花弁の種を摘み取るまで   作:秋月灯

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お読みいただきありがとうございます。

本作は「魔法少女ノ魔女裁判(まのさば)」の
二次創作小説です。

【注意事項】
・原作既読を推奨しています。
・性犯罪・自殺・暴力描写を含みます。
・本作はpixivにも掲載しています。
・原作および登場人物の公式設定を
 尊重した上でのオリジナルストーリーです。

それでは、どうぞ。


悪性可憐花

 平和な日々、そこには木漏れ日をカーテンで隠すように、隠蔽された事件が隠れているものだ。私が偶然にも見つけてしまったのなら、解決せねばならないだろう。ユキを、エマを、みんなを救ったあの日のように。

 

 花弁の種を摘み取るまで 悪性可憐花

 

 ひまわり高校1年、二階堂ヒロ。それが私の名だ。牢屋敷で皆と別れた後、高校生となった。魔法はもうない。過去への逃避行はもう叶わない。けれどそれでいい。やり直しなど、もう必要ないのだから。高校とは平和なものだ。牢屋敷にいたときは、エマを魔女だと断定し、事件を裁いて、単独で行動することがほとんどだった。しかし、今はどうだ?学校という秩序を学ぶ場所で、不当を働こうものなら、教師が裁きを与える。私の正義が正しく機能する場所だ。

 氷鷹正門(ひだかまさかど)先生から職員室に呼び出された。どうせいつもの提出物返却の手伝いだろう。そう思って職員室に入る。しかし、予想外の依頼が舞い込んできた。

 「不登校の生徒の登校支援?」

 学校を何らかの理由で不登校となった生徒、安藤マキ。その生徒が学校に行けるようサポートしろと言ってきた。

 「それは学校の役目ですよ先生?それに高校とは義務教育の小中学校とは違い自らの意思で出願したもの。つまり、本人が自ら手放したのなら我々が口を挟むものではない。私はそう思います。」

 「頼む!この通りだ。先生という立場ではどうしても年齢の壁、それに男の僕が行っても帰って不審がられてしまう。だから、年の近くて正義感の強い二階堂にしか任せられないんだよ。もちろんタダとは言わない。今の内に指定校の枠を確保する手はずを整えたり、生徒会入部の推薦をしてもいい。どうかな?」

 なんてつまらん交渉だ。指定校推薦などなくとも私はセンター試験に臨むつもりだ。学校や教師の援助なくとも自分の道は自分で舗装するさ。

 しかし、先生も私を適任だと判断しての選択なのだろう。ならば、見返りなどなくとも解決するためこの身を投じるとしよう。

 「私がそんな下らない誘惑に屈すると本気で思っているんですか?先生は少し生徒に対する解像度と思考力を上げるべきです。はぁ、安藤マキ、その一人だけなのですね。」

 「おぉ!流石二階堂!僕は君が引き受けてくれると信じていたよ!何か困ったことがあったらなんでも言ってね!」

 まったく人使いが荒い教師だ。

 教室に戻る最中、黄色い歓声がバイクのブレーキ音のようにこちらに近づいてきた。その中の中心人物を私は知っている。

 「やぁ!ヒロくん。また先生に頼みごとでも承ったのかな?」

 蓮見レイア。同じく牢屋敷を離れた友人の一人。私は興味なかったが、どうやらこの高校は演劇部が強いようで、ここの演劇部のOGから宝塚歌劇団に入団した人が現れたことで一気に知名度を獲得したとかなんとか。

 「まぁそんなところだ。それよりレイア。取り巻きの声量を抑えることはできないのか?騒音迷惑だ。」

 「おっと、これは済まない。私の方からしっかり注意しておくよ。それじゃあ私は演技の練習があるからこれで。」

 「あぁ。頑張れよ。」

 ブレーキ音が遠くなってきたところで、私は靴に履き替え、教師からもらった住所に向かうことにした。

 

 何処にでもある一戸建て。標識には安藤の文字があった。インターホンを鳴らすと、母親らしき人物がきた。事情を説明すると中に入れてくれた。

 「マキは壊れてしまったんです。」

 およそ娘に使う言葉とは思えない、そんな言葉を言ってきた。

 「それはどういうことです?」

 「ある日を境に部屋に引きこもって、中に入ろうとするとものを投げて追い出そうと発狂するんです。まるでこの世界を拒絶しているように。あの子の友達や私でさえも怪物が入ってきたかのように怯えてしまうんです。」

 「それは心中お察しします。」

 これはイジメか何かのショックで精神崩壊してしまったのか。いや、本人を見ずに断言するのは良くない。

 「一度、マキさんにお会いしても?」

 「会えるかどうか分かりませんが、試してみましょう。」

 私達は部屋の前にきた。ドアには特に傷などはなく、他の部屋と遜色ない。コンコンとノックをして、

 「同じ高校の二階堂ヒロです。失礼します。」

 ビュゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!!!!!!

