オレカバトル2 ストーリーズ   作:セッツァー

71 / 71
トゥルースの相手ををスノーに任せ、ヴェッチ達は鏡の城へと走る。
全ては春を取り戻すため。そして…この永遠とも言える氷劇を終わらせるために。


第5章 11th Live 鏡なんだ僕ら互いに

バァン!!

ヴェッチ「…来たぞ……ミード…!」

ヴェッチは力強く鏡の城の門を蹴り開ける。広間の奥には、黒い姿のミードと、かつてのバンドメンバーのチューンがいた。

ミード「ヴェッチ……。その顔、どうやら全てを知ったらしいな?それで?お前の声を俺に返しに来た…というワケじゃあねぇよな?」

ヴェッチ「あぁ。おれはお前を倒して、春を取り戻す!そして…この終わらない氷劇を終わらせる!!そのためにここに来たんだ!!」

チューン「何よそれ…。あんたは結局はミードの偽物!!あんたの声をミードに返せば、全部終わる話じゃないの!?」

03弦楽型「チューン…。ボクハ、ヴェッチガニセモノナンテ、コレッポッチモオモッテマセン!!ヴェッチノ"ジョウネツ"ハ…"オモイ"ハ マチガイナク"ホンモノ"デシタ!!ヴェッチハヴェッチ、ソレジャダメナンデスカ!?」

チューン「そ…それは……。」

ミード「もういい。ヴェッチ、今のお前は、"自分は自分だ"なんて思ってんのか?」

ヴェッチ「あぁ…。03やファンのおかげで気づけたよ。おれは他の誰でもない。おれはおれ、この世でたった1人のアーティスト・ヴェッチだ!!」

ミード「そうか。自分は自分、皆そう思っているだろう。ハッ!だがなぁ、そんなもんは俺からしたらチープな思い込みだ。それを今、ここで思い知らせてやるよ……。この俺、凍てつく魔唱、邪帝ミードがなぁ!!」

 

ヴェッチ「03!リズムを頼む!!」

03弦楽型「マカセテクダサイ!サイコーノビート、キザムゼ!」ベ〜ン♪

03がベースの演奏を始める。機械的に正確に。そしてそのビートにノリながら、ヴェッチも動き出す。

ヴェッチ「サンキュー!さぁ…行くぞ!」ダッ!

ヴェッチはマイクを軸に、回し蹴りをミードにかまそうとする。だが…。

ギュイーン!!

ヴェッチ「ぐっ…チューン…どいてくれ…!きみとは戦いたくない…!」ギギギギ…

チューンのギターが、ヴェッチの蹴りを受け止める。

チューン「ホントごめん…。あたし、どうしてもあんたの事を認められそうにない…。もしこのまま声をミードに返さないってんなら…!」

キィン!

チューン「あたしは、あんたを全力で倒す!!」ギューン!!

チューンがギターを掻き鳴らすと、音と共に電磁波が放たれる。

ヴェッチ「がっ…!?身体が…痺れて…!」ビリリ…

チューン「もらった!」シャキーン!

チューンは爪を立てて、痺れて無防備なヴェッチを切り裂こうとする。

ガン!!

03弦楽型「ヴェッチニハ…テダシサセマセン!」キィン!

チューンの爪は、03の鋼鉄の腕に阻まれ、攻撃は失敗に終わる。

チューン「あんた…本気でそっちの味方なんだね…。仕方ない…あんたとは本当はやりたくないけど、邪魔するってんなら!!」

03弦楽型「チューン…。ゴメンナサイ…。ケド、ヴェッチヲ ホウッテオクワケニハ イキマセンノデ!!」

ヴェッチ「03……すまない、チューンは任せた!おれはミードをやる!」ダッ!

03弦楽型「オキヲツケテ!!」

かつてのバンドメンバー達が睨み合う中、ヴェッチはミードに立ち向かう。

ミード「ハッ、俺に向かってくるか。いいだろう。どっちが本物か…ケリをつけようじゃねぇか!!」ピキーン!

ヴェッチ「ポップ・ノイズ!!」

ミード「冰琴!!」

ガキィーン!!

氷を纏わせたマイク同士が、鈍い音を鳴らしながらぶつかり合う。

ミード「なぁヴェッチ…俺を倒したらどうなるかはわかってんだろ?ならなんで立ち向かう?」

ヴェッチ「さっきも言っただろ…!おれはこの大陸を…世界を熱狂させて春を取り戻す!そして、この永遠に終わらない氷劇を終わらせる!!そのためにここまで来たんだ…!お前に成り代わるためじゃない!!」

キィーン!!

