ガーディアン解任   作:slo-pe

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九校戦編15

 

 

 九校戦七日目、新人戦四日目。

 本日の競技は男女共に花形競技であるミラージ・バットとモノリス・コードだ。ほのかの試合は第二試合に、深雪は第三試合に出場し、二人とも順調に決勝へ進んだ。第一試合に出場した一高選手は、他校からの妨害もあり惜しくも敗退してしまった。

 

 エリカたちはモノリス・コードの観戦に行っている。一高からは森崎たちが出場し、予選グループに三高はいない。

 さすがに予選落ちはしないだろうと達也は考えていた。しかし、一高の天幕に戻ると困惑した空気が漂っており、すぐに雫が駆け寄って来た。そこへ真由美も歩いてくる。

 

「モノリス・コードで、ですか……?」

「そうなの……一試合目、二試合目と続けて、ルール違反の威力の魔法を連発されて、三人とも出られる状況じゃないのよ」

 

 一高への対抗意識は分かるが、さすがにこれはやりすぎだ。

 

「大会委員は何も言っていないのですか?」

 

 モノリス・コードでは殺傷性ランクC相当の魔法までが使用許可されており、プロテクターを付けていれば重症を負うことは無いはずなのだ。

 

「一試合目は一高が勝ったから何も言ってこなかったわ。二試合目は一高選手全員が動けなくなっちゃったから、四高は失格よ」

 

(大会委員も黙認しているのか、話にならないな……)

 

「四高だけじゃなくて五高も過剰攻撃で失格だよ」

 

 達也は大会委員に失望していたが、雫の目には明らかな憤りが見て取れた。だが、これに関しては周囲の幹部も誰も咎めない、雫の発言は完全な事実なのだから。

 

「競技自体を中止にすべきとの声もあるのでは?」

「一高と四高以外は競技を今も続行中よ。ウチは最悪棄権ね」

「最悪も何も棄権するしかないのでは?」

「それについては今、十文字くんが大会委員と折衝中よ」

 

(選手の入れ替えを特例として認めさせようとしているのか……だが、この状況では出場を受ける選手もいないだろう)

 

 自分が狙われると分かっていて出場する選手はいない。達也はモノリス・コードの棄権を確定事項として考え、一高本部をあとにするのだった。

 

 

 

 

 モノリス・コードの過剰攻撃の件で、一番動揺したのはほのかだった。

 

「ほのか、気にしすぎるのは良くない」

「ですが、もし決勝で攻撃でもされたら……」

「大丈夫だ、ミラージ・バットでは進路妨害はできても直接攻撃はできない」

 

 ミラージ・バットで魔法の直接攻撃などされたら、大会自体が中止になるだろう。だが、改めて聞かされたことでほんの少しだけ気持ちが緩んだようだ。

 

「選手からの進路妨害程度ならほのかの敵じゃない」

「……本当ですか?」

「ああ、新人戦レベルの選手だったら妨害されても問題ないさ」

 

 それに加えて達也からの太鼓判ももらい、ほのかはある程度立ち直ったようだ。そして、達也は最後にこう付け加えた。

 

「それに、ほのかには秘策もあるだろう?」

「あ……」

 

 どうやら達也に言われるまで存在を忘れていたようだ。今言っておいて良かったと、達也は心底思った。

 

「いつも通りにやれば司波さん以外には負けない。それに、最終ピリオドはほのかの一人舞台だ。ぶっちぎりの優勝で終わらせて来い」

「はい!」

 

 達也の大胆な宣言に、ほのかは嬉しそうに頷いてフィールドへと向かうのであった。

 

 

◇◇◇

 

 

 日没後、ミラージ・バットの決勝が開始された。

 

 ミラージ・バットで勝利する為に必要な要素は二つ。一つ目は、如何に速くホログラム球体の投影位置まで跳び上がるか。そして二つ目は、如何に速く投影位置を把握するかだ。

 そして、この二つ目のファクターにおいて、ほのかは絶対的なアドバンテージを持っていた。光の球体が結像する一瞬前に、一人跳び上がるほのか。そのままスティックで打ち消しポイントを獲得する。他校の選手は諦めを以て、それを見逃している。

 

 他校の選手はほのかへの妨害は諦め、もう一人の選手を狙う。だが、それも叶わないことだった。

 ミラージ・バットに必要な動作である「飛翔」「静止」「降下」「着地」。起動式が変わらなければ、当然処理速度は選手の技量に依存する。そして、処理速度に関しては深雪に匹敵する選手などいるはずがない。

