ガーディアン解任   作:slo-pe

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四葉継承編3

 

 

 十二月二十五日、火曜日。二学期最後のこの日は、午前中で授業は終わる。

 クラブ活動や生徒会の仕事を終えた達也たちがアイネブリーゼに集まったのは、外がすっかり暗くなった午後五時半だった。

 

「それでは一日遅れになりましたが、気にせずご唱和ください!」

 

 エリカの音頭で、

 

「メリー・クリスマス!」

 

 一斉に声が上がる。

 

「メリー・クリスマス!」

 

 この時間、アイネブリーゼは達也たちによる貸し切りで、一日遅れのクリスマスパーティーが開催されていた。

 

「ご唱和ありがとう、欲を言えば日がある内にやりたかったけどねぇ」

「仕方ないわよ。エリカだってクラブがあったんでしょう?」

 

 深雪の一言に、エリカが苦笑いを浮かべる。

 

「うちの部は途中で抜けてもあんま厳しいことは言われないんだけどね。深雪はそうもいかないか、生徒会長だもんね」

「私だけじゃないわよ。吉田君は風紀委員長だし、雫とほのかだって風紀委員の当番だったんでしょう?」

 

 深雪に話を振られて、幹比古は照れ臭そうに笑い、雫とほのかは短く「ウン」「そうね」と頷いた。

 

「そうよねぇ。レオはともかく」

「ともかくって何だよ!?」

 

 レオの抗議をエリカはいつも通り聞き流す、そこに達也がフォローするように口を開いた。

 

「レオも部活があっただろうし、この中では俺が一番暇ということになるな」

「いやいや、今日もまた地下に籠ってたんだろ。むしろ一番忙しいんじゃねえか?」

 

 入学以来、達也の放課後は図書館地下での調べ物と決まっており、友人たちもその認識を共有している。

 時折、幹比古や美月と共に精霊魔法の実践・研究をしているが、今日は二人ともクラブや委員会の集まりがあったため、達也はひとり図書館に籠っていたのだ。

 

「それはそうと、一日遅れとはいえ、こうして皆で集まることができたのは僥倖だったな」

「うん。昨日は予定が入っている人が多かったし、年末も誰かしら予定がある」

 

 雫や幹比古、エリカの三人は、去年こそ家の用事に駆り出されることは無かったが、今年は何度かパーティーに出席せざるを得ないそうだ。ほのかも「娘同然」ということで、雫と共に引っ張り出されている。

 そんなわけで全員が空いている日が今日しかなく、昨日できなかったクリスマスパーティーを一日遅れで開催することにしたのだ。

 参加メンバーは達也、エリカ、深雪、水波、レオ、美月、幹比古、ほのか、雫の二年生のみ。普段達也や深雪、水波に引っ付いているケント、泉美、船尾はそれぞれクラスメイトに誘われて別のパーティーに参加している。

 そういうわけで、達也たちは同級生のみの気が置けないお茶会を楽しんでいた。

 

 本格的な夕食は帰ってからの予定だ。ケーキも一人一切れずつ、量より味重視でマスターに用意してもらっている。飲み食いに口を使わない分だけ会話が弾んだ。──と言えばレオあたりから異議申し立てがあったかもしれないが、午後七時までの一時間半、ほとんどお喋りが途切れなかったのは紛れもない事実である。

 

「今年も、もう終わりですね……」

 

 もうすぐお開き、という時間になって美月がしみじみと呟いた。

 

「今年は平和だったわね」

 

 感傷的な雰囲気を嫌ったのか、エリカが陽気な声でそう答える。

 

「そうかなぁ……結構大変だったと思うけど」

 

 幹比古のセリフは、反射的に本心がこぼれ落ちたものだった。

 

「吉田くんたちは、直近で京都の任務がありましたから」

「達也さんがズル休みして京都観光してきたやつだね」

 

 ほのかが幹比古を労るように呟き、対して雫は鋭いツッコミを入れた。

 

