スタンドギャザリング 作:折り紙のユニコーン@UNICORNぬ
この調子でモチベを回復して他の作品も書き終えたいですねー。
土曜日の昼下がり。漫画を読んで寛いでいた俺に、突然電話がかかってきた。
『もしもし』
「おう、夜宵か」
掛けてきたのは夜宵。以前の廃ビルで出会ったとき、連絡先を交換していたのだ。
『時貞時貞、ネオユニヴァースのこと教えて』
なんか前会った時よりテンションが高い気がする。好奇心旺盛なのか?それとも幽霊っぽいから興味あるだけか?
「いいけどよ、俺にも幽霊のこととか教えてくれんだろーな?」
『うん、ちゃんと教える。……なら私の家に来て貰った方が早いかもしれない』
言うが早いか、電話は切れてメッセージに住所が送られてきた。
「急だな……」
まあでも俺も興味あるし、行くか。
ーーーーーーーーー
「おお、なかなかデケー家に住んでんのな」
送られてきた住所に言ってみれば、二階建てのそこそこ大きい一軒家だった。庭に桜の木生えてる……
表札を見れば寶月の文字。間違いなくここだ。
インターホンを押して少し待つと、夜宵ではない女性の声。若そうだし、姉か誰かだろうか。
「はーい、どちら様ですか?」
「夜宵の友達の星上時貞って言います」
「夜宵ちゃんのお友達!?ちょっと待ってね!すぐ夜宵ちゃん呼んでくるから!」
「うっす。ありがとうございます」
夜宵のねーちゃんと思われる人テンションたけーな。
少し待つと、玄関が開いてひょっこり顔を覗かせる夜宵と、さっき応答してくれていた女性と思わしき人が。
「時貞、いらっしゃい」
「どうぞどうぞ~!」
「うっす。お邪魔するッス」
こころよく招いてくれたので家に上がる。そのままリビングに案内されて、俺と夜宵はテーブルを挟んで向き合うように座り、暫定夜宵のねーちゃんはお茶を淹れに行った。
「夜宵のねーちゃん、元気な人だな」
「詠子は姉じゃなくて従姉妹」
「へー。従姉妹と一緒に住んでんだな」
「お待たせー!麦茶しか無かったんだけど、大丈夫?」
「うっす。わざわざすいません」
「いいのいいの!夜宵ちゃん、ちゃんと友達作れてるか心配だったから、安心したよー!
あ、私は夜宵ちゃんの従姉妹の寶月詠子。よろしくね!時貞くん!」
「うっす。よろしくお願いします、詠子さん」
お茶を持ってきてくれた詠子さんは、さらっと夜宵の隣に座っていて、どうやら会話に参加するらしい。
「じゃあ……さっそくだけど、ネオユニヴァースのこと教えて」
「ネオ、ユニヴァース……?」
さっそく本題を切り出した夜宵。詠子さんはよく分かってないようで、首を傾げている。
「あー、コレなんすけど、見えますか?」
後ろにネオユニヴァースを出せば、夜宵の視線はそちらに向かったものの、詠子さんには見えてないらしい。
「詠子は霊感が無い。たぶんネオユニヴァースも見えない」
「なるほど」
「時貞くんの後ろになんかいるの!?私も見たかったー!」
詠子さんもこーいうの興味津々なのか。血筋か?