 

「ここまで差がつくなんて……」

「くそっ、何であんなのが一年生やってるんだ!」

 

 単純な動作だからこそ浮き彫りになる実力差。レベルの違いを見せつけられた他校の選手は、唇を噛みしめていた。

 

 第二ピリオドが終了し、選手たちがベンチへと戻っていく。

 

(やっぱり司波さんは凄い……)

 

 現時点でほのかが一位だが、深雪との差はたったの一ポイント。ほのかの先天的なアドバンテージと、達也のCADがあってようやく同列なのだ。ほのかは深雪の実力に畏怖の念を抱いたが、今は試合が優先だ。

 

「達也さん、いいですよね?」

 

 ほのかは真剣な表情と強い意思の籠った瞳で達也を見つめる。

 

「もちろん」

 

 ほのかの見せた意外な一面に驚きながらも、達也は力強く頷いた。

 

 

 

「あれ? ほのかのホウキが変わってる」

「そう……ほのか、やっぱりアレを使うんだ」

「アレ?」

「達也さんの秘密兵器」

 

 雫の一言に、エリカを含む全員の目の色が変わった。達也が絶対の自信を持つ秘密兵器。一体何が起こるのかと、ほのかへ視線を向けた。

 

 そんな中、第三ピリオドが開始した。

 光球目掛けて飛び上がる選手たちがCADを操作する。だがほのかは手元のCADのスイッチを押しただけで上空へと加速した。

 ほのかは一つ目の光球を打ち消し、そのまま空中に留まって移動しながら光球を次々と打ち消していく。

 

 歓声が絶句に変わり、会場が沈黙に包まれる。

 

「飛行、魔法……?」

「うそだろ……」

 

 誰もが呆然とする中、エリカとレオ、その二人の声は不思議なほどに響いた。

 

「トーラス・シルバーの……?」

「そんなバカな……」

 

 囁きが連鎖し、

 

「だが、あれは……」

「紛れもなく、飛行魔法……」

 

 波紋は徐々に広がっていく。

 

 フィールドにいる選手も、深雪以外の誰もが呆然と上空を見つめている。深雪も善戦しているが、空中を飛び続けるほのかと十メートルの高度を往復する深雪とでは勝負にならず、点差はどんどんと広がっていく。

 

 試合終了の合図が鳴り、圧倒的な点差で、ほのかの優勝が決定した。

 そして、ほのかが退場ゲートへと向かい、反転して会場へ一礼した瞬間、会場から大きな歓声が起こった。誰もが立ち上がり、手を叩き、声を上げ、自分が見た「奇跡」への感動を形にしていた。

 

 

 

 

 決勝戦が終わり、控室に戻ってきたほのかは満面の笑みだった。

 

「勝ちました! 勝ちましたよ、達也さん!」

「ああ、おめでとう、ほのか」

「私が九校戦で優勝できるなんて……本当にありがとうございます!」

 

 バトル・ボードのように泣き出しはしなかったが、興奮の度合いでいったら今の方が大きいだろう。どうしたものかと思っていると、突然勢いよくドアが開いた。

 

「達也くん! あんなの聞いてないわよ!」

 

 入ってきたのはエリカだ。本来関係者以外立ち入り禁止なのだが、どうやって入ったのだろうか。

 

「おい、達也! 飛行魔法なんてあるなら教えてくれよ!」

「そうですよ、達也さん!」

 

 レオはともかくとして、美月も珍しく声を荒げている。後ろにいる雫は予め知っていたので落ち着いているが、隣の幹比古は興奮のあまり声が出ないようだ。

 

「分かったから落ち着いてくれ」

 

 どうどう、といった手振りを示すと、四人とも少しは落ち着いたようだが、まだ興奮は収まっていない。

 

「秘策って聞いてたから何かと思ったけど、飛行魔法だなんて思わなかったわよ」

「本当ですよ、私も会場で驚いたんですから」

 

 女性陣二人から何やら責めたような視線が刺さるが、達也にはどこ吹く風といった感じだ。

 

「まあまあ、そう言うな……それに」

 

 それどころか、ニヤリと笑みを浮かべてこう言い放った。

 

「驚かせると約束しただろう」

「「ここまでとは聞いてないわよ/ですよ!」」

 

