オレカバトル2 ストーリーズ   作:セッツァー

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ヴェッチ達スリーピースバンドは、これまでの旅に思いを馳せながら、遂に鏡の城に辿り着く。
春を取り戻すため…ヴェッチ達は、ミードとのライブ勝負を臨むのだった。


第5章 6th Live 下手な真実なら知らないくらいがいいのに

鏡の城前…

ヴェッチ「ここに…ミードが……。」

チューン「緊張する?あんた、よくわかんないけどミードに会いたがってたもんね。」

ヴェッチ「あぁ。大陸を冬に閉ざした元凶だからってこともあるんだろうけど…何故だか、それ以外にも理由がある気がするんだ。」

02拍子型「リユウ…デスカ?」

ヴェッチ「あぁ。…絶対に会わないといけない理由が。」

チューン「……まっ、今考えててもしょうがないでしょ!ほら、さっさとミードとの勝負に勝って、春を取り戻しましょ!」

ヴェッチ「…そうだな。じゃあ…行くぞ!」

ギィィィィ…

そう言ってヴェッチ達は、鏡の城の重々しい門を開け、中へと入る。

 

???「……来たか、待ってたぜ。」

鏡の城の奥、さながら玉座のように巨大なスピーカーに腰掛けていた人物がいる。ミュージシャンのような派手な衣装に、氷でできたマイク。彼こそが…。

チューン「あんたが…魔皇ミード…!」

ミード「如何にも。凍てつく魔唱のミードとは、俺のことだ。」

02拍子型「コ…コレマデニナイ キョウテキノケハイ…デス!」

ヴェッチ「……。」

チューンと02拍子型が警戒心を強める中、ヴェッチは呆然としていた。

02拍子型「ン?ヴェッチ、ドウカシマシタカ?」

言葉を失うのも無理はない。何せ、目の前にいる魔皇の姿は……。

ヴェッチ「こいつ…あの時、鏡に映ってた謎の男だ…!

チューン「はぁ!?あの時って…トゥルースの鏡のこと!?どういうこと!?アンタ…アイツに会ったことあるの!?」

ヴェッチ「いや…わからない。でも…間違いない…。あの時トゥルースの鏡に映ってたのは…あいつだ…。」

ミード「……成程。お前、あの野郎に"真実"を見せられたか。はぁ…あの鏡野郎…どこまでいけすかないことしやがるつもりだ…。」

ミードは困惑するヴェッチをよそに、何かを察したかのようにため息混じりに口を開く。

ヴェッチ「し…真実…?どういうことだ…?おれのことを知ってるのか…!?あの鏡の意味が…わかるのか!?」

ミード「あぁ、全部知ってるぜ。お前があの時何を見たのかも…記憶のないお前が何者なのかも。」

ヴェッチ「!?…記憶がないことまで…。どこまでおれのことを…。」

ミード「……まぁ、俺もタダで全部教えてやるほど優しくはねぇ。それに…お前は俺から春を取り戻すためにここまで来たのか?それとも…"真実"を知るためにここまで来たのか?」

ヴェッチ「そ…それはもちろん……。」

チューン「決まってんでしょ!!アンタを負かして天下を取る!!」

02拍子型「ソシテ、タイリクニ ハルヲトリモドス!…デスヨネ、ヴェッチ。」

ヴェッチ「……あぁ、そうだな。あれこれ考えるのは後回しだ。ミード!おまえを倒して、この冬に終止符(ピリオド)を打つ!」

ミード「……いいだろう。なら聞かせてやる。凍える唄を!」

 

すぅー…

[♪ミードのテーマ♪]

〜〜〜〜〜〜♪ 〜〜〜〜〜〜♪

ミードの激しくも凍えるような歌声が城内に木霊する。

チューン「こ…これがミードの魔唱…。少しでも気を抜いたら…凍りつきそう…!それに…なんだか…。」

02拍子型「エエ…。ヴェッチノウタニ…ソックリデス…!」

ヴェッチ「ま…負けるか…おれ達の歌は…氷を溶かす、春を呼ぶ歌だ…!!ヴェッチ・フェス…スタートだ…!!」

すぅー…

[♪ヴェッチのテーマ♪]

〜〜〜〜〜〜♪ 〜〜〜〜〜〜♪

ヴェッチも負けじと超EXを発動し、冬を溶かし春を呼ぶ歌声を響かせる。それに呼応するように、チューンと02拍子型も演奏を始める。

ミード(やっぱり、お前はそれを歌うよなぁ。だが……。)

ミードはそれでも怯まず、凍える歌声をスピーカーからとめどなく響かせ続ける。

02拍子型「ウッ……スコシデモ…コノコゴエル ウタゴエガヨワマレバ…ヴェッチモ ウタエルハズ…!」

チューン「ならこれで…!ラピッド・カッティング!!」ババババ…!

