ガーディアン解任   作:slo-pe

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ダブルセブン編5

 

 

 四月十四日、土曜日。新歓期間の三日目が終わった夜。

 深雪たちの家のリビングには、珍しい来客があった。

 

「初めましてエリカさん、黒羽亜夜子と申します。達也さんと深雪お姉様とは再従兄妹の関係に当たります」

「初めまして、黒羽文弥です。よろしくお願いします」

「知ってるみたいだけど、あたしは千葉エリカ。あたしの方こそよろしくね」

 

 亜夜子と文弥、エリカがそれぞれ自己紹介をし、ソファへと腰を下ろす。ちなみに席は片側のソファーに深雪、達也、エリカの三人。向かい側のソファーに文弥と亜夜子だ。

 ちょうどそのタイミングで、水波と穂波がリビングへ入ってきた。水波がお盆に載せたお茶をテーブルに並べる。

 

「そういえばまだ言っていなかったな。二人とも、四高合格おめでとう」

「二人の実力なら当然でしょうけど。おめでとう、亜夜子ちゃん、文弥君」

「ありがとうございます、達也さん、深雪お姉様」

 

 達也のセリフを受けて、深雪も笑顔でお祝いを述べる。亜夜子が謝辞を述べ、文弥もはにかんだ笑みを返す。

 

「二人はどうして四高なの? 一高でも余裕で主席だったでしょ?」

 

 ふと疑問に思ったエリカが質問する。その声がいつもより少し強張っているのは、意図しての事ではない。

 

「本当は第一高校への進学も考えていたのですが」

「僕たちが一ヶ所に集まりすぎるのは良くないと言われて」

「叔母様がそう仰ったの?」

 

 深雪の問い掛けに頷いたのは亜夜子だった。

 

「ご当主様より直接お言葉をいただいたわけではありませんけど」

「葉山さんを通じて父に指図がありまして、一高進学は諦めました」

「それなら実家に近い方が都合も良いので、四高に通うことにしたんです」

 

 本心はともかくその表情を見る限り、亜夜子はそれほど拘っていたわけではなさそうだが、文弥はかなり未練を残している顔だった。

 

「叔母上にしては珍しいが、そう仰ったのなら仕方ないな」

 

 達也は優しい声で文弥を慰め、さりげなく話題を変えた。

 

「ところで今日はどうして東京に? 関東方面の仕事は文弥たちの担当じゃなかったと思うが」

「実は、達也兄さんと深雪さんにお伝えすることがありまして……現在、国外の反魔法師勢力によりマスコミ工作が仕掛けられています」

 

 その言葉を聞いて、深雪が軽く目を見張り、エリカも眉を顰めた。

 

「何処からだ?」

 

 達也の方に驚いている様子は見られない。

 

「USNAの『人間主義者』です」

 

 人間主義とは、魔法を人間にとって不自然な力と決めつけ、人間は天(あるいは神)に与えられた自然な力だけで生きていくべきとする宗教的な側面を持った魔法師排斥運動のことだ。

 

「人間主義者なら随分前から国内に侵入しているが、それとは別口なのか?」

「いえ、本体は同じだと思います。新たな工作段階に入ったということではないでしょうか」

「マスコミを使った反魔法師キャンペーンかな」

「マスコミだけではありません。野党の国会議員にも手が回っています」

 

 達也の質問に、文弥が自分の言葉を補足する。

 

「魔法師の人権を大義名分として、まず魔法の軍事利用を非難。次に魔法大学出身者の四割が軍に所属していることを根拠に魔法教育機関が軍と癒着しているという架空の構図を作り上げ、第三段階として魔法大学に最も多くの卒業生を送り込んでいる第一高校を標的に、『軍事利用されようとしている子供たちの解放』をアピールする、というのが現在判明している彼らのシナリオです」

 

 文弥が長い説明を終えていったんお茶で喉を潤し、再び顔を上げると、達也が文弥に称賛の眼差しを向けていた。

 

「文弥、良くそこまで調べ上げたな。大したものだ」

「あっ、いえ……ありがとうございます、達也兄さん」

 