 エリカと美月の怒声が控室に響き渡ったのだった。

 

 

◇◇◇

 

 

 その後、大会委員が飛行魔法に使ったCADを検査させろと言ってきたが、

 

「ハードのレギュレーションチェックのためなら、ソフトのデータを消してからでも構いませんね」

 

 達也のこの一言で引き下がった。さすがに本戦の摩利が控えた状態では飛行魔法が他校に流出するのは避けたい。単純な技量では負けないだろうが、想子(サイオン)量がものをいう持久戦では摩利は特別有利とは言えないからだ。

 それに、モノリス・コードの事件で大会委員への信用は地に堕ちている。そんな所にCADを渡すわけがない。

 

 

 

 

 夕食を終えて、達也は一高のミーティングルームに呼び出されていた。

 達也を待っていたのは、真由美、克人、摩利の一高三巨頭。その後ろには幹比古もいた。達也はこの時点で話の内容の予想がついたが、それを表に出すことはしない。

 

「今日はご苦労様。期待以上の成果を上げてくれて感謝しています。今の段階で本戦と新人戦の両方で、二位以上のポイントを確保できたのは間違いなく達也くんのおかげだと、私は思っています」

「ありがとうございます。選手も頑張ってくれたので」

「今言った通り、モノリス・コードをこのまま棄権しても新人戦の準優勝は確保できました。二位の三高とは九十ポイント差。あとは三高がモノリス・コードで優勝すれば新人戦は三高の優勝。二位以下なら当校の優勝です」

「そうですね」

 

 中々本題に入らない真由美だったが、結論が予測できる以上、先延ばしにされても気持ちが焦れるだけだ。達也は自分から水を向けることにした。

 

「それで、俺に何をさせたいのですか?」

 

 達也が気づいていることが分かったのだろう、真由美もこれ以上言葉を重ねたりはしなかった。

 

「達也くんには、森崎くんたちの代わりにモノリス・コードに出てもらいたいの」

 

 予想した通りの用件だったので、達也も予め決めていた質問を返した。

 

「怪我で選手が続行不能な場合でも、選手の交代は認められていないはずですが?」

「事情を鑑みて、特例で認めてもらえる事になりました。予選残り二試合も、明日へ延期という形になっています」

 

 これまた予想通りの答えだった。だが、受け容れるかは別問題だ。

 

「何故自分を代役に?」

「達也くんが最も代役に相応しいと思ったからだけど……」

 

 真由美は困り顔に愛想笑いを浮かべている。口を挟んでくると思っていた摩利は、腕を組んだままで口を開く気配がない。

 

「自分は選手ではないですし、一競技しか出場していない選手が何人か残っているでしょう?」

「それは……」

 

 真由美が言葉を濁すのなら、達也も尤もらしい理由で拒否するまでだ。幹部が何を考えていようが、実際に試合に出るのも過剰攻撃に晒されるのも、達也自身なのだから。

 

「一競技にしか出場していない選手がいるのに、スタッフである自分を選ぶのは、後々精神的なしこりを残すのではないかと思われますが」

 

 正直な話、達也はそんなことは全く気にしていない。入学から今まで散々絡まれたのだし、一科生のプライドなど粉々になっても構わないと思っている。だが、真由美たちが筋を通さないのなら、達也にも出場する義理は無い。

 真由美からの反論はない。話を終わらせようと、達也が辞退の言葉で締め括ろうとした、その時、

 

「ごめんなさい、達也くん。きちんと説明するわ」

 

 先ほどまで困り顔を浮かべていた真由美だったが、何かが吹っ切れたようだ。

 

「私たちが達也くんにお願いする理由ですが、達也くんなら他校からのオーバーアタックを切り抜けられると思ったからです。通常なら他の選手でも三位には入れるかもしれませんが、この条件では達也くん以外の適任はいないと判断しました」

 

 真由美が過剰攻撃のことを口にしたことに、達也は内心驚いていた。四月のブランシュの件から事なかれ主義だと思っていた真由美が、ここまで踏み込んでくるとは思わなかったのだ。

 たとえ分かりきった事実でも、それをトップが口にすれば意味合いがまるで変わる。幹部たちの覚悟も、その責任の取り方も、そして達也たち選手の心情も。

 

「それに、達也くんを選手にすることで、確かに一科生からの反発はあると思う」

 

 先ほどのはただの断り文句だったのだが、真由美は何か抱えているものがあるようだ。

 

