そこに現れたタナトより、「二人の死神を倒したら冥途へ連れて行ってやる」と契約を持ちかけられ、クリフが出した「必要最低限の魂のみを狩る」という条件を付け加えることでタナトからの契約を飲んだ。
果たして、タナトの思惑とは?ダイヤの行方は?謎が渦巻く中、街が夜に包まれる…。
街の広場にて…
近いうちに来ると言うグリムとモートを街で待ち伏せしているエルメはユーグとクリフに質問を投げかける。
エルメ「ところで…タナトが言ってた死神については、お前らは何か知ってんのか?ラダ…なんとかに反応してたろ?」
クリフ「うん。死神グリム、死神王モート、そして死神ラダマンティス。3体ともオレカ界ではそこそこ有名な死神だからね。それを束ねている奴がいたのには驚いたけど……。」
ユーグ「うち、ラダマンティスとは私達も戦ったことがあります。奴はエーリュシオンとグルだったので。」
エルメ「ん?死神と天使って組むことあんのか?なんつーか、正反対の存在に思えるが…。」
クリフ「普通はないね。けど、その時は事情が事情だったらしいからね…。この話は長くなるし、また今度にしよう。」
ユーグ「そうですね。では、これから戦うことになるグリムとモートについて、話しておきましょうか。」
ユーグ「グリムは先程まで街を埋め尽くしていた死神の子分、グリ達を率いる親玉です。即死魔法のスペシャリストで、死神の中でも多くの魂を刈り取ってきた、歴戦の猛者です。」
クリフ「モートの方は、元々一介の死神だったモートが冥王から力を授かった結果、人格と引き換えに強力な力を手に入れた死神だ。今思えば、この力を与えた張本人がアウスレーゼだったのかも知れないね。こっちは他者の洗脳が得意です。操られないよう気をつけて。」
エルメ「ふむ…即死魔法に洗脳か……。」
エルメはしばらく考え込んだ後に不敵な笑みを浮かべ、こう答えた。
エルメ「
クリフ「本当かい!?即死魔法は本当に危険だよ?」
エルメ「あぁ、任せとけ。なーに、簡単には死なねぇさ。」
ユーグ「ならいいのですが……。」
そうして話していると、夜の街が霧に包まれていく。死神達が来る合図だ。
エルメ「……来やがったみてぇだな。」
街の外から、先程まで街を襲撃していた小さな死神のグリが多数と、その中央に一際大きく、夜色のローブに巨大なデスサイズを携えた骸骨の死神がやってくる。彼こそが死神グリムである。
グリム「おぬしらか……?我らの邪魔をする者は。」
エルメ「テメェがグリムだな?なんでこんな真似しやがる?墓だって無限じゃねぇんだ。魂を狩るにしたって限度があるはずだろ?」
グリム「愚問であるな…。我が主、アウスレーゼ様が多くの魂を欲しているのだ。アウスレーゼ様の命は絶対。故にこの街の生者の死も必然のものである。おぬしらもおとなしく、我らに魂を捧げるがよい……。」
エルメ「断る。ここはテメェら死神どもの狩場じゃねぇんだ。どうしてもってんなら…」
ブォン!
エルメ「力づくで奪ってみな。」
エルメは墓堀刃を抜き、臨戦体勢に入る。
クリフ「なら僕たちも…。」
ユーグ「はい!」
それと同時にユーグとクリフも戦闘の準備を整える。
グリム「……良いだろう。おぬしらの魂…この手で狩らせていただこう…!」
両者が対峙する中、屋根の上ではタナトがその様子を見ていた。
タナト「おっ、始まるみたいだねぇ。それじゃあお手並み拝見といこうか。」
グリム「ぬぅん!」ブォン!
ガキン!
エルメ「フン!その鎌は飾りじゃねぇみてぇだな!」キンッ!
エルメは墓堀刃でグリムの鎌を弾き返す。
エルメ「そっちはどうだ!?しくじっちゃいねぇか!?」
ユーグ「ハァッ!!」ズバッ!!
クリフ「リヒト!!」バシュン!!
グリ達「「ギャーッ!?」」ドササッ…
ユーグは聖なる力を宿した剣で、クリフは聖属性魔法のリヒトでグリ達を葬っていく。
クリフ「僕たちは大丈夫!!」バシュン!
