???「強い奴イジメる馬鹿がどこにいんだよ」
<<< 〝ハイリヒ王国〟 >>>
「キングッ!今日という今日は貴様を倒してやる!勝負だッ!!」
「……え?」
コウキ君に唐突にふっかけられた喧嘩に乗るべきか、それとも素気なく断って逃げるべきか、究極の二択に俺の頭は大混乱を起こしちゃったの―――
……時は少し遡る。
「キングさん、今日も訓練に付き合ってもらえますか?
お願いします!」
「「「「 お願いします!! 」」」」
「……俺は一向に構わない」
自分の最強ぶりとチート具合を改めて突きつけられた日から一週間が経ったよぉ。
俺は今、頭を下げて訓練のお願いをしてきているシズクさんをはじめとした一部の生徒達を見ながら、ここ一週間の出来事を回想していた。
結論から言って実に有意義な一週間だったよぉ。
まず最初に、異世界に召喚されて僅か二日で手に入れた三つ、もとい
〝空間魔法〟……俺との相性は非常に良かった。
元々瞬間移動をちょくちょく使っているから相性いいんじゃないかなぁ〜とは思ってたけど予想以上だった。
この魔法の正しい定義は境界に干渉すること。
即ち
やろうと思えば種族的・生物的・空間的な隔たりや距離感を排除できるスゲー魔法なのだ。
この魔法のおかげで俺の〝夢空間〟がより確固たるものとなったが、あくまで余談である。
〝昇華魔法〟……コイツとの相性が一番良かった。
この魔法を使うことで俺は雑に強くなれるのだ。
この魔法の正しい定義は情報に干渉すること。
あらゆる既存の情報を閲覧でき、魔力量に応じてその情報に干渉することが出来るって話。
自分に対して使うことであらゆる能力を強化できる。
俺の場合、どんなに下振れしても千倍以上の強化倍率を叩き出すことが可能だ。
〝生成魔法〟……まあまあ相性は悪くなかった。
ハジメ君みたいに〝錬成〟は使えない俺だけど、ゼロから創り出したモノを精密に加工する分には全く問題ないため実質錬成が使えるようなもんだなッ!
この魔法の正しい定義は無機的な物質に干渉すること。
必ずしも鉱物にしか魔法を付与できないものではなく、やろうと思えば水や食塩、大気中を漂う酸素なんかにも魔法を付与することが出来るのだ。
酸素に魔法―――というかキング流気功術奥義を付与することで、一見何もない場所から殺人レーザーを射出するなんていう面白い使い方も出来たりと応用に富んでいる。
〝変成魔法〟……中々やり甲斐があったものだ。
訓練の一環で野良の魔物を相手取った際に適応が始まり、丸一日かけてこの魔法を体得するに至った。
この魔法の正しい定義は有機的な物質に干渉すること。
動物のみならず植物や食料、人間に対しても効果を発揮する面白い魔法であり、ちょいと慣れれば魔物の体内に〝魔石〟を発生させずに作り変えることも可能だ。
……俺が一番に目を付けたのは生成魔法と対になっているという点だ。
理論上は変成魔法によって魔物に作り変えた生物にも魔法を付与することが出来るのではないかと考えた俺は、植物や食料から変成させたある魔物を創ろうとしている。
……が、これにはちょっと時間がかかっている。
完成を楽しみにしてくれよな!
「……今日はシズクさんとナガヤマ君、ノムラ君、アヤコさん、マオさんでいいのかな?」
「はい、ほかの皆は
「俺達は自主練ってことで抜けてきました」
「コウキ君に見つかると面倒……いえ、何でもないです」
コウキ君の名前が上がり、思わず黙り込む一同。
……無論、神代魔法の研鑽だけにかまけていたワケじゃないよホントだよ?
