全くありふれてない職業HEROは地上最強   作:びよんど

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あらかじめ言っておくと、金髪の女の子を封印していた鉱物ごとソレに適応してしまい、思いがけず遺言を発掘してしまったという次第です。

ハンカチは持ったか?……俺は用意できてる。


八礼目 ゆっくり語らいたいけど……(泣)

 

 

<<< 真の〝オルクス大迷宮〟 >>>

 

 

「……凄い、これはどういう魔法なの……?」

 

「魔法?……違う違う、これは『気』を流し込んで地形を弄っただけだよぉ」

 

 

やーやー我こそは、地上最強の二つ名を関するキングなる男である!

……冗談はさておき、サソリモドキを煌閃(ビーム)の染みにした俺は、金髪の女の子と一緒に簡易的な拠点でひと休みしている真っ最中であった。

 

あっ、ちなみに封印部屋の門番をしていたサイクロプスもサクッと始末しておきました。

だってアイツらさぁ、出ていこうとする俺達を突然攻撃してきたんだぜ?

これは立派な正当防衛である!

 

 

「……『気』って何?」

 

「元いた世界で俺だけが使えた不思議で万能なエネルギーって言えばいいのかな?……まぁこの世界における魔力みたいなものだと思ってくれていいよ」

 

「……もしかして、魔法もなしに魔力操作だけで?」

 

 

女の子の驚きっぷりは、それはもう凄かった。

まぁそうだよね、奈落の壁に手を置いて数十秒待つだけで内部に簡素ながらも住空間が出来ているんだもん。

さながら鉱物という名の星々に彩られたプラネタリウムみたいで非常に幻想的だ。ウットリ……♡

 

 

「今回はそうだね。魔法自体は持っているけど、いちいち使うのも面倒だからさ」

 

「……やっぱりレイタロウは凄い」

 

 

……そのまま封印部屋を使う案もあるにはあったけれど、この子の精神衛生上よろしくないと考え、没とした。

 

この子のことは原作でよく知っている。

何百年も閉じ込められていた場所など見たくもないと考えているのは想像に難くない。

 

そんなかんなで、俺はいま魔法のポシェットから鍋とカセットコンロ、食材を取り出して調理の支度を進めながらお互いのことを話し合っていた。

 

 

「そうすると、君は少なくとも300年以上はここに閉じ込められていたってことになるね」

 

「……うん」

 

 

どれだけ気になってもこの世には触れてはならないことがある、その最たるものが女性の年齢だ。

君って300歳以上のロリババアなの?アハハ〜なんて言おうものなら嫌われること間違いなしだ!

俺は言ったことないけど、世の男子はくれぐれも女性の取り扱いには気を付けろよな!

 

ちなみに吸血鬼族は300年前の大規模な戦争で滅んでおり、この子を除いておそらく生き残りなどはいない。

ハジメ君が自信満々に言っていた豆知識だ。

 

二十歳ごろ封印され、現在300歳ちょいくらいだろうこの子は淡々と自らの生い立ちを話していく。

 

 

「……〝再生〟で歳も取らない」

 

 

12歳の時、魔力の直接操作や〝自動再生〟の固有魔法に目覚めてから歳を取っていないらしい。

普通の吸血鬼族も血を吸うことでほかの種族より長く生きるらしいが、それでも200年くらいが限度だそうだ。

 

この子は先祖返りで力に目覚めてから僅か数年で当時最強の一角に数えられていたそうで、17歳の時に吸血鬼族の王になったとのこと。

 

ふーん、全然実力を見てないから何とも言えないけれど、高い実力にほぼ不死身の肉体とは。

行き着く先は〝神〟か〝神に仇なす化け物〟といったところだろうね。……で、この子は後者だったと。

 

欲に目が眩んだこの子の叔父さんが化け物としてこの子を周知し、最終的には大義名分のもと殺そうとしたが〝自動再生〟により殺しきれず、やむを得ずあの地下に封印したのだという。

 

 

「ちょいと気になることがあるんだけど」

 

「……何?」

 

「君の持つ〝自動再生〟って、魔力がなくても発動するものなのかい?」

 

「……魔力が尽きると再生できない。そんな状態で致命傷を受けたら死んじゃう」

 

「自分で言ってて矛盾してると思わない?」

 

「……?」

 

「ほぼ不死身に近い再生能力とはいえ、完全な不死身とは到底言えない。……無視できない欠点があるというのに、君は封印されて曲がりなりにも生かされていた」

 

「………………………!」

 

「魔力を封じた上で殺す手段は幾らでもあったと思うよ。だから〝自動再生〟云々に関しては、たぶん嘘だ。

……君はただ生かされるために封印されていたんだよ」

 

「……嘘、嘘、何のために、そんな……!」

 

 

……なんでだろうね、俺にもよく分かんない。

俺も人の親になればこの子の叔父さんの気持ちが少しは分かるのかしらね?