ユーグ「露払いはお任せください!」ザンッ!
グリ達が次々と倒されていく中、グリムはため息をついた。
グリム「ハァ……我が部下ながら、不甲斐ないな……。よろしい。少しばかり、本気を出すとしよう……。」シュン…
そう言うとグリムは左手に魔法陣を展開する。
エルメ「なんだ…?あの野郎何を……。」
グリム「………水の力よ…涸れよ。」バシュゥン!
ドクンッ!!
ユーグ「ガッ……!?しま……」ドサッ…
エルメ「ユーグ!!」
グリムがそう呟くと、ユーグが突如として倒れてしまう。
クリフ「グリムの即死魔法だ!奴は指定した属性の相手をほぼ確実に即死させるんだ!!ユーグは僕が蘇生する!!」
グリ「キキーッ!」ブォン!
クリフ「ぐっ!」キィン!!
クリフはユーグを蘇生しようとするが、そうはさせまいとグリが襲いかかってくる。クリフは杖で防ぐが、グリの対処で精一杯だ。
グリム「蘇生できるならしてみるがいい。その前におぬしの魂が狩られるのが関の山だがな。」
エルメ「…成程な。それがお前の即死魔法か。おいてめぇ。その即死魔法で生き残ったヤツはいるか?」
即死魔法を見たエルメは、突如グリムに質問を始める。
グリム「否。我が即死魔法は魂を例外なく刈り取る。我が即死魔法の前に立っていた者は、既に死している者を除き誰一人としていない。」
エルメ「そうかい。なら……オレがてめぇの即死魔法を受けて、初めて立っていた生者になるだろうな。」
グリム「…何?」
挑発にも聞こえる大胆なエルメの発言に、グリムは呆気にとられる。
エルメ「予め言っておくが、オレは土属性だ。あるんだろ?土属性用の即死魔法も。……やってみろよ?」
グリム「自ら属性を晒すとは……血迷ったか?」
エルメ「血迷う?ハッ、違ぇな。てめぇのその鼻っぱしをへし折ってやるっつってんだ。それともなんだ?できないとは言わねぇよな?」
エルメは怯まずグリムに挑発を続ける。
グリム「……いいだろう。その傲慢な魂、狩らせていただこう…!」
エルメ「やってみな!!墓守の意地を……アンダーテイカープライドってヤツを見せてやるよ!!」ゴゴゴゴ……
エルメがそう言った途端、彼からオーラのようなものが放たれる。
グリム「(何だ?雰囲気が……変わった?)……まぁよい。これで葬ってやろう…!土の力よ…崩れよ!」バシュゥン!
クリフ「エルメさん!!」
グリムは土属性に対応した即死魔法をエルメに向けて放つ。……が。
シュゥゥゥ……
エルメ「………ふん、これで有言実行だな。」
グリム「何…!?おぬし…何故立っていられる!?」
煙が晴れたそこには、エルメは確かに立っている。その様にグリムは戸惑いを隠せない。
エルメ「これがオレの…アンダーテイカープライド!簡単にくたばるほどオレの魂はヤワじゃねぇってこった!」
クリフ「不思議だ…。僕も力がみなぎってくる。もしかして……彼の超EX技か!?」
そう。これはエルメの超EX技。彼の超EX技は即死や呪いなどの、死を与える状態異常を尽く無効化する。即死を得意とするグリムにとっては、天敵以外の何者でもない。
グリム「成程…。おぬしに即死が通用しないのはハッタリではなかったようだ…。ならば、この鎌でおぬしの魂、刈り取ってくれよう!!」ブォン!!
グリムは即死が通用しないと知ると、鎌で直接エルメの魂を刈り取ろうと接近する。
ぴょんっ
しかしエルメはそれを跳んでかわし、墓堀刃を振り上げる。しかし、刃ではなく、スコップでぶっ叩くように、振り下ろす。
エルメ「即死が効かないなら直接刈り取る。悪くねぇが…オレ相手には愚策だったな!」ガンッ!!
グリム「ぐぉっ!?」ピシッ…
グリムの脳天に墓守刃の刀身が力強く振り下ろされる。頭蓋にヒビが入るほどに。そして、グリムの頭が地面についた瞬間…
ズボッ!!