「でも、達也くんたちが活躍すれば、二科生にもこれだけの事が出来るってみんなが知る機会になる。一科と二科の差も少しは縮められると思うの」

 

 真由美がそんなことを考えているとは知らなかった。だが、いつものイメージとかけ離れた真摯な眼差しからは、偽りを述べているとは思えない。

 

「危険なお願いだし、非難されるかもしれない。達也くんたちの負担が大きいのは分かっているの。それでも、引き受けてくれませんか」

 

 元々真由美が理由を説明した時点で断る気は無かったが、ここまで言われては断るという選択肢は存在しない。

 

「分かりました。代役の件、お受けします」

「え……いいの?」

「はい」

 

 承諾したのにも拘わらず、意外感を滲ませている真由美。確かに先ほどまでの頑なな態度から一変してはいるが、そこまで驚くことだろうか。

 

「えっと、達也くん……変なことを聞くんだけど、どうして引き受けてくれたの?」

「本当に変なことですね……過剰攻撃のことを隠されたままだったら反対しましたが、七草会長が言ってくれましたからね」

 

 真由美はポカンとした表情のままだ。実を言うと、達也にも実力を示してほしい人物がいるという共感が一番なのだが、それは言う必要のないことだ。

 

「それで、代役のメンバーですが、幹比古ともう一人は誰ですか?」

「うん、それはこれから……」

「お前が決めろ」

「え?」「?」

 

 最初からここまで口を閉ざしていた克人が真由美の台詞を遮った。真由美と達也が同時に疑問符を浮かべた。

 

「ここにいる吉田も、司波の選んだメンバーなら問題ないそうだ。今この場で決めるのが望ましいが、時間が必要なら一時間後にここに来てくれ」

 

 わざわざ真由美を遮ってまでこう言っているということは……

 

「誰でもいいんですか? 選手以外から選んでも?」

「えっ、それはチョッと……」

「構わん。この件は既に例外に例外を重ねている。あと一つや二つ、例外が増えても今更だ」

「十文字くん……」

 

 真由美が軽く非難の目を向けるが、その程度で克人の顔面筋は小揺るぎもしなかった。真由美には申し訳ないが、今の発言はありがたかった。

 

「分かりました。では、決まり次第こちらに来ます」

 

 達也は一礼して会議室を出ようとしたが、その前に克人に視線を向けた。

 

「十文字会頭、あと『二つ』ほど、例外ができるかもしれませんが、よろしくお願いします」

 

 この発言に真由美と摩利が首を傾げたが、達也は気にせずに部屋をあとにした。

 

 

◇◇◇

 

 

 会議室を出た達也は、端末で目的の人物を屋上に呼び出した。

 

「達也くん、いきなりどうしたの?」

「エリカに頼みがあってな」

 

 エリカは達也の頼みに心当たりがなくキョトンとしている。

 

「エリカにはモノリス・コードに出てほしいんだ」

「え、どういうこと?」

「明日のモノリス・コードに俺と幹比古が代役で出ることになった。エリカにはそのチームに入ってほしい」

「あたしが?」

「エリカが」

 

 達也の頼みは理解したようだが、未だエリカの頭上には疑問符が浮かんでいる。

 

「あたし女子だよ?」

「十文字会頭が言うには、例外の一つや二つ今更だそうだ。女子であっても問題ないだろう」

 

 さすがに女子を選ぶことは想定していないだろうが、言質は取ってあるので良しとする。真由美や摩利には心労をかけるだろうが、こちらは代役を引き受けたことで罪悪感をチャラにする。

 

「でもなんでわざわざ? 男子でもレオとかいるでしょ」

 

 好戦的なエリカでもこれだけでは納得がいかないようだ。達也は尤もらしい理屈で誤魔化すことにした。

 

「レオも候補だったが、エリカの動きは何度か見ているからな。作戦も練りやすい」

「なるほどね……」

 

 エリカも納得し始めた。達也はこのままいけばいいと思い、

 

「ん? ……あ、もしかして」

 

 失敗した。

 エリカは顔を上げて達也を見つめてきた。

 

「ねぇ達也くん、ほんとにそれだけ?」

「ああ」

 

 人は嘘を吐くとき、かえって饒舌になると言う。達也は真剣な表情を作ってただ一言を返した。

 だが、エリカには通用しなかったようだ。

 

「ふ~ん、なるほどねぇ」

 

