一応ヒロインはアイコ先生です。
でもすみません、キング(レイタロウ)さんは妻帯者なので恋愛とかには発展しません。
というかキングさんは野郎との絡みが多いもんで……。
<<< 〝ハイリヒ王国〟 >>>
「……いよいよか」
いや〜いよいよかぁ〜〝オルクス大迷宮〟
緊張で心臓が高鳴って止まらねぇ!!
あ、どうも、地上最強の男ことキングです。
俺は今、自分の部屋の中でいつになく緊張と期待に心臓を高鳴らせている真っ最中でございます。
何故かって……そりゃアンタ決まってるじゃないですか。
明日この国から出て、オルクス大迷宮に挑むんだよぉ!!
100層はある
そしてそこで原作のハジメ君は奈落に落ち、探索の只中でヒロインを見つけるって話よ!
……でもね、原作通りにいかないのが世の常だ。
俺という異物が混ざり込んだことで原作とは大きく変わったことがいくつかある。
一つ目、原作主人公に相当するハジメ君。
彼の原作における性格は、豹変する前も後も孤独を友とする一匹狼気質だったと解釈していたが、この世界ではどうやら微妙に違うようだった。
シズクさんの話によるとハジメ君とカオリさんは密かに付き合っているらしい。
彼女の見立てでは既に
……人のことは言えないけど、最近の若い子ってホント大人の階段登るの早いよねぇ。
せっかく出来た可愛い彼女なんだから大切にしてあげなよと後方ヒーロー面をしながら見守る俺であった(何様)
二つ目、ハジメ君のライバルポジにいたコウキ君。
〝ワンパンマン〟と〝ありふれた職業で世界最強〟のクロスオーバーみたいなこの世界で、コウキ君はアンチとして俺にちょっかいをかけてきている。
接近禁止令?そんなものコウキ君にとってあってないようなもんだよハハハ……。
……だからなのかな、オルクス大迷宮に行くぞー!って言っていたメルドさんが俺にこう耳打ちしてきたのよ。
『後で二人だけで話せないか?』
もしかしなくてもアレだな、接近禁止を無視してちょくちょく接触している俺にも厳重注意をしてくるんだろうなぁなんて考えて、いま自分の部屋で待機しているんだ。
おっと、噂をすればだ。
「キング、入っても大丈夫か?」
「どうぞメルドさん、入ってください」
開くドアの先にいたのは、私服姿のメルドさんの姿。
流石に四六時中武装しているワケにはいかないからね。
「お茶、すぐ入れますね」
「いや、いい。……話はすぐ終わる」
熱々のお茶が入ったティーポットに手を伸ばす俺を制止したメルドさんは、近くにあった部屋の椅子を引き寄せドカッと勢いよく座った。
……は、話しかけづれぇ……!
もの凄く重苦しいんですけどぉ……!
「……実はな、お前さんに一つ頼みがあるんだ」
「いったいどのような……?」
「なぁに、難しいことじゃない。……明日行くことになるオルクス大迷宮だが、今回は20階層までとあらかじめ予定してある」
「えぇ、あの子達のレベルに合った難易度だと思います。それがどうかしましたか?」
「……お前さんにはホルアドで待機していてもらいたいんだ。お上には俺から話を通しておく。だから、頼む」
………………………えっ!!?
「な、なんでそんなことを……!?もしかしてコウキ君と俺の仲の悪さを危惧して……?」
「……それに答える前に、お前さんの覚悟を問いたい」
「……覚悟、ですか?」
「ハジメ達からお前さんの武勇伝は聞かされてるんでな、お前さんが元いた世界でどれだけ凄まじい存在であったか嫌というほど理解させられた」
えぇ……ハジメ君達がそんなことを……?
そんな自慢できることじゃないんだけどなぁ……。
ってか武勇伝って、恥ずかしいよホント!!
