そしてエルメ達は冥途へ向かうため、タナトと共に一旦墓地へと帰るのだった。
…これから一悶着あるとも知らずに。
墓地への道…
エルメ「今回はてめぇもついてくるんだな、死神さんよ?」
タナト「まぁ、冥途へ案内しなきゃいけないからねぇ。せっかくだし、冥途へ着くまでご一緒させてもらうよ。」
クリフ「そういえば、アウスレーゼに物申したいことがあるって言ってたけど…何か気になることでもあるのかい?」
クリフは、タナトがいる今ならばと出会った時に口にしていたことについて問いかける。
タナト「あぁ、その話ね。実はね、あの街だけ妙に魂の徴収量が多いんだよねぇ…。」
ユーグ「えっと…どういうことです?あれってわざとじゃ…」
タナト「はぁ…俺たち死神は、
エルメ「あの街だけ…だと?」
タナト「そ。だから残業とかは当たり前。今まさに冥途の死神はワーカホリック真っ只中ってわけさ。俺は何故あの街だけ執拗に魂を刈り取るのか、アウスレーゼ様に謁見して、納得できる理由を得たいのさ。」
クリフ「もし……納得できなかったら?」
タナト「…………さぁね。そこは時と場合によるかな…?」
納得できなかったら。クリフの問いは、タナトにとっても懸念点だったようで、少し考えた後にそう答えた。
エルメ「さて、そろそろ……ん?待て。」
エルメの一声で、一同は一度歩みを止める。
ユーグ「どうかしましたか…?」
エルメ「……足跡だ。オレ達のじゃねぇ。墓地まで続いてやがる。」
クリフ「誰かが僕たちより先に墓地に入った…?」
エルメ「……嫌な予感がする…!急ぐぞ!!」ダッ!
タナト「えっ?マジで?面倒くさいなぁー!」
墓地…
クリフ「なんだ…これ…。」
墓地に辿り着くと、無数の穴が掘られていた。しかも墓石の下を的確に掘ってある。エルメが管理していた頃の綺麗な墓地は、見る影もなかった。
タナト「こりゃひどい…。墓荒らしでもきたのかねぇ?ねぇ、墓守さん?」
エルメ「………。」ゴゴゴゴゴ……
タナト「は…墓守さん?」
エルメ「…………許せねぇ……。墓地を留守にしちまったオレにも落ち度はあるが…それを狙ってくるたぁ、いい度胸じゃねぇか……!!」ゴゴゴゴゴ…!
タナト「うわー…滅茶苦茶怒ってる……。ん?」
怒りを燃やすエルメに恐々とするタナトはふと、何かを見つける。
???「アララ…帰って来ちゃったネ…ワイトさんに報告ネ…!」タッ…
タナト「今のは…もしかして墓荒らしかな?」
エルメ「何!?どこだ!?どっち行きやがった!?」ガシッ!
怒り狂うエルメはタナトの胸ぐらを掴み問いただす。
タナト「お…落ち着けって!?あっちの方だと思うけど……」
エルメ「あっちだな!?よし、生かしちゃおけねぇ!!」ダッ!
ユーグ「あっ!待ってくださいエルメさん!?」
エルメは真っ先に墓荒らし容疑者がいる方へと突っ走っていった。
???「わ…ワイトさん!墓守、帰って来ちゃったネ!」
ワイト「フッフッフッ…慌てるでない。計算のうちだ。こちらの準備ももうじき終わるでな。」
ザッ!
エルメ「ようやく見つけたぞ!この墓荒らしが…空き巣狙いたぁいい度胸じゃねぇか!!あぁ!?」
エルメが辿り着くと、そこにはボロボロの衣装に全身包帯巻きの不気味な男がいた。周りにある土がついた棺桶を見るに、彼が墓荒らしで間違いないだろう。
クリフ「はぁ…はぁ…やっと追いついた…。」
ユーグ「あっ…!奴は、死霊使いワイト!?」
エルメ「知ってんのか…あの墓荒らしのことを!!」
ユーグ「ええ…。沼地にあるコワイトハウスという屋敷に住み着いているネクロマンサーです。まさか聖罰の日から生き残ってたとは……。」
ワイト「おやおや…これまた随分生きのいいのがたくさんかかったものだ…!いいぞ…!私の実験台にピッタリだ!」
エルメ「てめぇ…ここの奴らは静かに安らかに眠っているはずだったんだ…。その安眠を邪魔するなら…一切容赦はしねぇ!!ブチのめすッ!!!」
ワイト「フッフッフッ…永遠の生こそ私が追い求めるもの!おまえたちも、その礎になってもらおうではないか!!」
ワイト「では……我が研究成果、とくとご覧あれ!!」ブォン!!