 数ミリズレていたら頬が切れていた。気づけば私はドアを閉じていた。切られた数十本の髪が中を舞う中、

 「確かに、これは一筋縄にはいきませんね。」

 と突き刺さった片方の刃がないハサミを見ていた。

 通報という言葉が頭によぎった。正直ここまで、狂乱状態となっているなら、生徒や学校が対応するよりも、精神科医に診てもらったほうが良い。しかし、これではそもそも病院に行くことすらままならない。通報するのはもう少し様子を見てからでも問題ないだろう。

 

 家に帰ってどうしようか悩んでいると、エマからメッセージが届いた。

 桜羽エマ。私の大切な幼馴染であり、親友だ。高校は別々で、時々メッセージのやりとりをしている。

 「ヒロちゃん。ちょっと相談したいことがあって、直接会って話したいんだけど、空いてる日あるかな?」

 「なら明日の放課後はどうだ?駅前のカフェで待ってる。」

 「ありがとう!ヒロちゃん!」

 エマからの相談?なんだ?友人関係?勉強関係?いや、彼氏?!?!?!

 エマは人の懐に入るのが上手いし、甘え上手だから友達が多いのは分かる。そうなると、自然と色欲の目を向ける邪な男子生徒が近づく頻度も増えるはずだ。けれど、そんな獣(けだもの)から彼女を守る友達もきっといるだろう。すると、彼女自身が選んだことになる。いや?それとも告白された?それなら相談というのも納得いく。いや、しかし、でも、

 「くそ!?情報が完結しない!」

 私は電気を消して無理やり眠りについた。

 放課後、私は一旦家に戻って着替えてから再度カフェに向かった。最近買ったドレス型の服に長いスカート。手鏡で前髪を整えて、カフェに入店する。二人用の席に案内してもらい、エマを待つ。

ここで悩んでも埒が明かない。ここは解決が早そうなエマの相談を片付けることが先決。そうこうしているうちにエマが来た。エマも白を基調としたワンピースをしていて、肩の部分が露出していた。そう、これはまさに、お!と!こ!の!あ!じ!を!し!っ!た!も!の!だ!

 「お待たせヒロちゃん。」

 「男ができたのか?」

 「ヒロちゃん?」

 「いや、皆まで言うな。もうわかっている。その服装、練り上げられている。至高のデート服に近い。しかし、これだけは言っておく。後悔しない選択などない。だから、後悔しても悔いのない選択を選べ。」

 そう言って私は立ち去ろうとしたところエマに腕を掴まれた。

 「ちょっとヒロちゃん!?ボク、何も言ってないんだけど!?相談、聞いてから帰ってよせめて。」

 「済まない。少々時を急かしすぎた。」

 「急かしすぎだよ。早すぎて台風かと思ったよ。」

 そしてお互いにパフェを食べて本題に入る。

 「安藤マキさんって知ってる?」

 「あぁ。」

 私が今、どうしようか悩んでる種の一つだ。

 「良かった。それでね、マキさんが巻き込まれた事件の事なんだけど。」

 「事件?」

 「そう。なんか私の高校で少し噂に尾ひれがついちゃって、友達も怖がっちゃって。だから、お願いヒロちゃん!事件解決に協力して!」

 これは何かの因果か?それとも、大きな根源的な種が枝状になった結果なのか?

 「わかった。協力しよう。私に任せておけ。」

 「ありがとうヒロちゃん!」

 私たちはカフェを出たあと、私の提案で安藤マキの家に行くことにした。

 「そっか、マキさん不登校だったんだ。」

 「あぁ。ところで噂とはどんなものなんだ?(それと事件の概要も)」

 「そうだね。まずは知ってると思うけど事件から。」

 安藤マキ集団レイプ事件。被害者の女性は複数人の男性に組み伏せられ不同意にみだらな行為をされた。関係者は事実を黙秘した。学校は事件に関係性はないと断定し、加害者の男たちは逮捕された。そして、噂とは学校側から個人情報が抜かれているのではないかということ。近頃、エマの高校付近でストーカーが出没していて、警察に相談しても気配が消えないらしい。つまり、住所などの情報が漏洩している可能性が出てきたということ。これに尾ひれついて学校側から個人情報が抜かれているのではないかという噂がたったということだ。

