TSしたかったけどゴブリンの雌は聞いてない   作:匿名ゴブリン

6 / 6
 


ゴブリン兄弟

 俺は兄ゴブリンに連れられて巣穴の中を進んでいった。

 

「弟よ、俺はゴガンと言う。お前の名前は何だ?」

 

 無言でこのゴガンと名乗るゴブリンについて行っていたのだがこの気まずい空気に耐えられなくなったのかゴガンが口を開いた。

 

「ん、私? 私はステラ」

 

 俺のその言葉を聞いて、ゴガンはゴブリンとは思えない優しげな笑みを浮かべた。

 

「そうか、ステラ。聞き慣れない名前だが良い名前だな」

 

 こいつゴブリンだけど結構優しいのか? 

 

 俺がゴガンに向けて怪訝な表情を向けるとゴガンは何かを勘違いしたようだった。

 

「はは、確かにお前は群れに入るのが遅くなってしまったが他の奴らにいじめられたりはしないから安心しろ。俺の他にもお前の兄貴は多くいる。俺たちがお前をちゃんと鍛えて一人前のゴブリンにしてやるからな」

 

 そう言って俺の頭をポンポンと優しく叩いた。

 

 俺は少しざらついていて、土や何やらで汚らしいゴガンの手を何故か振り払えなかった。

 

「やめて」

 

「なんだ、恥ずかしがっているのか? 可愛い弟が増えて俺は嬉しいぞ」

 

 俺がそう言っても、ゴガンはそう満足気に言った。

 

「さあ、着いたぞ。これがステラの兄貴たちだぞ。ちなみに俺が一番上だ」

 

 案内された巣穴の一室には3人のゴブリンが武器を持って、俺たちを待っていたようだった。

 

「ゴガン兄、遅かったな。そんでそっちのがオデの弟か? 何だか似てねぇな」

 

 始めに口を開いたのは壁に寄りかかるようにして座っていた砲丸のように丸い身体をしている大きな木槌を持ったゴブリン。

 

 そのゴブリンは本当はゴブリンではなくオークのなのではないかと思うほど身体が他のゴブリンとは一回りも二回りも大きかった。

 

「おい、そんなこと言うもんじゃないぞ。確かにワシたちより違うようじゃが。よく見ればとても似ているじゃないか。目は二つに口、それに鼻も付いてるぞ」

 

 オークのようなゴブリンの言葉にそう言ったのは、何かの毛を接着剤か何かで口にくっつけて付け髭のようなことをしているゴブリンで何かの本を持っていた。

 

「おお、確かにやっぱりグインの兄貴は頭が良いや」

 

 どうやらその付け髭のゴブリンはグインというらしい。

 

「いやいや、そこまでではない」

 

 グインは本をペラペラとめくりながらそう答えていたが俺からすればさっきの言葉を聞いて賢ぶっているゴブリンなんだなということが分かった。

 

 俺はそんな彼らの前でどうしていいかと様子を覗うとゴガンが忘れていたなと彼らの自己紹介を始めた。

 

「まず、改めて俺はゴガン。こいつらの兄貴だ。この中では群れで最年長だから分からないことがあったら俺に聞くといいぞ。次、グイン」

 

 ゴガンが改めて名乗ると次に次男であろうゴブリンを指名した。

 

「ああ、ワシはグイン。ワシはこの群れのゴブリンの中で一番賢いと言われているから賢くなりたかったらワシが何でも教えてやろう」

 

 グインはそういって付け髭を撫でながらそう言った。

 

 そして、次に指名されたのはオークのようなゴブリンだ。

 

「オデはえーと、名前、名前……」

 

 どうやらそのゴブリンは自分の名前が分からなくなってしまったようで頭をポリポリと掻きながら唸っていた。

 

 その様子を見かねた、ゴガンが耳打ちをした。

 

「あっ、そうだ。オデ、オデはガド。オデは力持ちだがら、持てないものがあったら代わりに持ってやるぞ。えっと、あと、やっぱりなんでもない」

 

 そして、次に指名されたのはとても明るいゴブリンだった。

 

「はい、はーい。僕はショド。初めて弟が出来て嬉しいよ。僕は兄ちゃんたちのように優れたところはないけど頑張るからね」

 

 ショドはそう言って手も振ってくれた。

 

 最後に俺の番が来る。

 

「私はステラ。よろしく」

 

 俺は友好的だがこれから俺がエルナとこの巣から出ている計画でもしかしたら敵対するかも知れない兄たちと交友を深めない方が良いかと思って、ぶっきらぼうに短くそう言ったが兄たちはそれぞれ満足そうに頷いた。

