ステータスプレート君「信じられないものを見た」
<<< 〝ハイリヒ王国〟 >>>
どうも、S級ヒーローキングことレイタロウです。
今日は楽しい楽しい訓練と座学の時間でございます。
外に集められた俺と生徒達に、12cm×7cmくらいの銀色のプレートが配られたぉ。
コツンコツンと配られたプレートを小突く俺に、騎士団長メルド・ロギンスさんが直々に説明をしてくれた。
対外的にも対内的にも勇者様一行を半端な者に預けるわけにはいかない!……な〜んてもっともらしいことを言ってたけど、俺は知ってますよメルドさん。
面倒な仕事を副長さんに押し付けただけでしょう……?
副長さんの胃が心配でしょうがない。
「よし、全員に配り終わったな?このプレートはステータスプレートと呼ばれている。文字通り自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、くれぐれも失くすなよ?」
はぁい、絶対失くしましぇん!!
うんうん、やっぱりこのくらいの気楽な距離感が居心地いいんだよなぁ……。
これから戦友になろうってのにいつまでも他人行儀に話せるか!って言ってほかの騎士団員の人達にも普通に接するように忠告するくらいだからねぇ。
こういう人は信頼できる。俺の経験則ね。
まだまだ説明は続く。
プレートの一面に刻まれている魔法陣に血を一滴垂らすと所持者が登録されたりとか、ステータスオープンと言えば表に自分のステータスが表示されるとか。
これは謂わば神代のアーティファクトとのこと。
アーティファクトとは、現代じゃあ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことを指し、神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。
ステータスプレートはその一つで、複製するアーティファクトとセットで昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトなんだと。
「……普通アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証に便利だからな」
なるほど〜と頷いた周りの生徒達。
顔を顰めながら指先に針をブスッと刺し、ブシャーっと噴き出した(※誇張です)血を魔法陣に擦りつけていた。
すると魔法陣が一瞬淡く輝いたのだ。
俺も同じように針を指先に押し当て血を―――は、針が、指を貫通しねぇ……!!
あっ、折れた。
「どうしたキング?問題か?」
「あ〜いや、ハハハ、何でもないですよ……?」
あ〜もう焦るなぁ!
こうなったらしょうがあるまい、血の代わりにたくさんの『気』を流し込んで誤魔化そう!
……あっ、なんか文字が浮かび上がってきたぞ?
どれどれ―――
レイタロウ 25歳 男 レベル:1
天職:〝最高〟の英雄
筋力:999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999
体力:999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999
耐性:999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999
敏捷:999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999
魔力:999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999
魔耐:999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999
技能:神体MX[+適応進化MX][+身体強化MX][+物理耐性MX][+特殊耐性MX][+人化MX]・キング流気功術MX[+気功操作MX][+気功治癒MX][+気功瞬動MX][+気功強化MX][+気功感知MX][+気功共鳴MX][+気功創造MX][+夢空間MX]・無窮練武MX・英雄体質MX・空間魔法・言語理解
*気功操作
魔力操作も兼ねている。
*特殊耐性
物理攻撃以外の特殊攻撃全般への耐性を持つ。状態異常耐性も兼ねている。
*無窮練武
ありとあらゆる武を見聞きし、その全てを習得した上で更なる武の頂きを目指さんとする求道者に与えられる狂気の称号。
*英雄体質
生まれながらに英雄として生きることを宿命づけられた者に送られる
*レベルMX
その技能の熟達レベルが1,010に達したことを意味し、この域にまで至ればそれ一つで大体のことが出来る。
広げるな、深めろ。横にすれば同じだろう?
*ステータスプレートからあなたへ
あなたは本当に人間ですか……?
……えぇ(ドン引き)
ちょ、ちょい、俺のスペック……何コレ?
10の―――32乗?
つまり
こんなの絶対壊れてるってェェェェェェ!!
ぎ、技能の数自体は少ないけど、もう技能が派生しておる……!
