しかし、そこに現れたのは、大切な友達であるイスルだった。イスルはソジュから残された生命エネルギーを受け継ぎ、魔王子としてクラスチェンジを果たす。
……友達同士の決闘が、始まろうとしていた。
ナナワライ「お主、まだ傷ついておるだろう。せめて、回復だけはさせてやろう…。風よこの者に、癒しを!」ヒュォォォォ…
ナナワライが風を吹かせると、ナギの傷がみるみるうちに治っていく。
ナギ「へへっ、ありがとな、天狗のおっちゃん!天狗のおっちゃんは、アカネ達の舞を邪魔されないよう、見守っていてくれ!」
アカネ「それが…舞自体はナギ達が戦ってる間に全部終わったんだけど…。」
アオイ「全然…ナキサワメが来る気配はないんですよねー…。何か足りないのでしょうか…?」
ナナワライ「……と、言っておるが?」
ナギ「あー、じゃあ応援でもしててくれるか?」
ヒエン「承知した。ナギの決めた道、しかと見せてもらおう。」
シナプス「コォォォン…。」静かに見守っている…。
ヒュゥゥ…
イスル「実を言うと、ボクはもう父上が負けた時点で、一族の存続はもうどうしようもないと考えてる。…この勝利に意味なんてないんだろう。けど、ボクだって生きたいんだ…。だから、これはせめてもの抵抗だと考えてくれ。」
ナギ「そんなこと言うんじゃねぇよ。イスルだって、一生懸命生きたいんだろ?でもお前は、そのうえでこの森のことも考えてくれた。その気持ちを否定したりはしない。」
イスル「……そう言ってくれてありがとう。……じゃあそろそろ、やろうか。」スッ…
ナギ「あぁ、いつでも来い。」チャキッ…
2人は静かに武器を構え、静かに向かい合う。そして───
2人「「………っ!」」ダッ!
ギィィィィンッ!!
2人は同時に駆け出し、鍔迫り合いとなる。
イスル「やるな…ナギ!」ギギギギギギ…
ナギ「イスルだって…!」ギギギギギギ…
キィン!
イスル「生きたいって気持ちは否定しないって言ってたけどさ!じゃあボクはどうすれば生きれる!?どうすれば、キミの友達として生き続けることができる!?」ドドドド…!
ナギ「……正直、まだわかんないっ!わかんないけど…森を犠牲にせずにお前が生きることができる道を絶対探してやる!オレはそう決めたんだ!!」ズバッ バシャァァァ!!
イスル「随分と欲張りじゃないか!でも…人生そんなご都合主義が罷り通るほど甘くはない!何かを得るには…何かを失わなきゃいけないんだっ!!ボクは生きるために、森を…捨てなきゃいけない!!」ヒュンヒュンヒュン!!
ナギ「欲張りで結構!!誰に何言われたって、オレは森も…イスルも選べる道を探す!!どんだけ時間がかかったって構わない!!」ズバババ!! バリィィン!
イスル「なら…正直に言うよ!ボクだって、この森は失いたくない!!この楽しく過ごした森を…好きになった場所を蹂躙するなんて…ボクにはできない!!ボクでもどうすればいいかわからないんだ!!知ってしまったから!!生命の尊さを!!」ドスっ!!
ナギ「ぐっ…!!なら…これからでも一緒に探そうぜ!!大丈夫…オレ達ならきっと…見つけ…られるっ!!」ドガッ!
イスル「うっ…!?」ドシャァ…!
2人は、激しい戦いを繰り広げながらも、ナギは対話を続ける。しかし、全力で戦う。そうでもしなければ、イスルを説得することなどできないと考えていたから…。
ナギ「はぁ…はぁ…はぁ…。そ…そろそろ決着…つけようぜ。」ヒュゥゥ…
イスル「はぁ…はぁ…あぁ…そうだな。最後はEXで…終わりにしよう…!」ザバァァ…
2人はEXを構える。先に動いたのは…。
ナギ「行くぜ!!烈風刃!!」ビュォォォォ!!