「ざっくり言えば守護霊みたいなモンっスよ。まあ姿は見えないかもしれないっすけど、こうやって物を持たせれば詠子さんにも分かると思います」
「えー!コップ浮いてるー!」
ネオユニヴァースで俺のコップを持ち上げて見せると、素直にびっくりしている詠子さん。どうやら詠子さんは夜宵みたいに場数を踏んでいる訳ではない一般人らしい。
「俺のネオユニヴァースは、精神の具現化。力をもった
分かりやすく例えるなら、超能力が形をもったものだ
「幽波紋……」
「幽波紋にはいくつかルールがある
一、幽波紋や霊的存在で無ければ傷つけられない
二、幽波紋からこちらへの物理的干渉は可能
三、射程距離……つまり本体から離れる距離が短いほどパワーが強い
そして、多分一番重要なのが……幽波紋の受けたダメージは本体に反映される」
「えぇっ!?それって大丈夫なの!?」
「まあ、大丈夫ではないんですけど……幽霊に直接攻撃されたり、エネルギーで作られた武器だったりしない限りは傷付かないんで。俺のネオユニヴァースは近接戦闘が得意なのもあって、戦闘になっても大怪我はそうそうしないと思います」
「そうなの?でも、あんまり無茶はしないようにね?」
「うっす。んで、幽波紋は基本、一つ以上固有の能力を持ってる
ネオユニヴァースの能力は……」
「ナイフや拳に使ったアレ?」
「ああ。事象の再発生、それがネオユニヴァースの能力
ネオユニヴァースが触れたモノは、既に行われた事象をもう一度発生させる」
「うーん、難しいですなぁ……」
「えっと……コレなら分かりやすいッスかね。このペンをネオユニヴァースが上に投げます」
懐から取り出したボールペンを、ネオユニヴァースに軽く上へ投げさせる。
「そこで能力を発動すると……」
ネオユニヴァースの手から離れたボールペンが、更に上へと跳ね上がる。
「こんな感じで、投げられたという事実をもう一度発生させるので、2倍の距離飛ぶ、みたいな」
「能力の範囲はどのくらい?」
「うーん、数十秒前くらいの事象しか再発生できないけど、まあほぼ何でもいけるな。発動には俺かネオユニヴァースが触れなきゃいけねーが、触れてればそこそこ離れてても発動はできる」
「なるほど、大体理解した」
「そうか?前から思ってたが、夜宵は理解が早いな」
「伊達にIQ160じゃない」
「160ゥ!?お前そんなに頭良かったのか」
「むふー。……それはそれとして、私の事情も話す」
夜宵の口から語られたのは、想像を遥かに越えた事情だった。
一年と半年ほど前に交通事故に遭った夜宵は、両親を亡くした。その時から霊が見えるようになり、そして意識が途切れる直前、巨大な悪霊が母親の魂を拐って消えたそうだ。
百鬼夜行の最後に現れる、太陽のような妖怪にちなんでその悪霊を『空亡』と名付け、母親を取り戻す為に追っているらしい。
しかし空亡は強大であり、無策では勝ち目はない。だからこそ、各地で悪霊を集め、蠱毒で強く凶悪なものに進化させ、空亡を食い殺す為の手駒としている。
「これが、私がお化けを集めている理由」
「……なるほどな。随分と無茶してやがるらしい」
「そして、それとは別に霊のルールについて教えることもある……多いから、今は最低限のことだけ。他は必要になったときに説明する」
「ああ」
「簡潔に纏めると、
・霊は死なない
・霊は取り憑いたものの状態に同調する
・強い霊は特殊な霊現象を使う
ひとまずこの三つだけ」
夜宵が指を三本立て、ノートにスラスラと挿し絵付きで解説を始める。絵が上手ェなコイツ。
「まず一つ目の"霊は死なない"から説明を始めよう。私は空亡を食い殺すと言ったけれど、基本的に霊は死ぬことはない。既に死んでいるから。
霊は存在を維持するのに命のエネルギーを使用している。でも時間と共にそのエネルギーは減っていって、ゼロになると成仏する。
でもたまに成仏を拒んで、この世に留まろうとするヤツもいる。そして行われるのが、他の霊を捕食してエネルギーを増やすこと。
食われた方は死なないけれど、エネルギーが尽きるまで腹の中で養分となり、擬似的に死んだ状態になる。
これが私の言う"食い殺す"ということ。ネオユニヴァースの攻撃では戦闘不能にまでしか追い込めない。注意してほしい」
「なるほどな。霊をブッ飛ばしたら、とりあえず夜宵に後を任せた方が良さそうだな」
「是非そうして欲しい。そして、二つ目の"霊は取り憑いたものの状態に同調する"。霊は何かに取り憑いて姿を隠すことがある。例えば人形や死んだ時に身に付けていたものなど。そういう霊は取り憑いているものがダメージを受けると、同じように霊自身にもダメージが入る」
