パンドラ「勉強でも仕事でもいい。『これってやってて意味あるのかなぁ?』なんてことが誰でも一度は頭をよぎるはずだ。でもオレ様は何事も意味はあるって思ってんだ。こうしてオレカバトルの案内人をしていることにもな。」
パンドラ「今回はそんな話だ!それじゃあ第6章、始めるぜー!!」
第6章 第一夜 生と死の狭間で
むかーし昔、西の大陸には、広大な沼地が広がっていました。
沼地には、生者や死者を問わず、様々なモンスターが力強く生きていました。街もかなり栄えていたそうです。
しかしある日、沼地のモンスター達を穢らわしいと嘆いた天界の王、聖帝エーリュシオンによって、沼地はそこに住むモンスター諸共、光の柱で焼き払われてしまいました。この日のことは、「聖罰の日」と呼ばれており、この日を境に沼地が広がっていた西の大陸は、あっという間に不毛の砂縛へと変わり果ててしまいました。
しかし、わずかに聖罰を逃れた場所も存在していました。これは、「聖罰の日」から、ほんの少し後のお話……。
寂れた街はずれの墓地……
ザクっ…ザクっ…
土を掘る音が、墓地に静かに響き渡る。掘られた穴に棺桶が入れられ、再び穴は埋められていく。また1人、誰かが死に、墓標が増えた。
エルメ「はぁ……また1人、誰かが逝っちまったか……。最近は死人が多くて、困ったもんだぜ。なぁ、フラメ。」
ボォォ…
この墓地は、少し気難しい性格の墓守エルメによって管理されている。彼は相棒であるカンテラに入った火の玉のフラメ以外には中々心を開かないことで有名であり、好き好んで彼に近づこうとする者はいなかった。
墓地の入り口…
ザッ…ザッ…
???「ここでいいんですね?」
???「あぁ。この辺りで墓地と言ったら、ここだけだからね。」
???「よし、ではここの管理人さんに話を……」
ズボッ!
???「…へっ?うわっ!?」ドーン!!
突如、墓地を訪れた男の1人が穴に落ちる。しかも、人為的に掘られた落とし穴だ。
ザッ…ザッ…
エルメ「悪いな。最近墓荒らしが出てるみたいでな、セキュリティに力入れてんだ。……で、何者だテメェら?」
???「大丈夫かい、ユーグ?」
ユーグ「あ…あぁ……。すまないクリフ、この穴から引っ張り上げてくれないか?」
クリフ「はぁ…しょうがないなぁ…。」
しばらくして……
ユーグ「ふぅ…ようやく出られた……。」
エルメ「……見たところ聖職者さんか。ここになんの用だ?死者へのお祈りってんなら、そこの聖堂でやってくれ。」
クリフ「そうしたいところですけど、今回は色々事情がありまして…。あっ、自己紹介がまだでしたね。僕は、大司教クリフと申します。で、さっき穴に落ちてたのが、僕の相棒の成聖正騎士ユーグ。少し抜けてるところはありますが、とても頼れる僕の相棒です。」
ユーグ「うう…君がこの墓地の管理人っていうことで良いのかな?良ければ話を聞いて欲しいんだが、構わないかな?」
エルメ「……どうだ、フラメ?」
ボォォ… フラメは優しく燃えている。
エルメ「よし、怪しいヤツらではないのは確かか。いいだろう。話くらいは聞いてやる。」
管理小屋にて……
エルメ「死神による魂狩りだぁ?」
クリフ「はい。最近のところ、この付近の街だけ死者が増加している。思い当たることはあるでしょう?」
エルメ「…そういや、つい最近になって死人が増えたが、それが死神の仕業だって言いてぇのか?」
ユーグ「えぇ。「聖罰の日」の後ということもあって、ただでさえ生者が少ない状況……。このままでは、街が全滅しかねない。そこで君には、その魂狩りの調査を手伝ってもらいたい。頼めるでしょうか?」
エルメ「断る。オレはこう見えて忙しいんでな。」
ユーグ「そこをなんとか…!」
エルメ「……と、言いてぇところだが、こちらとしても死人が増えるってのは良い気分はしねぇ。やってやろうじゃねぇか。」
クリフ「よかった…!なら早速…。」
エルメ「あぁ、出張業務といこうじゃねぇか!」
沼地跡の街…
グリ「キキキキ…!」
村人A「うわぁぁ!?た…助け……」
ザクッ!
村人B「ひぃぃ…!ゆ…許して……!」
ラダ「はーい、静かにしてくださいねー。今から石になってもらいまーす。ハーデン!」
カチーン!