 「学校関係者は黙認、か。確かにここまで広がって学校側が無関係と言い張るのは違和感が強いな。」

 「だよね。ボク、怖いけどみんなのために、真実を暴きたい!」

 「そうか。安心しろ。私がついてる。」

 彼女に降りかかる悪意はこの私が退けてみせる。それが彼女に対するせめてもの罪滅ぼしだ。

 もうすぐ彼女の家だ。今日、なんとか接触を。

 「きゃあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」

 子供たちの嬌声とは明らかに違う悲鳴が静寂に包まれた住宅街を支配した。何処からでも分かるくらい、この近所一帯に響いた声の音源は、

 「安藤マキの家。入るぞ。」

 「待ってよヒロちゃん!」

 ドアに鍵はかかってなく、すぐに安藤マキの部屋に行った。そこにはその場にへたり込む母親がいた。そして、

 「部屋の、ドアが、」

 空いていた。まさか、そんな、

 牢屋敷の光景がフラッシュバックする。心臓が鼓膜を破るほどにうるさく木霊している。ドアの先を見た。

 「安藤、マキ。」

 そこには昨日まで、ハサミを投げてきた少女だった身体が首を吊ってふらふらと宙を漂っていた。彼女の身体には複数の切り傷が適切な治療をしてないのか悪化して膿んでいる。血の香りと埃の臭気が嗅覚を侵して吐き気を催す。

 「あああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

 「エマ!」

 叫ぶエマに寄り添いつつ、110番に通報した。10分後に到着した。私たちは取り調べのため、警察署まで同行を求められた。6時間の取り調べの後、私たちは解放された。空はもう暗闇になって街灯で道が照らされていた。

 「ヒロちゃん。」

 「エマ。」

 「今日、泊まってもいいかな。」

 エマは私の裾を摘んで生気のない瞳をこちらに向けていた。あの惨状を見て、警察から長時間の尋問。彼女も私と同じように疲れ果てていた。

 「着替えはどうするんだ?」

 「ヒロちゃん貸して?」

 「図々しい限りだ。シングルだから狭いぞ?」

 「ヒロちゃんとが良い。」

 私は無言で彼女の手を引いて私の部屋に手招きした。終始無言で布団に入り泥のように眠った。 

 次の日、私は職員室に呼ばれた。もちろん、安藤マキの件だ。学校は今日休校となっているが、私と先生は学校で事情の確認のため来ていた。

 「二階堂。大丈夫かい?顔色が優れないように見えるよ。」

 「問題ありません。それよりも、安藤マキの件の話を進めましょう。」

 そこで安藤マキの遺体の状況を細かく説明した。そして、

 「改めて聞きます。どうして私だったのですか?人柄なら蓮見レイアでも良かったはず。真面目であることだけで私を選んだなら、人選ミスにも程があります。」

 「頼む際にも言ったけど、安藤の事件は複数の男に犯されたという男性恐怖症になってないほうが不思議なくらいさ。だから、僕が行ってトラウマを刺激してはいけないと思った。そして、君を選んだのは単に真面目だからじゃない。君は人をよく見ている。当たりは強いけど、それは彼女にとっての恐怖に対する支えになってくれると思ったからだよ。僕は、君なら彼女と仲良くなれると信じていたんだ。君はとても強いから。でも、ごめん。責任感が足りなかったよね。君の言う通り、彼女に対する解像度と理解力が足りてないから、救う前に自ら命を絶ってしまった。本当に想定外だ。君のせいじゃない。すべて、僕の責任さ。本当にごめん。」

 彼は私に対して謝罪した。けれど、私の気持ちは収まらなかった。

 「謝る相手を考えてください。その言葉は私に使うな!彼女に向ける言葉だろ!なぜ、私に向けた!?」

 私の怒号に他の先生も来て、しばらく取り押さえられ、私は下校させられた。けれど、黒幕の影が見えてきた。彼が私に謝罪したのは、断じて私に危険な依頼を押し付けたことに対してではない。自分の世間体、より正確にいうと、生徒を思う優しい先生像のために演じている仮面に過ぎない。

 「許さない。許してなるものか。この私がなんとしてでも暴いてやる!死んでしまった彼女のためにも、自分の信じた正義のためにも!」

 

 次話へ続く。




ここまで読んでいただきありがとうございます。

まのさばの二次創作を書こうと思ったのは、
牢屋敷を離れたあとのヒロたちが
どう生きているのかを描きたかったからです。

魔法も、過去への逃避行も失った彼女が、
新たな事件と向き合うとき何を思うのか。
そのヒロの姿を最後まで見届けていただけると嬉しいです。

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