グリム「何!?これは…穴!?」ヒュゥゥ……
エルメ「てめぇがさっき即死魔法を放った後、煙に紛れて掘らせてもらった。オレは穴掘りは速い方でね。」ヒュゥゥ……
クリフ「すごい…。あんな深い落とし穴を一瞬で…!」
グリムはエルメに叩き落とされ、落とし穴を落ちていく。そしてエルメはこのチャンスを逃さない。
エルメ「それじゃあコイツで……しまいだ!!」ドォォォン!!
ガギィン!!
グリム「ぐぉぉぉぉぉっ!?」バキバキ……
エルメはトドメに、落とし穴の終点に着くと同時に先程できた脳天のヒビに向けて墓堀刃を突き立て、グリムの頭蓋骨を貫く。グリムの頭蓋骨は見事に真っ二つになっており、とても戦えるような状態ではなくなる。決着である。
エルメ「さて…この勝負、オレの勝ちでいいな?」
グリム「あ…あぁ………これで戦えるように…見えるか……?我の……負けだ…。まもなく、我の魂も消えよう……。」
グリムは真っ二つになった顎骨を動かし、やっとの思いで話し続ける。
グリム「……最後に問おう…。何故おぬしは死に抗う……?誰にも死は絶対に訪れるもの……。なのに何故……?」
エルメ「はぁ……今際の際に聞くことがそれかよ……。簡単なこった。オレにはまだやることがある。オレがいなけりゃ、この辺で死者を丁重に弔えるヤツはいなくなっちまうからな。だからまだ死ぬわけにはいかねぇ。それだけの理由だ。」
グリム「成…程な……。勤勉なことだ……。おぬしの勤勉さ……見習うとしよう………。」シュゥゥゥ……
グリムの魂は納得とともに消滅する。ローブの下の骨は、まるで何もなかったかのように消えていた。
エルメ「……逝ったか。」
クリフ「エルメさん、大丈夫!?グリ達は逃げ出したので、地上ももう大丈夫!それで…上がってこれる?」
エルメ「ああ。掘った穴から出るのには慣れてるからな。おめぇは相方の蘇生でもしてな。フラメ、灯は任せた。」ザクッ
ボォォ…… フラメは優しく辺りを照らす。
エルメは墓堀刃を穴の側面に突き刺し、穴を掘っていく。そして別の穴を作り、蘇生が終わる頃にはそこから出てきた。
クリフ「きみ…本当に穴掘るの速いなぁ…。まさか蘇生が終わった直後に出てくるなんて。」
ユーグ「うぅ……面目ない……。」
エルメ「いや、おめぇも頑張った方だと思うぜ?それに、死神はまだいるんだろ?そこで挽回すりゃいいじゃねぇか。」
ユーグ「な…慰めてくださってありがとうございます。」
パチパチパチ……
3人が話していると、拍手の音とともに戦いを見物していたタナトが降りてくる。
タナト「いやー、本当に強いんだねーあんたら。これならモートも倒せちゃうかもね?」
エルメ「てめぇ、文字通り高みの見物ってか?一応言っとくが、モートを倒したら約束通り冥途へ連れて行ってもらうからな?」
タナト「わかってるっての。んじゃ、俺はサボってるから、せいぜい頑張れよー。」バサッ…
タナトはそれだけ言って再びその場を後にした。
エルメ「アイツ…本当に約束守る気あるんだろうな?」
クリフ「まぁ…契約は絶対だから、今は信用してもいい…と思う。とりあえず、今日は休もうか。」
エルメ「…だな。」
そうしてエルメ達は、街の宿屋で夜を明かすことにした。
グリムの即死魔法について補足
実は本小説でのグリムの即死魔法ですが、少し強化されています。
本来は「⭐︎3以下の対応属性のモンスター(アンデッド以外)を確定で即死させる」ものとなっていますが、本小説では「クラス不問で対応属性のモンスター(アンデッド以外)を高確率で即死させる」としています。
これの理由ですが、味方にクラス4が2人いるので、そのパワーバランス調整のためですね。中ボスとして扱うなら、流石にこうするしかないかなぁと。
まぁ、こういうもののお約束として、やっぱり魔王とかあまりにも格上相手には効かないのですが。やっぱりその辺はグリムも弁えているのでしょう。