今話はけっこうブルアカ本編からの引用が多いですがご了承ください……
次話はオリ展開も結構多いので……
初めてアンテノーラが先生を観測し、スバルと会話を交わしてから数日。
彼女は黒服に呼び出され、黒服の実験場……アビドス砂漠に位置する研究所を訪れていた。
黒服曰く、
「
とのこと。
まぁ、いくら超法規的な操作ができるらしいシャーレの先生といえど1日でこの研究所を見つけることは流石に不可能だろうし、今日は来ないだろうが……
「ま、小鳥遊ホシノと話せるなら良いや。彼女とは一度話してみたかったんだよねー」
そんな事を呟きつつ、アンテノーラは黒服とホシノがいるであろう研究所の下層部へと足を進める。非常に静かで寒気を感じそうなほどだったが、10分も歩いていると、微かにだが誰かの話し声が耳に入って来た。
「……私たちがなぜ、あんなくだらない企業の、詐欺紛いの行為を支援していたのだと思いますか?
自治区の土地を奪ったところで、ブラックマーケットのような無法地帯が一つ増えるだけです。
そんな場所は、このキヴォトスにはいくらでもあります。
しかし……もし、企業を主体とした新たな学園が誕生したら?
アビドスに現れるその新しい存在は、果たしてこのキヴォトスにどんな影響をもたらすでしょうか?」
「っ……!」
……どうやら、小鳥遊ホシノにネタバラシをしている最中に来てしまったようだ。
気分のいい話ではないが……まぁ、黒服側もしっかり条件を提示し続けていた以上、それを反故にさせるほどアンテノーラはアビドスに感情移入はしていない。
仮にホシノ一人では裏を読めなかったにしても、先生や仲間に頼ればその裏の悪意を見れたかもしれない、黒服の契約はそう言ったものなのだ……まぁ、黒服の情報通りなら、ホシノがそのようなことをするとは思えないが。
アンテノーラには確かに人並みの倫理観はあるが……それを用いて契約や約束を破らせるほどの倫理観もまた、持ち合わせていなかった。
「……しかし、これは単なる余興に過ぎません。
ホシノさん、私たちの目的は最初からあなたでした。
あなたに契約書へサインしてもらうこと、あなたに関する権利の全てを頂くこと。
その目的のために利害関係が一致したので、カイザーコーポレーションに協力していた。それだけのことです」
その言葉に看過できない部分があったのか……アンテノーラは溜め息を吐くと、二人の前へとゆっくりとその姿を現した。
「おいおい黒服ぅ。『私たちの目的』なんてゲマトリアの総意みたいに言わないでおくれよ。少なくとも私は同意していなかったし、なんなら今はやめておけって忠告したよね?カイザーとなんて手も組みたくないし」
「おや、貴方ですか。残念ながら、かの人はまだ来ていないようで」
「構わないよ〜、そこのホルスちゃんにお話をしたいだけだからさ」
「……誰だ」
消沈しながらもドスの効いた声をだすホシノだったが、アンテノーラはどこ吹く風のようにカカと笑い、優雅なカーテシーを持って頭を下げながら自己紹介を始めた。
「初めまして、暁のホルスこと小鳥遊ホシノさん?私はアンテノーラ……そこの黒服の同僚の、ろくでなしの悪党さ」
「……悪、党」
「そうだよ、定義次第で言うならなんならそこの黒服よりもよっぽどの、ね」
「……」
「ありゃりゃ、メンタルに来ちゃったか……黒服、ホルスちゃんを実験室まで先に連れて行ってあげてくれない?彼女が拘束された後、落ち着いた頃に話すからさ」
「分かりました……ではホシノさん、こちらへ……」
黒服のその言葉と共にホシノは連れていかれ……アンテノーラはただ、連れていかれた彼女が落ち着くまで待っていることしかできなかった。
ホシノが連れて行かれてから、数十分。待ち続けて水筒に入れていた水を飲み干しかけていた頃、ようやく黒服が行った方向から戻ってきた。
「おそらく話ができるまでは回復したかと」
「りょーかい。と言うか、君相当に悪辣な事したんだねぇ。
「
「違いない」
馬鹿にしたり自嘲したりを繰り返しながら黒服が通って来た道を歩き……そして、ホシノが捕らわれている部屋へと辿り着いた。
「やあホルスちゃん!ご気分はいかがかな?」
「……うるさい。後、その呼び方はやめろ」
「だろうね、知ってる。でもこれくらいしないと君は無視するだろうと思ったからね」
「……チッ」