現にこうやって一部を除いた生徒達がちょくちょく人目を忍んで俺のところに来ているワケなんだからさぁ。
訓練が始まった当日、コウキ君を除いた大勢の生徒達、シズクさんやカオリさん、ハジメ君、リュウタロウ君などの錚々たる顔ぶれが俺の部屋にまで押しかけこう言ってきたのだ。
どうか自分達を強くしてもらえませんか?と……。
『……コウキ君の姿が…見えないな……?』
『コウキには……
『……理由を聞いても…いいか……?』
俺だって流石に気になるよ、コウキ君が俺に向ける憎悪の念が半端じゃないんだもん。
百歩譲って省くのはいいとしても、もし俺に原因がある場合コウキ君があまりに不憫でならない。
『……いや…すまない……どうやら俺は…コウキ君の家族に…図らずも…手をかけてしまったらしいからな……』
『それは違いますッ!!』
カオリさんの悲痛な叫びを聞いて思わず心臓が高鳴っちゃったよ。……動悸的な意味で。
『……取り乱しました。でもキングさん、ご自分を責めないでください。キングさんは何も悪いことなどしていないんですから……!』
『いや、善悪の基準なんて人それぞれだから―――』
『それでもッ!!キングさんが責められる謂れなんて微塵もないんです!……だってキングさんは
『カオリッ!!』
『っっっ、ごめんシズクちゃん……』
ますますワケが分からなくなっちゃったよ……。
コウキ君の家族を殺したことで憎まれるのは分かるけど、同時にコウキ君の命まで救ってたってことォ……?
っていうかアレだな、助けた人の顔とか名前とか全部記憶できるワケじゃないもんで、俺が忘れているだけで知らず知らずのうちにコウキ君を助けていたってことになる。
……のかなぁ?
『すみません、本当にすみません、私達の口から言えるのはこれが限界で、この先はどうしてもキングさんに知られたくないんです……!』
『でもこれだけは言えます!ここにいる俺達全員キングさんを慕ってここまで来たんです!キングさんしか頼れる人がいないんです!!』
『『『『 キングさん、お願いします!! 』』』』
……無理矢理口を割らせる手段がないワケじゃない。
けどそれは、俺を信じて駆け込んできた彼彼女らの信用を裏切る最悪の一手だ。
信用を裏切るような真似はしたくない。
俺に知られたくない真実は、俺という人間をもっと知ってもらってから聞き出すと決めた。
そんでもってシズクさん達の訓練に付き合うことを了承したのだ。
「それじゃあ、軽く打ち合ってからそれぞれの課題を見つけていくとしよう」
「「「「「 はいッ!! 」」」」」
訓練施設の死角となる人けのない場所。
そこが主な俺達の訓練場所である。
俺が生徒達に教えてやれることなど一つしかない。
……それぞれが出し惜しみなく俺と戦い、動きの拙い箇所を逐一伝えて修正させるというものだ。
この一週間、色んな子が代わる代わる入れ替わりながら現れ、上述した方法で徹底的に無駄を削ぎ落としていったことで最初の頃とは比較にもならないほどの成長を遂げてくれたんだぁ。
結果が目に見えて分かると俺も嬉しく思うよ―――
「ほらっ、さっさと立てよ。楽しい訓練の時間だぞ?」
「ぐあっ!?」
ん?さっきの声はヒヤマ君と―――ハジメ君?
おいおい、ヤバめの叫び声だったんじゃないの……!?
いつも使わせてもらってる人けのない場所から聞こえてきたな。
クソッ、まさかヒヤマ君達―――
「何をしているッ!!」
「「「「 ひぃぃィィィィィィ!!? 」」」」
「キ、ングさん……」
……あぁやっぱり、ハジメ君をイジメてやがったよ。
何が楽しいんだか全くもう……!!
「あ、あの、キングさん、誤解しないで欲しいんですけど、俺達、ハジメの特訓に付き合ってただけ―――」
「どけ、邪魔だ」
「ひっ、す、すんません!!」
ハジメ君に近付きその上体を起こす。
『気』で打撲や火傷、切り傷を治癒していき、あっという間に全快させてあげた。
「いったい何やってるのよアンタ達……」
「くだらん……」
一緒に駆け付けてくれたシズクさんやナガヤマ君は、その場の状況を一目見ただけで何が起こったのかを理解したらしく、ヒヤマ君達に非難と呆れの視線を向ける。
「動けそうかハジメ君?」
「はい、すぐにでも走り出せそうなくらいです!」
はぁ、良かったよぉ……。
とりあえずハジメ君を連れてこの場から離れたほうがいいな。そのほうがいい。
「シズクさん、すまないが今日は……」
「……はい、仕方ないと思います」
ヒヤマ君達のイジメ行為については、後でメルドさんにも共有しておいたほうがいいな。
彼にも目を光らせてもらえば下手な真似はすまい―――
「これは……一体どういうことだッ!!?」
……よりにもよってコウキ君が臨場してしもうた。
スゲー話がややこしくなりそうな予感……。
「……事情は理解した。いくらハジメが戦闘に向かないからと言っても同じクラスの仲間だ。二度とこういうことはするべきじゃない。
分かったかヒヤマ、ナカノ、サイトウ、コンドウ」
「あ、お、おぅ……」
コウキ君の言葉にバツの悪そうな表情を浮かべながら曖昧な返事をしたヒヤマ君達。
……ホントに反省しているのかねぇ……?
