決して広くはない部屋の中で黒服と向き合う。相変わらず不気味なやつだ。特に顔とか雰囲気とか。
「久しぶり、黒服。元気そうで残念だよ」
「……スイさん。あなたはここに呼んでいなかったつもりなのですが?」
おっと。帰れって意味だろうか。まぁ僕は空気は読むものではなく吸うものだと思っているので帰らないが。
「お前みたいな変態と先生をふたりきりにするのは怖かったからね。頼んで連れて来てもらったんだ」
「クックック……変態とは心外ですね」
「女子高生を好き放題扱いたくて5億くらい払うやつは変態だろ。自覚ないならヤバいよお前」
「……そういう目的では無いのですが……いえ、今はそんな事よりも、先生。私はあなたに興味があります」
うっわ。コイツロリコンなだけじゃなくて同性もいけんのか。僕が思っていたよりも危険な変態だったらしい。
「"……私?"」
「えぇ、あなたです。あのオーパーツ『シッテムの箱』の主であり、連邦捜査部『シャーレ』の先生。あなたを過小評価する者もいるようですが、私たちは違います。……まず、はっきりさせておきましょう。私たちは、あなたと敵対するつもりはありません」
黒服は話を続ける。自分達の計画の邪魔になり得る先生とは敵対ではなく協力をしたいようだ。高校としての規模が小さいアビドスなんて大した問題にはならないが、先生の存在は無視できないものだと。
先生は黒服が何者かを聞いて、黒服は自己紹介をした。
キヴォトスの外から来た存在で、所属している組織はゲマトリア。そして自分は黒服と名乗っていると言う。
自己紹介が済んだ所で黒服が先生に協力するつもりはないかと聞いた。
だが先生は微塵も無いと答える。黒服は残念そうにしながら、この提案を断ってキヴォトスで何を追求するつもりかと聞く。
それに先生はそんな提案に興味はない、私はホシノを返してもらいに来ただけと言う。
それに対し黒服はホシノは既にアビドスの生徒では無い為、その行動に正当性はないと言った。
だが、先生は退部届に顧問である自分がサインをしていないので、ホシノはまだアビドスの生徒で、アビドスの副生徒会長で、自分の生徒だと主張する。
黒服は契約を重視する人物だ。だから、この主張は認めるしかないだろう。
そこで先生は黒服の行動を非難した。だが黒服はそれを悪だと認めつつも、ルールの範疇だと言う。そして先生にアビドスから手を引かせようと説得した。ホシノさえ諦めればアビドス学校は守るし、カイザーPMCもなんとかする。それにこれはホシノの望みにも一致している。だから手を引かないかと。だが先生はノータイムでそれを断る。
黒服はそれに対して先生は戦う力が無いのに自分達と敵対するつもりかと言った。しかし、先生は懐から何かを取り出す。あれは……『大人のカード』だ。先生の切り札とも言える代物だろう。
だが黒服は先生に対し忠告をする。大人のカードを使えば、先生の生が、時間が、削られて行くと。
だから、アビドスなんかに使わず、自分の為に使えと言う。元々アビドスは先生の与り知る所ではなかった。だから放っておいても良いじゃないかと。
だがやはり先生はそれを断る。黒服が壊れたオモチャみたいに何故と連呼し先生へそれは何の為かと尋ねる。
先生は責任を取る大人がいなかったと言う。だから、大人である自分が責任を取ると。
黒服はそれに困惑していた。たまたま会っただけの他人にそんな事をする必要はない。それに大人は『責任を負う者』では無く、様々な事を決定し、力無き者を支配する。それが大人だと言う。
先生は初めてキヴォトスに来た時、一時的ではあるが莫大な権力と権限が手の上にある状態だった。何故それらを手放したのか、黒服は理解が出来ていない様だった。
先生は、黒服に言っても理解できないと言い、交渉は決裂となった。黒服は最後にホシノの居場所を教え、ゲマトリアはあなたの事をずっと見ていると言った。
先生は何も返さず、振り向いて帰って行った。僕も帰ろう。
僕は完璧に空気だったが、原作の好きなシーンを見られて満足だ。
だが、そこで黒服が声を掛けてきた。
「……スイさん。あなたは何故アビドスに執着するのですか?あなたならば、このキヴォトスの何処へだろうと行けるというのに……」
「……別に、アビドスに執着してる訳じゃ無いよ。僕にとってはそこにいる人達の方が大切だ。でも、その人達がアビドスを大事にしている。だから僕もアビドスを守ろうとしてるんだ」
「……左様ですか。……一応お聞きしますがゲマトリアに協力するつもりはありませんか?」
「そんなのある訳ないじゃん。よっぽど大した理由がないとお前らと会話もしたくないよ」
「……やはり、そうですか。では、またいつか。……ゲマトリアはあなたの事をずっと見ていますよ」
……最後まで気色悪いやつだ。とっとと帰ろう。
建物の外で先生と合流し、アビドス高校へと歩いて行った。