春を取り戻すため…ヴェッチ達は、ミードとのライブ勝負を臨むのだった。
鏡の城前…
ヴェッチ「ここに…ミードが……。」
チューン「緊張する?あんた、よくわかんないけどミードに会いたがってたもんね。」
ヴェッチ「あぁ。大陸を冬に閉ざした元凶だからってこともあるんだろうけど…何故だか、それ以外にも理由がある気がするんだ。」
02拍子型「リユウ…デスカ?」
ヴェッチ「あぁ。…絶対に会わないといけない理由が。」
チューン「……まっ、今考えててもしょうがないでしょ!ほら、さっさとミードとの勝負に勝って、春を取り戻しましょ!」
ヴェッチ「…そうだな。じゃあ…行くぞ!」
ギィィィィ…
そう言ってヴェッチ達は、鏡の城の重々しい門を開け、中へと入る。
???「……来たか、待ってたぜ。」
鏡の城の奥、さながら玉座のように巨大なスピーカーに腰掛けていた人物がいる。ミュージシャンのような派手な衣装に、氷でできたマイク。彼こそが…。
チューン「あんたが…魔皇ミード…!」
ミード「如何にも。凍てつく魔唱のミードとは、俺のことだ。」
02拍子型「コ…コレマデニナイ キョウテキノケハイ…デス!」
ヴェッチ「……。」
チューンと02拍子型が警戒心を強める中、ヴェッチは呆然としていた。
02拍子型「ン?ヴェッチ、ドウカシマシタカ?」
言葉を失うのも無理はない。何せ、目の前にいる魔皇の姿は……。
ヴェッチ「こいつ…あの時、鏡に映ってた謎の男だ…!」
チューン「はぁ!?あの時って…トゥルースの鏡のこと!?どういうこと!?アンタ…アイツに会ったことあるの!?」
ヴェッチ「いや…わからない。でも…間違いない…。あの時トゥルースの鏡に映ってたのは…あいつだ…。」
ミード「……成程。お前、あの野郎に"真実"を見せられたか。はぁ…あの鏡野郎…どこまでいけすかないことしやがるつもりだ…。」
ミードは困惑するヴェッチをよそに、何かを察したかのようにため息混じりに口を開く。
ヴェッチ「し…真実…?どういうことだ…?おれのことを知ってるのか…!?あの鏡の意味が…わかるのか!?」
ミード「あぁ、全部知ってるぜ。お前があの時何を見たのかも…記憶のないお前が何者なのかも。」
ヴェッチ「!?…記憶がないことまで…。どこまでおれのことを…。」
ミード「……まぁ、俺もタダで全部教えてやるほど優しくはねぇ。それに…お前は俺から春を取り戻すためにここまで来たのか?それとも…"真実"を知るためにここまで来たのか?」
ヴェッチ「そ…それはもちろん……。」
チューン「決まってんでしょ!!アンタを負かして天下を取る!!」
02拍子型「ソシテ、タイリクニ ハルヲトリモドス!…デスヨネ、ヴェッチ。」
ヴェッチ「……あぁ、そうだな。あれこれ考えるのは後回しだ。ミード!おまえを倒して、この冬に
ミード「……いいだろう。なら聞かせてやる。凍える唄を!」
すぅー…
[♪ミードのテーマ♪]
〜〜〜〜〜〜♪ 〜〜〜〜〜〜♪
ミードの激しくも凍えるような歌声が城内に木霊する。
チューン「こ…これがミードの魔唱…。少しでも気を抜いたら…凍りつきそう…!それに…なんだか…。」
02拍子型「エエ…。ヴェッチノウタニ…ソックリデス…!」
ヴェッチ「ま…負けるか…おれ達の歌は…氷を溶かす、春を呼ぶ歌だ…!!ヴェッチ・フェス…スタートだ…!!」
すぅー…
[♪ヴェッチのテーマ♪]
〜〜〜〜〜〜♪ 〜〜〜〜〜〜♪
ヴェッチも負けじと超EXを発動し、冬を溶かし春を呼ぶ歌声を響かせる。それに呼応するように、チューンと02拍子型も演奏を始める。
ミード(やっぱり、お前はそれを歌うよなぁ。だが……。)
ミードはそれでも怯まず、凍える歌声をスピーカーからとめどなく響かせ続ける。
02拍子型「ウッ……スコシデモ…コノコゴエル ウタゴエガヨワマレバ…ヴェッチモ ウタエルハズ…!」
チューン「ならこれで…!ラピッド・カッティング!!」ババババ…!