 途端に、あれだけの長ゼリフを一度もつかえずに言い終えた文弥が、しどろもどろの口調になった。良く見れば顔も赤くなっている。

 文弥は褒められて、単純に嬉しかっただけなのだが、そこへ姉の茶々が入る。

 

「本当に文弥は達也さんのことが好きなのねぇ」

「姉さん! 誤解されるようなこと言わないでよ!」

「あら、誤解なの? 達也さんのこと、好きじゃないんだ」

「姉さんの言い方だと『好き』の意味が違うだろ!」

「んっ? どういう意味に聞こえるというのかしら」

「それは……」

 

 じゃれ合う姉弟、というより弟を弄って愉しむ姉。その微笑ましい光景に、エリカに残っていたわずかな緊張もほぐれた。

 そんなエリカの様子を察知した亜夜子が矛先を切り替えた。

 

「そうね、そういう『好き』はエリカさんの特権だものね」

「なっ!?」

 

 唐突に話題に上げられたエリカ。その頬が赤みを帯びたのを見て、亜夜子がにんまりと笑みを浮かべた。

 

「エリカさん、仲がよろしいのは構いませんが、あまり外で仲良くしすぎない方がよろしいかと」

 

 意味深な亜夜子の視線に、深雪が呆れの混ざった目でエリカを見る。

 

「……エリカ、あまり聞きたくはないのだけれど、貴女たちは何をしているの?」

「何もしてないっ、二人でどっか出掛けるくらいよ!」

「そうでしたわね、放課後に手を繋いで帰ったり、偶に顔を見つめ合っているくらいですわね」

 

 さらっとイチャイチャしていることを暴露されたエリカが言葉に詰まる。誤解だと分かった深雪も、それくらいならと矛を収めた。

 そこに、再度亜夜子が愉しそうに口を開く。

 

「お二人が本当に仲良く(・・・)しているのはお家の中ですものね」

「なっ……!」

 

 強調された『仲良く』というセリフ。さすがの亜夜子も自宅を監視するほど礼儀知らずではないし、達也もそこまで呆けてはいない。ただエリカを揶揄おうとしただけのセリフである。

 しかし、少なからず心当たりのあるエリカはこれ以上なく顔を赤くしてしまった。

 それを見た亜夜子が笑みを深めたのは言うまでもない。

 

 ひとしきりエリカを揶揄って満足したのか、亜夜子が背筋を正して真剣な表情を作る。

 

「マスコミを使った反魔法師キャンペーンの工作活動についてですが、もう一つお耳に入れたいことがあります」

 

 達也たちもそれを察知して、真剣な表情に戻った。

 

「この工作活動の裏で、七草家当主・七草弘一が糸を引いています」

 

 この情報には、深雪やエリカも驚きに目を見開いている。達也も驚いてはいたが、それ以上に驚くべき事柄があった。

 文弥の、というより亜夜子の諜報能力は間違いなく大したものだし、黒羽の組織力も四葉一族屈指のものだろう。

 だが七草家当主はそう簡単に尻尾を掴ませる相手ではない。達也の知る限りでは、真由美あたりならともかく、七草弘一相手となるとまだまだ荷が重いはずだった。亜夜子の諜報能力は、達也の想像以上に成長しているようだった。

 

 ……これは亜夜子たちの努力の結果であって、決して覗きのために磨いた技術ではない。達也はそう思い込むことにした。

 

「具体的なスケジュールも把握しております。四月二十五日、再来週の水曜日に第一高校へ国会議員が視察に訪れます」

「民権党の神田議員か?」

「そうです。良くお分かりですね」

「むしろ意外性が無さ過ぎるんじゃないか?」

 

 神田議員は国防軍に対して極端に批判的な野党の若手政治家で、今週に入って急にマスコミの露出が増えている。彼の言動は一見魔法師の味方を装いながらも、その実、魔法師を国防軍から排除しようとしている。

 

「そうですね」

 

 達也の言い分を尤もだと思ったのか、亜夜子がクスクスと笑いをこぼした。

 

「その神田議員が、いつもの取り巻き記者を連れて一高に押し掛けるようですよ」

「押し掛けて、何を?」

「さあ、そこまでは」

「それ程大きな仕掛けは用意していないということか」

 