ミード「……無駄だ。その熱狂もやがて冷め、世界を凍らせるようになる。この俺がそうだったんだからな!お前も、かつての俺と同じ末路を辿ることになるぞ?」キンキンキンキン!!

ヴェッチ「どうだろうな?昔のおれがどうだったかはわからないが、今のおれには支えてくれる仲間がいる!おれのことを応援してくれているファンがいる!おれはみんなのおかげで進むべき道を定められたんだ…!03やファンのためにも、そして…運命に囚われているお前のためにも…!おれは運命を変えてみせる!!」キンキンキンキン!!

キィーン!!

2人は激しいぶつかり合いの末に後退りする。

ミード「……俺のためにも…だ?同じ運命に囚われたお前に何ができる!?どうやってこのループを終わらせる!?」

ヴェッチ「わからない…!けど必ず方法はある!!必ず見つけてやる!」

ミード「……もういい。このまま話してても埒が明かねぇ。これで終わらせてやるよ…!!」すぅ……

ヴェッチ「あの構え…ならこっちも!!」すぅ……

二人は深く息を吸い込み、歌う準備を整える。そして……

 

ミード「報復絶唱(ファルセット・カルマ)!!

ヴェッチ「ヴェッチ・ガラ!!

 

〜〜〜〜〜〜♪ 〜〜〜〜〜〜♪

〜〜〜〜〜〜♪ 〜〜〜〜〜〜♪

 

EX技として放たれた両者の歌声がぶつかり合う。その勢いは拮抗しており、ちょうど中心でミードの歌声で発生した氷を、ヴェッチの歌声が溶かしていく。

 

ヴェッチ「〜〜〜〜〜〜♪ 〜〜〜〜〜〜♪ (前より歌声の勢いが…!?でも…)」

ミード「〜〜〜〜〜〜♪ 〜〜〜〜〜〜♪(前よりも歌のキレが増してやがるな…。だがなぁ…)」

 

2人((ここで終わるわけには、いかない!!/いかねぇんだよ!!))

 

決意と共に歌声に強みが増す。そしてそれと同時に異変が起こる。

バリン!バリン!!

鏡の城の鏡が音の反響で割れ始める。それも一枚や二枚ではなく、広間の鏡が全て割れかねない勢いで割れ始める。

 

バキン!!

 

そして、広間の天井に吊られていた、巨大なシャンデリアも落ちてくる。位置は……歌っている2人のちょうど真上。

03弦楽型「イケマセン!!」

チューン「危ない!!」

ドン!!

ヴェッチ「えっ……?」

ミード「なっ……!?」

 

ガシャァァァァァァン!!

 

2人は一瞬理解が追いつかなかった。歌っている最中にヴェッチは03に、ミードはチューンに突き飛ばされたかと思えば、次の瞬間には二人の頭上にシャンデリアが落ちてきたのだ。

ヴェッチ「ぜ……03!!チューン!!」ダッ!

ミード「あ…あぁ………。」

ヴェッチは急いで2人の救出に向かうが、ミードは唯その場に立ち尽くしていた。自分の歌は他者の命さえ奪うのかと、心の中で絶望していたのだ。

 

ヴェッチ「2人とも!大丈夫か!?すぐに助けてやるから!!」ガシャシャン…

ヴェッチの目に映った光景は凄惨たるものだった。チューンには無数のガラス片が突き刺さっており血まみれに、03には巨大な破片が装甲をぶち破り胴体を貫通している。ミードの目から見ても、2人はとても助かるような状況じゃなかったのは、目に見えていた。

チューン「あ……あんた……03はともかく…なんで、あたしの……ことも…?あんたのこと…裏切ったん…だよ?あんな酷いこと言ったんだよ……?…憎いはずなのに…なんで……。」

ヴェッチ「当たり前だろ!?裏切ったって、チューンはチューンじゃないか!!おれ達はかけがえのない…仲間だったじゃないか!!放っとけるわけないだろ!!」

チューン「は……はは……変わってないんだね…。こんなんじゃ…あんたのこと見捨てたあたしが…馬鹿みたいじゃん……。」

チューンは後悔から思わず涙を流す。

03弦楽型「ガ…ガガ……ヴェッチ……。」

ヴェッチ「03!!今すぐ助けてやるからな!だから……!!」

03弦楽型「ヴェッチ……モウ…イイデス…ボクハ…モウタスカリ……マセン……。」

ヴェッチ「な……何言ってるんだ!?諦めるな!!おれには、お前が必要なんだ!!お前がいたからおれは立ち直れたんだ!!だから…!!」

03弦楽型「ヴェッチ……ボクハ…タダセナカヲ…オシタダケデス……。コウヤッテタチアガッタノハ…ヴェッチジシンデス……。アトハ…ヴェッチシダイ…ナンデス……。ヴェッチハ…ボクガイナクテモ…ダイジョウブナ…ハズデス……。」

