ガーディアン解任   作:slo-pe

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今回はモノリス・コード対抗戦回です。
詳細は書かないとか言いつつ、書きたくなってしまった……
まあいいかと開き直っています。

よろしければ、本編に進む前に
「師族会議編11」の前半。
を読んでいただけると、出場七チームのイメージが掴めるかなと思います。



師族会議編16

 

 

 二月八日、土曜日。

 亜夜子がカノープスとの交渉を終えたその日、第一高校では待ちに待ったイベントが開かれた。

 

 生徒会からの通達を改めて確認すると。

 

『一高内対抗戦』

 第一高校の演習林を会場とするチーム戦、競技はモノリス・コード。

 土曜日の午後と翌日の日曜日を跨いで、七チームによる総当たり戦を行う。

 各チームにはモノリスが二基ずつ設置され、どちらか一基のコードを送信すれば勝利。

 

 賞品もあり、一位と二位のチームは、有名ホテルのケーキバイキングか、駅前の焼肉食べ放題。(選択権は一位のチームが有する)

 

 九校戦や論文コンペを除き、これほどまでに大きな催しは、第一高校どころか魔法科高校史上初めての試み。

 生徒たちは午前中の授業が身に入らないほど浮ついていた。

 

 

 

 午前授業が終わり、深雪たち生徒会は演習林脇に設置した運営本部にて、競技開始へ向けた最終調整をしていた。

 

「中条先輩、ルール違反監視用カメラの動作確認、終了しました」

「お疲れ様です、スミスくん。それでは第一試合の両チームに渡しに行きましょうか。それとプロテクターの確認も一緒にしてきましょう」

「はいっ」

 

 元気のいい返事と共に、あずさと本部をあとにしたのは小柄な男子生徒。

 髪の色はプラチナ、瞳の色はシルバー、肌の色は白という眩しい色彩の男子生徒。日本人離れした顔立ちからも見間違えることはない。

 彼の名は隅守賢人(スミスケント)。泉美と船尾の要望により、新たに生徒会役員に選出された一年生だ。

 

 ケントが選ばれた理由は三つ。

 一つが、彼が所属するロボット研究部がそれほど活発に活動しているわけではなく、(繁忙期を除いて)週に二日程度の業務なら問題なく両立できること。

 二つ目が、『生徒会役員の二科生登用禁止』の規則を撤廃したことを、実例を持って示すため。実績がない二科生を選んでは反発もあるだろうと、魔法工学の成績が学年トップかつ、九校戦でも技術者育成枠を勝ち取ったケントが対象となった。

 最後、これが一番重要なことで、現在女子のみで構成された生徒会にて、気後れせず、さらには不要な問題も起こさないだろうという信頼だ。

 

「中条先輩が手伝いを申し出てくださって、本当に助かりましたね」

「そうね、流石に四人だとカツカツで、スミスくんの教育まで手が回らなかったでしょうから」

 

 あずさたちがいなくなった本部、泉美の漏らした呟きに深雪も共感した。

 当初深雪たちは、役員になったばかりのケントには毎日の事務作業以外は振るつもりはなかった。だがケントは予想以上に手際が良く、防具や機材などの知識も豊富だったため十分戦力になっていた。

 そこに手伝いを申し出たあずさも加わったため、魔法科高校史上初の試みでも余裕を持って運営することができた。

 

「深雪様、一高のモニター室、並びに二高から九高まで試合中継の準備が整いました」

「水波ちゃん、お疲れ様」

 

 深雪は水波をそう労って、時計を確認した。

 

「春花ちゃんもそろそろ帰ってくる頃かしら」

 

 船尾は会場である演習林を巡り、地形の不備や各部活動の道具が落ちていないか最終確認していた。

 

「おそらくは。彼女ならあと五分もあれば戻って来られるかと」

「それじゃあ春花ちゃんと中条先輩たちが戻ってきたら、試合前に少しだけ休憩を取りましょうか」

 

 深雪の言葉に、水波も泉美も異論はなかった。

 

 

 

 

 第一試合

 一条将輝・七草香澄率いる、通称『余り物チーム』。

 それに対するは、三七上ケリーが率いる『チーム体育会』。

 

