……何を言っているんだ?もしかしてバカなのか?あ、ユメ先輩はもしかしなくてもバカだったか。
「はあっ!?何言ってるんですかユメ先輩!ダメに決まってるでしょう!捨てられた子犬じゃないんですよ!」
「で、でも……行く所が無いって言ってるし、困ってるんじゃないかなって……」
「良い加減にして下さい!それだからいつも騙されるんですよ!」
「ご、ごめんねホシノちゃん……でも、この人はいい人なんだよ!私を助けてくれたし!」
「だからそれですよ!ユメ先輩が騙される時はいつもそう言ってるんです!」
「ひ、ひぃん……」
……凄い。見事なまでにホシノが正しい。あと生ひぃん見れて感動。
「とにかく!ソイツは放って行きますよ!こんな事をしてる暇は私達には無いんです!」
「……ホシノちゃん。何かあったら、私がどうにかするから。だからお願い。ねっ?」
「…………はぁー……分かりました。でも、他の生徒には見つからない様にして下さいね!」
……えっ?僕行きたいとか言ったか?僕の意思を抜きにして話が進んでる?もしかしてキングクリムゾンとかで時間飛んだ?……まぁ、あっちが受け入れてくれるのなら無理に断る事もないだろう。
「ありがとう、ホシノちゃん!やったね!スイ……君?」
……まぁ、君だな。頷いておこう。
「! これからよろしくね!スイ君!」
「……性別とかあるんですか……?」
……あるのかな……?
──あれから僕は、街を徘徊して不良を倒したり、砂漠に行って出来る事を試したりする生活を送っていた。
治安は少し良くなったが、ユメ先輩曰くアビドスには怪物が出ると噂が流れているらしい。ホシノに筆談でこの噂を伝えて気をつけてと書いたら引っ叩かれた。解せぬ。
……まぁ、そんなこんなで暮らしていたのだが、アビドスの生徒数はどんどん減って行き、ついにはユメ先輩とホシノのふたりだけとなってしまった。僕もより一層頑張ろうと思っていた時。
黒服が現れた。
──いつもの様に町のパトロールをやっていた。いつもと変わらない光景だった。一度ボコした不良は僕を見ると逃げていくし、柴大将に会うと普通に挨拶をする。ちょっと前にユメ先輩が紹介してくれたのだ。
そんな感じで歩いていると、いつの間にか郊外の方の方まで来ていた。ここらへんは住民もいないので治安維持をしても意味がないので来ないのだが、間違って来てしまったようだ。ちょっと散歩したら戻ろう。
そんな風に考えていると、前に誰かが立っているのが見えた。
あれは……ッ!黒服!?なんでこんな所に……!狙いは僕か!?
……無視して帰ってもいいが、一回姿を見ると気になってしまう。例えるなら家で見かけたのにどこに行ったか分からなくなったゴキブリみたいな感じだ。
「……初めまして。私は黒服と申します。スイさんでお間違いないですね?」
頷いて肯定する。
「それは良かったです。……今日はあなたにとある提案をしに来ました。その提案は、私の実験を受けてみないかというものです。報酬はアビドス高校の借金を半額返済です。どうでしょう?受けてみませんか?もちろん安全には気をつけます」
そう言って黒服は手を差し出してくる。握手みたいな感じだ。あの手を握れば契約成立って事だろう。喋れない僕への黒服なりの配慮をしている様だ。
……う〜ん。ちょっと長くて分かりづらいが、要は原作でホシノにしていた提案と同じだろう。
なら、僕の答えは決まってる。
黒服が出している手に向けて手を差し出す。
そのまま手を握る……事はなく手を変形させ刃物の様に鋭くして、黒服の喉元に突きつける。
僕は暗殺教○の漫画で学んだのだ。言葉はなくとも殺意を相手に伝えるのは簡単な事だ。
「……そうですか……残念です。あなたならば賢い選択をして下さると思っていたのですが……ゲマトリアは、あなたの事をずっと見ていますよ」
あっ、黒服が消えた。言いたい事だけ言って行きやがって。アイツ今度あったらぶん殴ってやる。
……まぁいいや。なんか疲れたしさっさと帰ろ。
僕は歩いて来た道を引き返し、アビドス高校へ歩き始めた。