本日は『ヴェッチVSミード・ファイナルライブ』にお集まりいただき、誠にありがとうございます。
まもなく、ライブの開演時間となります。指定の席についていただきまして、開演までもうしばらくお待ちくださいませ。
鏡の城前、大広場…
ざわざわ…ざわざわ…
鏡の城の広場には、これまでにないほど多くのモンスターが集っていた。皆ヴェッチの、あるいはミードのライブのためにやってきた観客達である。
スノー「あっ、セイレンさん!どうでした?ちゃんと伝えられましたか?」
セイレン「ええ。でも、チューンと03が……。」
スノー「……そうだったんですね。にしても、まさかここまで集まるとは…。」
ファンの男「宣伝効果もあるだろうが、今回は敢えてミードのライブと時間と場所を被らせたんだ。ミードのライブに来たファンも混ざってるんだろうよ。」
ざわざわ…ざわざわ…
様々なモンスターがひしめき合うなかには、これまでヴェッチが出会ったモンスター達の姿もあった。
古代兵器モアイ「サワガシイカラキテミタガ、ココデウタ…キケルノカ?」
ノート「むう…私ともあろうものが、魍魎達に連れられてここに来てしまうとは…。静けさのかけらもない…不愉快だ。不愉快だが…この胸の高鳴りはなんだ…?」
ラファエル「ミカエル様、本当によろしいのですか?たった1人のために天啓以外の目的で地上へ来ようなどとは……。」
ガブリエル「しかもあの魔物の群れ…邪悪なる者も混じっている様子。罰を下しましょうか?」
ミカエル「いや、よい。迷える者よ…其方の答え、この目で見届けさせてもらうとしよう……。」
スノー「こうやって見ると、本当にたくさんのモンスター達が来たんですね…。それだけヴェッチさん達が愛されてきたってことでしょうか?」
ファンの男「どうだろうな?少なくとも、何人かはあいつに大きな影響を受けたのは確かだろうがな。」
セイレン「それにしたって多いわよ。それだけあの二人の影響力は強かったってことでしょ?なんだか尊敬しちゃうわ。」
スノー「……ん?そういえば音はどうするの?チューンと03がいないだけでかなり支障は出ると思うけど……。」
セイレン「そこはコイツに頼んだわ。」
トゥルース「トゥルが2人の鏡像を作って、鏡像が奏でた音源を録音してもらったんだ。まぁ…2人とももう死んじゃってたから、すぐに鏡像は消えちゃったけど…。」
ファンの男「まあ…仕方ねぇのかなぁ……。」
アナウンス『お集まりの皆さま。本日は『ヴェッチVSミード・ファイナルライブ』にお集まりいただき、誠にありがとうございます。まもなく、ライブの開演時間となります。指定の席におつきいただきまして、開演までもうしばらくお待ちくださいませ。』
広場一帯にアナウンスが鳴り響く。まもなくスタートの合図だ。
ファンの男「もうすぐ始まるな…。さて、心を完全にシンクロさせるか…。果たしてどうなるか……。」
パッ!
スポットライトがステージを照らす。そこに登壇してきたのは、ヴェッチとミードの2人。その目には、決意の炎が灯っていた。
観客「「「ワァァァ!!」」」
ヴェッチ「……みんな。今日は集まってくれてありがとう。今日は大事な話があるんだ。聞いてくれるかな?」
ヴェッチが話し始めると、場内が静けさに包まれる。もちろんという暗黙の了解だ。
ヴェッチ「ありがとう。……まず、あのチラシをみて来てくれたみんなは、もう察しはついているとは思うけど、おれはこのライブをもって、歌手活動を終わらせようと考えている。それには、おれの複雑な生まれが関係してるんだ。それについては、彼から話してもらおうと思う。」
ミード「ようお前ら、よく集まったな。凍てつく魔唱・ミードだ。さっき言ってた複雑な生まれについてだが…まずこのヴェッチは、俺の弱い心が生み出してしまった鏡像…偽物だ。」
ざわざわ…ざわざわ…
会場がどよめく。それはそうだ。いきなりヴェッチがミードの偽物だと言われれば、そのファンは混乱もする。
ミード「ヴェッチを生み出して以来、俺は何度も同じ人生をループしてる。もう自分が何人目なのかさえ、覚えてねぇ。」
ヴェッチ「だからこの悲しいループを終わらせるため、おれ達はこうして一緒に立つことに決めたんだ。……もし、この曲を歌いきって、春が戻った時……おれ達のどちらかは存在しなかったものとして、この世から消滅するだろう。いや…もしかしたら、2人とも消えるかもしれない…。」
ざわざわ…ざわざわ…
次々とされるカミングアウトに会場は驚きの連続となる。そして最後のカミングアウトに至っては……。
