全くありふれてない職業HEROは地上最強   作:びよんど

12 / 14

今のままだとキングさんの足手まといでしかないユエ(アレーティア)の実力を大きく伸ばしていくって話です。


十礼目 パートナーの実力、伸ばします。

 

 

<<< 真の〝オルクス大迷宮〟 >>>

 

 

「いいかいアレーティア、いやユエ。……まずは掌に魔力を集中させるんだ。こんなふうに」

 

「……ん、こう?」

 

「そうそう上手だよユエ、お湯に体を浸けた時じんわり熱が広がるあの感覚を掴めたようだ―――煌閃(ビーム)

 

「シャァアアドパンッ

 

「……でもそこから即座に魔法に切り替えるのが難しい。ちょうどレイタロウにみたいに……」

 

「次はその熱を一箇所に集中させて湧き水のように放出、鎧のように纏う感覚を養うんだ―――煌閃(ビーム)

 

「「「「 ギャァァァ!!? 」」」」

 

 

チュド ゴンッ

 

 

どうも、最高のヒーローこと地上最強の男キングです。

 

現在俺とアレーティアは10mを超える木々が鬱蒼と生い茂る樹海のような階層まで到達していた。

 

 

「「「「 シャァアア!! 」」」」

 

 

で、今まさに恐竜のような魔物に四方八方から襲われながらもその殆どを返り討ちにしてるってワケ。

……それはそうと頭にチューリップやらタンポポやら可愛らしい花を咲かせているのはシュール極まりないけど。

 

 

「これは言ってしまえば魔力操作技術を練り上げた()()()単純で基本的な技でしかない。……が、それゆえに使い手の熟練度がダイレクトに反映されるものだ」

 

「……ん、頑張る」

 

 

普通なら危機的状況だが、アレーティアに俺の技を伝授する稽古台としてここの魔物達を有効的に使わせて、ゲフンゲフン、協力してもらっている。

 

というかあんまし危機感は感じていない。

ぶっちゃけアレーティアと歩きながらこの樹海を散策できるくらい精神的に余裕がある。

 

……そんなことを考えている間に右から三体、左から四体出てきた。

頭にチューリップを咲かせたラプトルみたいな魔物だ。

 

 

「……かわいい」

 

「……ユエ、右の三体を頼めるか?」

 

 

思わずほっこりしながら呟いたアレーティアに言外に気を引き締めろと言っておく。

頭の花は可愛いけどね、相手は曲がりなりにも魔物だから油断しちゃいけないワケよ。

 

ラプトル達は〝花なんて知らんわ!〟と言わんばかりに殺気を撒き散らしながら低く唸っている。

臨戦態勢に入ったけど、花は可愛らしく揺れている。

や、やりづれぇ……!

 

 

「「「「 シャァァアア!! 」」」」

 

 

ラプトル達は花に注目して立ち尽くす俺に一斉に飛びかかってきた。

その強靭な脚には20cmはありそうな鉤爪が付いており、ギラリと凶悪な光を放っていた。

 

……目で見て回避余裕、だがここは敢えて棒立ちで待ち構える。

 

 

―――煌閃(ビーム)

 

 

棒立ちで構える俺の喉元を噛み千切ろうとラプトルの凶悪な(あぎと)が迫り―――すんでのところで黄金色の光の柱がそのラプトルの脳天に突き刺さり貫通、力無く倒れ込み絶命させるに至った。

 

残りのラプトル達の表情が困惑に染まる。

それもそうだろう、先程まで同族の命を刈り取っていたのは俺が放つ攻撃だった。

 

その俺が何もせずに棒立ちしていただけだというのに、急に横合いから別の攻撃が来れば困惑もする。

……けどね君達、そんなところで突っ立ってていいの?

 

仲間を傷付けようとした輩に情けをかけるほど、ヒーローユエは甘くないよ。

 

 

「私はユエ、仲間に手出しする不埒者には遠慮容赦をしない女……!!」

 

 

わざと命の危機を演出した俺が言うのも変な話だけど、アレーティアはどうやら怒りによって急激に成長する性質(タチ)なようで、襲いかかってきたラプトル達相手に煌閃(ビーム)を発射すべく先程俺に教わった方法で魔力を球状に集束させ圧縮を開始していた。

 

……奈落の探索を始める直前、あらかじめアレーティアに俺の記憶や経験を共有しておき、彼女の体内で根付いていた『気』の制御法や二つの神代魔法を習得させていた。

 

そう、奈落の探索をしているこの段階でアレーティアは既に神代魔法を二つも習得しているのだ!これは凄い!