 試合が開始される。ブザーの合図と共に、各選手たちがそれぞれ動き出す。

 両チーム共に、攻守は四人ずつだった。

 

『余り物チーム』は、片方のモノリスを将輝が単独で防衛し、もう一方は三年生三人が担当する。残りの一二年生の四人を、二人ずつの攻め要員に分ける。

『チーム体育会』も同じくモノリスの守備に二人ずつ割き、残りの四人も二人ずつ攻撃組に分ける。

 

 演習林内での遭遇戦もありつつ、先にモノリスに辿り着いたのは『チーム体育会』。

 このオフェンス二人は魔法によるサバイバルゲームクラブ、クロス・フィールド部に所属しており、演習林の走破には慣れていた。

 

 だが、進んだ先が悪かった。

 彼らの視線の先にいるのは、林間に開けた空き地に設置されたモノリスと、それを守護する一条将輝。

 

「おい、どうする」

「……回るか?」

「それで間に合うか?」

 

 一対二とはいえ、『クリムゾン・プリンス』に勝てると思うほど彼らは自惚れていない。だが、もう一つのモノリスを探していては、敵チームに守備を突破されてしまうかもしれない。

 彼らは悩んだ──その遅滞は、実戦魔法師として名を馳せた将輝の前では致命的だった。

 

 将輝の視線が、彼らが隠れている木の方へ正確に向けられた。

 しまったと、気付いた時にはもう遅く。至近距離で炸裂した爆風が、二人をまとめて吹き飛ばした。

 

 

 

 うぉぉおお! と、三高のモニター室が歓喜で満たされる。

 

「流石だね、将輝」

「あれくらい『一条』なら当然でしょう」

 

 吉祥寺真紅郎の呟きに続いたのは一色愛梨。

 将輝が敵オフェンス二人を瞬殺した映像に、二人は対照的な反応を見せた。

 

 今回の対抗戦では、国防軍から用具の貸与と、賞品の代金支払いが為されていた。その対価として、全国九つの魔法科高校へ、試合映像をリアルタイムで中継することになっているのだ。

 

「それにしても、今回一高は本当に良くやったよね。参加人数の多さをカバーし、一部選手の独壇場にならないようにルールを調整し、さらには多くの女子選手の参加を引き出した」

「あれほどの餌があれば、女子なら誰でも食いつくわ」

「一色さんもかい?」

「もちろんよ」

 

 愛梨の即答に、真紅郎は思わず笑った。普段から気の強い一面が目立つ愛梨が、甘いものに釣られるのが可笑しかったのだ。

 しばらく笑っていた真紅郎も、愛梨から鋭い視線を向けられて、何とかそれを収めた。

 

「今回の対抗戦、女子のモノリス参加の実例としてはこれ以上ないアピールになる。来年の九校戦は、一色さんや千葉さん以外にも女子が出てくるかもね」

「楽しみにしておくわ」

 

 真紅郎の告げた展望に、愛梨も好戦的に笑った。

 

 

 

 その頃──『余り物チーム』唯一の女子選手、香澄もまた、敵モノリスを視界に捉えていた。

 彼女は木陰に身を潜め、ペアとして行動していた桐生へ作戦を確認する。

 

「桐生先輩、私がモノリスを開きますので、読み取りはお願いします」

「いけるのか?」

 

 桐生が問い返す。その理由は、モノリスを守護する二人は三年生。しかも片方は敵チームのリーダーであり一高内でも有数の実力者、三七上ケリーだからだ。

 

「いけます」

 

 香澄は即答した。「勝てる」ではなく「いける」と、そう宣言した。

 

「了解。それじゃあ任せた」

 

 上級生の返事を受けて、香澄が木陰から飛び出し、モノリスを守護する敵二人の前に躍り出た。

 

 そして先手を取った香澄は、そのまま上級生二人を防戦へ追い込んだ。

 

『スピードローダー』

 複数の魔法式を発動直前の状態で待機させ、状況に応じて即座に発動する魔法技術。

 第三研の研究テーマである多種類かつ多重の魔法制御を、香澄は使いこなしていた。

 