 

 こうして自己紹介が終わるとゴガンが言った。

 

「よし、挨拶も済んだな。じゃあ、狩りに行くぞ」

 

「……狩り?」

 

 俺が聞き返すとゴガンは頷いた。

 

「ステラ、お前はまだ群れの正式な一員じゃない。群れに入るには力と貢献が必要なんだ」

 

「それが狩りなの?」

 

 俺がそう質問するとグインが待ってましたとばかりに付け髭を撫でながら説明を引き継いだ。

 

「うむ、外で狩りをして、それを巣に持ち帰る。それができて初めて、真の群れの一員と認められるのじゃ」

 

「出来なかったどうなるの?」

 

 俺が一応ゴブリンのリーダーになった時のために聞いておこうとグインに質問する。

 

「そうじゃな、例えばこの巣の食料は分配制なのじゃが、その量が少ない。しかも、もしみんなが巣に食料が持って帰れない状況が続いて備蓄もなくなれば分配はなし。それと怪我や病気になった時に他に怪我や病気のゴブリンが居ればそっちが優先されたりする」

 

「そういうことだ」

 

 ゴガンが腕を組みながら頷いた。

 

「群れは助け合い、仲間はもちろん大事だが時には見捨てなければならない時があるんだ。あ、でも俺たち兄弟は別だ。どうなったとしても困っている兄弟が居たら、全員で助けるんだ」

 

 もっとこう、ゴブリンは弱肉強食で好き勝手にやってるだけの集団かと思っていたが意外とルールがあるんだなと俺は思った。

 

 そして、最後の言葉を聞いて何だか出来るだけ彼らとは敵対したくないなと感じた。

 




 応援よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

いや、死神とか聞いてないし(作者:わお)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

死神少女にTS転生してしまった一般人。▼本人はただの下っ端役職だと思っている。▼だがそんなはずもなく。


総合評価:1220/評価:7.97/連載:6話/更新日時:2026年05月12日(火) 21:12 小説情報

327人殺した転生美少女の俺は、誰も殺していない ~首を刎ねると、現代日本で目を覚ます~(作者:里奈使徒)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

327人殺した——というのは、濡れ衣だ。▼首を刎ねると、相手は現代日本で目を覚ます。そして俺も、一分だけ日本に戻れる。▼見た目は金髪碧眼の美少女。中身は過労死した32歳の元社畜。▼米が食いたい。漫画が読みたい。アニメが見たい。▼だから俺は、貧民街の絶望した者たちを選んで送っている。▼感謝してほしい。▼現場に残された血文字「RJ」——憲兵はこれを「Red Jo…


総合評価:1196/評価:7/連載:23話/更新日時:2026年05月02日(土) 15:27 小説情報

壊れかけの聖女に俺がインストールされたらしい(作者:一般聖女もどき)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

聖女ちゃんが、心を閉ざして動かなくなっちゃった、どうしよう!?▼せや、適当にそこら辺の魂突っ込んどけばええやろ!▼それで、俺が選ばれたってわけ▼んで、聖女の仕事を代行してるけどさ▼死なないからって限度があるだろ▼仕事するけどさ▼というノリで、周りの脳を焼いていく?話▼※不定期更新


総合評価:1186/評価:8.22/連載:14話/更新日時:2026年05月13日(水) 07:03 小説情報

TS転生悪の組織の研究者VSど変態(魔法)少女(作者:こばみご)(オリジナル現代/コメディ)

魔法少女パワーをチューチューするために原石を誘拐したら、とんでもねえ変態だった。恐ろしい!


総合評価:1906/評価:8.82/連載:12話/更新日時:2026年05月11日(月) 20:30 小説情報

魔法少女の恩師の死体を乗っ取ったクソ外道にTS転生しちゃった(作者:エターナルフォースブリザード)(オリジナル現代/日常)

 魔法少女 メルティ・ルナ。▼ 小学生並みの外見にも関わらず、最強の魔法少女として、多くの魔法少女たちに慕われる彼女。▼ ――の死体を乗っ取ったクソ外道マッドサイエンティストにTS転生しちゃった!? ▼ 目覚めたのは化け物がうごめく研究所。銀髪ロリボディを堪能しつつ、とりあえず、日本に帰って平和に暮らしたい。▼ そう思って街に出てみたんだけど……。▼「ま、魔…


総合評価:1832/評価:8.08/連載:6話/更新日時:2026年02月17日(火) 21:04 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>