「ちゃんと仕事は終わらせたぞ」

「知ってる。でも羨ましかった」

「そうですね。帰ってきたエリカちゃんやレオくんも凄く楽しそうでしたし」

「…春休みにでも、予定を合わせて旅行するか?」

 

 雫だけでなく美月からも羨ましいと告げられ、さらにはほのかからも同種の視線を向けられ、達也はそう提案した。

 

「うん、空けとく」

 

 相変わらず分かり難い表情の変化だったが、雫は満足そうに頷いた。

 その後は春休みの旅行へ向けて、任務に参加しなかった三人が主となり皆が思い思いの行き先を提案するのだった。

 

 

 

 午後七時、予定時刻になりお行儀良く──グズグズと居座らないという意味で──達也たちは店をあとにし、駅への道を進む。

 

 駅に着いて、ほのかが雫と同じキャビネットに乗る。雫の家に泊まるのだろう、魔法科高校では珍しくもない話だが、ほのかも両親と縁が薄いようだ。

 

「それじゃあほのか、雫、よいお年を。また、来年も仲良くしてくれると嬉しい」

「二人ともよいお年を。来年も、よろしくね」

 

 達也と深雪が妙に改まって別れを告げ、水波も二人に続いた。ほのかと雫は少し照れ臭そうに笑みを浮かべ、年越しの挨拶を返した。

 

 続いてレオ、美月、幹比古は一人ずつ別々の車輌に乗り込んだ。約一名、少しくらいはハプニングの起こる可能性を期待しないでもない様子だったが、それをからかったりはせず。それぞれに同じように年越しの挨拶を送る。

 

 最後に達也、エリカ、深雪、水波の四人が一つのキャビネットに乗る。行き先は達也家、パーティー第二弾として穂波がご馳走を作って待っており、今日はエリカだけでなく深雪たちも泊まっていく予定だ。

 達也とエリカの交際は長く、親密である。二人がこの後も一緒に過ごすことは友人たちも薄々察してそうではあるが、彼らの前で仲良く一緒の車輌に乗る度胸は無かった。二人は、特にエリカはまだそこまで開き直っていない。

 深雪と水波は余計に、達也たちと同じ車輌へ乗る姿を見せるわけにもいかない。四人がここに残ったのはそんな経緯の結果だった。

 

 そんな車内の空気は、決して明るいものではなかった。

 

「やっぱり不安?」

「そうだな」「そうね」

 

 キャビネットが動き出してからしばらくして、エリカが問い掛ける。達也と深雪からは即座に肯定が返ってきた。

 

 年が明ければ、達也と深雪が四葉家の一員であり、深雪が次期当主だと公表される。

 二人とも四葉家が恐れられていることは知っているが、それがどの程度なのかは理解できていない。友人たちとの時間を疑うわけではないが、今までの関係が崩壊する不安を消すことはできなかった。達也にはエリカに直接あの目で見られたという前例があるだけ尚更である。

 

「……あたしが言えることじゃないけどさ、多分大丈夫よ。少しの間はぎこちなくなるかもだけど、皆受け入れてくれるわ」

「…だといいな」

 

 沈黙により空気が落ち込むのを嫌い達也がそう返すが、キャビネット内の空気が明るくなることはなかった。

 

 

◇◇◇

 

 

 大晦日、達也は深雪たちと共に四葉本家へ向かった。

 到着したのは午後三時、出迎えた使用人に達也と深雪は母屋内の客間へ通された。二間続きの和室だ。水波穂波とは別れることとなったが、ここでの彼女たちの扱いは客ではなく使用人だ、おそらく明日の慶春会の準備に駆り出されているのだろう。 

 

「失礼します」

 

 二人で寛いでいることしばらく、襖が静かに開いた。現れたのは水波。長袖の黒ワンピースに白いエプロンを着けた、完全に使用人としての姿だ。

 

「深雪様、達也様」

 

 水波は畳の上で額が付くまで深々とお辞儀をし、顔を上げてそう言った。達也の名前に「様」を付けて。

 