「文字通りの英雄様というワケだ。本来であればこんなタメ口を聞くのも憚られるが―――ここは敢えて言わせてもらおう。……キング、お前さんにはあるのか?全ての闇を抱えてなお戦い抜く覚悟が……!!」
「あります」
「……即答か」
そりゃあそうですよ、腐ってもヒーローなんでね。
一度名乗ったからには最期まで泥臭く人助けを全うするつもりですよ俺ァ。
……例えどんな結果が待ち受けようとも、ね。
ティーポットのお茶をカップ二つに注ぎ、一つをズズズッと飲みながら俺のほうからも質問してみる。
「なんとなく分かりますよメルドさん。シズクさん達は俺に打ち明けなかった秘密をあなたには教えた、そうでしょう?」
「……参ったな、昔から隠しごとは得意じゃないんだ」
「メルドさん。……俺が助けた人間が、実は悪人だったなんてことはしょっちゅうあるんですよ」
「ッ!!」
「ソイツのせいで奪われた命もあるでしょう。ソイツのせいでこれからも多くの命が奪われるかもしれない。
助ける、救う、導く。……これらの行為は一過性のものではなく、巡り巡って最後には自分に跳ね返ってくる。
例えその全てを覚えていなくとも決して忘れちゃならないことだと俺は肝に銘じています」
助けた命の善性も悪性も引き受ける。
ハッキリ言って苦行だ。
けどね、俺個人としては助けるべき命に区別をつけたくないワケよ。
あくまで可能な範囲でだけど、俺はこの小さな手で掬い上げられる命は救うと心に誓っているんだ。
「俺はあくまで傲慢に生を押し付けていきます。
……勿論、人に危害を加える怪人は倒しますが」
「……そうか」
差し出したカップに手を伸ばしたメルドさん。
そのまま豪快にお茶を飲み干し、まるで憑き物が取れたような晴れやかな表情で口を開いた。
「カオリ達の心配は杞憂だったようだな。お前さんは、俺が思っていた以上に強く逞しい英雄だった」
「……話してくれますか?あの子達が俺に言いたがらなかった秘密を……」
「あぁ勿論だ。だが覚悟しろよ?他人の俺が聞いてドン引きしたくらいだからな。それだけコウキの闇は深い」
「……聞きますよ。夜はまだ長い」
……やれやれ、これでようやく秘密を聞けるワケか。
メルドさんの話を聞いた感想を一言で纏めようと思う。
コウキ君マジヤバくね(震え)
つまりはアレか、一度は甦った自分の家族を手前勝手な都合で殺しちゃったってこと!!?
そして家族が死んだのは
ま、まるでワケが分からん……!!
「……ネオヒーローズ、コウキはその組織に所属し匿われているらしい」
「ネオですか。……えぇ、俺も聞いたことはあります。
新興のヒーロー団体であると」
ネオヒーローズ……俺も原作を読んで知っている。
あそこは見てくれこそヒーロー協会よりマシに見える。
けれど結局は人類社会を征服しようとする〝悪〟であることは分かっている。
でもまさか協会のお膝元のA市で起こった殺人事件の隠蔽をしていたとは、結構大胆に動いているな……。
「俺個人としては、コウキのような危険人物は一刻も早く牢獄に繋いでおいたほうが安全だと思っているが、お上、聖教教会がそれを許してくれないだろう……」
「確か俺に次ぐステータスの持ち主だとか。各ステータスが1,000は超えていると聞いてます」
「……恐ろしい成長率だ。お上もその点に期待しているんだろう。俺ではコウキを押さえることは難しい」
「……顔を合わせると殺意を向けられ、さりとて離れすぎると何をしでかすか分からない、か……」
メルドさんの苦労が目に浮かぶな……。
そんないつ爆発するか分からない爆弾を抱えながら危険地帯に飛び込めと言われたら、俺からストを起こすね。
……あっそうだ、いいこと思いついたゾ!
『っっ〜〜〜、なっ、なんだこれはッ!!?』
『驚かせてすみません、ここは俺が秘密の話をする時に展開する異空間です。無害な場所なので大丈夫ですよ』
『ほ、本当か?……いやはや、お前さんはもはや何でもありだな……』
『それほどでもありません。……では早速本題に入りたいんですが、まずここで話したことは他言無用ということでお願いします』
『あ、あぁ、了解した』
現実世界とは異なる
……ただまぁ、その威を発揮するのはもう少し先の話になるだろう。
今はとりあえず秘密の話が出来ればそれでいい。
一つの部屋に二人の男、何も起きないはずもなく、月下の語らいは夜明けまで続くこととなった。
別に変なことはしとらんからな!!?
<<< 宿場町〝ホルアド〟 >>>
……はい、というワケで着きましたホルアド!
現在俺達はオルクス大迷宮の正面入口がある広場に集まっております!
いや〜それにしても、流石冒険者が多く集まるだけあって活気が凄まじいですね!
露店なんかも所狭しと並んでそれぞれの店がしのぎを削りあっております!
このお祭り騒ぎ、嫌いじゃないですよぉ!