チューンは曲の合間にミードのスピーカー目掛けて、ギターからピックを連射する。

キンキンキンキン……バチッ!!

そして、ピックの一つがスピーカーに直撃し、ミードの音が弱まる。

ミード(スピーカーが…。あいつら…やるじゃねぇか。)

02拍子型「ヤリマシタ!コレデ ヴェッチガユウリニ…!」

ミード「……けどなぁ、それで俺を追い詰めたつもりか?」

突如、ミードは歌を中断する。

ヴェッチ「?…なんだ……?歌を止めた……?」

チューン「ヴェッチ!アンタは歌い続けて!今がチャンスよ!!」

ヴェッチ「あ…あぁ!」

ヴェッチは歌を再開するが、ミードはそれでも静けさを保っている。まるでそれは、嵐前の静けさのように…。

ヴェッチ(何故だ…。ものすごく、嫌な予感がする…!)

ミード「……そろそろ幕引きだ。少しは期待してたんだがな…。冥土の土産に聴かせてやるぜ。俺の…氷獄葬唱(ラスト・レター)を。」

すぅ……

 

〜〜〜〜〜〜♪ 〜〜〜〜〜〜♪

 

マイクを蹴り上げると、ミードは再び凍える魔唱を響かせる。だが、その声量は先ほどまでの比ではなく、鏡の城の城内に吹雪が舞い始める。

チューン「コイツ…まさか今まで本気出してなかったって…言うの…!?」

ヴェッチ(ま…負けてたまるか…!)

ピキ…ピキ…

ヴェッチ達の身体に霜がつき始める。それと同時にヴェッチ達の身体を分厚い氷が覆い始める。

02拍子型「コ…コレイジョウノ……オンドテイカハ…キケン…デス…!」

ヴェッチ(ぐっ……!まだ…だ……!)

ミード「こいつで……終演(フィナーレ)だ。」パチンッ

 

バキィィィィィン!!

 

3人「「「────────」」」ドサッ……

ミードは指を鳴らし、ヴェッチごと氷を砕けさせる。ヴェッチ達はなす術なく吹っ飛ばされ、地に伏した。

ミード「ハッ狂醒めだ。お前の歌は…未完成だな。俺をシラけさせるためにここまで来たのか?期待外れもいいとこだ。」

ヴェッチ「み……未完成…だと?」

ミード「あぁ。そんなんじゃ、"俺の歌声になって"熱狂を届けることなんざ、できやしねぇな。」

チューン「な…何言って……ヴェッチの歌声を…奪うってこと…?そんなこと、できるわけ……。」

ミード「いや、できるさ。何せ……コイツは、俺から生み出されたようなもんなんだからな。」

ヴェッチ「────は?」

突然の告白に、3人は言葉を失う。まるで、ヴェッチがミードから作られたかのような物言いに。

チューン「ねぇ…それ、どういうこと?」

ミード「……俺相手にここまでやったんだ。聞かせてやる。そこにいるヴェッチはな…俺から生み出された鏡像……つまり、"偽物"だ。

ヴェッチ「────。」

言葉が出なかった。唐突に告げられた、あまりにも残酷な真実に。

02拍子型「ニ…ニセモノ…デスカ?」

ミード「あぁそうだ。あの鏡野郎…トゥルースが気まぐれで生み出した…俺の鏡像だ。」

ヴェッチ「う……嘘だ……。そんな…そんなこと…あるはずない……。おれを騙そうとしてる……。」

ミード「いや、本当だ。その証拠に…お前は自分の姿をトゥルースの鏡で見た時、俺の姿を見たんだろ?イラつくことだが…アイツは真実しか映さない。つまり、お前が見たものが全てだ。」

