此度は皆様のために特別なライブを催させていただき〼ので、最後までお楽しみくださいませ!!
時はヴェッチとミードのファイナルライブより遡ること半年前……
トゥルースと出会い、氷劇の連鎖に陥ったばかりのミードは、鏡の城にて思い悩んでいた。
ミード「俺としたことが……まさかスランプに陥るとは……。」
スランプ。それは、音楽のみにならず、あらゆる芸術や創作において、必ずぶち当たることになる壁である。そしてそれは、凍てつく魔唱のミードさえも例外ではなかった。
ミード「……じっと考えてても仕方ねぇ。ちとばかし出かけるか。」
雪原地帯にて…
ミード「…とは言ったものの、どうするべきか…。アイツを…もう一人の俺を探すか…?いや、即殺し合いは確定するだろうし、ナシだな。」ザッ…ザッ…
雪の降る雪原にて歩きながらアイデアを模索していたミードは、突如足を止める。
ミード「……さっきからつけてきてるのはわかってんだぜ?鏡はねぇからトゥルースじゃねぇな。誰だ?」
???『おっとまさか私の気配に気づくとは。…さては二律相反の狭間で悩む者?まぁいいや。姿は見せないと失礼ですもんね?ま、もう見せてるのですが。』
ミード「あ…?」
ミードがふと足元を見てみると、小さなヤギのような生き物がいるのが見えた。
ヤギ…?「メェー。」
BOOM!!
次の瞬間、煙に包まれたヤギは人のような姿へと変貌する。肌は青白く、巨大なツノもあることから、まず人間ではないのには違いない。性別は中性的な格好のせいで、男女どちらかはわからない。
ミード「その魔力量…タダモンじゃねぇな。何モンだ?」
???「ふふん、お初にお目にかかります。私は魔王レオナーレと申し〼 。どうぞよしなにー!!」
ミード「魔王だと…?お前が?なんで俺のことをつけてた?」
レオナーレ「いやー、必然的に、運命的に、それでいて些か本能的に!つまり天啓!…が、聴こえたもんでさ?そんでここに来てみたら、あんたから私と同業者の気配を感じまして!すこーし気になってストーキングしちゃいました!」
ミード「同業者の気配?……ん?」
確かに今、自分のことを魔王と名乗ったように聞こえた。しかもやけにハイテンションだ。そして、尻尾にはマイクが絡めてある。そこから明らかに言えることがあった。
ミード「そのマイク…お前、アーティストか?」
レオナーレ「分かってるじゃないすか!まぁそんなところですかねぇ!いくつか曲も作ってるんすよねぇ!」
ミード「ほう、作曲をねぇ…。(…恥を忍んでダメ元で頼んでみるか。)俺は今、情けねぇことにスランプに陥っててな。何かアイデアがないか模索していたんだが…。そういう時はどうすればいい?」
レオナーレ「成程スランプ!わかりました!ヒントにはならないかもですが、こういうのは経験者の曲を聞いてヒントを得るのが一番!という訳で…今からあんたには、私の曲を4曲ほど聴いていただきましょう!!」
ミード「先人のものを参考に…か。理には適ってるな。だが、およそ20分と見積もってもやけに短いな?」
レオナーレ「まぁ初めてなわけですから、これくらいがいいかなと!それじゃあこれから始めますけど、私の歌はたまーに
ミード「あ…?おい今お前なんつった!?」
レオナーレ「それでは、ミュージック・スタート!!」
レオナーレ「それではまず1曲目!脳天直行!『銃電中』〜ッ!!」
[♪銃電中♪]
激しく明るめの曲が流れ始める。だがよく聞くと歌詞はかなりダークだ。会場のボルテージを上げるにはピッタリだ。
ミード「成程、これがお前の曲か。悪くねぇな。ダークな歌詞をこうも明るく歌いこなすってのは難しいもんだ。」
曲を聴き終わったミードは賞賛の言葉とともに拍手する。
レオナーレ「お褒めいただきありがとうございます!!ですがまだまだこれから!私の喉もあったまってきたので、このまま2曲目参りましょう!最期の歌、歌ってくれよ!『冥冥』…!」
[♪冥冥♪]
2曲目の歌が流れ始める。先ほどよりテンポは遅めだがノリやすい曲調で、少し和風だ。そしてこの世に対する理不尽が歌われている。
ミード「いい曲調だな。理不尽に抗ってやるって曲か。…成程悪くねぇ。…ん?」
サビに入る直前、レオナーレは指鉄砲のモーションを取る。すると…
〜〜〜♪ バキュン!!
ミード「うぉっ!?」キンッ!
突如、レオナーレの指から弾丸が放たれる。ミードは咄嗟に避け、地面に穴が空く。
〜〜〜♪ バキュン!!バキュン!!
ミード「チィッ!そういうことかよ…!」キンッ!キンッ!