「キングさんがいれば百人力ですね!」
「……どんな危険が待ち受けているか分からない、気を抜くなよハジメ君」
「は、はい!」
……やれやれ、お祭り騒ぎに浮かれるのは終了だな。
ハジメ君の隣を歩きながら俺は、魔法のウエストポーチにあらかじめ収納しておいた二ヶ月分の食糧(現地調達)を携帯端末の画面でチェックしていく。
……よしよし、準備万端だなぁ。
さながら博物館の入場ゲートのようなしっかりした入口の近くに受付窓口があり、制服を着たお姉さんが笑顔で迷宮への出入りを逐一チェックしている。
なんでもここで出入りを記録することで死亡者数を正確に把握するんだとか。
魔人族との戦争が控えている今、多大な死者を出さない措置なんだろうねぇ。
浅い階層の迷宮は稼ぎ場所として人気があるようで人も自然と集まる。
馬鹿騒ぎした輩が勢いに任せて迷宮に挑んで命を散らしたり、裏路地よろしく迷宮を犯罪の拠点とする人間も多くいたようで、戦争を控えながら国内に問題を抱えたくないと冒険者ギルドと協力して王国が設立したっぽい。
入場ゲート脇の窓口でも素材の売買はしてくれるので迷宮を探索する冒険者は重宝しているらしい。
「……ハジメ君、戦闘に不安を感じたら遠慮なく頼ってほしい。君に作らせた
「あ、ありがとうございます!……でも、僕も出来る限り頑張ります!」
腰に提げたソレを手で軽く叩きながらハジメ君は笑った。
……いやいや、本音を言えば君には迷宮に潜ってほしくなかったんだけどなぁ……。
仕方なし、俺が上手く立ち回ってハジメ君を奈落に落とさぬよう気張るしかないかぁ!
……これからのことを思い、思わず溜息が零れた。
<<< 〝オルクス大迷宮〟 >>>
ふーん、外と違って中は不気味なくらいに静かだなぁ。
「キングさんキングさん、松明もないのになんで迷宮の中は薄ぼんやりと発光しているか知ってますか?」
「……確か、緑光石とかいう特殊な鉱石がたくさん埋まっているからだったかな?」
「そうなんです、この大迷宮は巨大な緑光石の鉱脈を掘って出来ているんですよ!」
へー凄いなぁ、なんて適当に相槌を打ちながらメルドさんの先導で隊列を組みながらゾロゾロと進んでいる。
ちなみに俺とハジメ君は列の最後尾でくっちゃべりながら周囲の警戒に当たっている。
……あっ、言ってなかったけどアイコ先生は天職の関係で迷宮探索には同行していない。
命に直結する一次産業を支える〝作農師〟は、下手な戦闘系よりよっぽど肝腎要な存在だ。
ホイホイ戦場に顔を出していいワケがないからね、こればかりは流石にしょうがないよねぇ……。
……と、しばらく何事もなく進んでいると広間に出た。
ドーム状の大きな場所で天井の高さは7、8mくらいはありそうだねぇ。
「……ネズミが出てきたな。武器を抜けハジメ君」
「っ、はいッ!」
壁の隙間という隙間から灰色の毛玉が湧き出てきた。
……うーわキモッ、あれ全部ネズミかよぉ……。
「よし、コウキ達が前に出ろ。ほかは下がれ!交代で前に出てもらうからな、準備しておけ!
あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが大した敵じゃない。冷静に行け!」
ラットマンと呼ばれた魔物が結構な速度でこちらめがけて飛びかかってきた。
灰色の体毛に赤黒い目が不気味に光るラットマン。
その名称通り外見はネズミっぽいけれど、二足歩行で上半身がムキムキだった。
エイトパックと膨れあがった胸筋の部分だけ毛がない。
見せびらかしてるのか?見せびらかしてるんだなぁ……。
正面に立つコウキ君達(特に前衛に立っていたシズクさん)の頬が引き攣っている。
まぁあれは流石に気持ち悪いよねぇ……。
間合いに入ったラットマンをコウキ君、シズクさん、リュウタロウ君の三人で迎撃する。
その間にカオリさんと特に親しい女子二人、メガネっ娘のエリさんと元気ロリっ子スズさんが詠唱を開始し、魔法を発動する準備に入る。
訓練通りの堅実なフォーメーション、俺でなきゃ見逃しちゃうね(何様)
コウキ君は純白に輝くバスタードソードを視認も難しい(常人目線)ほどの速度で華麗に振るって数体まとめて葬っている。
彼の持つ剣はハイリヒ王国が管理するアーティファクトの一つで、名称はズバリ〝聖剣〟
光属性の性質が付与されており、光源に入る敵を弱体化させると同時に自身の身体能力を自動で強化してくれるという実にいやらしい性能を誇っている。
リュウタロウ君は空手部らしく天職が〝拳士〟であることから籠手と脛当てを付けている。
こちらもアーティファクトで衝撃波を出すことができ、また不壊特性があるという。