 亜夜子の答えに考える素振りも見せず、達也は納得顔で頷いた。

 

「何処をどう捻ったらそういう解釈になるんです……?」

 

 亜夜子は年相応の幼い表情でポカンとしていた。

 

「大掛かりな舞台を用意しているなら亜夜子に分からないはずはないだろう?」

「……お褒めの言葉と受け取っておきます」

「褒めているんだからそれでいい」

 

 言葉に詰まりながら、かろうじてクールな(と自分では思っている)答えを返した亜夜子だったが、すかさず達也から真面目くさった追撃を受けて、本格的に絶句してしまう。

 

「達也さん……もしかして、分かっていてやってるんですか?」

「何を?」

「……いえ、いいです。何でもありません」

 

 とぼけているのか本当に分かっていないのか窺い知れない達也の鉄壁のポーカーフェイスを前に、亜夜子は追求を断念した。その正面ではエリカも諦めなさいとばかりの視線を送っている。

 

「達也さんの仰るとおり、あまり大掛かりなことは考えていないようですね。多分、いつものパフォーマンスでしょう。ですが彼の取り巻きジャーナリストは、それを何十倍にも水増しして騒ぎ立てるつもりなのではないでしょうか」

「なるほど、それはありそうだな」

 

 ここで達也は、この夜初めて再従姉妹の前で考え込む素振りを見せた。

 ただそれも五秒ほどのこと。達也は視線を正面に戻し、小さく労いの笑みを浮かべた。

 

「貴重な情報ありがとう、亜夜子、文弥」

「ありがとうございます。達也兄さん」

「達也さんのお手並み、楽しみに拝見させていただきますわ」

 

 文弥は嬉しさ全開の笑顔を、亜夜子は気取った笑顔を返した。

 

 

◇◇◇

 

 

 週が明けた四月十六日、月曜日。

 達也は始業前の生徒会室にあずさと五十里を呼び出した。

 

「司波君、今日はどうしたんだい?」

「少し問題が起きたので、お二人に協力してもらえればと思いまして」

 

 達也はそう前置きして、神田議員の来訪について説明した。

 

「えっ、それって一大事じゃないですか!」

 

 野党議員視察の件を聞かされたあずさが、椅子を蹴って立ち上がり動転した声を上げた。

 

「……そんなに慌てるようなことかなぁ?」

「いや、これは由々しき事態だよ、花音」

 

 いつものように五十里にくっついてきた花音が「大袈裟ではないか」と疑問を呈するも、五十里が婚約者の楽観論をたしなめる。

 

「神田議員の主張は表面的に見れば魔法師の権利を擁護しているように見える。だけど軍が魔法師を取り込むことを一方的に悪と断じる彼の論法は、魔法師が軍と関わることを妨げる意図を隠している」

「それはあたしにも何となく理解できるけど。でも神田が今回ターゲットにしてるのは軍と学校でしょ? あたしたちじゃなくて」

 

 五十里が自分ではなくあずさと達也の肩を持ったことが花音には気に入らなかったのか。彼女は五十里に少し不満げな顔を向けて言い返した。

 

「それで僕たちの自由が損なわれても?」

 

 五十里の反問に「えっ?」という表情を浮かべる花音。五十里が何を懸念しているのか、花音にはまだピンと来ていない。

 

「軍が魔法師を活用することを止めさせたいと思っている人たちが権力を握れば、僕たち魔法科高校生が卒業後の進路に防衛大を選ぶことも魔法大学の卒業生が国防軍に入隊することも、どちらも禁止されるに違いないし、僕たちが国防に関心を持つことすらも制限しようとするだろうね」

「思想統制しようとするってこと?」

「原理的平和主義は母国に向けられている軍事的脅威を分析することも防衛軍備の必要性を議論することも許さない。そのような言論を封殺する為には暴力的な手段を用いることも辞さない。彼らに、僕たちの思想統制を躊躇う理由はないだろうね。魔法師の人権を謳いながら、平気で魔法師から職業選択の自由を奪おうとしているくらいだから」

 

