ガーディアン解任   作:slo-pe

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今回から九校戦開始です。
九校戦の日程について、原作と競技が違うためオリジナルとなります。

九校戦初日
ロアー・アンド・ガンナーペア、アイス・ピラーズ・ブレイクペア予選
九校戦二日目
ロアー・アンド・ガンナーソロ、アイス・ピラーズ・ブレイクソロ予選
九校戦三日目
アイス・ピラーズ・ブレイクソロペア本選、クラウド・ボール
九校戦四日目(新人戦初日)
ロアー・アンド・ガンナーペア、アイス・ピラーズ・ブレイクペア予選
九校戦五日目(新人戦二日目)
アイス・ピラーズ・ブレイクペア本選、クラウド・ボール
九校戦六日目(新人戦三日目)
ミラージ・バット、モノリス・コード
九校戦七日目(新人戦最終日)
モノリス・コード
九校戦八日目
ミラージ・バット、モノリス・コード
九校戦(九日目最終日)
モノリス・コード
※新人戦ではソロがないため、本戦より日程が少ない。

日が変わるごとに説明する予定ですが、ここにもまとめているので参考までに。


二年目九校戦編6

 

 

 九校戦初日。本日行われるのはロアー・アンド・ガンナーペアと、アイス・ピラーズ・ブレイクペアの予選。

 ピラーズ・ブレイクには雫が出場し、達也はそのエンジニアだ。同じく花音のエンジニアである五十里と会場入りして、選手たちの当日のコンディションを確認、最終調整を済ませる。

 

 今年、ピラーズ・ブレイクはペアが導入された以外に、対戦要領が変更されていた。

 去年までは二十四名でトーナメントを行い、上位三名で決勝リーグを行っていた。だが今年は各校一組の計九組しかいない。それを三つに分け、三組で予選リーグを行う。それぞれ一位となった三組で決勝リーグを行う形式だ。

 一日目の今日は予選リーグ九試合が、男女それぞれ一つのフィールドで行われる。花音・雫ペアは初戦が対七高の第四試合、二戦目が対五高の第七試合だ。

 

「それで……その格好で出るの?」

 

 最終確認を終えた五十里が、諦めを含んだ口調で花音に問い掛けた。

 

「そうよ。可愛いでしょ」

 

 花音がクルッと回ると、カランと下駄が小気味の好い音を立てる。二人の衣装はお祭り用の浴衣だった。

 コメントに困った五十里は、視線で達也に助けを求めた。

 

「雫、今年は涼しそうだな」

「任せて。……似合ってる?」

「ああ。去年の青も良かったが、今年の赤紫もよく似合っている」

「ふふっ、ありがと」

 

 五十里が面に絶望を浮かべた。こう言ってはなんだが、達也ならもっと事務的に済ませると思っていたのだ。

 花音は「司波君でもあのくらいのことは言ってくれるのに」と、婚約者に対してちょっぴり不満げだった。

 

 

 

 選手の入場に、観客席が沸いた。

 フィールド後方の(やぐら)に姿を見せた七高ペアは、お揃いのセーラー服姿だった。上は半袖の白いセーラーカラー、下は紺のプリーツスカート。涼しげなブルーではなく、あえて紺色をチョイスしたところに七高の拘りが感じられる。

 対する一高ペアは色違いの浴衣姿だ。濃い青に花火柄をあしらった大人っぽい浴衣姿が花音、赤紫の生地に同じ系統の色で目立たぬように花火模様を入れた女っぽい浴衣姿が雫。季節的に、正統派で健全な色気を醸し出している。

 一高ペアと七高ペア。ビジュアル面の人気は互角だった。

 

「まあ、観客にどれだけウケたところで試合には何の影響も無いわけですが」

「選手が楽しんでいるんだから良いんじゃないかな。九校戦にもこういう『お遊び』の部分は必要だと思うよ」

「雫も千代田先輩も、衣装選びにかなり力を入れていましたからね」

 

 達也と五十里はその様子を、技術スタッフ用モニタールームで見ていた。

 一高の敷地にはピラーズ・ブレイクに使える練習場が一つしかなく、一試合での選手の消耗も激しいため、休憩時間が多めに取られていた。雫たちはその時間を休むのではなく、衣装選びに充てていた。