セイレン「ねぇ、どういうこと!?どっちかが消えるって!?あんたそんなこと一度だって言ってなかったじゃない!!」
セイレンはトゥルースを問い詰める。先程までそんな話はなかったからだ。
トゥルース「ごめん…トゥルすっかり忘れてた…。2人とも、あくまでトゥルの魔法が基になって生み出された存在だから、どっちが消えてどっちが本物になるかはトゥルにもわからないんだ…。」
スノー「そんな…そんなことって……。」
トゥルース「でも、あの2人は自然と理解してたみたいだね。…自分たちの結末を。今はただ、見届けてあげようよ。」
スノー「……だね。」
ヴェッチ「…そんな悲しい顔をしないでくれ。こうなることは、わかってたから。だから…"おれ"と"俺"の最後のライブ勝負を、見届けて欲しい。」
ヴェッチはそう言って、ミードと向かい合う。
ヴェッチ「鏡の中で響く声…。声は二つ?」
ミード「いや、一つ。俺の声とお前の声を聞き分ける必要は無い。」
ここにいるのは… おれ/俺だけだ。
2人は静かに構え、互いに超EX技の発射準備に入る。
ヴェッチ「楽しんでいってくれ!おれの…ヴェッチ・ワールドツアーを!!」
ミード「そして魂に刻みやがれ。俺の…
2人「「それじゃあ聞いてくれ。『Lamipus』。」」
すぅ……
第5章 Final Live [♪Lamipus♪]
〜〜〜〜〜〜♪ 〜〜〜〜〜〜♪
最後のライブが始まる。イントロが終わった直後、歌い始めたのはヴェッチ。明るい曲調だが、そこには辛い運命に翻弄された人生が唄われる。
スノー「この曲って…ヴェッチさんがよく歌ってた…!」
セイレン「あれ、未完成だったんだってさ。で、あの2人がとった心をシンクロさせるための行動が、あの曲を…『Lamipus』を完成させること。あの2人の持ち曲は、2曲が組み合わさって完成するものだったのよ。」
ファンの男「はえ〜…。あの2人の持ち曲が似てたのはそういうことだったのか…。」
〜〜〜〜〜〜♪ 〜〜〜〜〜〜♪
曲はサビに突入する。ヴェッチのボルテージも最高潮に達すると同時に会場はヴェッチのファンを中心に盛り上がりも最高潮に達する。
古代兵器モアイ「ウタ…タノシイ…!ムネガ…アツクナル…!」
ノート「ふん…相変わらず私好みではないが…魍魎達が気にいるのも納得できるな。」
そして、ヴェッチを手伝って来たメンバーも感慨深く見守る。
ファンの男「ヴェッチのやつ…なんというか…今までで一番張り切ってやがるな…。」
スノー「それはそうですよ。だって……これが最後のライブなんですから…。」
ミード(そろそろ1サビが終わる…。次は俺だな。)
〜〜〜〜〜〜♪ 〜〜〜〜〜〜♪
2番に突入するとメインボーカルがミードに交代する。こちらはこれまで自分が経験してきた理不尽な運命への怒りが込められた激しく凍えそうになる曲調だ。しかしそれより驚きなのは…。
ファンの男「すげぇ…。本当にミードの曲に繋がりやがった…!」
セイレン「どうやら2曲で一つの曲なのは、本当だったみたいね。」
〜〜〜〜〜〜♪ 〜〜〜〜〜〜♪
そしてミードの曲もサビに突入する。少しでも気を緩めれば凍ってしまいそうな、しかしその冷たく激しい歌声は多くの人々を魅了する。
アルカ「キキキッ!盛り上がってきたねぇー!!」
スタルカ「セイレンのヤツに推されてライブとやらに来てみたが…成程、存外悪くないではないか!冷たくて良い曲だ!だろう、トルンスカ?」
トルンスカ「うむ!これが新感覚…というヤツだろうか…?とにかく良いな!」
スノー「あれ…?あの二人ってクジェスカのところにいた…もしかして!?」
セイレン「ふぅ…。クジェスカ軍の残党にも呼びかけておいて正解だったわ。アイツらならミードの曲、気に入ってくれると思ったし。」
スノー「セイレンさん、もしかしてわざわざ…?」
セイレン「まぁ、少しでも観客は多い方がいいからね。ほら、もうそろそろサビも終わるわよ。」
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2サビが終わると、雰囲気が変わりブリッジに入る。ラスサビに入る準備だ。優しい曲調で互いへの想いを伝え合う。そして……。
〜〜〜〜〜〜♪ 〜〜〜〜〜〜♪
〜〜〜〜〜〜♪ 〜〜〜〜〜〜♪
ラスサビになり曲は転調し、クライマックスに突入。二人の息のあった歌が、ライブ会場の盛り上がりを最高にする。
トゥルース「おー!!すごいよ、ヴェッチ!ミード!キミ達の歌、やっぱりサイコー!!」
ファンの男「なんだよ…あの二人、息ピッタリじゃねぇか!!」
2人((さぁ…フィナーレだ!!))