コウキの傍にいたカオリさんやリュウタロウ君も同じことを思っていたのか怪訝そうにヒヤマ君達を睨んでいる。
「うん、反省しているようで嬉しいよ!行ってよし!」
ただコウキ君にとっては十分な反応だったらしく、一転晴れやかな笑顔を浮かべヒヤマ君達を許してしまった。
「……待て」
「「「「 (・.・;)ビクッ 」」」」
だが、そうは問屋が卸さない。
そそくさと逃げ出すヒヤマ君達に注意しとかなアカン。
「……この件はメルドさんにも報告させてもらう。君達のハジメ君への加害行為は目に余るからな」
「「「「 そんなぁ!!? 」」」」
当然でしょバカチンがぁ!!
イジメられる側に問題があるなんてそんな戯言は聞きたくないからね俺はッ!!
純度100%君達イジメる側が悪いのよ!!?
全くさぁ、こんな異世界に来てイジメの現場を見ることになるなんて思いもしなかったよホントにぃ―――
「キングッ!今日という今日は貴様を倒してやる!勝負だッ!!」
「……え?」
「ちょっとコウキ!あなた自分が何を言ってるのか分かってるの!?」
「シズクは黙っていてくれ!!俺は何としてもこの邪悪な怪物を打ち倒さなければならないんだッ!!」
「やめろよコウキ!お前じゃ逆立ちしたってキングさんに勝てっこねぇ!!」
「そんなことはない!俺もこの一週間で劇的に強くなった!今ならキングに勝てる、勝ってみせる!!」
「だからそういうんじゃ……あっ、バカ!」
お、おいおい、剣を向けるんじゃありませんよ……。
「俺の全てを否定する〝悪〟め!クラスの皆の善意を利用し貪ることで生き長らえてきたようだがもう終わりだ!光り輝く正義の聖剣の錆にしてくれる!!」
ちょま、こんなところで剣を振り回すつもりかッ!!?
クソッ、少々手荒だが気絶させるほかないか―――
「やめんかバカ者共ッ!!!」
「「「「 っ、メルド
……メルドさんの野太い怒声によってその場にいた誰もが動きを止めた。
マジで間一髪だったぁ……。
「……両者の言い分を聞くにヒヤマ達のほうに非があるのは明らかだ。何よりそんなヒヤマ達の行為を簡単に許してしまったコウキもせめて私に一言相談して欲しかったな」
「……ッ」プイッ
「やれやれ……」
メルドさんの執り成しでどうにか事を収めることが出来てホント一安心……。
まぁそりゃそうだよね。
あれだけ大勢の子達が証言してくれたんだもの、これでヒヤマ君達が懲りてくれれば最善だけど……無理だよなぁ、絶対やらかすよなぁ(原作既読勢)
「しかしメルドさん!その怪物は今はヒトの形をしていますが人間なんかじゃありま―――」
「そのことについてはシズク達から聞き及んでいる。
お前の言うキングの怪物としての姿が
「そんなの出鱈目だッ!!」
……メルドさんの目に俺がどんなふうに映って見えているのか、正直なところ分からない。
バカみたいに大きいだけのモヒカン男なのかもしれないし、身の毛もよだつ悍ましい化け物なのかもしれない。
でもこれだけは言える。
……メルドさんは公明正大な男であるとね。
「……キング、コウキ、上官命令だ。
お前達は今後、お互いに接触することを禁ずる」
「分かりました」
「そんなッ!?不公平だッ!!」
……なんとなく予想してましたよ、接近禁止。
まぁ想定していた中では穏便なほうじゃないかな。
「……話は以上だ、二人とも行ってよし」
「はい、失礼します」スタスタスタ……
「待て!逃げるな卑怯者ォォォォォォ逃げるァァァァァァ!!」
……俺達は出会うべきじゃなかったのかもしれない。
コウキ君、君に必要なのは俺への憎悪ではない。
頭を冷やすためのたくさんの時間だ。
冷静に自己を見つめ直したほうがいいよきっと。
俺も頭を冷やして思い出してみるからさ……。
というワケで、追うコウキ君から逃げる俺であった。
一方、騎士団長メルド・ロギンスは疑問に感じていた。
何を疑問に感じていたのか、それは勿論キングことレイタロウとコウキの関係性についてである。
「……シズク、一つ聞きたいことがある」
「……コウキについて、ですよね……」