「つまり、その取り憑いているものをぶっ壊せば霊も戦闘不能になるわけか」
「その認識で大丈夫。じゃあ最後の"強い霊は特殊な霊現象を使う"こと。そこらへんの浮遊霊とかは特に何もしてこない無害なものばかり。精々が肩を重くしたり、脚を引っ張られるくらい。でも、強力な霊になってくると様々な霊現象を引き起こす。以前私達が戦った廃墟の霊も、生前に使用した凶器を産み出して操る霊現象を使っていた
霊現象は効果も範囲も様々で、どんな霊現象を使ってくるのかは実際に相手が使ってくるまでわならない事の方が多い。広範囲を巻き込んだり、致命的な効果を持つものもいるから、十分注意しなければ命に関わる」
「特殊な能力ね……幽波紋みたいなものか?」
「うーん……幽波紋について時貞以外の例を知らないから何とも言えないけど……。霊現象を複数持つ霊もいるから、油断は禁物」
夜宵は説明を終えたのか、ジュースで喉を潤す。そして、少し言いにくそうに再び口を開いた。
「時貞には、私の悪霊集めに協力して欲しい……時貞のネオユニヴァースは、周囲に被害を出す危険もない強力な手札
私から差し出せるものは多くないけど……」
「いいぜ」
「────!いいの?」
「おう。見返りもいらねーや」
「ありがたいけど、どうして?」
「俺よりずっと小さいヤツが、家族のために無茶してんのにほっとけるわけねーだろ
それに、そんなヤベー悪霊を野放しにするのはカッコ悪いことだぜ。いつ誰にどんな被害が出るかも分からん。世のため人のため、なんて言う訳じゃねーが、もし俺の家族やダチが……万が一にでもそれで命を落としたりしたと考えたら……俺は俺を許せねーぜ」
「ありがとう」
「いいよ別に。何かあったら直ぐ呼べよな。大体いつも暇してっからよ」
「うん。────じゃあ、爪を頂戴」
「急だな……何に使うんだ?」
「……こっち」
廊下に出て、階段を上る。
「時貞は、形代って知ってる?」
「聞いたことはあるな。詳しくは知らねーが、紙を人の形に切ってあるアレだろ?」
「うん。その役割は自分に降りかかる災いや呪いを肩代わりする、身代り人形
そしてその効果を成立させる条件は、人型の物に自分の一部を入れること」
「人型の物……紙じゃなくてもいいのか?」
「必ず紙である必要はない。藁人形やぬいぐるみなど、形が人型なら大体の物は身代わりになる」
「へー」
夜宵に連れられ、『やよい』と書かれたプレートが掛けられた部屋……つまり夜宵の私室へとやって来た。
そこからは、俺でも分かるくらいの禍々しい気配が漂っている。
「ン……随分な気配だな」
「私は、その身代りの原理を利用して、集めた悪霊を安全に保管する方法を考えた」
夜宵が部屋の扉を開けると、部屋中にびっしりと人形が飾ってある。一見すればただの人形好きの女の子の部屋にも見えるが、その気配は魑魅魍魎跋扈する魔窟そのものだ。
「コイツは……全部悪霊入りか?」
「そう。そして、この部屋の人形全てに、爪や髪など私の肉体の一部が入っている」
「ン!?悪霊入りの人形を形代にしてんのか!?大丈夫なのかよソレ」
「平気。むしろそれこそが全ての肝となる部分
この人形の中に私の一部を入れておけば、私への攻撃は全てこの子たちに入る
だから、この部屋の悪霊のいずれかが私を攻撃したら、全員がダメージを食らう
自爆特効しようにも、別の霊に危害が及ぶので霊同士が邪魔しあい、襲えない状況を作っている」
「よく考えるぜ、こんなこと。自分の身を守る身代りを作ると同時に、霊同士で牽制させあい、反抗できない牢獄を作ってるわけだ」
「寶月家は全員分、同じ処理を施してある。だから襲われない」
「話が読めてきたぜ。つまり、これから仲間になる俺も、同じ処理を施すって訳か」
「そういうこと。とても大変な労力。だから、このコレクションを見せるのは私の誠意であり信頼の証」
「わかった。爪でも髪でも持っていきな」
「ありがとう。これからよろしく」
「おう。遠慮なく頼っていいぜ」
そうして俺は本格的に夜宵の悪霊集めの仲間入りを果たした。
この物語はきっと、目的のためならどんな事もする、漆黒の意思を秘めた少女"寶月夜宵"と、後に仲間となる
後書きに書くことが思い付かないので、これから感想で貰った質問があれば答えようかなと思います。
無いなら無いで時貞の設定を少しずつ開示しようかなと考えているので、気軽にどうぞ。