エルメ「……コイツはひでぇな……。」
街は死神で溢れかえっており、魂を狩られたり、石化させられたりする地獄絵図が広がっていた。
クリフ「なんてことだ…。もうこんなに……。ユーグ!」
ユーグ「あぁ!クリフは被害者を集めて蘇生魔法の準備を!まだ間に合う!私は死神達を片付ける!!」ダッ!
そう言ってユーグは死神達の群れに果敢に突っ込んでいく。
ユーグ「大いなる光の御心よ、ここに示さん…エクソシズムソードッ!!」ズバァァ!!
グリ「キキー!?」ドサァ!
ユーグの聖なる祈りが込められた剣がグリを斬り裂く。それを見た残りの死神達もたじろぐ。
ユーグ「さぁ、次はどなたです?聖なる光はあなた達には容赦しませんよ?」
ラダ「うっ……て…てったーい!グリム様やモート様に報告だぁー!!」ピューッ!!
ラダの一体が撤退命令を出し、街に蔓延っていた死神達は一目散に逃げていった。
ユーグ「やれやれ…。クリフ、そっちは?」
クリフ「天高くより降り注ぐ、大いなる宣を以て、あらゆる綻びを繕い、今…光あれ!」パァァァ…
クリフが詠唱を終えると、村人達に光が降り注ぐ。すると…。
村人A「あ…あれ?私、確か死神に狩られて…」
村人B「私も…石化させられたはず…。」
クリフ「皆さん、もう大丈夫ですよ。死神達は追い払いました。」
村人A「あぁ…ありがとうございます!旅の司教様!」
村人達は息を吹き返し、クリフに感謝を述べる。
エルメ「なぁ、司教さんよ。今のは一体…」
クリフ「あぁ、僕の蘇生魔法は、魂が離れてそこまで時間が経ってなければ、魂を肉体に戻すことができるんだ。今使ったのは超EX技の復活の祈祷。これなら石化も治せるよ。」
エルメ「へぇ、大したもんだな。これじゃあ墓守の仕事は減っちまうな。ま、オレからしたらその方がありがてぇんだが。」
そうして勝利の余韻に浸っていた…その時だった。
ガキィン!!
エルメ「チッ…新手か?勘弁して欲しいもんだが…なっ!!」キィン!!
突如、背後から何者かに斬りかかられるが、エルメは咄嗟に愛刀の墓掘刃を構え、攻撃を防ぐ。
クリフ「皆さん!急いで逃げて!死神がまだ残ってる!!」
クリフにそう言われた村人達は、一目散に家に隠れていった。
???「あらら。防がれちゃったかぁ…。これでも将来有望なのになぁ。こうも生者を戻されたら昇進はまだ先かなぁ?」
エルメ「背後からオレの魂取ろうなんざ、いい度胸してるじゃねぇか?何者だ?」
???「ん?俺かい?あなたに合った狩られ方をご提案!死神達の未来のエース、死神タナトとは…俺のことさ!」
カラスのような翼に骸骨のような化粧、そして「死」の字が刻まれたデスサイズを携えた、いかにもな感じの死神はやや宣伝気味にそう答えた。
エルメ「ふーん、で?お仲間達はもう退散していったみてぇだが、テメェはまだやる気か?」スッ…
タナト「おいおい待ってくれよ!血の気が多いなぁあんた…。俺はあんたらの活躍を見て、ちょーっと相談したいだけさ。」
エルメ「ほう?じゃあなんでオレに斬りかかってきた?刈り取る気満々だったじゃねぇか?」
タナト「それは……まあ…社畜故に昇進欲が出てしまったというかなんというか…。」
タナトは歯切れが悪そうにそう答える。
エルメ「……話にならん。叩っ斬る…。」スッ…
タナト「待て待て待て待て!!わかった!わかったから!!"