『冥冥』の歌詞に合わせて、指鉄砲を発射する。攻撃を伴うとはこういうことだったらしい。意図がわかったミードはマイクで弾丸を弾く。さながらリズムゲームをさせられてる気分だ。
ミード「はぁ…はぁ…曲は終わったか…。曲自体は悪くなかったが…エライ目に遭ったな…。」
レオナーレ「おやおや大丈夫ですか?ライブはまだまだ折り返し地点!ドンドン行きますよ!3曲目はこちら!低く、響く、踏み鳴らす!『大行侵』!」
[♪大行侵♪]
3曲目はこれまでの曲の中で最もローテンポで重厚感のある曲調だ。退屈な現状を踏み荒らしていくという意志が込められているようだ。そして、レオナーレが歌い始めると同時に巨大化していく。
ミード「今度は巨大化か…!この辺りを踏み荒らしていくってか!?」
ズシン…!ズシン…!
レオナーレは強く足を踏み鳴らしながら歌い続ける。ミードは避けるので精一杯だった。
ミード「ふぅ…現状打破をカイジュウが街を踏み荒らす様に喩えて、重々しく歌うか。いい発想じゃねえか…。俺もぺしゃんこになりかけたがな。」
レオナーレ「おっ、そこまで汲み取っていただけるとは!お目が高い!ではいよいよこのライブもラストスパート!最後は私のお気に入りで締めさせていただきましょう!!」
レオナーレ「これよりお見せするのは虚と実、善と悪、光と闇が入り乱れる二律の儀式。さあ、私に喝采と罵倒を!『DUA•RHYTHM』!!」
[♪DUA•RHYTHM♪]
ミード「この魔力量…まさか、超EX技か!?」
今までの曲とは、まるで纏ってる魔力が違う。
ガルム「ワオーン!!」
ギリメ「グオォォッ!!」
ミード「なっ、こいつら…どこから出てきやがった!?まさか…あの曲の力か?」
レオナーレが歌い始めると、激しい曲と共にどこからともなく雲狼ガルムと魔獣ギリメが集まってくる。しかも、2種ともハイになっているようで、なりふり構わず暴れ始める。
ミード「この曲…集めたモンスターをトランス状態にする効果があるのか…!!ハッ!来るなら来な!!」
ガルム「ワオーン!!」ダッ!
ミード「…ふん!!」
ガキィン!!
ガルム「ギャウ!?…ワオーン!!」ダッ!
ミードは走ってくるガルムにマイクで反撃するが、まるで効果はなく、再び突っ込んでくる。
ミード「チッ!曲が終わるまで耐えるしかねぇか!!」
ガルム「ワオーン!!」ダッ!
ギリメ「グオォォッ!!」ドドドド…!
そして、曲が終わるまでガルムとギリメの猛攻は続いた。ミードはそれをひたすらいなし、曲が終わるまで耐え続けた。
レオナーレ「ありがとうございました!!」
ミード「はぁ…はぁ…ようやく終わったか…。ったく、ひでぇ目に遭ったぜ…。」
レオナーレ「それでどうでした?ここまで聴いていただいて、何か掴めました?」
ミード「…なぁ、お前。もしかして曲の背景を具現化する能力でもあんのか?」
レオナーレ「ご明察!アーティストとしての特性が強く出ているのか、私のプロデュースした曲は、その曲にあった魔法を発動させるのです!面白いでしょう?」
ミード「なるほどな。……待てよ?」
ミードはレオナーレの魔法の話を聞いて、あることを思いつく。
ミード「この曲なら…もしかすればこの運命も……。レオナーレ、ひとつ頼みがある。」
レオナーレ「んー?なんすかなんすか?」
ミード「……曲を一つ思いついた。作曲を手伝って欲しい。歌詞は俺が書く。頼めるか?」
レオナーレ「おっ!スランプからの脱却ですな!いいでしょういいでしょう!私の曲を聴いてくれたのです!そういうことであれば!」
そしてミードはレオナーレと共に、一つの曲を作り出した。
ミード「こんなもんか。…中々いい曲ができたな。最高傑作と言ってもいいだろう。レオナーレ、この曲を歌うことで発動する魔法はわかるか?」
レオナーレ「ふむ……なるほど……。あんた、何かの魔法にかかってるべ?それを解きたいと?」
ミード「っ!わかるのか…この曲に込められた想いが…!」
ミードの狙い。それは、魔法を解く力がある曲をレオナーレに作曲してもらい、氷劇のループを脱しようというものだった。
レオナーレ「でもこれは…おそらく、そのまま歌ってもこの曲の魔法は発動はしないでしょうなーこれ。」
ミード「……どういうことだ?」
レオナーレ「私には詳しい事情はわかりませんよ?わかりませんけどこの曲…"自分と心がほぼ同じ者と完璧にシンクロして歌い切った時のみ発動する"と無意識に発動条件がつけられているみたいっすねぇ。そうこれは…もう一人の自分と呼べる者と歌って初めて完成する曲…と言えますなぁ!」