「話が早いな。……ここ一週間キングとコウキの行動をそれとなく観察していたが、キングに問題があるとは俺には到底思えんのだ」
メルドから見たキングという男は、実年齢以上に冷静で視野が広く、礼節を弁え謙虚、厳つい風貌に反して至って温和な人格者であった。
召喚された生徒達の相談事に乗っている姿を何度も目撃されており、深く信用・信頼されていることが分かる。
城内での評判も悪くなく、特にリリアーナ王女とは親しい関係を築いているらしい。
弟君のランデル王子からは強い男として尊敬されており、好きな異性を射抜くためにどうすればいいのかキングに相談する姿を目撃されているが、あくまで噂である。
むしろそのキングに何度も突っかかるコウキのほうがよっぽど問題児であり、言ってしまえば強面な大人を悪者にして好きなだけ暴言を吐きまくる躾のなっていないワガママな子供がコウキという人間であった。
これでは来たるべき戦争(志願するかはさておき)で協力し合えない可能性が極めて高く、連携など取れようはずもない。
「一つ、約束してください」
「……言ってみろ」
「……私達がこれから話すことを、キングさんには絶対言わないでください。お願いします……」
「キングを傷付けるかもしれないからか?」
シズク達のこれまでにない真剣な表情に、メルドもまた気を引き締め直す。
それだけ重大な話なのかとも疑問に思ったが、茶化すような真似はしない。
「……メルド団長、まず初めにキングさんが元いた世界でどういった存在だったのかを知ってほしいんです」
「お前達が元いた世界でどういった存在だったのか?
いやまぁ、一目見ただけで強いなとは思っていたが……」
「強いなんて話じゃないですよ。
あの人は、キングさんは地上最強です」
ハジメの断言するような言葉に思わず息を飲むメルド。
今まで主体性のない男とハジメを評していただけに意外だったのだ。
「ち、地上最強……?」
「……複数の街が壊滅する危機、僕達の元いた世界では災害レベル【竜】と呼んでいますが、まさしく竜と呼んで差し支えない脅威的な化け物が月一回のペースで人類社会を滅ぼそうと襲ってくるんです」
「りゅ、竜?災害レベル?月一回のペースで?」
何やら途方のない話になりそうだと頭を抱えてしまう。
「……すみません、突然何言ってるんだと思いますよね。でも全て事実なんです。僕達の元いた世界には竜に匹敵するほどの脅威がいて、人類を滅ぼそうと虎視眈々と付け狙っているんですよ」
「そ、そうだったのか。だがそれとキングがどう関係してくるんだ―――ま、まさか!!?」
メルドの頭に浮かぶ一つの答え。
あり得ないと思わずかぶりを振りそうになるが、そう考えるとこんな話をされた意味が分かる。
「……キングさんは人類の中でもごく僅かな、竜に匹敵する脅威を相手に余裕勝ちできる
ハジメの話に嘘はない。
嘘みたいな、何の確証もない口伝でしかないと言うのに、メルドはハジメの話を真実であると直感してしまった。
ステータスプレートに記された天職が、何よりも雄弁に物語っていたために……。
「お分かりいただけましたか?キングさんは比喩や誇張抜きに人類の至宝なんです。そんなキングさんがヒーローを辞めたり、あまつさえ亡くなるようなことがあれば人類全体の損失に繋がる。そんなことは―――」
「……そんなことは、断じて容認できないんです」
ハジメに代わって今度はカオリが口を開いた。
その目からハイライトは消えており、メルドですら計り知れないほどの〝闇〟を宿していた。
「っ、俺に話す内容はつまり、キングが知ればキングが人類の守護者を辞めてしまうほどのことなのか?
……それだけのことを、コウキがしでかしたと……?」
「「「「 ………コクッ 」」」」
もはや後悔する段階すら飛び越えてしまった。
メルドは、キングが背負う重責とコウキの大罪を思い知らされることとなる。
「メルドさんは親を
予定よりかなり早いですが、コウキ君が何をしてしまったのか次回書いていこうと思います。
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