 元々『七草(さえぐさ)』は『三草(さえぐさ)』だった。

 第三研の成果を会得したまま第七研に移籍した七草家の魔法師にとって、二重、三重程度の多重発動は困難の内に入らない。

 香澄も、最大七つの魔法式を待機状態にできる。

 

 だが香澄は、敢えて五つに絞っていた。

 

 発動限界からわざと余裕を持たせ、状況判断や展開速度に重きを置く。

 不特定多数を相手にするならともかく、相手は見えている二人だけ。手数と発動スピードという才能で競う勝負に持ち込みさえすれば、二対一とはいえ香澄の敵ではなかった。

 

 香澄がモノリスへ「鍵」となる魔法式を撃ち込むと、モノリスが二つに割れ、蓋だった物が音を立てて落ちた。

 

 その瞬間、木陰から新たな魔法の気配がした。

 

『望遠レンズ』

 

 木陰に潜んでいた桐生は、右手の親指と人差し指で輪っかを作り、それを通してモノリスを観察している。

 彼の目には、モノリスに記された五百十二文字のコードが大きく映っていた。

 

 魔法の気配を感じ取ったディフェンスが、桐生の方向へ攻撃を仕掛けようとする。

 

「待て、やめろ!」

 

 三七上の制止も届かず、彼は魔法を行使しようとして──

 

 ──香澄の『空気弾(エア・ブリット)』により吹き飛ばされた。

 

 三七上は小さく舌打ちを漏らす。

 ただでさえ防戦一方だったのだ。一対一となった今、香澄の相手をしながら隠れた魔法師を攻撃するのは困難を極める。

 

 そして、魔法発動から約十秒、『望遠レンズ』の気配が消えた。

 桐生は達也と共に、九校戦エンジニアに選ばれた優秀な魔工師。彼らが調整する起動式は、基礎単一工程でもアルファベットで三万字相当の情報量が必要とされる。

 それを日常的に扱っている桐生にとって、五百十二文字程度の暗号、十秒もあれば容易に暗記できた。

 

 魔法の痕跡が消えたことで、桐生の位置は完全に見失われた。

 

「くそっ……!」

 

 三七上は焦りを浮かべながらも、香澄からの絶え間ない攻撃を凌ぐのに精一杯。追跡どころか、反撃すら満足にできていない。

 

 そして、香澄と三七上の勝負の決着が付かないまま、試合終了のブザーが鳴った。

 

 

 

 

 第一試合を制し、幸先のいいスタートを切った『余り物チーム』は、一旦用具を返却するため本部へと足を運んでいた。

 

「あっ! 船尾、勝ったよ!」

「香澄おめでとー!」

 

 外で選手たちの到着を待っていた船尾へ、香澄が駆け寄る。イエーイ! と、二人でハイタッチを交わす。

 船尾はそのまま将輝とも手を合わせ、他のメンバーにも続けた。香澄はその間、身に付けた防具を外していく。

 

「見てたよ、香澄凄かったねぇ」

「でしょ?」

 

 戻ってきた船尾へ、香澄は用具を預けながらドヤ顔で答える。

 

「船尾のテクニック、盗んでやったんだから」

「別に私だけのテクニックじゃないけどね」

 

 船尾は苦笑しているが、香澄が魔法への意識を変えたキッカケは紛れもなく船尾だった。

 

 香澄が船尾を知ったのは、入学から一か月が過ぎたGW明け。新入生総代である琢磨が、同級生に模擬戦で負けたという噂を聞いたから。

 興味を持った香澄は船尾へ声を掛け、仲良くなった頃に模擬戦をすることとなった。

 

 ボロ負けだった。魔法力では明らかに勝っているのに、完敗だった。

 泉美も巻き込んで模擬戦を受けさせたが、こちらもボロ負け。

 香澄は見た目通りに、そして泉美も意外なことに──双子は負けず嫌いであった。模擬戦にて船尾と関わる機会が増え、それに応じてプライベートでも一緒にいるようになった。

 

 そんな親友との度重なる模擬戦から、香澄はダウングレードの考え方を身に付けた。

 自身と相手の力量や得意分野を正確に把握し、それに応じて魔法の規模や難易度を調整する。そうして初めて、無駄のない高い練度の行使が成立する。

 先ほどの三七上との戦闘でも、それは効果的に発揮できた。

 

