明機器、万歳!! この便利さに比べたら大自然なんてカスや!!

 

 本名不詳! 住所不定! 職歴ナシ!!

 そんな俺の現在は推定年下のキャリアーウーマンの自宅警備員、つまりヒモである!!

 そもそも、何故俺が何食わぬ顔で主夫、もといヒモをやっているのかと聞かれれば……イロイロあったとしか言いようが無い。

 

 いや、本当に色々ありすぎたんだよね。

 2か月前に集落で暴れまわっていたら魔防隊に囲まれかけて、そっから逃げ出して。

 山越谷超え逃げた先がオンボロ廃神社。

 

 そこで変な奴等に絡まれて、神社に有った刀使って返り討ちにしてそのまま逃走。

 その刀を持っていたら、ある日何故か人間になっていた。

 

 理解できない? 大丈夫だ、俺も理解できてない。

 と、言うかそもそも醜鬼だとか魔都だとか『桃』が女性にしか効果が無い理由だとか、色々わかってないことが山ほどあんだからそこのもう一つ謎が追加されただけだから知るつもりもない。

 

 で、だ。

 人間になった後は山を下りて適当な街に潜入。

 路地裏でヤンチャしてた若者から服と金を巻き上げて各地を転々としながら情報収集。

 金が無くなったらまた適当な路地裏でカツアゲ……お金稼ぎしながら移動してたんだけどさ、どうせなら情報の集まりやすい所で集めた方がいいよねってことで、首都に近い場所に移動。

 最終的に選んだのが埼玉で東京に近くて且つ東京よりも動きやすい所でうろうろしていたらヒモになりましたとさ。

 

 ウン、我ながら振り返っても訳分からん経歴だな!!

 まあ、お蔭でネカフェ暮らしから脱却できたから良しとしよう。

 

「ごめーん、ちょっと来て~」

 

 んお? タオルでも忘れたかね? しょうがにゃいなぁ。

 

「どったの?」

 

「シャンプー切れちゃったから、補充用の袋チョーダイ♡」

 

 あれ? シャンプー切らしてたっけ? 

 

「ごめん。これでいいかな……」

 

「そりゃッ!」

 

 ドアを開けた瞬間に水鉄砲が遅い、シャツを濡らした。

 ……ほーん?

 

「謀ったね?」

 

「一緒に入ろ♡」

 

 ま、ごはんの支度も済んだからいいか。

 

「しょーがにゃいにゃあ」

 

 着ている服を脱いで浴室に入る。タオルは巻かない。お互い黒子の位置まで知ってる仲なんでね、要らんのですよ。

 

「おっほー相変わらずええ身体しとるじゃないのー」

 

 家主のおっさんみたいなセリフを聞き流しながら、身体を軽く洗って一緒に入る。

 

「ご飯冷めちゃうから、此処ではやらないでね」

 

 掃除も大変だし。

 

 

 

 

 

「ごちそー様ぁ」

 

 お粗末様でした。

 

「じゃ、皿洗い手伝うよん」

 

「いや、これっぽっちの量二人でやらんでも」

 

「せっかくの休日だし、家事やらないと鈍っちゃうでしょ?」

 

 強引に狭いシンクの前に並んで食器を片付ける家主さん。

 ほっほーう。俺が居なくなった時の事を想定してやがりますな。

 ま、でしょうね。こんな得体の知れん人間を長々と置いておくわけがない。彼女の方から話を切り出されるまでに次の行き先を決めておくか。

 

「食器片付いたし、映画見ない?」

 

「おk。お酒は?」

 

「欲しいかもー」

 

「うい」

 

 どれにしようかな……ビールはペース早くなっちゃうし、ワイン……は、高いかなぁ? でもそうなると他に残ってるの残ってるのウィスキーだけなんだよなぁ。

 

「ワインとウィスキーどっち欲しい?」

 

「じゃあ、ワインー。あ、赤ワインね」

 

 あいよー。

 ワインボトルとグラスを持って彼女の所に置く。が、家主は何か腑に落ちていない。

 つまみか? つまみが欲しいんか?

 

「あれ? 君の分は?」

 

「飲んでいいの?」

 

「うん。というかさっきの夕食でも飲んでたじゃん」

 

「や、これ高いし……」

 

「値段知ってるんだ」

 

 知ってるも何も、此処にあるもの殆どいい物使ってるじゃん。家主が使う分は兎も角、俺が勝手に使う訳にはいかんよ。

 

「別に遠慮しなくていいから、ほらグラス持ってくる」

 

「あいー」

 

 て感じで、家主さんがレンタルした映画の鑑賞会が始まったんだけどさ。

 

「謀ったね?」

 

「んー? 何の事ー? 一色ちゃんは何も知りませんなぁ」

 

 濡れ場が結構頻繁にあるんですが……。

 え、待って、長期休暇の前日からフルスロットルで来ます?

 

「あーお酒飲んだら一色ちゃん暑くなってきましたー」

 

 わざとらしい棒読み口調すな。

 服を脱ぎ捨てるな遠くに! 太ももに手を置くなスリスリすな!

 

「君の肌は冷やっこいですなぁ」

 

 せめてリビングのソファじゃなくて寝室に行きません? ソレか ソファにシーツかなんか敷かせて、あ、駄目? もうムード出来上がっちゃってる? ハイ、判りました降参です。

 

 

 クッションが外せるタイプでよかった。いやよくないけど。




主人公:逃走後に廃神社で休んでいたら変な二人組に絡まれて色々あってその場にあった刀を使って撃退。そのまま逃走していたら人間になっちゃった。穴? 開いています。ただ色々と事情があって塞がっているだけです。

変な二人組:いったい何処の神様なんだ……。

刀:廃神社にあった刀。主人公の膂力でぶん回されても折れなかった。今はヒモ先のアパートに隠している。家主は知らない。

一色和美:住所不定のオトコを飼っている。自分がいない間家の管理をしてくれのでありがたく思っている。長期休暇中“ストレス発散”で蛞蝓みたいなセイ活をしていた。


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