ヴェッチ「…………は……はは……なんだそれ……。まるでおれの全てが…偽物みたいじゃないか……!!そんなの…簡単に認められるわけないだろッ!!」

ミード「……だろうな。俺もそうだった。」

ヴェッチ「……は?何言って……。だって今、おれはおまえから生み出されたって…。」

ミード「……実はな、このやりとりも初めてじゃない。俺は…元々お前と同じだった。お前と同じ、何も知らない歌うたいのヴェッチだったんだ。

そして、立て続けに更なる真実がミードの口から紡がれる。

ミード「…俺の前に、"別のミード"がいた。俺はまだお前…ヴェッチだった頃、真実を手にするために、"前のミード"に戦いを挑んで……勝った。そんでこのマイクを持った瞬間……俺はミードになっていた。身も心も、何もかもな。

チューン「つ……つまり何…?この戦いも…何度も何度も繰り返してるって言いたいの……?」

ミード「あぁそうだ。あの野郎は…トゥルースは……俺とヴェッチの悲劇を気に入ってやがる……。だからやめねぇんだ。お前らだって、気に入った曲は何度もリピートさせるだろ?…奴にとっては、それと同じなんだ…。」

02拍子型「リ…リカイガ…オイツキマセン……。」

ヴェッチ「なら…なんでおれの声を求める…?何が目的だ…?」

ミード「目的だ?…俺はただ、熱狂させたいだけだ。ヴェッチ、お前らと同じだ。」

ヴェッチ「……えっ?」

ミード「確かに、俺は凍てつく魔唱を持つ魔皇。だが、心の底ではお前らと同じように熱狂を求めてんだ。見てみろ、俺はいくら歌っても、聴く者を凍えさせることしかできねぇ。だが…お前の歌声が…本物の歌声が手に入れば……俺も、世界を熱狂させることができる。この悲劇を、終わらせることができる。そういうこった。」

ヴェッチ「…………。」

あまりの情報量に、ヴェッチは言葉を失う。頭では理解できていても…心がそれを認めることを拒んでいた。

ミード「……わかったら、とっととここから去れ。どちらにしたってお前は俺に勝てねぇし、俺もその歌声はもらえねぇ。出直してこい。その時は本気で相手してやるよ。」

ヴェッチ「…………ぐっ!!」ダッ!

02拍子型「アッ…ヴェッチ!!」

ヴェッチはその真実を受け止めきれずに、その場から走り去っていく、02拍子型もその後を追おうとするが……。

チューン「………。」

何故か、チューンだけはその場から動かなかった。

02拍子型「チューン…?ドウシタンデスカ!ハヤク ヴェッチヲ…!」

チューン「………ごめん。あたしは、そっちに行けない。」

02拍子型「チューン…?ナ…ナニヲイッテイルンデスカ…?チューンモイナキャ バンドハ…!」

チューン「あいつの歌声は偽物だった!!!……こんなこと言うのは申し訳ないってわかってる。けど…あの話を聞いたら…ヴェッチの歌が…ミードの偽物…って思えちゃって……。だから…さ、あたしは……ミードにつく。…ごめんね、ヴェッチ、02……。もうバンドは…解散よ。

02拍子型「チューン………ワカリ…マシタ……。」ガシャン…ガシャン…

チューンはそこに残ると決め、ショックを受けた02拍子型は、消沈しながらその場を去っていった。

ミード「……本当に良かったのか?行かなくて。」

チューン「………ええ。あたしの夢は…あくまで本物の歌声とギターで天下を取ること。あんたの歌声が本物だって言うなら…あんたにつく。この選択に後悔はない…。ないはず…。」

ミード「……そうか。勝手にしな。」

 

雪原地帯…。

ヴェッチ「………。」

ヴェッチは孤独に吹雪の中、雪原を歩いていた。

ミード《俺から生み出された鏡像……つまり、偽物だ。》

ヴェッチ「違う………。そんな……そんなはずは……。あ……あぁぁぁあァァァァァァァァァッ!!!!!

まだ、ミードから告げられた真実が、頭を離れない。感情のままに走り去ってしまったせいで、チューンも02も見失った。………自分には、もう何も残っていない。

???「………。」

そんなヴェッチを、空から見守る者がいた。

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