この後にくっついてるMXってギリシャ数字で1,010を意味しているから―――ハハハ、笑うしかねぇ……。
……ん、空間魔法?
「全員見れたか?説明するぞ?まず最初にレベルがあるだろう?それは各ステータスの上昇とともに上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。レベル100ということは人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。そんな奴はそうそういない」
……つまりまだまだ成長する余地があるってことォ?
嬉しいような恐ろしいような……。
「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし魔法や魔法具で上昇させることもできる。また魔力の高い者は自然とほかのステータスも高くなる。詳しいことは分かっていないが魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。そうそう、それと後でお前ら用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。なにせ救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大開放だぞ!」
ま、まぁ、カタログスペックだけ高くても意味はない。
いかに戦闘慣れしているか、これに尽きるよね!
「次に天職ってのがあるだろう?それは言うなれば才能だ。末尾にある技能と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。……天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが、百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多いな」
つまり俺は最高の英雄というものに才能があるワケだな!
……最高の英雄って何よ?この英雄体質って奴かな?
「後は――各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁお前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな!全く羨ましい限りだ!……あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」
えっ、ヤバいヤバいマズいって!?
こんなステータス他人に見せられるワケないじゃん!
どうしよどうしよ―――
「……あ、あの、キングさん、僕のステータス見てもらっていいですか……?」
「ん?どうしたんだハジメ君―――あっ」
いつの間にか隣に来ていたハジメ君。
その手に握られていたステータスプレートには、綺麗なまでに並んだ6つの〝10〟の文字。
そうだ、そうだったよ、ハジメ君も初めは非戦系で苦労していたんだっけ……。
「つい最近筋トレ始めたばかりだから、そう簡単に結果なんて出ないとは分かってたんですが……」
「そうだったのか。……いや、それならそれでいいんじゃないのか?戦争に志願せずにあくまで裏方に徹するという選択肢もある」
「そ、そうですよね!こんな一般人並のステータスじゃ戦うなんてとてもとても……」
そうだよハジメ君、君は君の能力の範囲で出来る限りのことをしてくれるだけで皆の役に立てるんだから。
間違っても魔物肉は食べないでね?約束だぉ!
……俺もそう、可能な範囲で最善を尽くしてやっと誰かを助けられる。そういった積み重ねが大事なのさ。
そう考えると俺とハジメ君ってマジで似た者同士なのかもしれないね!
「ほぉ~流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外な奴め!頼もしい限りだ!」
「いや~、あはは……」
……メルドさんの称賛に照れくさそうな表情を浮かべるコウキ君。
あぁして見ると年相応の少年だってことが分かる。
……俺、コウキ君の家族を殺しちゃったのかなぁ?
聞きたいけど聞けない、もどかしいったらないな。
ちなみに技能=才能である以上、先天的なものなので増えたりはしないっぽい。唯一の例外が派生技能だ。
コイツは一つの技能を長年磨き続けた末に、いわゆる限界の壁を越えた者が取得する後天的技能とのこと。
簡単に言えば今まで出来なかったことが、ある日突然コツを掴んで猛烈な勢いで熟練度を増すらしい。
……派生してるどころかとんでもないレベルで練り上げられているんですけど、俺が自覚してなかっただけ……?
「でも錬成師って……非戦系なんですかね?」
「そこら辺はメルドさんに聞いてみればいい。
メルドさん、ちょっと見てもらっていいですか?」
「あぁ!ハジメのステータスもさぞ良いものだろうな!」
ハジメ君が恐る恐るステータスプレートを手渡した。
これから戦友となる少年の能力の高さを想像しホクホク顔のメルドさん。
……ハジメ君のステータスを見た瞬間、その顔は固まっちゃったけどね……。
「あぁ、その、なんだ。錬成師というのは、まぁ言ってみれば鍛治職のことだ。鍛冶するときに便利だとか……」
「か、鍛冶職ですか……」
「おいおいハジメ〜。もしかしてお前非戦系か?鍛治職でどうやって戦うんだよ?」
ん?このチャラそうな彼は―――檜山大介って言ったか?