 

カレーの煮込みにもうしばらく時間がかかるな。

ここは一つ、()()に聞いてみますか!

 

 

「これ、君が封印されていた場所にあった奴だよ」

 

「……うん、でもそれがどうしたの……?」

 

 

取り出したるはダイヤモンドのように透き通った小さな鉱石。

これを解析した結果、映像記録用のアーティファクトであることが分かったのだ!

 

……メタ的な話になるけど、ハジメ君が無抵抗の魔人族を殺戮しだした辺りから読むのをリタイアしていた前世の俺は、結局あの小説がハッピーエンドに終わったと知り完全に興味をなくしてしまっていた。

 

だからね、ぶっちゃけた話ウィ○○ディアで大雑把にしか把握してないのよ、この子の叔父さんの真意を。

 

 

「映像記録用のアーティファクト。……どんなことが記録されているかは分からないけれど、君はそれでも聞く覚悟はあるかい?」

 

「……っ、聞きたい……!」

 

 

よっしゃ、それじゃあ早速聞いてみよー!

『気』を流し込んで―――よし映ったぞぉ!

 

 

「……おじ、さま?」

 

 

か細く、それでいて驚きに満ちた声が小さく木霊した。

俺とこの子の前で映像の人物、叔父さんことディンリードさんが、ゆっくりと話し始めた。

 

 

『……アレーティア。久しい、というのは少し違うかな。君はきっと私を恨んでいるだろうから。いや、恨むなんて言葉では足りないだろう。私のしたことは……あぁ違う。こんなことを言いたかったワケじゃない。色々考えてきたというのに、いざ遺言を残すとなると上手く話せない』

 

 

自嘲するように苦笑いを浮かべながら、ディンリードさんは気を取り直すように咳払いをした。

 

 

『そうだ。まずは礼を言おう。……アレーティア。きっと今、君の傍には、君が心から信頼する誰かがいるはずだ。少なくとも、変成魔法を手に入れることができ、真のオルクスに挑める強者であって、私の用意したガーディアンから君を見捨てず救い出した者が』

 

 

えっ、あっ、まぁそうですが……。

あの人一瞬俺のほう見てなかった?……まさかね?

 

 

『……君。私の愛しい姪に寄り添う君よ。君は男性かな?それとも女性だろうか?アレーティアにとってどんな存在なのだろう?恋人だろうか?親友だろうか?あるいは家族だったり、何かの仲間だったりするのだろうか?直接会って礼を言えないことは申し訳ないが、どうか言わせて欲しい。……ありがとう。その子を救ってくれて、寄り添ってくれて、ありがとう。私の生涯で最大の感謝を捧げる』

 

 

この子、もといアレーティアはひたすら自分の叔父さんを凝視していた。

その目には喜び、怒り、悲しみ、困惑、僅かな恨みが滲んでいた気がした。

 

 

『アレーティア。君の胸中は疑問で溢れているだろう。それとも、もう真実を知っているのだろうか。私が何故あの日、君を傷つけ、あの暗闇の底へ沈めたのか。君がどういう存在で、真の敵が誰なのか』

 

「……真の敵?」

 

 

ディンリードさんの口から語られた話は、アレーティアをして驚嘆たらしめる事実にあふれていた。

 

彼女が神子の天職に生まれエヒトルジュエに狙われていたこと、それに気がついたディンリードさんが欲に目の眩んだ自分のクーデターにより彼女を殺したと見せかけて奈落に封印し、あの部屋自体を神をも欺く隠蔽空間としたこと、彼女の封印も僅かにでも気配を掴ませないための苦渋の選択であったこと、そして、自分が神の逆鱗に触れ、そう遠くないうちに死ぬこと等、様々だ。

 

 

『君に真実を話すべきか否か、あの日の直前まで迷っていた。だが、奴らを確実に欺くためにも話すべきではないと判断した。私を憎めばそれが生きる活力にもなるのではとも思ったのだ』

 

「……そんな、そんな……!!」

 

 

それでも打ち明けて欲しかった。

……そう言いたげにアレーティアは映像の中のディンリードさんを涙目になりながらも見つめていた。

 

封印部屋にも長くいるべきではなかったのだろう。

だから王城でユエを弑逆したと見せかけた後、話す時間もなかったに違いない。

 

その選択がどれほど苦渋に満ちたものだったのか、映像の向こうで握り締められる拳の強さがそれを示していた。

 

 

『それでも君を傷つけたことに変わりはない。今更許してくれなどとは言わない。ただ、どうかこれだけは信じて欲しい。知っておいて欲しい』

 

 

ディンリードさんの表情が苦しげなものから、泣き笑いのような表情になった。

それはひどく優しげで、慈愛に満ちていて、同時にどうしようもないほど悲しみに満ちた表情。

 

 

『愛している。アレーティア。君を心から愛している。ただの一度とて、煩わしく思ったことなどない。……娘のように思っていたんだ』

 

「……おじ、さま。ディン叔父様っ。私はっ、私も……」

 

 

父のように思っていた。

その想いはホロホロと頬を伝う涙とともに流れ落ちて言葉にならなかった。

 

 

ドッドッドッドッドッドッ

 

 

……なんだ?この、胸の内から込み上げる激情は……?