 何を着るか、どんな色・柄を選ぶか。ともすれば練習より真剣に意見を交わす二人を見ていただけに、達也と五十里はある種の悟りに至っていた。

 

「ああ、ようやく始まるようですね」

 

 達也がそう言った瞬間、開始を告げるブザーが鳴る。

 

 直後、轟音が試合会場を襲った。約1.83トンの氷柱が倒壊する音だ。

 七高陣地の氷柱が一本、二本、三本と、続けざまに倒される。七高ペアも、自陣の氷柱が倒されるのをただ見ていたのではない。四本まで倒された時点で、残り八本の氷柱が最後列中央を中心に集まって一塊となった。

 

「なるほど。その手できたか」

 

 呟く五十里の声には余裕があった。確かに氷柱を一箇所に集めれば倒されにくくなる。

 

「だけどそれは悪手だよ。花音の『地雷原』の前には」

 

 まるで五十里の声が聞こえたかのように、花音が事象干渉力を高めていた。

 

 七高は八本の氷柱を一体化するという防御態勢を完成させたことにより、攻撃に転じた。

 続けざまに一高の氷柱が倒れていく。一本、二本、三本。まるで抵抗を受けた形跡がない。

 一高の応援席で悲鳴が上がる。七高の応援席で歓声が上がる。

 アクシデントか! という声が悲鳴に混じる。ツイているぞ! という声が歓声に混じる。

 

 だが、七高の猛攻は八本の氷柱を倒したところでピタリと止まった。

 九本目が倒れない。一高陣地、最後列の四本が微動だにしない。

 突然生じた戦況の変化に、圧倒的優位を信じていた七高ペアが、焦った。七高で防御を担当していた選手も攻撃に回る。それでも雫の情報強化を抜くことができない。

 そして偶然にも、花音の魔法が完成したのはその瞬間だった。

 

「油断したな。いや、勝ちを焦ったか」

 

 達也が呟いた言葉は、七高ペアの心理を指してのものだった。

 

「これで勝ちだ」

 

 五十里が呟いたセリフは、花音が魔法を完成させたことを察してのものだった。

 

 花音の、千代田家の得意魔法『地雷原』。

 地面を前後左右に揺らす魔法ではなく、上下の波を作り出す魔法だ。地面に生じた凹凸が短い周期で入れ替わることにより、その上に載っている固体に歪みを生み出し破壊する術式。

 その激しい振動は、氷程度の強度であれば軽々と破壊するエネルギーを秘めている。氷柱を一箇所に集める戦術は、花音にとって的を一箇所に纏めるものでしかなかった。

 

 一塊になった合計14.6トンの氷がその振動に耐えることのできた時間は、わずかだった。一際激しい轟音と共に、全ての氷の塊が砕け散る。

 一拍置いて、試合終了のブザーが鳴った。花音が振り返り、満面の笑みを浮かべて五十里にVサインを見せる。その隣で雫が、達也に向かってこっそり人差し指と中指を立てて見せた。

 

 その後に行われた対五高戦も、一高は四本の氷柱を残して短時間で勝利した。

 

 

 

 一高の初日の成績は、ロアー・アンド・ガンナーが男子三位、女子一位。アイス・ピラーズ・ブレイクも男女共に予選通過という幸先のいいスタートを切ったのだった。

 

 

 

 

 一日目が終了した夜。三高のミーティングルームはお通夜ムードとまではいかないものの、真面目な顔で反省会が開かれていた。

 去年の反省を生かして毎晩開かれることとなったミーティング。まだ一種目が終わったところとはいえ、今日の成績は今年こそ覇権奪取を目標に掲げていた三高にとってかなりの痛手だった。

 

「正直なところ、七高があそこまで仕上げてくるのは予想外でした」

「当校が男子二位、女子三位に対して、七高は男子一位、女子二位か」

 

 真紅郎の言葉を受けて、将輝が本日の成績を振り返る。

 現在の総合順位は七高、一高に次ぐ三位。一高に負けていることもそうだが、ロアー・アンド・ガンナーは三高優勝のために獲っておきたい種目だった。

 