俺みたいに神髄には至っていないものの、彼女の〝空間魔法〟〝再生魔法〟の効力は侮れない。

 

……アレ、言ってなかったっけ?

再生魔法を習得してたんですよ、アレーティアに触れていたらいつの間にか。

 

いや〜正直ビックリしたよね、もしかしてアレーティアの〝自動再生〟の固有魔法に反応して適応が始まっちゃったのかな?

まっ、何はともあれ時に干渉できるようになったのだから俺としては儲けものである。

 

しかし、これで残りの神代魔法は〝重力魔法〟〝魂魄魔法〟かぁ……。

短いようであっという間だったな、俺の神代魔法集め。

 

 

「……終わった。……どう?」

 

「甘く見積もって60点くらいかな。100点満点中」

 

「……厳しい」

 

 

目の前に広がるラプトル達の死体の山を目にして割と甘めにそう評する。

 

神髄には至っていないものの、空間魔法を使ってワープゲートよろしく距離を無視した飽和砲撃を行ったり、再生魔法を応用して()()()()()()()()()()()擬似的な設置型(トラップ)にしたりなど中々に賢い使い方をしているが……。

 

 

「魔力が枯渇しかけているよ。それを証拠にスライムスーツが崩れかかっているし、魔力の割り振りなんかは徹底的に管理しておかないといけないね」

 

「……うっ」

 

「やれやれ、とりあえず俺の血でも飲んどく?」

 

 

そう言って俺は、自分の左腕に右手の爪を立てて思いっきり切り裂いた。

血が派手に飛び散り、勢いよく流れ出ていく。

 

 

「……っ、もったいない……(^ω^)ペロペロ」

 

「何ていうか凄いね。本当に血を飲むだけで魔力が回復するんだ吸血鬼族って……」

 

 

俺の血を舐め回し、みるみるうちに魔力を回復させていくアレーティアを見ながら少し前の出来事を思い起こす。

 

例の如く魔物との戦いで魔力を枯渇させてしまったアレーティアに『気』を送り込んで回復させようとしたところ、当の本人に〝吸血〟という方法を提案されたのだ。

 

まぁ断る理由もなかったため首筋を差し出したワケだが、ここで一つ問題が生じてしまった。

 

 

『……歯が通らない』

 

 

アレーティアの咬筋力では俺の肉どころか表皮すら破ることが出来なかったのだ。

 

伊達にリミッターを破壊してませんから、などと優越感に浸ったものだが、俺から吸血できずにしょぼくれるアレーティアを見て流石に可哀想とも感じ、仕方なく腕に爪を立てて引き裂くバイオレンスな自傷行為に走ったワケだ。

 

勢いよく派手に引き裂いてようやく表皮を傷付けられる、んで、この程度の傷は『気』を使うまでもなく()()自然治癒しちゃうのよ。

 

 

「……血が止まった。もう打ち止め……?」

 

 

そんな捨てられた子犬みたいな顔をしないでよ……。

こういう時に限って自分の肉体強度を恨めしく思うわ。

 

 

「十分魔力は回復しただろう?……それともうすぐ魔物のおかわりがやってくる。数は40だ」

 

「………!」

 

「囲まれると厄介だ、ここはいっちょ君の魔法でカタをつけてやれ」

 

「……分かった」

 

 

アレーティアをお姫様抱っこし、視線の先にあるここらで一番背の高い樹を目指して少し足早に駆けた。

……少しっつってもマッハ2くらいには到達しており、あっという間に目的の樹の枝まで駆け上がった。

 

 

「……速すぎる」

 

「これでも気を遣ってあげたんだぜ?

……本気で走ったらエラい大惨事になるんだから」

 

「……想像したくない」

 

「それはそうと団体様が来たぞ。魔法の準備をしろ」

 

 

眼下にて(ひし)めくラプトルとティラノサウルスの大軍は、俺達を仕留めようと樹に体当たりしたりヒョイヒョイと器用に鉤爪を使ってよじ登ってくる。

 

登ってくるラプトルにはこれ、あらかじめ拾っておいた小石をぶん投げて適当に落としてシュ―――ッ!

超☆エキサイティング!!