ヴェッチ「でも……!!」

チューン「ねぇ…ヴェッチ……あんたは……あんたの夢を追って…いいんだ……。ミードにも……そう…伝えてやって。」

ヴェッチ「そんな……。」

チューン「あぁ……もう、指も動かせない……まぁ、いいや…。あたしの音は…あんたの中に…残る……もんね…………」ガシャン……

ヴェッチ「チューン…?チューン!!」

必死に名前を呼ぶが、目を閉じた彼女からは返事が返ってこない。

03弦楽型「ガ……ガガ………ボクモ…モウゲンカイ……ミタイデス……。ヴェッチ。ジブンノミチヲ……ヴェッチダケノジンセイヲ……コレカラモ…イキテ…ク…ダ…サ…………」ギュゥゥン……

ヴェッチ「03…!?なぁ……返事をしてくれ!!03!!」

しかし、ひどく損傷した03からも、返事はない。

ヴェッチ「あぁ……あぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁッ!!!!

間も無く、ヴェッチの慟哭が響いた。バンドメンバーを…共に歩んできた仲間を喪った哀しみは、筆舌しがたいものがあった。

 

しばらく泣きじゃくり、落ち着きを取り戻したヴェッチは口を開く。

ヴェッチ「……なぁ、ミード。おれ達は……本当に戦うしかないのか…?おれ達が戦ったとして…本当に…この運命は終わらせられる…のか?」

ミード「……あぁ。この世界に残れるのは、俺かお前だけ。…それしかねぇ……。」

ヴェッチ「なぁ、やっぱりお前も、悲しいのか?誰かを熱狂させるはずの歌で…その…仲間を…斃してしまったことは……。」

ミード「何故そう思う?」

ヴェッチ「二人が死んだ時、おれを倒すチャンスはいくらでもあった。でもお前は何も言わず、見ているだけだった。おれは見逃さなかった。その手が、震えてるのが見えたんだ。

ミード「はぁ……嫌になるな。こうも言い当てられるのは。お前が俺だってことを実感させられる。俺は邪帝である前に、一人のミュージシャンなんだ。だから……もうウンザリなんだ。誰かを熱狂させるはずの歌で……誰かを傷つけることは……。」

ヴェッチ「…やっぱり…お前はおれなんだな……。おれも、同じことを考えてるよ……。」

チューンと03の死に、2人が消沈・茫然とする。両者とも戦意など、微塵も残っていなかった。

 

バァン!!

 

2人「「……?」」

その時、門が再び開けられる。そこにいたのは、オータコンに乗ったセイレンと、オータコンの触手に締め上げられたトゥルースだった。

セイレン「この惨状……一体何があったの…?…あっ、そんなことより!もしかしたら、このループ終わらせられるかもしれない!!

2人「「……その話、本当か!?」」

それを聞いた2人は食い気味に締め上げられたトゥルースに詰め寄る。

トゥルース「う…うん!トゥル、嘘はつかないからね!」

ヴェッチ「それは……どんな方法だ?」

トゥルース「それはね…2人の心を完全にシンクロさせること!方法はなんでもいいけど、2人が力を合わせて、思いとか諸々を完璧に一致させることができれば、ループを完全に断つことができると思う!バグってオートで発動してるトゥルの魔法を解けると思う!……多分!」

ミード「多分って……確証はねぇのかよ…。」

トゥルース「うん。だってこんなこと初めてだし…。それで、どうするの?本当に…ループを終わらせる?」

トゥルースの問いかけに対し、2人は顔を合わせる。

ミード「まさかとは思うが……同じこと考えたか?」

ヴェッチ「あぁ。その様子だと、お前もみたいだな。」

セイレン「えっ?なんの話?」

ミード「……実はな、俺たちが歌ってる曲だが…あれはまだ未完成だ。

セイレン「み…未完成!?そのこと、ヴェッチも知ってたの?」

ヴェッチ「いや…。でも、なんとなくわかるんだ。おれの歌は、一人じゃ完成できないって。多分…この時のための、あの曲だったんだって。」

そう。彼らがライブやEX技で歌う曲はとても似ている。これらを組み合わせて一つの曲にしても、違和感が全くないほどに。

ミード「……ライブが始まるまで、少し時間をくれ。そこで全部終わらせる。」

ヴェッチ「おれからも頼む。最後の準備をさせてほしい。……いいかな?」

セイレン「……わかった。いくわよ、オータコン。」

こうして、最後のライブの準備が進められる。

呪われた運命を断ち切るための、最後のライブが始まろうとしていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。