「さすがは『海の七高』だね。術式の精度はそんなに負けてなかったと思うけど、選手の練度が凄かった」

「明日のソロは七高が一位を独占してくれた方が、後々の星勘定は有利になるかもしれんな」

「一高が点を取れないから?」

「自分でも消極的な発想だと分かっている」

「でも明日の男子ソロって……」

 

 上級生たちが明日の展望を話す。そこに真紅郎の硬い声が響いた。

 

「今日のロアガンで予想外だったことが、七高の他にもう一つあります。女子で優勝した一高ペア、そのエンジニアである中条あずさ、一高の生徒会長です」

 

 本日の一高の成績は、男子三位、女子一位。下馬評で有利とされていた三高七高を抑えて、一高は優勝してみせたのだ。

 

 速く安定した走行に、撃ち漏らしのほとんど無い射撃。一高女子ペアのレースを見た際、真紅郎は「やられた」と声を漏らした。目の前の好レースは選手の力量以上にエンジニアの腕が寄与していると、即座に理解したからだ。

 打倒一高を掲げるなら司波達也対策は必須だが、その他のエンジニアは正直警戒していなかった。そもそも警戒が必要なほど飛び抜けたエンジニアが出てくる事が稀だ。

 

「彼女は司波達也ほど手が付けられない訳ではありませんが、極めて優れたエンジニアです。おそらく当初の予想以上に、一高は得点を重ねてくるでしょう」

 

 あずさの担当種目は、女子ロアー・アンド・ガンナーペア、水波を除いた女子クラウド・ボール、ミラージ・バット、モノリス・コード。新人戦では女子ロアー・アンド・ガンナーペアとミラージ・バット。

 合計で六種目九人。これだけの人数のCADを今日のような完成度で仕上げてくるとしたら、間違いなく脅威となる。

 

「となるとうちが優勝するには……」

「はい。明日のロアー・アンド・ガンナーソロと、明後日のアイス・ピラーズ・ブレイクペア、そこが正念場となります」

 

 三高は総合優勝を目指しているとはいえ、全ての競技で優勝を狙っているわけではない。

 例えば女子アイス・ピラーズ・ブレイクソロ。この競技には深雪が出ることが予想されるため、最初から優勝は諦めていた。桐原、水波、ほのかが出場濃厚な男女クラウド・ボールやミラージバットも同じく。

 逆に将輝の出る男子アイス・ピラーズ・ブレイクソロや、三高に有利なロアー・アンド・ガンナーでは優勝を予定していた。

 

 そこで優勝を逃した結果、絶対的な優勝候補がいない他の競技の重要性が増すのは自明だった。

 真紅郎の言葉は厳しい状況にある現状を確認するものであり、該当種目に出場する選手への激励でもあった。

 

「それでは明後日のアイス・ピラーズ・ブレイクペアでの一高対策ですが───」

 

 今日行われたピラーズ・ブレイクペアにおいて、一高と三高は男女共に予選リーグを突破している。

 正念場となる明後日の決勝リーグに備えるため、対策会議は熱を帯びていく。

 

「大丈夫か? ジョージは明日、ロアガンソロの本番だろう?」

 

 将輝が真紅郎へ問い掛ける。将輝は真紅郎が前のめりになり過ぎているのではという懸念があった。

 

 明日行われるロアー・アンド・ガンナーソロ、三高からは真紅郎が出場する。

 元々優勝候補筆頭とされていた真紅郎だったが、今は違う。現在優勝候補とされているのは一高。理由は選手ではなく、そのエンジニアが達也だからだ。

 真紅郎は達也が担当する選手と直接対決の機会が得られて闘志を燃やしていた。

 

「大丈夫だよ将輝、無理はしない。明日のロアガンソロも、明後日の決勝リーグも、どちらも勝ってみせる。達也に一泡噴かせてやるんだ」

 

 真紅郎は心配無用と首を横に振り、そして好戦的な笑みを浮かべた。その表情を見て、将輝も杞憂だったかと胸を撫で下ろした。

 

 

 

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