〜〜〜〜〜〜♪ 〜〜〜〜〜〜♪
〜〜〜〜〜〜♪ 〜〜〜〜〜〜♪
「「「「ワァァァァァァァァァ!!!!」」」」
ヴェッチとミードは見事に曲を歌い切る。一瞬の静寂の後、会場は歓声に包まれた。
ヴェッチ「ふぅ…みんな、ありがとう!!」
ミード「こういうのは俺のキャラじゃねぇが、俺からも言ってやる。…ライブを楽しんでくれて、ありがとな。」
「「「「ワァァァァァァァァァ!!!!」」」」
そして、歓声を背に2人がライブ会場を後にしようとした…その時だった。
プツン。
ヴェッチ「……えっ、あれ……?おかしいな……。力が……入ら……」ドサッ……
ミード「……そうか…。終わったんだな…なら、あの心の中で聞こえた音は……」ドサッ……
心の中で、何かが切れた音がした。絶対に切れてはいけない何かが。その音が聞こえると同時に、2人は会場に倒れる。
ざわざわ…ざわざわ…
セイレン「何…?何が起こってんの!?」
トゥルース「……魔法が終わる時がきたんだ。多分、あの2人はもう……。」
二人の身体がガラスのように少しずつ砕けて静かに消えていく中、最後に二人は語り合う。
ヴェッチ「……なぁミード……。動けるか……?」
ミード「……無理だな。もう全部出し切っちまった。…俺たち、消えるみてぇだな。まぁ、当然か。」
ヴェッチ「だな。………あぁ、みんな、楽しんでたなぁ。」
ミード「あぁ。あんなに熱狂してるのを見たのは…初めてだ。正直、満足だ……。もう俺に悔いはねぇ……。」カシャ…
ミードはそう言って、おぼつかない手で自分のマイクに手をかける。そして…
ミード「……ふんっ!!」
ガシャン!!
ヴェッチ「ミード…!?何をやって……!?」
ミードはマイクを自分の胸に突き立てる。ヴェッチは、あまりにも突然の行動に驚きを隠せない。
ミード「お前……
ヴェッチ「あっ……。」
ミード「いいんだ、それで。……俺はもう満足だ。お前は、お前の好きな様に歌い続けろ。……俺の分まで。」
ヴェッチ「ミード……。」
ミード「……ハッ、シケたツラしてんじゃねぇよ。誇れ、お前が大陸を冬に閉ざした邪悪な皇帝から春を取り戻したんだ。……もっと勝ち誇れ。」
ヴェッチ「……あぁ。……わかった。」
ミード「フッ……嗚呼、悪くねぇアウトロだ……………。」パキパキ……パキィン……
ミードは、ヴェッチを残して割れた鏡のように消えていった。いつの間にか、ヴェッチの身体の消滅は止まっていて、自由に動くようになっていた。それはまるで、ミードが「お前は本物だ」と認めたかのような光景だった。ヴェッチの目からは、涙が溢れていた。
ヴェッチ「……ミード…………。」
数日後…。
北の大陸はすっかり春を取り戻した。雪原は緑の草原に凍った湖は氷が溶け、緑が戻った大地には様々なモンスターが元気に駆け回り、大陸は活気を取り戻していた。そして……。
鏡の城、城内にて……
カシャン……
ヴェッチ「………03、チューン、そして…
ヴェッチは、城の奥に03のベース、チューンのギター、そしてミードのマイクを墓標として安置し、鏡の城を去っていく。
ヴェッチ「……ありがとう、みんな。」
これからも、ミードの分まで世界を熱狂させるために、ヴェッチは鏡の城の門を閉ざして、旅に出た。
第5章 Fine
パンドラ「よう!第5章、最後まで読んでくれてありがとな!!」
パンドラ「ヴェッチはここまでの旅で多くのものを失っちまったが、その中で自分を見つけられたのは、周りのみんながいたからなんだろうな。」
パンドラ「誰だって一度は自分を見失うと思うけど、そういう時は周りを見てみると、案外答えは簡単にみつかるかもな。」
パンドラ「それじゃあオマエら、また会おうぜ!またナー!!」
Special Thanks
Chevon
EX Live 10/03 00:00
Coming soon……