 

 

「レイタロウ?」

 

「合図を待て。……まだだ、まだだよぉ……」

 

 

……ぶっちゃけ俺だけでも全滅させるのは容易い。

でもそれだとアレーティアのポテンシャルを見極めることが出来ず、せっかく彼女に根付かせた諸々の〝力〟が錆びついてしまう。

 

何でも出来るからこそ何でもはしないようにしないとね、俺の強さに依存されても困るから。

 

 

「―――いまッ!!」

 

「んっ!〝凍獄〟

 

 

アレーティアが魔法のトリガーを引いた瞬間、俺達のいる樹を中心に眼下が一気に凍てつき始めた。

ビキビキッとイヤな音を立てながら瞬く間に蒼氷に覆われていき、魔物の大軍に到達すると花が咲いたかのように氷がそそり立って氷の華を生み出していく。

 

ラプトル達は一瞬の抵抗も許されず、その氷の華の(ひつぎ)に閉じ込められ目から光を失っていった。

 

氷結範囲は……座標(ここ)を中心に100m四方か。

俺、異世界に来て初めて魔法らしい魔法を見た気がする。

凄〜く新鮮!

 

 

「……ふぅ、まだ余裕がある。……どう?」

 

「お疲れ様、流石はユエだねぇ」

 

「……くふふ……」

 

 

混じり気のない称賛をアレーティアに送っておく。

魔力操作をある程度鍛えたおかげか殆ど無駄(ロス)なく魔力を注ぎ込むことが出来ており、最上級魔法を行使してもさほど消耗していないように見受けられた。

 

流石に疲れていないワケではないだろうけど、使い慣れない技より使い慣れた魔法のほうがよっぽど戦いやすいってことだろうねぇ……。

 

 

「あんまし消耗はしてなさそうだね。この分ならまだまだいけるでしょ」

 

「……そんなことはない、今の魔法で私はヘトヘト。

……だから血を吸わせて……(*´﹃`*)ジュルリ…」

 

「自分で余裕なんて言っておいて……俺の血がそんなにお気に召したのかい?」

 

「……今まで味わったことのない至上の美味。この血を吸ったらほかの血じゃ満足できない……」

 

 

やれやれ、なんか禁断症状みたいなのが出てるし……。

俺の血ってそんなに美味しいのかねぇ?

 

……そんなどうでもいいことを考えていると、ふと無数の魔物がこちらに近付いてくる足音を耳で拾った。

 

 

「数は200、か。減らせど減らせど魔物は湧くばかり……はぁ、やってらんねーな」

 

「……レイタロウ?」

 

「こんなのをチマチマと削ってたら()()()()()()()よ。

悪いねユエ、ここからは俺のターンだ。この階層にいる魔物を全員纏めて焼き払う」

 

「っ!!?」

 

「俺から離れるなよ」

 

 

悪夢(ゆめ)空間 展開〟

 

 

無限リポップする魔物に飽き飽きした俺は、さっさとこの茶番を終わらせるべく持ち前の異空間を展開して俺自身とアレーティア、そしてこの階層にいる()()()()()を残さず幽閉した。

 

 

『……な、にこれ……!?』

 

『『『『 キャ、キャウゥゥ……? 』』』』

 

『……?……!!?』

 

 

ドッドッドッドッドッドッ

 

 

あっという間に視界に映る景色全てが白黒(モノクロ)に染まり、アレーティアとラプトル&ティラノサウルス、ついでに()()()()()()()は困惑を隠せていない様子だった。

 

境界に干渉する魔法で持ち前の異空間〝夢空間〟をより明確なものとし、情報に干渉する魔法によって空間内限定で発生する効果・作用を事細かに設定する。

 

ズバリ、変身することなく変身時と同等のパフォーマンスをこなすと言うもの。

 

……要はあれ、領域○開と同じことをしたかったワケよ。

領域内部は術者が120%の力を発揮できるホームグラウンドとか、領域内部の攻撃は必ず当たるとか、そういうカッチョイ〜ことを俺も出来ないかと試行錯誤したワケよ!!

 

……そんな俺の夢の残骸が夢空間という何とも微妙なものだったが、それも今や過去の話。

 

 

ドッドッドッドッドッドッ

 

 

『悪夢空間……この異空間の名前だ。文字通り俺が夢に見る光景を『気』を媒介に現実世界に貼り付けたもので、脱出するためには俺の意識を喪失させるほか手はない』

 

『……レイタロウ?』

 

『時間の流れも現実世界とは大きく異なる。ここでの24時間は現実での一秒にも満たない、という具合にな』

 

『……いったいどうしたの?』

 

『この異空間に付与されている必中効果は〝煉獄無双爆熱波動砲〟……SSKモードに変身しなければ十全に使えないこの技を、ポテンシャルを120%引き出した上で君達にぶつける。必ず当たるから避けるのは現実的じゃないな』

