ジャンプはジャンプでも 作:通りすがりの最下級大虚
一般二次ルーキー:3位
ウレシイ…ウレシイ……。
ふぅ…………。
あーヤニが旨いわ。うん。
スーッ、フゥー……。
どうすっかね。
ネカフェで色々考えてもみたけども、やっぱり考えが思い浮かばんわ。
やっぱりね、いつ何処に『門』が現れるのか分からんってのがネック。
山奥、上空、或いはどっかの無人島etc……。
いくら縦長の狭い日本列島と言えども人一人で回るには随分と広いわけで。
そんな中ピンポイントで見つけるのは宝くじの2等3等くらいを当てるのと同じ確率なんだわ。普通の人間は当たっても嬉しくないだろうけど。
となると魔防隊が管理している『門』を強引に突破&追跡を振り切るっていう力業が割とアリ寄りのアリになるんだよなぁ。
ってなると、東京は駄目だ。まず2番組の横浜クナドと9番組の多摩川クナドが近く、厳重な警備が敷かれている。
さらに言えば多摩川クナドの近くには『東家』の本拠地がある。そしてそこの当主は現魔防隊総組長を務めている東海桐花だ。魔防隊との繋がりが強いだけでなく、様々な方面に手を伸ばしている。そんな連中が屯する場所でドンパチなんてやりたくはないし、仮に『門』に入れても追跡も激しいだろう。
そうなると判明している中で残る候補地は1番組と5番組、7番組の山口・山形・高知クナドが残る。
ただ、7番組は確か醜鬼の襲撃が激しい裏鬼門の位置を担当する為、魔防隊きっての武闘派と名高い。うん、除外! 因みに2番組は鬼門の方角を担当している為対となっており、また何かと比べられることが多いみたいだ。
で、最終的には1番組と5番組が残るわけだが……路銀も贅沢に使えない身の上。近い5番組が一番現実的か。
東京から鉄道で山形へ向かい、5番組のクナドに強引に突破。そのまま追跡を突破して元の場所を探し出して帰る。
うん、そうだな。そうしよう!
これより、オペレーション:『突撃! 隣の魔都!!』作戦を実行――
「そこのお前!」
何だよ折角作戦名も考えて行動に移そうと思ったのに! 萎えちゃったじゃないか!!
「暇か?」
「逆ナンを仕掛けるにはまだ年齢が若い。でなおしてまいれ」
「もしもし警察でしょうか? はい、竹刀を持った不審者が公園で長時間居座っていて――」
「はいはいはいはいヒマヒマあーメッチャヒマ! あー誰かこのヒマ人と一緒に時間を潰してくれる人いないかなー!!」
畜生! 今警察に目を付けられるわけにはいかない俺の立場を人質に取るなんてなんてヒレツ!!
「うむ! ではついてまいれ!」
逆ナンとは言っているが見たところ中学生だし、持ち金も少ないだろう。てなると結局支払いは俺持ちってことになるかなぁ……。懐が寒くなりそ。
路銀が足りなくなったら最悪元に戻って山の中を走ろう。
「ウム! 満足!!」
最近の女子中学生のお小遣いって多いんだな。年下に飯とか服とか奢られたの始めてだわ。
情けないという感情よりも先に感心したわ。大人の男性が満足する量の飯とたっかい服を何着も買える財力に。
「えー…っと、コベラ、さん。こんな量の服貰っていいんすか?」
年下相手に敬語とか恥ずかしくないのかよとか言われるかもしれんが、プライドなぞ犬に食わせとけばいいんですよ。こいつに社会的生殺与奪の権を握られている以上、下手に出るしかないのだ。
「よいよい! お前の様な顔の良い男は好きだからの、これくらいどうってことないわ!!」
カッカッカと笑いながら俺の3歩前を歩くコベラさん。笑い方と言い、金使いと言い豪快だなぁ。
「そういえばお前の名前を聞いてなかったな! 今更だが名前を聞かせてくれんか?」
おっつ……。
「名前……ですか」
「なんだ? 名乗れぬのか?」
名前が無いからね。どうしよ。
このまま黙っていたら怪しまれるだろうし、適当な名前だと偽名だとばれて怪しまれるし、名前を考えるために時間を掛けると怪しまれる。詰みかな?