チューンは曲の合間にミードのスピーカー目掛けて、ギターからピックを連射する。
キンキンキンキン……バチッ!!
そして、ピックの一つがスピーカーに直撃し、ミードの音が弱まる。
ミード(スピーカーが…。あいつら…やるじゃねぇか。)
02拍子型「ヤリマシタ!コレデ ヴェッチガユウリニ…!」
ミード「……けどなぁ、それで俺を追い詰めたつもりか?」
突如、ミードは歌を中断する。
ヴェッチ「?…なんだ……?歌を止めた……?」
チューン「ヴェッチ!アンタは歌い続けて!今がチャンスよ!!」
ヴェッチ「あ…あぁ!」
ヴェッチは歌を再開するが、ミードはそれでも静けさを保っている。まるでそれは、嵐前の静けさのように…。
ヴェッチ(何故だ…。ものすごく、嫌な予感がする…!)
ミード「……そろそろ幕引きだ。少しは期待してたんだがな…。冥土の土産に聴かせてやるぜ。俺の…
すぅ……
〜〜〜〜〜〜♪ 〜〜〜〜〜〜♪
マイクを蹴り上げると、ミードは再び凍える魔唱を響かせる。だが、その声量は先ほどまでの比ではなく、鏡の城の城内に吹雪が舞い始める。
チューン「コイツ…まさか今まで本気出してなかったって…言うの…!?」
ヴェッチ(ま…負けてたまるか…!)
ピキ…ピキ…
ヴェッチ達の身体に霜がつき始める。それと同時にヴェッチ達の身体を分厚い氷が覆い始める。
02拍子型「コ…コレイジョウノ……オンドテイカハ…キケン…デス…!」
ヴェッチ(ぐっ……!まだ…だ……!)
ミード「こいつで……
バキィィィィィン!!
3人「「「────────」」」ドサッ……
ミードは指を鳴らし、ヴェッチごと氷を砕けさせる。ヴェッチ達はなす術なく吹っ飛ばされ、地に伏した。
ミード「ハッ狂醒めだ。お前の歌は…未完成だな。俺をシラけさせるためにここまで来たのか?期待外れもいいとこだ。」
ヴェッチ「み……未完成…だと?」
ミード「あぁ。そんなんじゃ、"俺の歌声になって"熱狂を届けることなんざ、できやしねぇな。」
チューン「な…何言って……ヴェッチの歌声を…奪うってこと…?そんなこと、できるわけ……。」
ミード「いや、できるさ。何せ……コイツは、俺から生み出されたようなもんなんだからな。」
ヴェッチ「────は?」
突然の告白に、3人は言葉を失う。まるで、ヴェッチがミードから作られたかのような物言いに。
チューン「ねぇ…それ、どういうこと?」
ミード「……俺相手にここまでやったんだ。聞かせてやる。そこにいるヴェッチはな…俺から生み出された鏡像……つまり、"偽物"だ。」
ヴェッチ「────。」
言葉が出なかった。唐突に告げられた、あまりにも残酷な真実に。
02拍子型「ニ…ニセモノ…デスカ?」
ミード「あぁそうだ。あの鏡野郎…トゥルースが気まぐれで生み出した…俺の鏡像だ。」
ヴェッチ「う……嘘だ……。そんな…そんなこと…あるはずない……。おれを騙そうとしてる……。」
ミード「いや、本当だ。その証拠に…お前は自分の姿をトゥルースの鏡で見た時、俺の姿を見たんだろ?イラつくことだが…アイツは真実しか映さない。つまり、お前が見たものが全てだ。」
ヴェッチ「…………は……はは……なんだそれ……。まるでおれの全てが…偽物みたいじゃないか……!!そんなの…簡単に認められるわけないだろッ!!」
ミード「……だろうな。俺もそうだった。」
ヴェッチ「……は?何言って……。だって今、おれはおまえから生み出されたって…。」
ミード「……実はな、このやりとりも初めてじゃない。俺は…元々お前と同じだった。お前と同じ、何も知らない歌うたいのヴェッチだったんだ。」