ユーグ「なんだって?今なんと!?」
タナトが持ちかけた冥途への行き方の話にユーグが食いつく。
タナト「ん?あんた…食いつきがいいな?もしかして…冥途へ何か用事でもあるのかい?」
エルメ「…どういうこった?」
クリフ「話せば長くなるんだけどね…。僕たちは人探しをしているんだ。」
ユーグ「あの日のこと…「聖罰の日」のことは知っているだろう?」
エルメ「もちろんだ。沼地の殆どが焼き払われたくらいだ、有名にならない方がおかしいくらいだろ?」
クリフ「実はその日、僕たちは天界にいてね…「聖罰の日」を引き起こした張本人である聖帝エーリュシオンと戦ったんだ。」
タナト「エーリュシオンってあの?ウワサじゃあ潔癖症の暴君サマって話だろ?俺もラダマンティス様からちょっとだけ聞いたことあるわ。」
ユーグ「やはり死神ラダマンティスもいるのか…。それはともかく、その時私たち以外にも、果敢に立ち向かった者が2人いた。私たちが探しているのは、そのうちの一人、ダイヤだ。」
エルメ「ダイヤ……。」
クリフ「うん。元々は普通の女の子だったんだけど、エーリュシオンの加護を受けて、沼地を支配していた魔皇トカイに立ち向かったり、沼地のモンスター達を護るためにエーリュシオンに反逆したりしたんだ。」
ユーグ「しかし、エーリュシオンは死に際に自分のEX技で沼地を砂縛に変えた。もう一人の仲間…天地騎士クレイの尽力で被害は抑えられたものの、その影響でこの地は殆どが砂漠に…。」
クリフ「その後、それぞれの道を歩むために、ダイヤと一旦別れたのですが、クレイから「ダイヤが行方不明になった」と報告があり……。」
タナト「ふーん、それで?その友達探しで冥途に行きたいと?」
ユーグ「はい。理由は分かりませんが…どういうわけか、ダイヤは冥途にいる。…そんな気がしてならないのです。それも、死んでいるわけではないと。」
クリフ「そして、僕たちは冥途に行くために冥途への道を探しているんです。エルメさんが管理する墓地へ立ち寄ったのも、その一環でした。」
エルメ「成程な。でも、オレはそんなモン知らねぇぞ?」
タナト「……実はそれ、当たってるよ。」
クリフ「ほ…本当かい!?それはどこにあるんだい!?」
タナト「ふーん。用事のためにも連れて行ってやりたいところだけどなぁ〜?あんたらの強さで冥途を切り抜けられるかわかんないなぁ〜?」
エルメ「……何が言いてぇ?」
タナト「ちょっとあんたらの実力、試させてよ?なーに簡単さ。もうすぐここに現世に派遣された死神達のまとめ役である死神グリムって奴と死神王モートって奴がやってくる。そいつらを倒してみなよ?」
意外な要件だった。タナトは自分の仲間の死神を売るような行為に出たのだ。
エルメ「いいのか?オマエにとっちゃ同僚みたいなもんじゃねぇのか?」
タナト「あー、まぁそうだね。けど、競合相手は少ない方がいいからねぇ。あの2人さえなんとかできれば、俺の実績なら結構上の地位に就ける。そうすりゃ冥途を牛耳っている冥王、魔皇アウスレーゼ様にも謁見できるからねぇ。」
ユーグ「アウスレーゼ…。それが君らのリーダーの名前か。」
タナト「うん。実は俺、ちょーっとアウスレーゼ様に意見したいことがあってさ。そのためにも昇進目指してるんだわ。あんたらは街を襲う死神を減らせる。俺は昇進への近道でアウスレーゼ様に謁見できる。ウィンウィンってやつさ。どうだい、損はないと思うよ?」
エルメ「……裏切らないっつー保証は?」
エルメは墓堀刃をタナトの喉元に突きつけたまま問いかける。
タナト「……なら『契約』だ。"あんたらがグリムとモートを倒して、冥途へ到着するまでの間、あんたらには手を出さない。"どうだ?これでいいだろ?」
この世界において『契約』とは、絶対の約束を表す。どちらかが破れば、即座に重いペナルティが降りかかるという、一種の呪いでもある。
クリフ「『契約』…と来たか。本気みたいだね。ならそれにこう付け加えて欲しい。"君が刈り取る魂は、本当に死相が出ている者だけにする。"これを付け加えるなら、君の契約も受領してあげよう。」
タナト「ふむ……いいよ。今更狩る魂が減ったところで昇進には響かないし、何より合法的にサボれる!契約成立だ!」パサッ…
そう言うとタナトは、懐から契約書を取り出し、サインした。そして、それを渡されたユーグとクリフも同様にサインする。
タナト「これでよし。じゃあ俺はちょっとサボってくるから、助けが必要になったら言ってくれよ?じゃあな。」バサッ!
タナトはそう言って飛び去っていった。
エルメ「…よかったのか?あんな奴と契約なんざして。」
ユーグ「少なくとも、契約を結んだ以上、これで街への被害は減らせるはずです。エルメさん。悪いですが、もう少しだけ付き合ってくれますか?」
エルメ「……わかった。もうこの街で死者を出すのはたくさんなんでな。とことんまで付き合ってやろうじゃねぇか!お前もそれでいいよな、フラメ?」
ボォォ… ! フラメは張り切っているのか、激しく燃えている。
エルメ「ふっ、やる気満々ってとこか。よし!今日はこの街で死神どもが来るまで張り込みと行こうじゃねぇか!」
こうして、エルメと死神との戦いが始まった。
果たして、エルメ達は死神達による魂の過剰徴収を止めることはできるのか?そして、アウスレーゼに謁見したいと言うタナトの真意とは?
それぞれの思惑が交錯する中、街は夜の帷に包まれた。