イスル(…そうだ、ナギ。それでいい。)
ナギ「ぐっ……!おりゃァァァァァァァァァッ!!!」
ズバァァァァァァァァァ!!
イスルは風に切り刻まれ飛ばされ、思い切り地面に叩きつけられ、致命傷を負う。そしてナギはすぐさま、イスルに駆け寄る。
ナギ「はぁ…はぁ…イスルーーッ!!」
イスル「はぁ…はぁ…やっぱり……ナギは強いな…。」
ナギ「何言ってんだよ!?お前、あの時わざとEX撃たなかったろ!?なんで…あの時撃ってたらお前は…!!」
イスル「ふぅ……内緒にしてたが…ボクのEX、ダメージを与えられないんだ…。EXを撃ち合おうって…言ったのは……キミに勝たせるための嘘だ……。」
ナギ「それでも!オレの動きを止めることくらいはできた!!なんで!?」
イスル「……ナギ…キミが…とても辛そうだったからだ…。両方を取るなんてこと…簡単にできることじゃない…。だから、ボクがキミの道を…決めたんだ……。ははっ……こんなこと…言わせないで……くれよ……。」
ナギ「で…でもオレは……!」
イスル「ナギ!!……もういいんだ。……キミに…辛い思いをさせてしまって…本当に……申し訳ないと思ってる……。」
ナギ「イスル……。」
イスル「……少し前に、夢を見たんだ。……ボクとキミが、なんのしがらみもなく、一緒に森で暮らす夢……。でも、結局は夢だ……。目覚めたら、すぐ現実に戻ってしまう……。」
ナギ「大丈夫だから……!これから、そうやって生きていける道を探すからっ!!だから……!」
イスル「……は…はは……本当に……どこまでも優しいヤツだな………。あぁ……あの時の夢……もう一度……見れる………か……な…………………。」ドサッ…
ナギ「イスル…?おい待て…!ダメだイスル!!逝くなイスル!!くっ……ッ!!イスルゥゥーーーーーーッ!!!!」
イスルは静かに息を引き取った。森には、涙ぐんだナギの慟哭が響くだけだった……。
ヒエン「ナギ…。」
ナナワライ「大切な友を喪ったのだ…。無理もなかろう…。今はただ、そっとしておいてやろうではないか…。」
シナプス「ヒュゥゥ…」
ヒエンとナナワライも、ナギに落ち着く時間をやるために、その場を去ろうとした、その時だった。
ピチョン…
ヒエン「む……これは…雨?」
???「キョォォォン…!」
ナナワライ「この鳴き声…まさか!?」
アカネ「あ…あれ!!」
アカネはそう言って空に指を指すと、空から美しいドラゴンが舞い降りてきた。
アオイ「間違いありません…あれは…!」
神楽姉妹「「涙竜ナキサワメ様の、おなーりー!!」」
ナキサワメ「キョォォォンッ!!」
ポツ…ポツポツ…ザァァァァァァ…!
ナキサワメが鳴き声をあげると、風隠の森全域に恵みの雨が降り注ぐ。枯れた草木は再び緑を取り戻し、花も咲いていく。そして……。
イスル「う…うぅ……?あれ?ボクは確かに死んだはずなのに…どうして…?」
ナギ「イ…イ…… イ"ズル"ゥ"ゥ"ーーー!!」ギューーッ!
