スタンドギャザリング 作:折り紙のユニコーン@UNICORNぬ
立ち上る土埃。階段上のドアから差し込む一筋の光が、彼を照らしている。
「立ちな……!こっちはまだまだ殴り足りねーぜ!」
吹き飛ばされた幽霊に向き直る高校生くらいの男の人。
その背後には人ならざるモノが佇んでいた。
やられそうになったら適当に助けて、こっちで片付けるつもりだったけど……杞憂だったらしい。
でも、あれはなんだろう。自分の重瞳の片側を隠せば見えなくなる。幽世のほうじゃないと見えないってことは、まず人じゃない。
――――けど、霊にしては異質。憑依霊ではない。彼のほうがアレを動かしてる……俗に言う守護霊みたいなもの……?初めて見た。
「ちょー気になるー……!」
「おいガキ、俺から離れんじゃねーぞ」
「初対面の女性に、大胆……」
「そーゆーんじゃねーよ!!」
いいリアクション。友達を気にしてるところといい、悪い人ではないと思う。
「見えてんだろ、コイツが。ネオユニヴァースは俺から4m以上離れられねーからな……遠すぎるといざというときアブねーだろ」
「……わかった」
自分で対処できるけど、この『ネオユニヴァース』と呼ばれるなにかを観察するのに丁度いい。らくちんだし、しばらく彼に任せて様子見しよう。
「あのヤロー、思ったより頑丈だぜ。挨拶代わりの一発ではあるが、もうちっとダメージがあるもんだと思ったんだがな」
のそりと起き上がり、威嚇するように金切り声を上げる、細身の男の悪霊。
目は落ち窪み、その手は血で真っ赤になっている。頑丈なのも当然。被害者の数からして、そこそこの数の幽霊を食べてる。
「ここの心霊スポットは危険度Aクラス。そこそこの頻度で死者も出てる。悪霊もけっこう力を持ってるはず」
「なんだその物騒な分類。あとで色々聞かせろよ」
「私も色々聞きたい」
会話をしていると、悪霊からオーラが立ち上ぼり、空中に何本もナイフを生み出していく。
「来る……」
「おう、見えてんぜ」
ネオユニヴァースと呼ばれる星空を人型にしたようなソレが、私達を守るように彼の前に立ち、拳を構える。
それとほぼ同時にナイフの切っ先がこちらを捉え、飛来する。
どうやら生前に凶器として使っていた刃物を生み出し、自在に操れるらしい。
ちらりと彼を覗き込む。普通の人ならパニックになっててもおかしくない。けど、全く動じてない……守護霊がいることを込みにしてもあまりに冷静で、その瞳はまっすぐ敵を見据えている。
【ヌゥン!!】
ネオユニヴァースが動き出す。拳が幾つにも分裂して見える程のスピードのラッシュがナイフを四方八方に弾いて防いでいく。
自慢の攻撃が防がれたからか、怒りに顔を歪めた悪霊本体も多数のナイフを伴って襲ってくる。
……けど、すぐに止まることになった
「――――!今、なにかした?」
「ああ、したぜ。だが、ほとんど自業自得だ。こんな馬鹿みてーに刃物振り回してるから、ケガすんだぜッ!」
突然悪霊のいくつもの身体に切り傷ができた。彼もネオユニヴァースも、何かをした素振りは見えなかった。でも、私も
「弾いたナイフの、刃の軌道を再発生させた……テメーはそこに突っ込んだんだ。
つっても、テメーには理解できねーだろーけどな」
軌道の、再発生?確かに切り傷ができたのはさっき弾かれたナイフが通っていたあたり……でもナイフ自体はもう消えていたはず……
つまり、
「だからこーゆーことも……できるんだぜッ!」
【オラァッ!】
突然のダメージに困惑している悪霊に接近し再び拳を繰り出すネオユニヴァース。今度は軽いジャブを一発放っただけ……でも、私の予想が正しければ……
悪霊が二歩分押し込まれる。そして、聞こえてきた音も二回分。
やっぱり。今、一発のジャブが二回当たった。多分ジャブのミートを再発生させてる。
「そんじゃあ、そろそろ終わらせるぜ……覚悟はいいか?」
【オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ――――オラァッ!!】
素早く悪霊の懐に潜り込んだネオユニヴァースが、先程よりも速いラッシュを放つ。
聞こえてくるインパクトの音が異常なほど多いことから、このパンチは一発一発が再発生されていると分かる。
その勢いはこちらにも風圧が届いて服の裾や前髪をはためかせるほどだ。
最後の渾身の一発を受けた悪霊は、ぐったりと倒れて動かなくなった。
「……動かなくなったが……これ、倒せてんのか?」
「倒せてる……厳密には、もう動けない程ダメージを受けた」
私も私の目的を達成しないと。肩から下げたポーチの中からナマケモノの人形を取り出し、倒れている悪霊に近付く。
「戦闘不能ってワケね……って、何してんだ?」
「選ばせる。ここでこの子の餌になるか、こっちの人形に入って生き延びるか。
ただし、生き延びたいなら私に服従してもらう」
手にもった紫のうさぎ人形から、待ちきれないとばかりにオーラが上がり、動き出す。
人形の首を思いっきり握り締めて落ち着かせ、悪霊の返事を待つ。
「はやく選べ。この子も私も、あまり気は長くない」
ビクリと怯えたように震えた悪霊は、すぐさま私の差し出したナマケモノ人形に手を翳し、吸い込まれていった。
すかさず注連縄でぐるぐる巻きにして、隙間からナイフを突き刺す。
「お前が殺した者達と同じ苦しみを、お前も味わうといい」
「オメー何して……うおっ!?」
瞬間人形からけたたましい悲鳴が上がるが、首を絞めれば直ぐに静かになった。
「廃ビルの悪霊、ゲットだぜ」
ーーーーーーーーー
地下室から拐われていた人を運びだし、改めて彼と向き合う。
私の行動を見ていても、彼の私への態度は変わらなかった。普通の人なら気持ち悪がって離れるだろうけど、やっぱり普通じゃないみたい。
不思議な彼の瞳を覗き込む。折れない輝きを宿したエメラルドグリーンの瞳。
次いで彼の背後に浮くネオユニヴァースを見る。これは結局何なんだろう。
「……それ、幽霊?憑かれてる?」
「いいや、"コイツ"も"俺"だ」
「そんなの初めて見た」
「俺も、俺以外に持ってるやつを見たことねー」
「私は
「俺の名前は
私を貫く視線に嘘はない。私の知らない、幽霊みたいで幽霊じゃない力。
そしてそれを操る、強い心を持った普通じゃない高校生、時貞。
時貞と私は、こうして出会った。
[STAND NAME] ネオユニヴァース(ネオU)
[STAND MASTER] 星上 時貞
破壊力 B
スピード A
射程距離 D
持続力 C
精密動作性 B
成長性 A
人型の近距離パワー型スタンドで、スリムな体型、白い輪郭を持ち、身体は全体的に紺色メイン。
体の所々には天の川のようなベルトが巻かれ、膝や肘など間接部には惑星のような球体が嵌め込まれたパットが装着されている。
また、顔に関しては口がなく、目は月が嵌め込まれたように白く淡い光を放っている。
そして両目の上辺りから後頭部にかけて土星の輪のような物が縦に生えている。
ネオUの能力は、
『事象を再び発生させる能力』
既に放ったパンチの軌道上に、再びパンチの当たり判定を発生させる、といった、事象の再発生を行う。
しかしその本質は……?