どうやら本気でキレているのか舌打ちを返される。まぁ当然だろうねと思いつつも、アンテノーラは部屋に入るとホシノの横に座って話しかける。
「ま、無駄話はこれくらいにして……君には2つほど話したいことがあってね、それでここまで来させてもらったってわけ」
「……答える義理なんてない」
「へぇ……君からすると逆らえない存在である黒服の同僚にそんなことを言えるなんて、度胸あるね。これでも私はそこそこの武闘派のつもりなんだけど?」
「……アビドスに、手を出す気か⁉︎」
「さぁ?それじゃあ、さっき言った2つのことをこちらから勝手に話させてもらうね」
「……」
苦々しげな表情を浮かべるホシノにアンテノーラは内心謝罪する。アビドスに手を出す気はなかったとはいえ、それを匂わすようなことをするのは少しかわいそうだっただろう。
「んじゃ、1つ目……これは謝罪だね。数日前、悪いけど君たちのことを調査させてもらったよ」
「……なんで。アビドスに手を出すため?」
「そんな暇じゃないよ、私は。君たちと共に行動していた『先生』について知りたくてね。その際知った先生やアビドスの情報を一部仲間に提供させてもらったけど……まぁよく考えたらプライバシーの侵害以外の何者でもないよね、これって」
「……はぁ?あなたたちみたいな悪党がそんなことを気にするの?」
「生憎倫理観だけはあってね。てな訳で、一部情報を漏洩してごめんね〜って話」
そこまで言うとアンテノーラは先ほど飲み干した水筒とは別の水筒から水を飲む。ホシノにも差し出すが……喉が渇いていないのか悪党からの施しなど受け取りたくないのかツンと断ってしまった。
「んで、2つ目……これは黒服から聞いた君の印象、そこからどうしても君に聞いてみたいと思ったことでね。是非とも、答えてもらいたい」
「……何さ」
「君は……そうだね、いい先輩でいられたのかい?」
「……は?」
ホシノはアンテノーラの質問に困惑と……そして、どうしようもない不快感を感じた。
それは、可能であれば別の人に言われたかった言葉……初めて言われた言葉だと言うのに、そう感じてしまったのだ。
「……黒服から話は聞いたし、この地の歴史も調べた。君は、一人で抱えるには大きすぎる責任を自分のものとして背負い、他の後輩や先生にすらそれを見せようとはしなかった。
あの
アンテノーラはそこまで言うともう一度水を飲み、そして最も聞きたいことを問いかける。
「そこで聞きたいんだ。君は、いい先輩として……後輩たちを、導いたのかい?」
「……私は……」
「……ん?」
ホシノが葛藤しつつもその答えを言葉にしようとし……アンテノーラは仮面の裏で僅かに微笑みながらその様子を見つめる。その様子が癇に障ったのか、ホシノは堰を切ったように絶叫した。
「知ったような口を、きくな……!当たり前だ、できる限り努力したに決まってる……!ユメ先輩が私にしてくれたように、みんなを支えたいって……!」
その言葉と同時にホシノは涙を流す。黒服にしてやられたと気づいた時さえ涙を流さなかった彼女だったが、かつての先輩のこと、今の後輩のこと、そしてアビドスの力になろうとしてくれた先生のことを思い出してしまい……涙を、堪え切ることはできなかった。
そんな様子をアンテノーラはじっと見つめ……そして、深く頷くとハンカチでホシノの顔を拭ってやった。
十分近く過ぎようやく涙を流し終えたのか虚げな目をしているホシノにアンテノーラは声をかける。
「……悪かったね、酷なこと聞いて。でも、期待通りの言葉を聞けたよ」
「……だったら、何だって言うんですか」
「さぁ、どうだろうね」
「……」
「ただ、この言葉は覚えておいて」
「何を……」
「
「……はぁ?」
「要件はそれだけ。ああ、それと……」
それだけ言って帰ろうとしたアンテノーラは、ふと振り返って最後に一言だけつぶやいた。
「私は、君が慕うユメ先輩とは少し違うベクトルで素敵な先輩をしていたと思うよ、ホルスちゃん?」
「……知ったふうに、言わないで下さい」
この会話を最後に、アンテノーラは実験室を出ていき……そして、二度とそこに戻ることは無かった。
とある日の昼下がり。
美しい庭園を望むことができるテラスに、高級なティーセットと紅茶の茶葉……そして、そこに座するは二人の少女。
一人は自称”平凡”であり、その実アウトローな一面や主人公にすら並び立てる熱い心を持つ少女。
もう一人は少女たちが通う学校……トリニティ総合学園のトップの一人であり、政治能力・知略に優れた見識を持つフィリウス派の少女。