「水波、ここではその言い方を止めた方が良いんじゃないか?」

 

 達也はいつものように「達也さん」「深雪姉さま」と呼べと言っているのではない。人目のある場所で「達也様」と呼ぶのを聞かれでもしたら、水波が先輩の家政婦に妙な目で見られるのではないかと懸念したのだ。

 

「いえ、白川夫人からご伝言を預かっております」

 

 白川夫人はこの四葉本家の家政婦を統括しており、言うなれば「メイド長」に当たる。

 

「深雪様と達也様は七時になりましたら奥の食堂へお越しください。奥様がお待ちです」

 

 水波が抑揚に欠ける口調でそう告げ、「とのことです」と結んだ。つまりは「達也様」「深雪様」という呼び名と順序は、白川夫人が口にしたものをそのまま真似ているのだろう。

 達也と深雪が顔を見合わせた。彼らの記憶にある限り、白川夫人が達也を呼ぶ時に「様」をつけたことはない。深雪が同席している場では「達也殿」、達也一人の時は「司波さん」だ。

 

 達也も深雪も、四葉本家における達也の待遇の変化には気づいていた。ここへ案内された際、深雪だけでなく達也も丁重に扱われたのだ。魔法師になれなかった欠陥品と蔑まれていたとは思えないほどの変化に、達也は驚いた。

 何か、この四葉本家で変化が起こっている。貢の言っていた新しい分家設立が決まったのだろうか、と達也は頭の片隅で考えた。

 

「奥の食堂? 叔母様がお待ちになっている? 本当にそう仰ったの?」

「はい」

 

 深雪も達也と同じ思考をしながらも、口にしたポイントは別だった。

 奥の食堂というのは真夜が私的な会食を開く場所だ。彼女のプライベートなダイニングルームではなく、特に重要な客を招く場所。食事をしながら極めて秘密性の高い会議を開く場所。

 このタイミングで「奥の食堂」に招く理由としては、明日の慶春会に関することしか考えられない。

 

「水波、文弥と亜夜子、それに夕歌さんや勝成さんも招かれているんじゃないか?」

「文弥様と亜夜子様は昨日よりご滞在になっているそうです。夕歌様と勝成様については存じません」

「そうか」

 

 黒羽文弥、黒羽亜夜子、津久葉夕歌、新発田勝成。達也の挙げた名は、亜夜子を除けば深雪と共に次期当主候補に残っていた三人だ。

 

「兄さん。この会食は、もしかして明日の……」

「ああ。おそらく、次期当主候補を集めてあらかじめ明日の話をしておくのだろう。叔母上の話では去年の時点で四人には通達していたらしいが、前日に言い含めたという形式が必要なのだろう……ところで水波」

 

 ふと達也は、確認しておかなければならないことがあるのに気づいた。

 

「その会食には、俺も呼ばれているのか?」

 

 白川夫人から預かった伝言には、達也と深雪の二人とも奥の食堂へ来るようにという指示が含まれていた。達也はこの屋敷で、真夜や深夜のプライベートなダイニングルームに行くことはあっても、こうして公に呼ばれることはなかった。

 

「はい。達也様も深雪様とご一緒に御出で願います」

「わかった」

 

 水波が再び平伏する。

 

「御用がお有りの時は、そちらの呼び鈴をお使いください。すぐに参ります」

 

 座卓に置かれたハンドベルを目で指し示しながらそう言って、水波はこれで用が終わったとばかり立ち上がり、襖の向こうへ姿を消した。

 

 

 

 

 午後六時五十分になり、達也と深雪は奥の食堂へ案内された。二人を案内したのは水波と穂波、彼女たちは会食の最中も、給仕として達也たちの側に付いているようだった。

 兄妹が食堂に来た時、既に文弥、亜夜子、夕歌の三人が着席しており、午後七時一分前になって勝成が食堂に現れた。達也が考えた通り、次期当主候補が全員揃ったわけだ。

 