 

 

『守ってやれなくて済まなかった。未来の誰かに託すことしか出来なくて済まなかった。情けない父親役で済まなかった』

 

「……そんなことっ」

 

 

目の前のあるのはあくまで過去の映像、ディンリードさんの遺言に過ぎない。

だがそんなことは関係なかった。

アレーティアは叫ばずにはいられなかったのだ。

 

ディンリードさん、あなたは―――強いヒーローだ。

少なくとも心の強さでは、俺を凌駕しているんだ。

だから、そんなに自分を卑下しないで欲しい。

 

 

ドッドッドッドッドッドッ

 

 

ディンリードさんの目尻に光るものが溢れる。

だが彼は決して、それを流そうとはしなかった。

グッと堪えながら、愛娘へ一心に言葉を紡ぐ。

 

 

『傍にいていつか君が自分の幸せを掴む姿を見たかった。君の隣に立つ男を一発殴ってやるのが密かな夢だった。そしてその後、酒でも飲み交わして頼むんだ。どうか娘をお願いしますと。アレーティアが選んだ相手だ。きっと真剣な顔をして確約してくれるに違いない』

 

 

夢見るように映像の向こう側で遠くに眼差しを向けるディンリードさん。

もしかするとその方向に、かつてのアレーティアがいるのかもしれない。

 

 

『そろそろ時間だ。もっと色々話したいことも、伝えたいこともあるのだが……私の生成魔法ではこれくらいのアーティファクトしか作れない』

 

「……やっ、嫌ですっ。叔父さ、お父様!」

 

 

記録できる限界が迫っているようで苦笑いするディンリードさんに、アレーティアが泣きながら手を伸ばす。

叔父の、もとい父親の深すぎる愛情と、その悲しいほどに強靭な覚悟が激しく心を揺さぶる。

 

言葉にならない想いが溢れ出す。

 

アレーティアがディンリードさんの虚像に触れた。

 

そして―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……アレーティア?」

 

「……お父様?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……奇跡は起こった。

 

前もって言っておくと、目の前にいるディンリードさんは肉体も()()持たないただの映像媒体である。

……ただの映像媒体のはずだった。

 

だが俺の目には、ディンリードさんがどうしても()()アレーティアを認識しているようにしか見えなかった。

そしてそれは、間違いではなかったのだ。

 

 

「……あ、あぁ、アレーティア、愛しのアレーティア、これは私が見ている夢なのか……!」

 

「……お父様、お父様!!」

 

「すまなかった、本当に、すまなかった、許してくれなどともう言えない、私が自分を許せない、君を絶望の底に沈めた私のことを……!」

 

お父様ッ!!!

 

 

抱きしめた、アレーティアが。

誰を?……ディンリードさんを。

 

ただの映像媒体でしかないはずだった、手を伸ばせばすり抜ける虚しき像、それが今のディンリードさん。

 

……300年の時を超え、父娘は再会を果たしたのだ。

 

 

私はッ!あなたの娘でしたッ!!

 

「っ、アレーティア……」

 

奈落の底に封じたことを憎んでなどいませんッ!でも私は怒っていますッ!なぜ何も言ってくれなかったのッ!?娘のように思ってくれたなら、私もともに戦いたかった……ッ!!……私が、弱いから?」

 

 

思いの丈をぶちまけるアレーティア。

最初こそ威勢は良かったものの、徐々にその声量はか細くなり、やがて自らの弱さが原因だったのではないかと言い出した時、ディンリードさんはアレーティアの肩にそっと手を置き優しく諭した。

 

 

「……違う、弱いのは私のほうだ。私には選ぶ強さがなかったのだ。神を打ち倒し、君に真の自由を与えるという最高の選択を取ることが出来なかった」

 

「っ、お父様、体が……!!」

 

 

その時だった、ディンリードさんの体が急速に光の粒子となって崩壊しだしたのだ。

 

映像記録用のアーティファクトも急速に崩壊している。

『気』で補強を試みるが崩壊は止められそうになかった。

 