おっと、超大陸だとどう呼ばれているのか分からんな。
「メルドさん、その錬成師って珍しいんッスか?」
「……いや、鍛治職の十人に一人は持っている。国お抱えの職人は全員持っているな」
「おいおいハジメ~。お前そんなんで戦えるワケ?」
……実に嫌らしい性格をしているなぁ。
そもそも君、昨日話し合ったことをもう忘れたのかい?
「「「「 っ、キ、キングさん……!!? 」」」」
「そこの君……一つ質問が…ある」
「ひょへっ!!?……お、俺でしゅかっっ!!?」
そんなにキョドらなくてもいいじゃん皆ぁ……。
ただ檜山くぅんに質問するだけだよ……?
「有能な働きとは何か…逆に無能な働きとは何か…答えてほしい……」
「へっ、えっ、あっ、そ、その、あの……」ワタワタ
「お、おい、大丈夫かヒヤマ……?」
あ、やっぱりヒヤマ君って言うんだね。
……んじゃまぁ、目が泳ぎすぎて魚になりそうなヒヤマ君に代わって俺の答えを言っておこう。
「……自分の限界を知り…その上で……選択し…実行できるかどうかだ……」
「「「「 ……!! 」」」」
「そしてこれは…必ずしも戦うことのみを……話題に上げているワケではない。……戦わないこと…逃げること…これらもまた立派な……選択肢だ」
「キングさん……」
「正しい選択だけ選び取れれば……いいだろうが…生きていれば…間違える時もある。……だが間違えることは…決して恥ではない。……反省し改善する…その積み重ねが…人間力を養い……正しさを養い…ひいてはそれが…有能な働きに繋がる」
……なんだか凄く説教臭くなっちゃったね……。
ごめんごめん、説教したくて言ったワケじゃないんだ。
「兵士には兵士の…料理人には料理人の…そして錬成師には錬成師の……適正というものがある。……そこに優劣は存在しない。……生産職の重要性は…戦場で戦う兵士と何ら遜色…ないんだ」
イサム君とかが良い例だね。
彼の場合戦闘もこなせるけれど、それ以上に画期的な発明をしてヒーロー協会に貢献している。
社会貢献的な意味では俺より優れているんじゃないかな?
この魔法のウエストポーチなんかもイサム君の発明だしね、ホント助けられてるよぉ。
「キング!……黙って聞いていれば好き勝手言い腐って、貴様のせいでヒヤマが反論できていないじゃないか!自分の立場を弁えろ化け「やめんかコウキ!!」
コウキ君の言葉を遮るようにメルドさんが怒声を飛ばす。
メルドさんはステータスプレートをハジメ君に返すと、申し訳なさそうに頭を直角45度下げた。
「申し訳ない!戦闘系ばかりが続いて浮かれてしまった!キングの言う通り、錬成師もまた軽んじてはならない職業だということを失念していた!すまん!!」
「い、いえ、僕は大丈夫です」
「……そもそも戦争に参加するかどうかはお前達の意思に委ねられているんだ、無理強いなど到底できん」
うんうん、そうだよ皆分かりましたか?
戦うことしか出来ない人が何かを生み出す人をバカにしてはいけないって話ですよ?
オーケーオーケー、生徒の皆さんに分かってもらえて先生は嬉しいです(何様)
「……それはそうとキング、お前のステータスをまだ見てなかったな。ちょいと確認させてもらえるか?」
「えぇどうぞ―――あっ」
ヤベッ、ついノリで渡しちった……!!