 時刻は午後七時になり、食堂奥の、四葉家当主専用の扉が開く。その扉から、黒に近い深紅のロングドレスを纏った真夜が、葉山を従えて現れた。

 全員が立ち上がる。

 

「皆さん、急な招待だったにも拘わらずようこそ。どうぞ座ってくださいな」

 

 そう言って、真夜が葉山の引いた椅子へ優雅に腰を下ろす。真夜がテーブルの前に落ち着いたのを確認して、達也たち六人は席に着いた。

 

「まずはお食事にしましょう。勝成さん、夕歌さん、ご希望があればお酒を持ってこさせますけど」

 

 夕歌と勝成の視線が一瞬交差する。先に答えたのは夕歌だった。

 

「せっかくのお申し出ですが、申し訳ございません。私はあまり酒類を嗜みませんので」

「そういえば夕歌さんはあまりお酒に強くなかったわね」

「はい、恥ずかしながら」

 

 真夜が勝成に目を転じると、勝成が折り目正しく一礼を返す。

 

「勝成さんは如何ですか? 貴方はかなり強いと聞いているけど」

「私も強いと見えるのはその場限りでございまして……二日酔いが酷いタイプなのです。ですから申し訳ございません、ご当主様。明日に重要な会を控えておりますし、今宵は遠慮させていただきたく存じます」

 

 勝成が今度は深めに一礼した。

 

「ああ、そんなに固くならなくても構いませんよ。私には飲酒を強要するような悪い趣味はありませんので」

 

 にっこりと微笑んで、真夜が軽く手を上げ、背後の葉山に合図する。葉山が目配せすると、給仕役が一斉に下がり、すぐにオードブルを持って来た。

 

「明日の会が和風のおせちですので、この席は洋風のコース料理にしてみました。楽しんでくださいね」

 

 真夜が前菜のテリーヌにナイフを入れ、鮮やかな朱唇に運ぶ。全員がナイフとフォークを手に取り、会食が始まった。

 料理は一応フレンチの体裁を取っていたが、フレンチそのものではなかった。この辺りは、真夜が格式張る必要を覚えなかったのだろう。例えば、魚料理が出て来るタイミングで鴨料理が出て来たりしている。

 その後に出て来たシャーベットを食べ終わった所で、真夜が居住まいを正した。自然、達也たちも背筋を伸ばして座り直す。

 

「さて、そろそろ本題に入らせてもらうわね」

 

 真夜が六人を見回して艶然と微笑んだ。

 

「勝成さん、夕歌さん、深雪さん、文弥さん」

 

 達也と亜夜子を除く四人を、年齢の順番に呼ぶ。四葉家、次期当主候補の四人を。

 

「貴方たちは最後まで残った四葉家次期当主候補の四人。そしていよいよ、明日の慶春会で次期当主を指名します」

 

 候補の四人だけでなく、達也と亜夜子を含めた六人の視線が真夜へ集まる。いつの間にか葉山を除く使用人は食堂からいなくなっていた。

 

「ですが、分家当主の方々には二か月前に、皆さんには一年前に話をしていました。今日集まってもらったのは事前に通達をしたという体裁を整えるためと、別件でお話をするためです」

 

 もったいぶった笑みを浮かべる真夜に、最も緊張しているのは勝成だった。それを見て、勘の鋭い者はなんとなく話題を察した。

 

「ご当主様。発言をお許しいただけますでしょうか」

「あら、勝成さん。何かしら?」

 

 そして、真夜のセリフを遮ったのは、やはりというか勝成だった。

 

「失礼します」

 

 一礼して、勝成は緊張した面持ちで立ち上がる。

 

「お許しにより、申し上げます。一年前、次期当主決定のお話をされた際、私からお願い申し上げた件について、お返事を頂戴いたしたく」

 

 勝成が真夜に向けて一礼し、席に戻った。

 