 エリカは笑みを浮かべて、小さくではあるが嬉しそうに「ずるいなぁ」と呟いた。

 

「いいわ、受けてあげる。頑張るって約束もしてたしね」

「助かるよ」

 

 返事そのものよりも、エリカがこれ以上突っこんでこなかったことに、達也は胸を撫で下ろした。見抜かれたので今更ではあるが、本人を前にそれを言うのは流石に恥ずかしい。

 さっきの真由美と同じだ。分かりきっている事でも、口にするかしないかは大きな違いなのだ。

 

「それにしても達也くん、あたしのこと好き過ぎじゃない?」

「エリカの剣はきれいだからな」

 

 気を抜いた瞬間だったこともあり、エリカの茶々に深く考えずに返答してしまった。エリカは思いの外、真面目な答えが返ってきて一瞬目を丸くしたが、今の言葉が達也の本音であることを理解して、心底嬉しそうな表情に変わった。

 

「そっか……」

 

 無意識にエリカの茶々は撃退できたのだが、こちらの方がダメージが大きかった。

 

「……俺は報告に行くから、部屋で待っててくれ。幹比古もいるはずだ」

 

 達也はその場から逃げるべく、エリカに背を向けて歩き出した。だが、エリカは肩が触れるほどの真横に並んできた。達也は一瞬離れようとしたが、未だに頬を緩ませたエリカを見てそれを断念し、そのまま会議室へと向かうのだった。

 

 

 

 

 会議室に向かうと、真由美たちもまさか女子を選ぶとは思っておらず反論があったのだが、克人が「問題ない」と一言告げたことで沈静化した。

 そして、今は達也たちの部屋で作戦会議を行っている。レオと美月がいるのはお約束だろう。

 

「さて、時間もないから始めるが、ウェアなどの必要機材は中条先輩が揃えてくれるから心配はいらない」

 

 二人とも異論はないようで、小さく頷いた。

 

「それで作戦だが、フォーメーションは俺とエリカが二人一組でオフェンス、幹比古がそのサポートを頼みたい」

「二人一組って効率悪くない?」

「サポートって何をするんだい?」

 

 二人とも首を傾げているが、達也もそこは説明するつもりだ。

 モノリス・コードの勝利条件は相手チーム全員を戦闘続行不能にするか、敵陣にあるモノリスに隠された五百十二文字のコードを送信することだ。

 

「今回は絶対に相手の攻撃を受けるわけにいかないからな。俺が敵の位置を探知して、エリカと二人で一気に襲撃する形にする」

「なるほどね」

 

 エリカも達也の探知能力は知っているので、素直に頷いた。

 

「その間幹比古にはモノリスの守備をやってほしい。基本的には単独行動しているオフェンスを狙うから、自陣のモノリスが狙われる心配はないんだが、モノリスががら空きなのは宜しくない。ステージによっては、古式魔法の隠密性と奇襲力が大きな武器になるはずだ」

「見晴らしのいいステージだと、僕の魔法は不利なんじゃないかい?」

「草原ステージや岩場ステージなら奇襲を受ける心配もないから、モノリスの守備を捨てて先に相手を倒せばいい。それに、渓谷ステージなら幹比古の独壇場だろう?」

 

 前半は聞きようによっては行き当たりばったりな作戦だが、後半は幹比古も納得したようだ。

 

「あたしの剣はどうするの? 物理攻撃は反則なんでしょ?」

「前にレオが試した『小通連』の改良版を使ってもらう。エリカのCADと似たような仕組みにしておくよ」

 

 エリカのCADは振り込みの瞬間だけサイオンを流すことで起動する、刻印術式を使っている。それを『小通連』で行うのだと、エリカも正確に把握した。

 

「CADのデータは今作るんだが、CAD本体は知り合いの工房に作ってもらうことになった。十二時頃には届くそうだから練習は明日の朝で頼む」

 

 牛山に電話したのはつい先程なのだが、急ぎで頼みたいと言ったところ、「御曹司の頼みとありぁあ、すぐにでも取り掛かりやっせ。日が変わる前には届くようにいたしやすので」ということで、二つ返事で了承が帰ってきた。本当に頭が下がる。

 

「レオも練習に付き合ってくれると助かるんだが、構わないか?」

「おう、俺も何か手伝いたいしな」

 

 レオの了承ももらえたところで、達也は三人分の調整を始めた。

 

 

 

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