「このまま優勝するんだから、ちゃんと見ててよね」

「うんうん。香澄なら出来るよ、頑張って!」

 

 香澄の大胆な宣言に、船尾も満面の笑みでエールを送った。

 

 

◇◇◇

 

 

 第二試合

 服部・エリカ・幹比古の九校戦モノリス・コード出場者三人を擁する『チーム山岳部』。

 それに対するは、沢木率いる『チーム体育会』。

 

 試合が開始される。ブザーの合図と共に、各選手たちがそれぞれ動き出す。

 第一試合とは異なり、片方のチームは攻守分配が歪だった。

 

『チーム体育会』は王道。モノリスの守備に二人ずつ割く。残りの四人は、沢木と残りの三人に分かれ、それぞれ敵モノリスへ向けて演習林を進む。

 一方の『チーム山岳部』は、服部と幹比古がそれぞれ一人でモノリスの守備を担当し、エリカは一人で演習林を駆け抜けている。そして残りの五人は、彼ら山岳部が『庭』と称する演習林に潜み、敵チームが攻めてくるであろうルートで待ち伏せていた。

 

 最初の戦闘は、見通しの悪い林間で起こった。

 

 沢木と分かれた『チーム体育会』のオフェンス三人は、周囲を警戒しながら演習林を進んでいた。

 しかし、突如として、大柄な人影が現れた。

 

「うぉりゃあ!」

 

 その男子生徒、西城レオンハルトによりオフェンスの一人が一撃で殴り倒された──なおこれは九校戦ではないため、物理攻撃も許可されている。

 敵を認識した二人が同時に魔法を放つ。レオはそのうち数発を身に受けながらも、倒れることなく木陰に隠れた。

 

 彼らはレオを追おうとして──その片方の選手が、突如頭上から降りてきた影に蹴り飛ばされた。

 

「くっ……」

 

 残った一人、SSボード・バイアスロン部に所属する五十嵐鷹輔(いがらしようすけ)は、嵌められたと覚った。

 地の利は確実に相手が上、彼は全力での逃走を選択した。

 

 五十嵐がその場を去るのを、レオたちは追わなかった。

 

「西城、お前あれ受けて平気なのな」

「平気じゃないぜ、プロテクターが無かったら一瞬意識飛んでたな」

 

 レオのあっけからんとした回答に、山岳部の部員はそれ以上何も言わなかった。納得したのではなく、呆れ返ったのだ。

 彼らは気絶した相手選手のヘルメットを外す。これにより意識が戻ったとしても、ルールとして戦闘不能扱いにされる。

 

「オフェンス二人、無力化したぜ。ただ一人逃がした。五十嵐鷹輔が西の方角へ」

『了解』

 

 レオが通信機を立ち上げて報告すると、短く応答が返ってきた。

 モノリス・コードで通信機の使用は禁止されていないが、使用された例は少ない。内容は解読できなくても、電波の発信地点くらいなら、今の技術で簡単に探知できるからだ。それに通信機を使用しなければならないほど離れてしまうと、意味のある連携はほとんど不可能になる。普通、通信機を使う意味は無いのだ。

 

 だが、ここは第一高校の演習林。山岳部のメンバーにとっては『庭』だ。

 進行しやすいルートも、それによる待ち伏せスポットも、彼らはよく知っている。

 

 それから数分後、五十嵐鷹輔は背後からの奇襲により無力化された。

 

 

 

 各チームのオフェンスがモノリスに到達したのは、ほぼ同時だった。

 エリカは想子(サイオン)の陰影を見る技術により戦闘を避けて進んだことで。対する沢木は『チーム山岳部』が見掛けても接触を避けたことで。

 二人とも戦闘することなく敵陣モノリスへ辿り着いた。

 

「服部か!」

「こっちに来たか」

 

 片や、一高最上級生ツートップの直接対決が開かれ。

 

「うっわ、ハズレ引いちゃった……」

「エリカ、ハズレとか言わない! あたしとの決着を付ける絶好の機会でしょうが!」

「うぇー……」

「嫌そうな顔しない!」

「斎藤、楽しそうなのはいいが本気でやれよ。千葉さんも、二対一とはいえ手加減はしないぞ」

「当然!」「当然でしょ」

 