それを聞いたミードは、脳裏に一人の男を思い浮かべる。自分のエゴで生み出してしまった、もう一人の自分を。
ミード「……そういうことか。」
レオナーレ「おや?もしや心当たりがおありで?」
ミード「……さぁな。俺はもう行く。世話になったな。」ザッ…
ミードは踵を返し、鏡の城へ帰ろうとする。
レオナーレ「おっともう行くのですか?せっかくならさぁ、もう1回、もう1回聴いていってもいいんじゃないすか?」
ミード「いやいい。流石に身体が保つ気がしねぇ。それに曲は思いついた。ならもう用はねぇ。」
レオナーレ「ふむ、そういうことなら一つアドバイスを。先程の曲ですが、もう一人の自分と呼べる者と呼べる者に心当たりがあるなら、話し合ってみるのも良いかと。その方が納得し、あなたと同じ考えに至らない限りは、歌っても意味はありませんので。」
ミード「……そうかい。アドバイスありがとな。じゃあな。」ザッ…ザッ…
レオナーレ「ええ、それではまた、縁があれば……。」
そうしてミードはレオナーレに別れを告げ、鏡の城へと帰って行った。
この時生み出された曲は、後に『Lamipus』と名付けられ、ミードとヴェッチの氷劇を終わらせる最後のカギとなる。
そして時は経ち、全てが終わった後。鏡の城にて……
ギィィィィ…バタン。
ヴェッチ「これで…よかったんだよな。」
鏡の城の門を閉じたヴェッチは、今は亡きバンドメンバーと、数奇な運命を辿ったもう一人の自分に別れを告げ、城を後にしようとする。
パチ…パチ…パチ…パチ…
すると、どこからともなく拍手の音が聞こえてくる。
レオナーレ「いやー、先程のライブ最高っした!あんたのこと、覚えているよ。成程成程、あんたがあの氷の魔皇が思っていたもう一人の自分ですか。」
そこにいたのは、何人目かのミードが出会った、不思議な雰囲気の魔王。当然、ヴェッチは会うのは初めてなので、誰なのかはわからない。しかし、ミードの記憶がほんの少し流れ込んだからなのか、不思議と初めて会った気はしなかった。
ヴェッチ「キミは…?おれと会うのは初めてだよな?それに…
レオナーレ「えぇ!氷の魔皇…ミードさんの記憶を探れば出てくるかもしれませんが、せっかくなので自己紹介を!私は魔王レオナーレと申し〼 !あの曲の…『Lamipus』の作曲者と言っておきましょうか!」
ヴェッチ「『Lamipus』の……。そう考えると、この運命を終わらせられたのは、きみのおかげでもある…のかな?すまない、
レオナーレ「いえいえ心配には及ばんさ!だって元を辿れば友達みたいなモンだしね!そ・れ・よ・り・もー!」ずずい!
レオナーレは何か用があってヴェッチの前に姿を現したらしく、彼に顔を近付ける。
ヴェッチ「ち…近い…。」
レオナーレ「おっと失礼!オホン!察しは付いていると思いますが、私、あの方…ミードさんとは面識がありまして。その時は彼に流されるままに曲を作ったので、断片的にしかあの方のことを知ることができませんっした。それで聞き覚えのある曲が耳に入ってきたから来てみれば、あの時私のプロデュースした曲が歌われているではありませんか!しかも完璧に!!」
ヴェッチ「えっと…褒めてると受け取っていいのかな?」
レオナーレ「まぁ、そう受け取って頂ければ!それでねぇ、実はあんたとミードさんのことについて私、興味が湧いたんさ!あの曲を作曲した者として、是非ともあんたのこれまでの話、聞きたいんや。時間、空いてるべ?」
ヴェッチ「えっと、それって…おれからでいいのか?」
レオナーレ「うーん、本当はミードさんから話を直接聞きたかったんすけど、無事にもう終わったみたいですし。それに、今のあんたは…ミードさんと一心同体といっても過言じゃないでしょう?ならそれほど変わらないはず!それで返事は?YES?それともNO?」
レオナーレからの要求に対し、ヴェッチは少し考えた後に口を開く。
ヴェッチ「……分かった。あいつも…
レオナーレ「にひっ!分かってるじゃないすか!そうこなくっちゃ!なら隣、失礼するっすよ。」
互いに打ち解けたヴェッチとレオナーレは、門の前の階段に腰掛け、話を始める。
ヴェッチ「話はあくまでおれ視点からになるから、ミードのことについては大体は客観的なものになるけど…それでもいいなら。頑張って残りの記憶とかは、思い出してみる。」
レオナーレ「えぇ!全然構わないっすよ!それで、どこから話してくれます?」
ヴェッチ「そうだな…。ならまずは、バンドを結成した日のことから…。」
EX Live fine
Special Thanks
Chevon