邪魔が無くなり、タナトの案内で冥途への道が開かれた。
そして…エルメ達の冥界下りが始まった。
冥途への道…
エルメ達は、暗く冷気の絶えない階段をひたすら降りていた。
ユーグ「ま…まだですか?もうかれこれ10分は降りてる気がしますが……。」
タナト「ごめんねー。冥途にはエスカレーターとかないんでね。でも、もうそろそろだと思うよ。」
タナトがそう言ってまもなく階段が終わり、少し開けた場所へと出た。
タナト「見えるかい?あのデカい門が、唯一の冥途への入り口さ。」
タナトが指差した方には、数十メートルはあろうかという巨大な門が見えた。
エルメ「ほう…あの門をくぐれば、もう冥途か。案外簡単なんだな。」
タナト「おっと、それはどうかな?あそこを見てみなよ。」
タナトは門の下の方を指差す。するとそこには…
???「うーん、こうかしら?」ビシッ!
???「ダメよ〜!まだまだキレが足りないわ!もっとこう!」ビシッ!
赤い牛の頭と青い馬の頭の筋骨隆々なモンスターが、筋肉を見せつけあっていた。
エルメ「………なんだ?あの筋肉モリモリマッチョマンの変態どもは?」
タナト「アイツらは冥途の門番、牛の頭の獄卒ゴズと、馬の頭の獄卒メズ。あんたらみたいなイケメンには目がないオカマ獄卒コンビさ。」
クリフ「…聞いたことがある。確か…冥途の裁判官、獄王閻魔に仕える忠実な僕だったかな…。にしても、あんなアクが強い連中だったんだ…。」
タナト「アイツらに見つかったら、かなり面倒なことになるからねぇ…。俺が話をつけてくるついでに注意を引いておくから、門が開いたら見つからないように侵入しな。」
ユーグ「わかりました。任せましたよ?」
タナト「へいへいっと。」バサッ…
軽く返事を返してタナトは、門の前へと向かっていった。
冥途への門前…
タナト「おーい、お二人さーん!」
ゴズ「んー?あら、タナトちゃんじゃないの!帰ってきたのね!」
メズ「それで?成果はどうだったの?」
タナト「成果ね。ほれ、この通り。」ボォッ…
タナトは現世で刈り取った魂に加え、ワイトのゾンビから回収した大量の魂を2人に見せる。
タナト「どう?ノルマ分ちゃんとあるだろ?(流石に契約中に刈り取った分だけじゃ残業確定だからねぇ。あの墓荒らしがゾンビに入れてた魂で傘増しさせてもらうよー。)」
メズ「ふむ…みたいね。にしても毎回毎回すごいわね、この量!」
ゴズ「そうよねー!これなら近いうちに昇進間違いなしね!いいわ、門を開けてア・ゲ・ル♡」
ガンガン!!
ゴゴゴゴゴゴ……
獄卒コンビが手に持った棍棒で地を鳴らすと、重々しく門が開き始める。
タナト「ありがとさん。んじゃ、俺は納品に……。」
ゴズ「そういえば、魂狩りのメンバーはグリムちゃんとモートちゃんも一緒だったわよね?」
メズ「実は連絡がプッツリ途絶えちゃって…あなた、何か知らない?」
タナト「(ギクッ!?)い…いやー、何のことかサッパリ…。」
ゴズ「んー?なーんか怪しいわね……?」
タナト「そ…そうか?俺はいつもこんな感じだと思うけど…。」
怪訝そうにタナトを見つめる獄卒達を前に、タナトはたじたじにされていく。
エルメ「おい、アイツ本当に大丈夫なんだろうな!?」そろーり…
クリフ「とりあえず、彼が時間稼ぎしてる間になんとか門の向こうへ行かないと…。」そろーり…
タナトが注意を引いている間にバレないように侵入しようとする。
……が。
メズ「ん…?そこ!!何コソコソしてやがんだ!?」
タナトの挙動不審さに目を光らせ、周囲を監視していたメズに見つかってしまう。
クリフ「まずい、バレた!!」
ゴズ「どういうこと!?あの子達、生者じゃない!?もしかして……アンタが連れてきたってのかタナト!?冥途に生者を連れてくるのは立派な規則違反じゃあねぇのか!?あ"ぁん!?」
タナト「あはは……これは…その……。」
メズ「あれ?でも待って。あの子達、よく見ると結構イケメンじゃない?」
ゴズ「えっ?……あらホント!!よくみたら結構タイプね!!特にあの大きな帽子の子!」
メズ「そう?アタシはそこのちょっと優しそうな杖持った子が好みかしら?」
エルメ「大きな帽子……まさかオレじゃねぇよな…?なんだか寒気がしてきたんだが……。」
クリフ「うん…わかるよエルメさん…。すっごく嫌な予感がする……。」
さっきまでオカマ口調を忘れて怒り狂っていたかと思いきや、ゴズとメズはこちらに興味を示し始める。
タナト「悪い、しくったわ……。俺もこのままだとタダじゃ済まなそうだし、こっからはプランBで行こうか。」
ユーグ「プランB…ですか?そんなものを用意してたのですね?一体どういう…」
タナト「ふっ…そんなもん決まってるだろ?」
チャキ…
タナト「『実力行使で押し通る』さ!」
エルメ「チッ!結局こうなんのか!!仕方ねぇ!やってやるか!!」
ゴズ「あら、抵抗する気?いいじゃない!威勢がいいのは好きよ♡」
メズ「いいわ。アナタたち、まとめて可愛がってア・ゲ・ル♡」
タナト「そらよ!」
キィン!