ディンリードさんは崩れゆく自分の体を見て最期の時が近いことを悟ったのか一転穏やかな表情となってアレーティアだけを見つめた。

 

 

「もう私は君の傍にいられないが、たとえこの命が尽きようとも祈り続けよう。アレーティア。最愛の娘よ。君の頭上に、無限の幸福が降り注がんことを。陽の光よりも温かく、月の光よりも優しい、そんな道を歩めますように」

 

「……お父様っ」

 

 

そこで初めてディンリードさんと目が合った。

 

 

「ありがとう、異世界の英雄の王よ。君のおかげで一時とはいえ娘と本音を交わすことが出来た。感謝してもしきれない。礼が出来ないのが口惜しいが……」

 

「……その言葉だけで十分だ」

 

「私の最愛の娘アレーティアを救い出した君。お願いだ。どんな形でもいい。この子を世界で一番幸せな女の子にしてやってくれ。どうかお願いだ」

 

「……あぁ、承知した」

 

 

ドッドッドッドッドッドッ

 

 

ディンリードさんは満足そうに微笑んだ。

子を思う父親の愛とはここまで凄まじく心温まるものなのかと、確かに俺の心に刻み込まれた。

 

……あなたと酒を酌み交わしたかったよ。

 

そんな俺の内心を知ってか知らずか、光の粒子となって消えゆくディンリードさんはなんとも困ったような顔で微笑み、最後の言葉を口にした。

 

 

『……さようなら、アレーティア。君を取り巻く世界の全てが、幸せでありますように』

 

「お父さ―――」

 

 

ディンリードさんに触れようとした手が空を切る。

映像記録用のアーティファクトが完全に崩壊したからだ。

 

ディンリードさんは今度こそ本当に天国へと旅立っていった、のかもしれない。

 

 

「っ―――――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奈落の底、洞窟の中で泣き声が木霊する。

 

悲しくはある。

……けれどもそれだけではない、温かさの宿った感涙に咽ぶ音だ。

 

ずっと愛されていなかったと、ずっと独りだったと、そう思っていたアレーティアにとって、ディンリードさんの愛はどこまでも深く染みわたったことだろう。

 

俺はずっと彼女に寄り添うことしか出来ないけどね。

 

 

「アレーティア、君はこれからどうしたい?……俺は出来る限り君の力になりたいと思っている。聞かせてくれ」

 

「私は―――」

 

 

この瞬間、俺とアレーティアの感情は一つに重なった。

 

それはつまるところ―――〝怒り〟

 

 

お父様の仇を討ちたい……ッ!!

 

 

ボロボロと溢れ出す涙に先程までの悲しみはなかった。

その涙は、自分から全てを奪った外道に復讐を誓う、受けた屈辱を晴らすための反撃の狼煙を意味する涙だ。

 

分かっていたさ、アレーティアが復讐を選ぶことくらい。

止めないのかって?……おいおい、冗談だろう?

 

神殺し上等だよぉ……!!!(#^ω^)

 

 

「よ〜く分かった、なら君に名前を与えなきゃな」

 

「……名前はもういい。私はアレーティアだから」

 

「本名を変えるワケじゃない。神殺しを成そうとする英雄の二つ名、ヒーローネームを付けるって話さ」

 

「……ヒーローネーム?」

 

「ちなみに俺はキングというヒーローネームで通ってる。元いた世界ではそこそこ有名人なんだぜ」

 

 

俺の提案に少し考え込むアレーティア。

 

 

「……お父様が言っていた異世界の英雄の王って?」

 

「ディンリードさんがどのくらい俺の事情を把握していたかはさておき、俺のヒーローネームの由来は全てのヒーローの頂点に君臨するその姿が王様っぽかったからとは聞いているよ」

 

「……分かる、レイタロウはとっても強いから」

 

「一応候補は上げておくね。気に入らなかったら本名のままでもいいから。……ユエなんてどう?」

 

「……ユエ?どうして?」

 

「最初見た時その金色の髪が月明かりのように輝いて見えたから、ユエって言うのは元いた世界で〝月〟を意味する言葉だから、どう?」

 

 

ユエ、ユエ、と連呼するアレーティア。

その表情から満更ではないことが伺える。

 

 

「……ユエ、今日から私のヒーローネームはユエ。英雄の王とともに神殺しを成し遂げる女……!」

 

「世界に解放と自由をもたらす英雄……なんてのも付け加えなきゃね」

 

「うん!…………………あっ」

 

「ん?どうしたの?」

 

「……鍋、吹きこぼれてる」

 

「えっ!!?……うわぁぁぁぁ!!?」

 

 

神殺しの旅は始まったばかりだ。

……それはそうとカレーちゃんがァァァァァァ!!?

 




語らいはもうちょっと続くかも……?

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