「お願いというのは、勝成さんと貴方のガーディアンである堤琴鳴の結婚について、口添えするというものだったわね?」

「はい」

「堤琴鳴さん、調整体『楽師シリーズ』の第二世代。『楽師シリーズ』は今一つ遺伝子が安定していないから、分家当主の正妻には向かないと思うのだけど……愛人では嫌なのでしょう?」

 

 真夜の言葉は、当人の勝成より二人の間に挟まっている文弥に大きなダメージを与えた。彼は顔を真っ赤にして俯いている。隣の亜夜子が平気な顔で聞いているところを見るに、これは年齢的なものというより、性差、あるいは個人の性格に依るのだろう。

 

「はい。以前お答えした通り、私は琴鳴と正式に結ばれたいと思っています」

「そうねぇ、愛する者同士を引き裂くような真似はしたくないし……」

 

 真夜は片手を頰に当てて、悩んでいるようなポーズを取った。中々さまになる姿だったが、ここにいる人間は誰も、彼女が本心から悩んでいるとは受け取っていなかった。

 真夜は緊張して答えを待つ勝成ではなく、達也へ視線を向けた。

 

「達也さん、研究の進捗は如何かしら?」

「有用な副産物は幾つか見つかっていますが、目的の成果という意味では全く進んでいません」

 

 達也は真夜からの問いを予期していたかのように、滑らかに答えた。

 

「ご当主様、達也くんの研究というのは……?」

「あら、ごめんなさいね。勝成さんは達也さんの研究テーマは知っていたかしら?」

「恒星炉、重力制御式熱核融合炉の実現でしょうか」

「そうですね。それともう一つ、調整体魔法師の突然死の原因究明とその阻止。一高に入学してから達也さんはずっとこれらの研究をしているそうですよ」

 

 勝成は真夜に返事することも忘れ、目を見開いて達也を見た。

 

「達也くん……それは本当か?」

「事実です。うちには水波と穂波さんがいますので」

「そうか……達也くん、この先君に困難が降り掛かってきた場合、私は私にできる全てを以て、君に力を貸すと約束しよう。その研究を、どうか実らせてくれ」

「分かりました。ありがとうございます」

 

 勝成は折り目正しく下げていた頭を上げると、真夜へ視線を戻した。

 

「そういうことで、調整体だからといって必ずしも早死にするとは限りません。それに分家の当主ならそこまで深く考えることはないですし、私から理さんに口添えしましょう」

「ありがとうございます」

 

 勝成が立ち上がり、深々と頭を下げた。顔を上げた勝成に、真夜は椅子に戻るよう手振りで指示する。そしてホウッとため息を吐いた。

 

「では婚約繋がりで、達也さんのお話に移りましょうか」

 

 真夜が緩んだ表情を引き締め直した。

 

「達也さん、貴方とエリカちゃんの婚約を公表すると共に、新しく創設する分家、司波家の当主とします」

「はい」

「幸い、ここにいる皆さんは快く支持してくださるようですし、他の分家当主たちも概ね同様です。それに恥ずかしくないよう、励みなさい」

 

 分家と言っても、現時点で人員は達也一人、婚約者のエリカを含めても二人。ぽっと出の達也が、各分家が抱えているのと同程度の精鋭を揃えるのは不可能。だが、出来ませんでは話にならない。

 真夜たちがわざわざ新しい分家を作ってまで、四葉家内での達也の地位を確立させたのだ。有用な魔法や技術など、別のアプローチで存在感を示さなくてはならない。

 

「畏まりました、叔母上。精進いたします」

 

 達也が立ち上がり、まず真夜に向けて、次にテーブルを囲む皆に向けて丁寧に腰を折った。腰を下ろすと、真夜が微笑みながら口を開く。

 

「ではお食事を再開しましょうか」

 

 真夜がそう言うと、葉山が二度手を打ち鳴らした。

 メインの──というと厳密には正しくないが──肉料理が運ばれてくる。それ以降は世間話が食卓を賑わした。食事が終わった後、真夜は達也と深雪のみこの場に残るよう命じた。

 

 

 

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