そして、立て続けに更なる真実がミードの口から紡がれる。
ミード「…俺の前に、"別のミード"がいた。俺はまだお前…ヴェッチだった頃、真実を手にするために、"前のミード"に戦いを挑んで……勝った。そんでこのマイクを持った瞬間……俺はミードになっていた。身も心も、何もかもな。」
チューン「つ……つまり何…?この戦いも…何度も何度も繰り返してるって言いたいの……?」
ミード「あぁそうだ。あの野郎は…トゥルースは……俺とヴェッチの悲劇を気に入ってやがる……。だからやめねぇんだ。お前らだって、気に入った曲は何度もリピートさせるだろ?…奴にとっては、それと同じなんだ…。」
02拍子型「リ…リカイガ…オイツキマセン……。」
ヴェッチ「なら…なんでおれの声を求める…?何が目的だ…?」
ミード「目的だ?…俺はただ、熱狂させたいだけだ。ヴェッチ、お前らと同じだ。」
ヴェッチ「……えっ?」
ミード「確かに、俺は凍てつく魔唱を持つ魔皇。だが、心の底ではお前らと同じように熱狂を求めてんだ。見てみろ、俺はいくら歌っても、聴く者を凍えさせることしかできねぇ。だが…お前の歌声が…本物の歌声が手に入れば……俺も、世界を熱狂させることができる。この悲劇を、終わらせることができる。そういうこった。」
ヴェッチ「…………。」
あまりの情報量に、ヴェッチは言葉を失う。頭では理解できていても…心がそれを認めることを拒んでいた。
ミード「……わかったら、とっととここから去れ。どちらにしたってお前は俺に勝てねぇし、俺もその歌声はもらえねぇ。出直してこい。その時は本気で相手してやるよ。」
ヴェッチ「…………ぐっ!!」ダッ!
02拍子型「アッ…ヴェッチ!!」
ヴェッチはその真実を受け止めきれずに、その場から走り去っていく、02拍子型もその後を追おうとするが……。
チューン「………。」
何故か、チューンだけはその場から動かなかった。
02拍子型「チューン…?ドウシタンデスカ!ハヤク ヴェッチヲ…!」
チューン「………ごめん。あたしは、そっちに行けない。」
02拍子型「チューン…?ナ…ナニヲイッテイルンデスカ…?チューンモイナキャ バンドハ…!」
チューン「あいつの歌声は偽物だった!!!……こんなこと言うのは申し訳ないってわかってる。けど…あの話を聞いたら…ヴェッチの歌が…ミードの偽物…って思えちゃって……。だから…さ、あたしは……ミードにつく。…ごめんね、ヴェッチ、02……。もうバンドは…解散よ。」
02拍子型「チューン………ワカリ…マシタ……。」ガシャン…ガシャン…
チューンはそこに残ると決め、ショックを受けた02拍子型は、消沈しながらその場を去っていった。
ミード「……本当に良かったのか?行かなくて。」
チューン「………ええ。あたしの夢は…あくまで本物の歌声とギターで天下を取ること。あんたの歌声が本物だって言うなら…あんたにつく。この選択に後悔はない…。ないはず…。」
ミード「……そうか。勝手にしな。」
雪原地帯…。
ヴェッチ「………。」
ヴェッチは孤独に吹雪の中、雪原を歩いていた。
ミード《俺から生み出された鏡像……つまり、偽物だ。》
ヴェッチ「違う………。そんな……そんなはずは……。あ……あぁぁぁあァァァァァァァァァッ!!!!!」
まだ、ミードから告げられた真実が、頭を離れない。感情のままに走り去ってしまったせいで、チューンも02も見失った。………自分には、もう何も残っていない。
???「………。」
そんなヴェッチを、空から見守る者がいた。