ロクに隠蔽できてないぞ―――
「な、なんじゃこりゃあぁぁ!!?」
「え、どうしたんですかメルドさ―――うぇぇ!!?」
「な、なにこのステータスの桁数……!!?」
「嘘だろ……桁一つ二つ間違えてねーか!!?」
「だとしてもおかしいわ!!」
「ステータスプレート壊れてるってハハハ……」
「なっ……なっ……!!?」
「キングさん……強いことは分かってたけど次元が違うってコレ……」
あーあ、やっちゃった!
もう先生知ーらない、プイッ(思考放棄)
結局その後、あの場にいた全員に箝口令が敷かれ、俺のステータスに関する一切が極秘扱いとなった。
よくよく考えなくとも、あんなバカが考えたような数値を叩き出した俺を国としても逃がしたくないだろうし、魔人族側に知られるワケにもいかないと考えるのが自然だ。
『キング、お前さんのステータスについては報告させてもらうが、技能にいくつか不穏なものがあった。
……この年になると疲れやすくなる、
これだけは言える。メルドさんにマジ感謝。
ちなみにいま俺は自分の部屋の中で瞑想している。
なぜ瞑想しているかって?
それはね、いま〝適応〟してるのよ―――
……
んで、今さっき適応が完了した。
俺が手にした神代魔法は三つ。
……なんで一箇所も迷宮を攻略してないのに神代魔法を習得できたのか説明する前に、俺の特異体質について話をしておくとしよう。
俺は原作のサイタマと同じように強さに上限が存在せず、感情を昂らせることで際限なく成長・進化していく生物としては規格外な能力を持っている。
その成長速度はいっそ異能と言って差し支えなく、俺は便宜上〝適応進化〟と呼んでいるワケだ。
触れるか触れられるかでその事象への適応を始め、時間をかけて解析。
……完了とともにその事象に対して最適な形に進化し続けるって寸法だ。
この適応にかかる時間を短縮する方法は二つあり、一つ目は適応対象から抵抗を受けること。
適応の完了にかかる時間が、例えば一時間から一分に短縮され適応の深度が更に深まる。確実性で言えばこれだ。
そもそも『気』も〝神〟の力の悪影響だけを取り除いて質良く安全なクリーンエネルギーに改善した代物なのだ。
〝神〟に対して最も効果のある力とも言い換えられる。
……話が脱線しちゃった。
適応にかかる時間を短縮する方法二つ目、それは今やった『気』を全身に巡らせて全身を刺激するというもの。
一度でも接触したものを頭で思い浮かべながら『気』を巡らせることで、一つ目ほどではないにせよ適応にかかる時間を短縮し深度を深めることができる。
……昨日閃いたんだよね。
アーティファクトは大昔、神代に創られた。
ならば当然、神代魔法によって創られたと考えるのが自然だ。
そのアーティファクトを元に〝適応〟を試し、逆算して神代魔法を習得できないか?
そこで目をつけたのがステータスプレート。
ステータスプレートの説明と前世の記憶を思い出し、もしかしたら昇華魔法が使われているんじゃね?と予測。
部屋に引きこもってステータスプレートと自分自身にありったけの『気』を流し込み続けた結果、見事俺の目論見は成功したのだ。
なぜ空間魔法を最初に習得していたのか、それは恐らくこの世界に連れ去られる際に空間魔法が使われ、その時に適応が開始したからとしか思えない。
生成魔法に関しては―――昇華魔法を鉱物に移植した際の残滓に反応したんじゃなかろうか。たぶん。
とはいえだ、異世界に来て僅か二日で三つの神代魔法を手に入れられるとは幸先がいい。
「夢空間、展開」
よーし、せっかく手に入れた魔法だ。
他の追随を許さないくらい磨き上げて、俺だけの最強魔法に生まれ変わらせよーッ!!
ノイントちゃん「ステータスの桁がバグってる男がおりました。イレギュラーとして排除しますか?」
エヒトさん「ふーん、どのくらいよ?」
ノイントちゃん「各ステータスが999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999です」
エヒトさん「……ステータスプレートが壊れてるだけじゃんソレ。適当な報告すんなし」