ワイトがそう言って杖を地面に突き立てると、杖を中心に魔法陣魔法陣が展開される。
ガタガタガタガタ…
そして、その中に入った棺桶が揺れ始める。すると……
バキッ!!
ゾンビ「う"あー……。」
ゾンビビ「う"あー……。」
エルメ「こ…こいつらは!?」
棺桶から出てきたのは生きた屍、ゾンビだった。中には、強化個体であるゾンビビも混ざっている。
ワイト「アーッハッハッハッハ!!アンデッド化は成功だ!やはりこの墓地の死体はいい!良質なアンデッドが出来上がったぞ!私の実験場にしたいくらいだ!!よく管理が行き届いている証拠だな。どうだね、そこの墓守君。私と一緒にアンデッド化の研究に携わってくれても良いぞ?」
エルメ「てめぇ……どこまで死者を冒涜すりゃ気が済むんだ…!!てめぇみてぇな罰当たりについていく気なんざ微塵もねぇ!!」
ワイト「そうか…なら仕方ない。生きる屍達よ!こやつらもお前達の仲間に入れてやるのだ!!さぁ行けー!!」
ゾンビ達「あ"ー……。」ザッ…
ゾンビ達はワイトの言うがままにエルメ達に襲いかかる。動きは遅いものの、いかんせん数が多い。
ユーグ「くっ…これでは奴に近づけません…!」
クリフ「一気に殲滅したいところだけど…多分駄目だよね…。」
エルメ「チッ…コイツらだってただ眠ってただけなんだ……!傷つけるわけには…!」
ワイト「さて…アルラウネよ。ダメ押しだ、やってしまえ!」
アルラウネ「アルアルラ〜。ゴポォッ…!」シュゥゥゥ
ワイトの僕であるアルラウネは、口から毒ガスを噴射し、ゾンビ達と共にエルメ達を追い詰めていく。
クリフ「ま…まずい……。息が……。」
エルメ「こんなんで……終わってたまるかよ……。」
タナト「はぁ………しょうがないなぁ…。流石にこうも死を冒涜されると、俺も気分悪いし、ちょっとだけ手伝ってやるよ。」バサッ…
エルメ「あっ…おい!!」
毒が効かないアンデッド族のため、唯一無事だったタナトが動く。
ワイト「んー?あやつ…もしや死神か?」
タナト「さーてと…。」シュゥゥゥ…! ボォォ…
タナトはゾンビ達から奪った魂から大量のロウソクを作り出し、デスサイズの上に展開する。
タナト「それそれそれ!」パタパタパタパタ!!
すると羽で団扇を作り、それでロウソクを扇ぎ、火の勢いを強くしてロウをすり減らしていく。
ワイト「あやつ…なんの真似だ?」
ゾンビ達「う"…あ"……。」
すると、ロウソクが短くなると同時にゾンビ達が弱っていく。
ワイト「これは…まさか……!?」
タナト「はい!あんたらの寿命、これくらいで十分でしょ?」
タナトのデスサイズの上にあったロウソクはすっかり短くなり、もう数mm程度しか残っていなかった。
エルメ「あいつ…寿命を操作できるのか!?」
タナト「これが俺のEX技、デスドライブさ。まぁ、相手は既に死んでる身。すぐにちびちびになっちゃったよ。」
ユーグ「今の状況ならば…!クリフ!」
クリフ「はい!聖櫃なる天上の意向をもって、全ての罪と虚空を、今…浄化せん!」パァァァ……
ゾンビ達「「あ"あ"あ"あ"………。」」ジュゥゥゥゥ……
ゾンビ達はクリフのEX技によって放たれた聖なる光により浄化されていき、バタバタと、元の死体に戻っていく。
ワイト「あぁ……!せっかくの研究成果が……!なんということだ…!お前たちは、永遠の命が欲しいとは思わんのかね!?」
エルメ「ハッ!死んでまでこき使われるなら、そのままポックリ逝って棺桶の中でぐっすり休んでた方がマシってもんだ!さっさと失せな!」
ワイト「ぐぬぬ……。こうなったら……!それいけ〜!お人形!」
アルラウネ「アルアル!?」ビキーン!