つまりは阿慈谷ヒフミと桐藤ナギサなわけだが……その二人が、とある一件、具体的にはヒフミが知ったアビドスでの問題について語り合っていた。
「なるほど、ご説明ありがとうございます。ヒフミさんが仰ってることはよく分かりました。
その先生の言葉が本当だとすると、このまま聞き流すわけには行かなそうです。
例の条約も目前に迫っていますし、今は下手に動くわけには行かないのですが……」
そう言いながらナギサは紅茶の入ったカップを傾け、口に含む。そしてその味わい深さと温かさを口の中でしっかりと味わうと、現時点で出すべきだとした結論を述べ始めた。
「……ただ、そのPMCという企業の存在が、我が校の生徒に良くない影響を及ぼしそうなのは確かですね。
今回はちょっとした例外ということで、何か考えた方が良さそうです」
「あ、ありがとうございます、ナギサ様……」
「そうですね……確かちょうど、牽引式榴弾砲を扱う屋外授業の予定があったはずです。
せっかくですし、ちょっとしたピクニックなどいかがでしょう」
「えっと……牽引式ということは……L118の……?」
「はい。他ならないヒフミさんですし、全てお任せします。細かいことは私の方で」
そこまで行ったところでナギサは、
「もし現地に向かわれるのであれば、護衛の生徒もつけておきましょうか」
「い、いえ、自分の身は自分で守れますんで……」
「ですがPMCという企業が相手にいる以上、一人くらいはいた方がよろしいでしょう」
そういうと同時にナギサは席を立ち、出口の戸を叩いて合図する。
その合図に合わせて一人の少女が扉からテラスへと現れる。
白いワンピース調のティーパーティの制服。
少し濃い青色の、美しいロングヘア。
首から小さなロケットペンダントを下げており……
そして。
腰に物々しいハンドガンを提げたその少女は……ナギサへと礼をすると、ヒフミの方へと向き直り挨拶を始めた。
「
澄んだ声で挨拶されたヒフミは緊張しながら頭を下げるが、その様子にクレタはクスリと笑う。
「緊張しないで下さい。私なんて職務上はただの戦闘屋に過ぎませんし……敬意を払われるような立ち位置ではないです」
「い、いえ、そんな……」
互いに譲り合う様子に面白そうに微笑みつつも、流石に待っていられなかったのかナギサが助け舟を出すように書類を見せて質問する。
「クレタさん。この日程で彼女を護衛できますか?」
「ふむ……行きはついて行けそうですが、帰りは私にも所要があるため厳しいです。帰りは他の生徒と共に帰る、もしくはアビドス生と合流するという形でよければ大丈夫かと」
「分かりました。では、アビドス砂漠まで行く際の護衛をクレタさんに、帰りをアビドス生か先生に頼むという形にしましょう……よろしいですか、ヒフミさん?」
「は、はい!ありがとうございます、ナギサ様、クレタ様!」
どこまでも腰が低いヒフミにクレタは少し笑うと頷き、そして……部屋を退出しながらロケットペンダントを開き、その中にある
「カヤ?うん、私、アンテノーラだよ」
「何の用かって……君の功績を増やしてあげようと思ってね」
「そっちが動いてくれたら裏でこっちも動きやすいからさ、うん……」
「だから、
Tips:アンテノーラは責任感がとても強い人をとても高く評価する。具体的には小鳥遊ホシノ、調月リオ、桐藤ナギサ、そして梯スバルとは非常に相性が良い。なお悪役ムーブしすぎてホシノとは仲を深められなかった模様。
Tips:
セイアが昏睡している今は時折フィリウス派の手伝いをしており、調査や護衛等を行なっている。
首から下げているロケットペンダントには青い髪の少女と白い髪の少女のツーショット写真が入っている。
護衛ということから武闘派である一方、愛用している銃はハンドガン1丁のみ。
なおハンドガンの名前は『
というわけで遂にオリジナル生徒が本格参戦する回でございました。
2週間空くはずが数日で書けたよ……あれぇ?
今回でアビドス編を終えるつもりでしたが……もうちっとだけ続くんじゃ。
本当はここに先生と黒服の対話の裏側も入れたかったんですが、長くなりすぎるので没になりました……若干時系列が前後しますが次回必ず入れますのでお楽しみに!
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