 思いがけない毒舌だった。花音ですら若干鼻白んだくらいだから、達也が意外感を覚えるのも当然かもしれない。「原理的平和主義」に対する嫌な思い出でもあるのだろうか。

 

「……そういうわけだから、他人事みたいに考えてちゃダメだよ、花音。それで、司波君はどう対処するつもりなの?」

 

 自分でも熱くなりすぎたと感じたのか、五十里は気まずそうな愛想笑いを浮かべて話題転換を図った。

 

「司波くんは何かアイデアがあるから、僕たちを呼んだんだよね?」

「ええ」

 

 達也は頷き、振り返って水波に目配せすると、水波が手に抱えていた電子黒板をあずさと五十里に手渡す。

 

「彼らは魔法科高校が軍事教育の場と化しており、学校が生徒に軍属を強制している、と非難したいわけです。でしたら、軍事目的以外にも成果が出ていることを示せば良いのではないでしょうか」

 

 達也が結論を先取りする。

 

「そこで神田議員の来校に合わせて少し派手なデモンストレーションを行いたいと思います」

「……少し?」

「……これが?」

「準備は大掛かりなものになりますが、デモそれ自体は普段から行われている放電実験や爆縮実験と大した違いはありませんよ。見掛けの上では、ですが」

「見た目だけならそうかもしれませんけど」

 

 あずさが弱々しい声で反論しても、達也の苦笑いを堪えているような顔は変わらない。

 

「外見は似たようなものでも意味はまるで違うよ……だからこそ効果は抜群だろうけど。でも司波君」

 

 五十里は自分に言い聞かせるような声で頷いた後、達也に難しい顔を向けた。

 

「本当にできるの? 加重系魔法三大難問の一つ、常駐型重力制御魔法式熱核融合炉が」

「実物はまだ作れません。ですが、核融合炉実現の可能性を去年の論文コンペより派手に、分かりやすいものとして演出することはできます」

「……『恒星炉』ですか」

 

 会話の最中も電子黒板から目を離さなかったあずさが、そのままの姿勢で呟いた。

 

「常駐型……重力制御魔法式継続(・・)熱核融合炉。鈴音さんの考案した断続型の核融合炉とは対照的なコンセプトに思えます」

 

 あずさは電子黒板を食い入るように見詰めたまま、達也の顔も五十里の顔も見ていない。

 

「しかも、取り出すことのできるエネルギー量は鈴音さんのシステムより桁違いに大きい……司波君の恒星炉が実現すれば、昼夜の区別無く、気象条件に影響を受けずエネルギーを供給することが可能となります。魔法の平和利用を主張する、この上ないデモンストレーションになるでしょう」

 

 独り言のような呟きが途切れ、あずさが達也へ顔を向けた。

 

「これが司波君本来のプランなんですか?」

「独自のアイデアというわけではありませんが、確かにこれが自分の目指しているものです。まだ必要となる魔法スキルが高すぎて実用化には程遠い段階ですが、我が校の生徒の力を以てすれば短時間なら実験炉を動かすことが可能です」

 

 あずさの質問に、達也は殊更しっかり頷いた。

 

「そうですか……分かりました」

 

 あずさもまた、彼女に似合わぬ力強さで頷きを返す。

 

「五十里くん、わたしは司波君の計画に協力したいと思います。五十里くんはどうでしょうか」

「僕も協力するよ。恒星炉の公開実験。神田議員対策というだけじゃなくて、魔法技術者を目指すものとして是非とも関わっておきたいからね」

 

 あずさに問われて、五十里も首を縦に振った。

 

 放課後になり、生徒会室には生徒会メンバーにほのかを加えた計六人が待っていた。

 

「それで、実験の許可は下りたんですか?」

 

 あずさに問われた達也は、校長の電子署名と申し送りが書き込まれた申請書を差し出した。

 

「条件付きですが、承認になりました」

「条件って?」

「当たり前のことですが、先生の監督がつきます。それが条件ですね」

「それはそうだね。それで、どの先生が付き合ってくれるの?」

 

 達也の回答に五十里が重ねて質問したと同時。来訪者を告げるチャイムが鳴った。

 