 

『『『『『『 っっっ〜〜〜!!? 』』』』』』

 

 

ドッドッドッドッドッドッ

 

 

……きっと今、アレーティア達の脳内には俺が煉獄無双爆熱波動砲をぶっ放す姿が映像として流れているはず。

再生魔法を応用して過去の映像を強制的に流し込んでいるワケだから、見る人が見ればちょっとキツいよね。

 

魂魄魔法とかがあれば対象物の選別も楽々こなせるだろうけど……まぁそこは今後の努力次第だな。

 

 

『避けるのは現実的じゃないが防ぐ方法はないワケじゃない。必中効果の適用範囲外にある俺に触れることが出来れば、ソレもまた必中効果から除外される』

 

『■■■■■■〜〜〜ッ!!!』

 

『『『『 シャァアア!! 』』』』

 

 

俺がアレーティアの肩に触れたのと、エセアルラウネが声にならない絶叫とともにラプトル達に突進を命じたのはほぼ同時だった。

 

 

ドッドッドッドッドッドッ

 

 

『そしてこれが一番重要だが、この異空間で起こる一連の現象を説明し、かつ()()()()()()()()()()()()()()ことで発動条件は満たされる』

 

 

昇華魔法の既存の強化倍率だけではぶっちゃけ俺の理想とする出力には程遠かったため、効果範囲をちょうどこの階層一つ分に狭める、個人情報の開示を行うというハンディキャップを設けることで限定的に超強化させ、ようやっと及第点を与えられるくらいの出力を発揮できたワケだ。

 

 

ドッドッドッドッドッドッ

 

 

『破滅の〝白〟に染め上げられろ。……()の一撃こそが、俺を地上最強たらしめる所以だ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……〝最高〟のヒーローにして地上最強の男キング、もといレイタロウにユエというヒーローネームを与えられたアレーティアは、初対面した時から現在に至るまでひたすら彼の存在そのものに驚かされ続けていた。

 

自分を封印部屋からアッサリ解放したこと。

 

封印部屋の番人として配置されていたであろう魔物を一瞥もせず瞬殺したこと。

 

『気』と呼ばれる魔力とは似て非なる未知のエネルギーをその身に宿していること。

 

ヒーローと怪人が存在する異世界から来たこと。

 

彼がその異世界で限りなく最強に近い存在であること。

 

神代魔法で創り出されたとされるアーティファクトに触れただけでその僅かな痕跡から逆算して神代魔法を自力で習得してのけたこと。

 

その神代魔法をいとも容易く自らに伝授してみせたこと。

 

 

「……ふぅ、やれやれ、綺麗さっぱりだねぇ」

 

 

そして、彼も自分と同じく人間ではないことも……。

 

何とか平静を保ちながらも、目の前に広がる光景に思わず冷や汗が流れてしまう。

ついさっきまでここは木々が鬱蒼と生い茂る樹海()()()

 

 

「……本当に焼き払った……(・・;)」

 

 

今は、草木の一本も生えぬ荒涼とした場所となっている。

そこには冷気も熱気もなく、曲がりなりにも魔物の存在で活気づいていたその階層は非常に物悲しい雰囲気を漂わせることとなった。

 

 

「さてと、下の階層に行くか」

 

(・.・;)ビクッ「……っ、う、うん」

 

 

自分がどれだけキングを低く見積もっていたのかを改めて思い知らされることとなったアレーティアは、彼の発言を受けて思わずビクリと体を震わせてしまう。

 

……アレーティアは、表向きはその強さゆえに化け物として迫害され、この奈落に封印されていた。

育ての親の愛によって邪神(エヒトルジュエ)から匿われていたのが真相だが、どちらにしてもその邪神に勝つことは出来ないと判断される強さしか持ち合わせていなかったのだ。

 

 

「……化け物としての次元が違う」

 

「はっは、そりゃどうも」

 

 

この時点でアレーティアは確信していた。

 

神であるエヒトルジュエを打ち倒せるのは、後にも先にも目の前にいるキングを置いてほかにはいないと。

 

 

「……嫌味じゃない。……純粋な尊敬」

 

「?……そうかい」

 

 

今更ながらもアレーティアは、自分の全てをキングに差し出すことを決意した。

 




ミレディさん「……なんだろ、今ものすごくイヤな予感がしたんだけど……?まるでメインディッシュと言わんばかりに肉食獣に見つめられる餌の気分だよ……(震え)」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。