メズ「あらー?そんな華奢な腕でアタシ達に敵うとでも?」ギギギギ…
タナトのデスサイズはメズの金棒に簡単に防がれる。地力は獄卒達の方が上らしい。
タナト「あーあ…わかってたけど、やっぱコイツらにパワー勝負じゃ勝てそうにねぇわ!」キンッ!
エルメ「だな…!コイツら、筋肉はモノホンみてぇだ…!!」
ゴズ「ほらほら…身ぐるみ剥がしてあげるから、大人しくなさい!!」ギリギリ…
ゴズの力強い握力に、身ぐるみを剥がされてなるものかと抵抗するエルメも押され気味の様子。
クリフ「2人とも!今、援護を…!」
ずずい!
メズ「あらやだ!やっぱりアナタ、近くでみるとやっぱり可愛らしいわねー♡しかも触ってみると意外と筋肉がついてるのね!唆るわ〜!これがギャップ萌え?」ペタペタ
クリフ「うっ…いつの間に…!?」
魔法を使いサポートしようとするクリフだったが、急接近してきたメズにボディタッチされ、困惑する。
メズ「アナタは抱きしめてア・ゲ・る♡そーれ!」ぎゅー!
クリフ「ぐっ…力強……まずいかも…肉体的にも精神的にも……。」ミシミシ…
メズに力強く抱きしめられたクリフはあまりにも地獄の光景に精神も参りそうになる。
ユーグ「やぁぁぁ!!」ザクっ!!
メズ「きゃっ!?…チッ、邪魔すんじゃないわよ!!」バキィ!!
ユーグ「がっ…!?」
クリフ「ユーグ!!」
ユーグはメズの背中に剣を突き刺すが、怒ったメズに手痛い反撃を受ける。しかし、そのおかげでクリフは解放されたようだ。
エルメ「チッ…どうする?まともにやっても勝ち目は無さそうだぞ?」
タナト「うーん、どうにかして門の向こう側まで行ければいいんだけど…。」
エルメ「……向こうに行けりゃいいんだな?ならいい考えがある。ちょっと集まりな!」
エルメは仲間達を集め、ゴズメズに聞こえないように小声で作戦を話す。
ユーグ「確かにその方法であれば…やってみましょう!行けますね、クリフ?」
クリフ「うん、やってみる価値はある!行くぞ!」ダッ!
作戦を聞いたクリフとユーグはゴズメズに向かって走り始める。
ゴズ「あら!そっちから来てくれるのね!嬉しいわー♡」
メズ「そういうことならもう一回抱きしめて…」
ユーグ「神聖なる光よ!!」ビカァァァ!!
クリフ「シャイン!!」ビカァァァ!!
ユーグは2体の目の前で剣に光を、クリフは光魔法のシャインを放ち、強烈な光で2体の目を眩ませる。
メズ「きゃっ!?眩しい!!」
ゴズ「ど…どこに行ったの!?」
タナト「うまく行ったみたいだ!この門閉じるから早く来な、お二人さん!」
クリフ「わかった!」ダッ!