ワイトがアルラウネに何か命じた途端、アルラウネの目がギラリと輝く。
ユーグ「嫌な予感がする…!皆さん、私の盾の後ろに!!」
アルラウネ「ア〜ルアルアルアルアルアルアルアルアルアルアウ〜!アラルルルルァ!……ウワアァ〜ッ!!」ダダダダ…!!
アルラウネはヤケクソと言わんばかりにユーグに突撃していく。そして…
カッ
ドガァァァァァァン!!
アルラウネは目的地に到達し、自爆を敢行した。いや、特攻を命じられたのだ。
ユーグ「ぐっ…!!みなさん、大丈夫ですか!?」
クリフ「はい…僕はなんとか…。それより、ワイトは!?」
タナト「あっ、あそこ!!」
タナトが指差した方向は、墓地の出口。アルラウネの自爆を目眩しとして利用し、ワイトはまんまと逃げおおせたのだ。
ワイト「今日のところはこれでお開きとさせてもらおう!しかーし!私は必ずここに戻ってくる!そこにネクロマンスがある限り!!」タッタッタッタッ……
エルメ「野郎…ッ!待ちやがれ!!」
エルメは後を追おうとするが、逃げ足だけは素早かったワイトはあっという間にエルメの視界から消えてしまった。
タナト「あーらら。まんまと逃げ切りやがったよ、アイツ。」
エルメ「チッ…今度来たらタダじゃおかねぇ…!!」
しばらくして……
エルメ「ふぅ…これで全員か…。起こしちまって、悪かったな。」
エルメ達は、ワイトによって蘇らせられたゾンビ達を再び棺に戻し、それぞれの墓に戻してやっていた。また安らかな眠りを約束できるように。
クリフ「どうか安らかに……。うん、全員分の祈りも終わったよ。にしても、よく全員分の墓と死体を正確に一致させられたね…。一部はもう判別不能なほどに腐敗してたのに…。」
エルメ「あ?まぁ…オレが覚えててやらなきゃ、ここの奴らは安心して眠れねぇからな。だからここの奴らの名前と容姿は完全に把握済みだ。」
タナト「へぇ〜、すごいなぁ。俺もその姿勢、見習おうかなぁー…。っと、思わぬ邪魔が入っちゃったけど、これでようやく本題に入れる。ついてきな。」
墓地・聖堂にて…
タナト「ここだ。こっから冥途へ行けるはずだぜ?」
エルメ「聖堂か…。当然、ここもオレが手入れしてるが、そんな感じのはなかったぞ?」
タナト「まぁまぁ、ちょっとそこで見てなよ。」
そう言ってタナトは聖堂の奥にあった祭壇に向かう。
タナト「さて、ここでいいかな?」コンコン。
タナトはデスサイズで祭壇を軽くノックする。すると……。
ブォン… ゴゴゴゴゴゴ……
なんと、魔法陣が現れたかと思うと祭壇が横にずれ、その下から地下に続く階段が現れた。階段の下はどこまでも奥まで続いており、おどろおどろしい雰囲気を放っている。
エルメ「コイツは驚いたな……。」
タナト「墓地は最も死と結びついている場所。俺たち死神はこうやって、あらゆる墓地の聖堂を通して現世にアクセスできるのさ。」
クリフ「なるほど。じゃあこの下が……。」
タナト「そ。あんたらが行きたがってた死者達の世界…"冥途"さ。」
ユーグ「では…この奥に、ダイヤが……。」
タナト「本当にあんたらの探してる人がいるかはわかんないけどね。さ、ここからは冥界下りの時間だ。しばらく現世には戻れないと思うけど…覚悟はいいかい?」
ユーグ「私とクリフは大丈夫です。これも、友人を見つけるためなので。エルメさんはどうしますか?またワイトのような輩が現れないとも限りませんし、ここに残っても……。」
エルメ「冥界下りか…。確かにこっから先はオレには関係のないことかもしれねぇ。けどな、オレも冥王サマには一言申してぇんだ。やってやろうじゃねぇか!」
クリフ「エルメさん…。そう言ってもらえると、心強いよ!」
タナト「なら決まりだね。ほら、さっさと降りて。この入り口もずっとは開けてられないんだからさ!」
こうして、タナトに言われるがままに階段を降りていったエルメ達。
果たして、冥界下りの果てにダイヤは見つかるのか。そして、アウスレーゼによる魂狩りを止めることはできるのか。
試練は、始まったばかりである。
トリック・オア・トリート!
という訳で、ハロウィンですね。まさかこの日にワイトさんを登場させることになるとは思わなんだ…。