パンドラ「ところで話は変わるけどよ、オマエは"家族や友達とケンカしたこと"ってあるか?あぁいう時って、つい冷静じゃいられなくなってヒートアップしちまうよな?でもいざ終わって冷静になってみると、もっと早く和解できたんじゃないかって虚しい気持ちになるよな。あれって何でだ?」
パンドラ「……って!こんな話聞くためにここまで来たんじゃなかったな!すまねぇ!それじゃあ第1章『魔海の竜宮』スタートだぜ!!」
第1章 第一話 助けたカメに連れられて
オレカ界北部。ここは水に囲まれた土地であり、陸には湿地帯、そして広大な海、『魔海』が広がっている。『魔海』もなにかと話題に事欠かない場所であり、海底神殿があったり、昔は氷漬けになったこともあるらしい。
そしてここに、そんな『魔海』のほとりで暮らしている者がいた。
???「よーし!今日も大漁大漁!どうだ、シャッパ?オレの槍捌きは?」
シャッパ「シャーッシャッシャッ!いやー、相変わらずすごいなぁトリトは!拳の勝負なら誰にも負けねぇ自信があるが、その槍捌きと波乗りでは、お前にゃ一生敵わねぇな!!」
トリト「おいおい、お世辞はよしてくれよ!まっ、ホントのことだけどな!」
彼らは波戦士トリトと拳士シャッパ。『魔海』のほとりで暮らす若者である。どうやら、先程まで漁をしていた様子。
トリト「これだけ獲れたんだからさ、少しくらいアンカーのおっちゃんにも分けてやろうぜ?今日また港に戻ってくるって話だし!」
シャッパ「そいつは良いな!よーし!今日は騒ぐとするか!……うん?おいトリト、あの辺り、妙に騒がしいが…?」
トリト「何かあったのかな?行ってみようぜ!」
カメ?「アケー〜…T T」
子赤鬼「ケッケッケッ!」
プチクラブ×2「プクプク…」
シャッパ「あれは…子赤鬼とプチクラブ達が、カメをいじめてるのか?」
トリト「無抵抗なカメをいじめるなんて…あれじゃあ弱い者いじめじゃないか!シャッパ、ちょ〜っとアイツらにお灸を据えてやろうぜ…!」
子赤鬼「ほらどうした?早くオレ達を竜宮城に連れてけってんだよ!できないとか言ったらどうなるか…わかってんだろうなぁ?」
カメ?「ア…アケ〜…」
トリト「コラー!オマエ達、よってたかって弱い者いじめなんて、許さないぞ!」
子赤鬼「あぁ?んだテメェら?テメェらには関係ねぇだろ!オマエら、やっちまえー!!」
プチクラブ×2「ジャキンジャキン!」
ドカッ!バキッ!ボコッ!!
プチクラブ×2「プクプクプク……(気絶)」
子赤鬼「な…なんだコイツら…鬼強ぇ……。」
シャッパ「どうだ?まだやるなら、いつまでだって付き合うぞ?」
子赤鬼「ヒッ…お…覚えてやがれー!!」
スタコラサッサー!
トリト「これに懲りたら、弱い者いじめなんてするなよな〜!ふぅ、やれやれ…。キミ、大丈夫?怪我とかない?」
カメ?「アケー!」(喜んでいるようだ)
シャッパ「嬉しそうにしているな!可愛いやつめ!」
カメ?「アケ!アケ!」(ぐいぐいっ)
トリト「おっと、どうしたんだ?急にマント引っ張って…」
シャッパ「もしかしてコイツ…オレ達をどこかへ連れて行きたいんじゃないか?…そういやさっきの子赤鬼も、竜宮城がどうのこうのと言ってたな…。」
トリト「竜宮城…?確か、少し前にアンカーのおっちゃんがなんか言ってたような…。」
海翁アンカー。年老いた歴戦の海賊で、トリト達もよく世話になっている。何でも昔は、かつて大海原に名を馳せた「アズール海賊団」の一員だったようで、『魔海』を凍らせて支配していたすごく悪いヤツもやっつけたことがあるのだとか。
数日前…
アンカー「よぅし、今日はお前らに面白い話を聞かせてやろう!お前ら、竜宮城って聞いたことあるか?」
トリト「竜宮城?なにそれ、ドラゴンとかいるの?」
アンカー「違う違う。聞いて驚け、その竜宮城は海の中にあってな、何でも豪華絢爛な宮殿の中には金銀財宝が眠ってて、そこでは毎日宴三昧なんだと!」
トリト「すげぇー!おっちゃんは行ったことあるのか!?」
アンカー「あぁ…昔、俺の船長が探そうとしててな。『海底神殿も見つけた俺たちなら絶対見つけられる!』って張り切ってたんだが…終ぞ見つけることはできなかった……。」
トリト「えぇー、それ本当にあるのかよ?なんか怪しいぞー?」
アンカー「いやな、今考えてみれば、探し方に問題があったのかもしれねぇって思ってるんだ…。俺らはもう魔海で知らない場所はないはずだったからな…。」
シャッパ「探し方?何か手順を踏む必要でもあるのか?」
アンカー「あぁ、船乗りの間では有名な噂話なんだが、何でも『不思議な輝きを放つカメが、隠された場所にある竜宮城へ案内してくれる』んだと。にわかには信じ難い話だがな……。」
現在…
トリト「不思議な輝きを放つカメ…。」
カメ?「アケ?」ピカァァァ…
カメは眩い光を放っている…。
二人「「……絶対コイツだーーー!?」」
シャッパ「じゃあ何だ?コイツは自分を助けてくれたお礼に、オレ達を竜宮城へ連れて行きたいと!?」
トリト「そうとしか考えられねぇよ…。あっ、そうだ!もしこのカメが本当に竜宮城に連れてってくれるならさ、アンカーのおっちゃんにも自慢できるぜー?『おっちゃん達も行けなかった竜宮城にハロー!とお邪魔して来ました』って!」
シャッパ「シャーッシャッシャッ!ソイツは良いな!よし!そうと決まれば、早速コイツに連れて行ってもらおうじゃないか!」
トリト「そういう訳でさ、もし本当に竜宮城へ連れて行ってくれるなら、是非とも案内して欲しい!良いかな?」
カメ?「アケローン!」(バシバシと甲羅を叩いている)
シャッパ「おっ?もしかして乗れと言ってるのか?」
トリト「ぽいな!オレは泳げるから、シャッパに譲るぜ?」
シャッパ「そうか!ならお言葉に甘えさせてもらおう!よいしょっと!」
ズンッ…
カメ?「アケ……」(すごく苦しそうな表情)
トリト「なぁシャッパ…こんなこと言いたかないけど、お前ダイエットとかした方がいいんじゃないか?そのカメ、すごく重そうにしてるぞ…?」
シャッパ「仕方ないだろ!?海の戦士とは言っても、オレは泳ぐのは苦手なんだ…。筋肉のせいですぐ沈んじまうし…」
トリト「はいはい…。それじゃあ気を取り直して、竜宮城へ出発だー!」
バシャーン!!
こうして、不思議なカメに連れられて魔海の中へ旅に出たトリトとシャッパ。しかし、これが壮絶な戦いの始まりだとは、この時の彼らはまだ、知る由もなかったのです。