イスル「うわっ!?急に抱きつくな!?あと涙とか鼻水とか拭け!!汚いなぁ!」
ナギ「だっで…だっで……!!うわぁぁぁん!!」
イスル「……まったく、仕方ないヤツだな…。」
泣きながら抱きつくナギに対して、イスルは優しく抱き返した。
ヒエン「お師匠様、ナキサワメはもしかすると……。」
ナナワライ「あぁ、おそらく、友を純粋に慈しみ、悲しむことができるナギの涙に呼応して、姿を現したのかもしれんな…。真意は、我にもわからんがな。」
ヒエン「このようなことを、この世では"奇跡"と呼ぶのでしょうね。」
そして、ナキサワメの雨はしばらくの間、森に降り続けた…。
数日後……。
オニワカ「おーい!ナギ!イスル!早く起きんか!!ナナワライ様がお主らのことを呼んどるぞ!!」
ナギ「う…うぅ〜ん…もう少しだけ…。」
イスル「やれやれ…ナギはボクが連れていくので、オニワカさんは先に行っててください。ほら、行くぞ!」
あれからイスルは、ナギの必死の説得もあって森の住民として受け入れられた。と言っても、イスルには住む場所もなかったので、ナギと一緒にオニワカの元で住まわせてもらってる。
もちろんシナプスも受け入れられ、森の湖で、たくさんの野生モンスターたちと戯れているとか。
祭壇にて…
オロシ「父上、そしてヒエンよ…。もう行ってしまわれるのですか…?」
ヒエン「ああ、また新風を探す旅に出る。それに、ハヤテのことも探さねばならないからな。」
オロシ「そうか…。ハヤテに…我が弟に会ったら、よろしく伝えてくれ。私は今でも森をしっかり護っていると…。」
ヒエン「あぁ、そのつもりだ。」
オニワカ「ハァ…ハァ…オロシ様ー!ナナワライ様ー!遅れて申し訳ございませぬ!2人を連れてきました!!」
オロシ「やっとか。父上がお待ちかねだぞ!」
ナギ「へへーっ、すみません…。それで、要件というのは…。」
ナナワライ「うむ。今回呼び出したのは他でもない。其方に、イスルに渡したいものがあってな。」
イスル「ボクに…ですか?」
ナナワライ「うむ、では…これを受け取るが良い。」カチャン。
そう言うとナナワライは、自身の葉団扇から、雫型の宝玉を外しイスルに渡す。
オロシ「なっ…!?父上、それは!?」
パァァァ…
驚愕するオロシに構わず、宝玉は光を放ちながらイスルの体に入っていった。
イスル「身体が暖かい…。ナナワライ様、これは…?」
ナナワライ「今、其方に渡したのは"風しずくの種"といってな。神木の生命を賄っている、この森の秘宝じゃ。」
イスル「そ…そんな大事なもの…ボクなんかが受け取って良いのでしょうか…!?」
ナナワライ「構わん。ナキサワメの雨で、新しい種が生まれたようじゃしな。それがあれば、少なくとも数十年は余裕で生きれるじゃろう。もうこの森から生命を奪う必要はない。自由に生きるが良い。」
イスル「はぁ…!はいっ!ありがとうございますっ!!」
ナギ「イスルーー!!良かったな!!これでオレ達、まだまだ一緒に過ごせるな!」
イスル「あぁ…。そうだな!」
ナナワライ「うむ、それでは、さらばだ!!」ビュォォォォ…!!
ナナワライとヒエンは、竜巻とともに、森を後にした。
イスル「なぁナギ。」
ナギ「ん?なんだ、イスル?」
イスル「これからも…友達でいてくれるか?」
ナギ「……あぁ!もちろんっ!!」
こうして、森から脅威は去り、代わりに新たな友情が芽生えたのでした。
第3章 終
パンドラ「よう!ここまで読んでくれて、ありがとな!!これで第3章も完結だぜ!!」
パンドラ「ナギとイスル、これからも友達として一緒に暮らしていけそうでよかったな!画面の前のオマエらも、友達は大切にしろよな!」
パンドラ「それじゃあ今回はここまで!一緒にオレカを遊ぶ友達がいたら、対戦とかもしてみるといいかもな!」
パンドラ「それじゃあオマエら、また会おうぜ!またナー!!」