 片やエリカと相対するのは、剣術部部長・相津郁夫(あいづいくお)と、同じく剣術部副部長兼女子部部長・斎藤弥生。二学年剣術トップスリーが集結している。

 

 モニター前の観客たちが大盛り上がりする戦いの末、先に勝ち切ったのはエリカ。服部沢木の戦いは未だ続いていた。

 エリカはそのままコードを入力し、チームとしての勝利をもぎ取った。

 

 

 

 

 その直後──運営本部のテント内では、次の試合に向けた準備が着々と進められていた。

 

「第二試合、終了しました。服部先輩チームの勝利です」

 

 水波の報告に、深雪は小さく頷いた。

 

「泉美ちゃん、動けない五人にすぐ救護班を向かわせて。水波ちゃんは服部先輩たちの戦闘箇所の補修に人を出して」

「「かしこまりました」」

 

 深雪から指示を受けた二人は、足早に本部をあとにした。

 

「春花ちゃんは、スミスくんと一緒に防具の回収をお願いね」

「「分かりました」」

 

 続けて船尾とケントも、戻ってくる選手たちを出迎えるためテントを出ていった。

 

「予想外のトラブルは無いですし、まずは順調ですね」

「そうですね。ルール違反の危険行為が無いのが幸いです」

 

 あずさの呟きに深雪が共感を示した。

 初の試みである以上、最も懸念されていたのは事故や混乱だった。

 

 魔法を撃ち合う上で、地形の補修や選手の気絶程度、トラブルですらない。問題になるのは過剰攻撃による重篤な負傷だ。

 選手全員がプロテクターを着用し、ルールでも殺傷性ランクCまでの魔法しか許可していないが、万が一という可能性がある。実際に一昨年の新人戦では将輝が過剰攻撃──結果的に達也が無傷だったため有耶無耶になった──をしてしまっている。

 

 だが蓋を開けてみれば、むしろ生徒たちは適度な緊張感を持って競技に臨んでいる。

 開始から二試合ではあるものの、大きなトラブルなく進行できている。小心者のあずさも、責任者である深雪も、ほっと胸を撫で下ろした。

 

「……ただ」

 

 ふと、深雪が視線をモニターへ向けた。

 

「どうしました?」

「少し、割り振りを間違えたかもしれません」

「ああ……」

 

 あずさも深雪の懸念事項を察した。

 画面には、先ほどの待ち伏せシーンがリプレイされていた。

 

「一高の施設を使う以上、ある程度の慣れは仕方ないですよ。それに、あのチームは魔法力だけで言えばダントツで低いですから、これ以上何かを削ると今度は極端に弱くなる可能性もあります」

「難しいですね……」

 

 あずさの慰めに、深雪は苦笑いを漏らした。

 

『チーム山岳部』は、絶妙なバランスで成り立っているチームだった。

 服部と幹比古を外せば、各選手の魔法力で圧倒的に劣るため、開けた空き地にあるモノリスの守備が難しくなる。

 エリカを外せば、攻めに回せる選手がいなくなる。

 それなら残る五人を、となるが、この五人は連携できる事が強みであり、他のチームに回すと一気に有用性が落ちる可能性があった。また出場選手の殆どが一科生なため、二科生が多い山岳部員を他のチームに回すのも難しかった。

 

「それに、きっと大丈夫ですよ」

 

 あずさが深雪の心配を笑い飛ばすように、あっけらかんと言う。

 

「と、言いますと?」

「待ち伏せされていると分かれば、他チームも対策を立て、攻守の担当を変えてくるでしょう。だからこそ、索敵が得意な選手たちを、各チームにバラけて割り振っているんですよね?」

「……中条先輩には、まだまだ敵いませんね」

 

 深雪は苦笑を漏らすことで、あずさの指摘を認めた。

 

「さて、私たちの方でも、第三試合の準備を進めましょうか」

「そうですね」

 

 深雪とあずさ、新旧生徒会長がモニターに向き直る。緩んでいた空気が、再び引き締まった。

 

 

 

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