「まあ、よい」
あれ? 許され―――
「名乗る名も無い以上、名乗るも名乗らぬも無い。そうは思わんか? 名無しの権兵衛よ」
―――てないねウン。
というかさ、薄ら気が付いていたんだよね。
この人魔防隊総組長の海桐花さんに似てるよねというかコベラって名前を一文字変えただけだよねそうだよねそっくりさんなだけだと思っていたけどそんなわけないよね畜生が。
「何じゃ、カマを掛けたつもりだったが、腹に一物抱えるのは苦手か。若いのう」
何がカマを掛けただよ確信犯め。
どうする? 変身して逃げ―――
「逃げるのは得策とは言えんのう」
成程? デートの時点でよく見かける人がいるなぁって思ってたら東家の人間で囲んでたのね。
あーしてやられたわ。声かけられた時点でゲームセットだったのね。
「……で、何がお望みで?」
「『虚』」
はい?
「お主が居候しておったマンションを襲撃した醜鬼の事だ」
え、俺そんな名前で呼ばれてたの?
「今お主を警察が血眼で探しておる。その前に東家で確保し、『虚』の情報を手に入れようという訳だ」
あ、でも俺=『虚』の式は成り立っていないっぽい? あのアリバイ作りが役に立ったようで何より。
「さて、積もる話もある故な。此方の家へ招待しようではないか」
……クナドに近づけるし、此処は乗って隙を見て変身して脱出。俺=『虚』がバレても問題ない。どうせ現世に来ることは殆ど――
「お主の『飼い主』の話もある故、逃げようなどと考えるでないぞ?」
――――ッ……。
「呵々、面が良いとその表情も様になるな」
こんの婆、あとで覚えとけ。
――準備が終わるまで暫し待て。
って言われて、現在だだっ広いお部屋に叩き込まれています。
竹刀袋でカモフラージュした刀も取り上げられているので多分バレるまで時間は掛からないでしょう。
あーあ。殺人罪と銃刀法違反でどれだけの刑罰が科されるのやら。
「失礼します」
んお?
「準備が済むまでの間、暇つぶしの相手をさせて頂きます東風舞希です。短い間ですが、よろしくお願いします」
多分何かやらかさない為のお目付け役だろうなぁ。
「こちらこそよろしくお願いします」
……………
「…………」
………………
「…………」
気まずいなぁ!
この状況で何を話せと!?
「お客様」
「――? あ、はい」
一瞬誰の事かわからんかったわ。
そうよね、名前無いからそう呼ぶしかないよね。
「――どういった経緯で、一色和美元情報局部門長と生活を共にしたのか、お聞きしても?」
既に尋問タイム? 少しでも前情報が欲しいのか?
……いや、こういう読み合い苦手だし、素直に話しても問題ない情報。か? 勿論致命的な所は話さないけど。
「そうですね――」
東風舞希は目の前の男の話を聞きながらも、内心でこの男を哀れに思っていた。
『桃』の影響で、男女の力関係は逆転して数十年。その間立場を追われた男は次第に女に媚を売るようになっていった。
仕方がないと言えば仕方がないのかもしれない。力を持たぬ者が力ある者の庇護につくための生存戦力と言えばそこまでだ。
故に、風舞希もまた男を力を持たぬ庇護するべきものとして接して来た。
八千穂と日万凛の父親であった男にもそう接してきた。彼もその立場を甘んじて受け入れていた。しかし風舞希の実力か、或いは東の名に臆したか。彼は自身の名前を東の家系から消し、多大な財産を受け取って立ち去った。
故に、目の前の男も同じだと思った。
力に媚びる癖に力に臆し、簡単に裏切る哀れな生き物。
彼の『飼い主』との生活を聞き流しながら、そう思っていた。
そう――――――
多摩川クナドを守護していた9番組の結界が破られ、魔都から大量の醜鬼が現世へ流れ込むと同時に、都心に現れた『門』から強力な醜鬼が現れるまでは。
のちに首都同時醜鬼襲撃事件と呼ばれる、至上最も甚大な被害を被った魔都災害の一つが今幕を開けた。
次回で第1章終了予定。二章は時間飛んで原作開始直前くらいになるかも。
主人公の帰刃、解号、能力、司る死の形
帰刃:暴帝山羊(カブリオン・ラ・フェルサ)
解号:「蹴散らせ」
司る死の形:理不尽
能力:圧倒的霊圧(霊気)による身体能力と虚としての基本的能力の爆上げ(再生能力・膂力・虚閃・鋼皮等)。その霊圧を全て内部で循環させている為、探知に引っかかることなく、また霊力全てを文字通り身体能力強化に使用している。虚閃を使うときに僅かに感知可能だが、当作品で使用できるのは何時になるやら。
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いや、まじでこんなに評価して、お気に入り登録してもらえるなんて思ってなかったです。ありがとうございます。