クリフとユーグは門の方に向かって走り出す。門の向こう側には既にエルメとタナトがスタンバイしている。目を眩ませた隙に門をくぐり、ゴズメズを退ける作戦だ。
ゴズ「あの子たち、アタシ達を無視して冥途へ入るつもりよ!」
メズ「そんなの許さないわ!ゴズ!アレをやるわよ!!」
ゴズ「ええ!!行くわよー!」
ガキィン!!
ゴズメズ「「愛憎の…拷問車輪!!」」ギュルルルル…!!
2体は背中合わせになり、合体超EX技を発動させる。その様はさながらベーゴマのようで、真っ直ぐエルメ達のいる方へ突撃してくる。
ゴズメズ「「悪い子には、お仕置きよーー!!」」ギュルルルル…!!
エルメ「…かかったみてぇだな。」
ズボッ!
ゴズメズ「「……えっ?」」
エルメ達の目の前に2体が差し掛かった瞬間、足元の土がなくなる。エルメはこうなることも想定して、ゴズメズが目眩しされている間に、門の前に簡単な落とし穴を掘っていたのだ。
ゴズメズ「「いやーーーーん!?」」ヒューー…ドーン!!
エルメ「悪いな、しばらくそこで大人しくしてな。」
タナト「そういうわけだから先に行かせてもらうねー。バイバーイ!」
ゴゴゴゴゴゴ……
メズ「ムキー!!アナタ達覚えてなさいよ!!」
ゴズ「今度会った時は、本気でお仕置きしてやるんだから!覚悟なさーい!」
バタン!!
ゴズメズの捨て台詞は、門が閉まるその時まで穴の底から響いていた。
タナト「ふぅ…何はともあれ、侵入成功だ!お疲れさん。」
エルメ「はぁ…アイツら、意外と侮れねぇな…。まともにやり合ってたら勝てたかどうか…。」
クリフ「だね…。それで、これからどうすれば…」
タナト「ん…?あんたら、ちょいとその辺に隠れてな。」
ユーグ「うん?」
言われるがままにエルメ達は物陰に隠れると、冥途の奥の方から一体の死神がやってくる。ラダマンティスの配下である木端死神のラダだ。
ラダ「あっ、タナトさん戻ってきたんですねー!ちょうど会いに行こうと思ってたところなんですよー!」
タナト「うん?どういうことだい?」
ラダ「それがですねー…」ヒソヒソ…
あまり表には出しにくい話なのか、ラダはタナトに耳打ちする。
タナト「……マジで?」
ラダ「では、要件は伝えましたので私はこれで〜。」
ラダは要件だけ伝えると、再び冥途の奥へと消えていった。
タナト「ふぅ…よし、もういいぞ。」
エルメ「あの死神、てめぇに何か伝えてるようだったが…何かあったのか?」
タナト「………『アウスレーゼ様から話がある。今すぐ来い』ってさ。」
クリフ「えっ!?それってつまり…。」
タナト「残念だけど、道案内できるのはここまでだわ。安心しな、アウスレーゼ様のいる冥王の間は、道なりに行って石の庭園を抜ければ着くから、迷うことはないはずだぜ。」
エルメ「そうか…。なんやかんや、ここまで世話になったな。てめぇも、自分のやるべきことをやってきな。」
タナト「はいはい。もしかしたら、昇進の話じゃなくてお叱りかもしれないけど、先にアウスレーゼ様のところに行ってるわ。健闘を祈ってるぜ。じゃあな!」バサッ!
タナトは翼を羽ばたかせ、冥途の奥…冥王の間へと飛んでいった。
エルメ「さて、これからどうする?オレ達もアウスレーゼとやらに会って、魂狩りをやめるよう直談判するか?」
クリフ「うーん、それもそうだけど…簡単に交渉に応じてくれるとは考えにくい。アウスレーゼは魔皇の名を持つ相手…もし戦闘になったら、僕たちに勝ち目はないだろうね…。」
ユーグ「なら、ダイヤ探しを優先してみるのはどうでしょうか?彼女の力があれば、アウスレーゼにも立ち向かえるかもしれません!」
エルメ「ふむ…確かに、戦力は一人でも多い方がいいしな。わかった。とりあえずは、おめぇらの友人探しを優先してやるとするか。」
これからの方針を固めた一同は、ダイヤを探しつつ、アウスレーゼのもとへと向かうことにした。