「廿楽先生です。わざわざ足を運んでいただいたようですね」

 

 モニターを確認した深雪の声に立ち上がったのは泉美だ。少しもきびきびしているようには見えないが、一年生らしく上級生が対応する前にドアへ向かい、廿楽教師を出迎えた。

 いつもは生徒会長が座る席に、廿楽が腰を下ろす。

 

「実験の手順は拝見しました。面白いアプローチだと思います」

 

 泉美に給仕されたお茶で喉を湿らせて、廿楽は打ち合わせの第一声を放った。

 

「それで司波君。役割分担はどのように考えているのですか」

 

 ここで言う役割分担とは、誰がどの魔法を担当するかということだ。

 今回使用される魔法は、重力制御、クーロン力制御、第四態相転移、ガンマ線フィルター、中性子バリアの計五つ。

 

「まず、ガンマ線フィルターは光井さんにお願いしようと思います」

「私ですか!?」

 

 いきなり指名されて、ほのかが素っ頓狂な声を上げた。彼女はいきなり連れて来られたことに加え、まだ実験の詳細を聞いていないのだから無理もない。

 

「電磁波の振動数をコントロールする魔法に掛けては、俺の知る限りほのかの右に出る者はいない。引き受けてくれないか、ほのか」

「……分かりました。私にできることなら頑張ります!」

 

 だが、ほのかは達也の真剣な表情を見て了承を返した。

 

「クーロン力制御は五十里先輩に、中性子バリアは水波にお願いします」

 

 こちらは既に話がついていたのか、二人は無言で頷いた。

 

「第四態相転移は誰に頼むかまだ決めていません。そして要となる重力制御は深雪に任せようと思います」

 

 深雪が座ったまま小さく一礼した。

 

「妥当だと思います」

 

 廿楽は納得顔で頷いた。現在、第一高校で最も魔法力が高い生徒は、三年生を差し置いて深雪だということを、廿楽も当然知っていた。

 

「そうすると、第一に決めなければならない問題は第四態相転移を誰にお願いするか、ですが」

 

 廿楽があずさに目を向ける。

 

「中条さんでは不都合なのですか?」

 

 廿楽の提案に答えたのは、あずさ本人ではなく達也だった。

 

「会長には全体のバランスを見てもらいたいと思っています」

「なるほど。確かにその方が適切ですね」

 

 自分の提案を引っ込めて、再び廿楽が思案顔になる。そこへ泉美が手を挙げた。

 

「あの、よろしければそのお仕事、私たちにお任せいただけませんか」

「私たち、というのは泉美と香澄の二人で、ということか?」

「はい。私一人では力量不足かもしれませんが、香澄ちゃんと二人でなら、きっとお役に立てると思います」

 

 泉美の言葉を聞いて、この場にいる七人(廿楽、あずさ、五十里、達也、深雪、水波、ほのか)の内、三人が戸惑った表情を浮かべた。

 逆に言えば、過半数である四人は反応を示さなかったのだ。

 

「……私たちのことをご存知の方がこれほどにいるとは思いませんでした」

 

 泉美本人にしてみれば、訝しく思われる方が自然なのであり、当然のように受け容れられると身構えずにいられない。

 二人で一つの術式を担当する、優秀な魔法師である彼らがその意味を知らないはずは無い。その上で何の驚きも示さなかったということは、泉美たちの手の内を知られているということに他ならない。

 

「『七草の双子』は有名だからな。知っている者は知っている」

 

 探るような泉美の視線を、達也はさらりと受け流した。壁面の大型スクリーンに実験のモデル図を映し出す。

 

「廿楽先生、光井さんと七草さんは実験の詳細を知りません。確認の意味でも一通り説明しておきたいのですが」

 

 廿楽の同意を得て、達也は実験の詳細を改めて生徒会メンバーに披露する。

 

「恒星炉のシステムは、技術的に見ればまだまだ未成熟な所ばかりです。しかしこのメンバーがチームとして機能したなら、三大難問の一つと言われているこの実験を間違いなく成功させることができると確信しています」

 

 最後にこう締めくくって、達也の「恒星炉」は小さなスタートを切った。

 

 

 

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