そんな彼はどっしりと構え、見事なパンチとキックで敵を後ろに通さない。
無手でありながらその姿は
……うっ、タンクなんていうと、どこぞのマスターを思い出してしまう……。
シズクさんは見た目と出自から分かる通り〝剣士〟の天職持ちで、
……なるほどねぇ、正しく鍛えればA級のイアイアンに届くかもしれないなぁ。
コウキ君達の活躍ぶりを遠くから観戦していると、突如として詠唱が響き渡った。
「「「 暗き炎渦巻いて、敵の尽く焼き払わん、灰となりて大地へ帰れ――〝螺炎〟 」」」
三人同時に発動した螺旋状に渦巻く炎がラットマンの群れを吸い上げるように巻き込み燃やし尽くしていく。
キィイイッ!!という嫌な断末魔を上げながらパラパラと降り注ぐ灰へと変わり果て絶命した―――いや、全滅できてないなこりゃあ。
「「「 ムキィイイッ!!! 」」」
「「「 きゃぁぁああ!!? 」」」
「っ、しまっ―――」
「散々練習した甲斐があったな、ハジメ君」
「……ふぅ〜、実戦に耐えうるようで良かった……」
魔法の巻き添えを食わずに生き残ってしまったラットマン三匹は、復讐と言わんばかりにカオリさん達に奇襲を仕掛けようとしていた。
だが、そんなことを許すハジメ君ではない。
腰に提げたガンホルダーからソレ、つまり回転式拳銃を抜き放ち、両手でしっかりと握り、味方に被弾しないように注意しつつ、ラットマンに狙いを定め、引き金を引いた。
発射された弾丸三発は吸い込まれるようにラットマンの頭部に直撃、脳内を駆け巡りながら派手に脳漿を撒き散らし絶命させるに至る。
当のハジメ君は、額に汗かきながらも排莢を速やかに済ませる辺りどこぞのガンマンを彷彿とさせる。
「ありがとうハジメ君!……その、それって……?」
「あぁこれね、キングさんと共同で作った銃だよ」
「そうなんですか!?いつの間に……」
「……あくまで護身用として、な」
……もうダメじゃないのハジメ君、そんなホイホイ前線に出ちゃ危ないでしょ?
とはいえだ、戦闘で取れる手段の少ないハジメ君に身を守る手段を与える場合、銃が一番手っ取り早く確実だったワケで、手助けした俺にも責任があるんだよなぁ……。
と言っても単に銃を与えたワケじゃない。
銃を作る上で必要な材料と設計図、場所は提供したけど〝錬成〟でここまで精巧に作り上げたのはハジメ君の技量によるものだ。
〝夢空間〟はねぇ、マジ便利なのよ。
現実世界では一秒にも満たない刹那の内にハジメ君に銃や弾丸を錬成させ、撃ってはまた錬成させを繰り返し、錬成や射撃の腕を上達させることが出来たってワケ。
ついでにシズクさん用のニホン刀も作らせ、俺が念入りに『気』を込めて強度を上げたものをこっそりと渡しておいてあるが、あくまで余談である。
ホルアドに到着したその日の夜の出来事である。
……入れ替わるようにネグリジェ姿のカオリさんがハジメ君の部屋に入っていったけど、あれこそ月下の語らいなんだろうな多分。
それにしてもイサム君はなんで兵器の設計図一覧をウエストポーチに入れてたんでしょ?
いやまぁ実際拳銃を作る上で非常に助かったワケだけど、俺に兵器が必要だって思ったのかねぇ……?
「ああ~、うん、よくやったぞ!
次はお前らにもやってもらうからな、気を緩めるなよ!」
コウキ君達の強さに苦笑いしながらも気を抜かないよう注意するメルドさん。
ただまぁ、大迷宮の魔物初討伐にテンションが上がっちゃって皆聞く耳を持っちゃいないねぇ……。
「ったく、しょうがねぇな。……それとな、今回は訓練だからいいが魔石の回収も念頭に置いておけよ。
明らかに
……あー、カオリさん達後衛組の火力が高すぎて殆どのラットマンが消し炭になってるから……。
ハジメ君の仕留めた三匹のラットマンのほうがよほど損傷が少ないくらいだから相当だね。
「それにしてもハジメ、その武器はいったい何なんだ!?宝物庫にはなかったと思うが……」
「これはキングさんと一緒に作った銃というものです。
非力な僕でも扱えるようにとキングさんが気を利かしてくれたもので……」
「何!?ハジメ、そんな武器は捨「そうかそうか!魔法よりも発動が早いからビックリしてな!後でゆっくり聞かせてくれッ!」
ホント頭が上がらない、マジあざっすメルドさん。
そんなことを思いながらハジメ君と一緒にいそいそと魔石集めに勤しむ俺であった。
「(……キングゥ……(・д・)……!!)」
「(……キモオタがぁ……(・д・)……!!)」
区切りがいいので今回はここまでです。
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