その為かつて没にした固有名詞が大量に出てきますが、本編に関わるものはほぼ無いので、無理にそれらを覚えようとせず適当に読んでくださると嬉しいです!
拝啓…… なんて、堅苦しい文章は必要ないか。
ハローハロー、初めまして。
この手紙はきっとその世界における『アンテノーラ』にたどり着くはずだと信じてるけど……もし違ったなら、破り捨てておいてくれるとありがたい。
さて。
きっとこれを読んでる君は「誰だお前」って思ってるんだろうけど……
簡潔にいうなら、私は君だ。
もっと正確にいうなら、分岐した世界における別のアンテノーラ、って理解してくれるのが一番かな?
ま、私はアンテノーラとは名乗ってないし、君と違って
だから君みたいに過去も名前も忘れてる、なんてことはないよ……流石にゲマトリアに本名で所属はしたく無かったから、あそこ所属で名乗る時はバグリオーニ、なんて名前を使っているけど。
閑話休題。
もしかしたらこれを読んで困惑してるかもしれないけど……考えてもみなよ。
君、もし分岐した世界を観測できるならするでしょ?
自身の目的を為すのに役立てる為に、若しくはその結末がどうなるのかを調べる為に。
私もそうで、それを成し遂げたってだけ……ま、その結果半分心折れちゃったんだけどね。
……予想するよ、君のことだからどうやって分岐世界を観測してるんだって思ったでしょ?
当たってたなら悔しがっておいて欲しいな……悔しがってくれた?
まあ答えを簡潔に言うと、ウトナピシュティムの本船……そう、カイザーが狙ってるあれだね。
あれが持つ多次元解釈機能を限定的に再現したってわけ。
機能的には観測と僅かな干渉が限度だけど……まあ、こうして手紙を送れただけ上出来かな?
まあ作成に数年かかったり、処理機能部分の開発に馬鹿みたいな量のオーパーツ持っていかれたりしたけど……それを差し置いて尚悪くはない発明だったと信じたいよ。
あと開発中に敵対してきたから壊滅させた数多のカイザー子会社は……うん、尊い犠牲だったと思っておこうかな。
まぁ本船は元の姿のまま埋め直してきたから、きっと誰かがまた使う日が来るだろうね、いつかは知らないけど。
さて、話を戻して。
私は複数の『アンテノーラ』が存在し得る世界を観測して、その結果を見て回った……
ああ安心して、この手紙を送った君の世界の結末はまだ見てないよ……というか、確定していない以上、結末は見れなかったんだよね。
分岐世界の現在や過去は見れても、未来までは見えなくてね。
だから手紙を送ったとも言える……私という失敗例を反面教師にしてもらうこと、そして他の世界の君がどんな事をしたのかを伝え、役立てて貰うためにね。
さて、君はきっとこう思っただろう……『私という失敗例』とは何かと。
簡潔に言おう、私は君たちが為そうとしている責を為すことを諦めてしまった。
ああ、分かっている。
きっと君は「私というものが」って思ってるんだろうね、そりゃあそうさ。
でも、私には無理だった。
誰かを傷つけても目的を達成させることに、私は耐えられなかった……ああ、ベアトリーチェは別ね?
あれに関しては殺さずにはいられないからね。
とは言え、あのゲロカスを
いくらあんなのでもね、殺すっていうのは心を傷つけ、荒ませるものだって。
むしろ敵とは言えある程度共に過ごしてきた相手だからこそ、殺しに躊躇いを生じるのかも。
多くの可能性を観測してようやくそんなことに気づけるなんて……私も君も、どうやら人間性すらも失ってるみたいだよ?
あはは、ウケるね。
私はそれに気づくことで人間性を取り戻しちゃったのかな……それともずっと見て見ぬ振りをしてきただけなのか。
そんな罪悪感に耐えられなくなった。
あの子たちにそんなことをさせるべきでないって思い始めた。
だから、まあ、うん。
これを別の世界で頑張ってる自分に言うっていうのは酷かもしれないけどさ。
私は
……心底バカにして欲しいな、こんな結末を選んだことを。
自分が取るべき責任すら取れない私を、どうか他ならない私である君に笑って欲しい。
それに、
でも、君の計画も大概残酷さ。
最も安全で安心な手とは言え、『ベアトリーチェを殺した』っていう罪悪感と記憶をずっと背負わせるわけだから。
それがアリウスの誰であれ……可哀想、だと思うんだ。
人殺しの罪悪感なんて、辛い記憶なんて、死に行く奴が抱えてればいい、そうでしょう?
なんて、言ってみたりね。
幸い私はゲマトリア内でも交流を避けてきたし、かつアリウスへの接触も最低限にしているから……私が死んでも、悲しむ人なんていない。
唯一関わったアリウス生ですら私の声すら誰も知らないぐらいだ、私を大事になんて思ってないに決まってる。
ただの相討ちだって思うはずだ、少し悲しんでも
だから、私は
それによって、
だけど。
だけど、君は……君には、どうか君のやり方で責を成し遂げて欲しい。
……うん、ひっどいこと言ってるのは自覚してるよ。
何せ自分でしなかった「人殺しの汚名をアリウスの子たちに背負わせる」ことを、別世界の自分とは言え他者に頼んでるんだ……それこそ地獄行きだろうね、私は。
だとしても、私は……君のやり方が非常に残酷であれども、その一方で誰もが不安というしがらみから切り離されて進むべき道を進める方法であるというのも、理解しているし、そうあるべきだと思う。
だから。
たとえ私も君も、真性のド悪党になっても……君には責を、為して欲しい。
……重い話になったね、うん。
まぁ私たちの間で明るい話が成り立つわけない定期なんだけど。
そうだね、他の私たちの話でもしようか。
私以外のどの『私』……ベアトリーチェを殺そうとする『私』は『アンテノーラ』を名乗ってるし、大方同じ方法で責を成そうとしてるよ……似たもの同士の極みかな?
どれも私だから、そりゃそうなのかもしれないけど。
異なる部分があるとしたら、
君は無貌のロキと解釈して名付けたけど。
例えばレッドクイーン、例えば隻腕童子、毒石狐、etc……みんな色んな解釈を見つけて、名前を付けてる。
……途中の考え方ややり方は違えど、
これが運命か、酷いものだねぇ。
さて、最後に。
なぜ君という『私』に手紙を送ったか……まだ計画の未来が確定していないからアドバイスをしたくて、とはさっき書いたけど、他にも理由はある。
……君たち、つまり『私たち』はそれぞれの世界で目的を成功させたり、失敗したりしている。
そんな君たちの中で君は最も優秀に目的を果たそうとしていて……かつ、その一方で最も
側から見てる私でもわかるんだから、そうさ。
君であれば見た目だけなら誤魔化すことも可能なんだろうけど……それよりは、別世界とは言え同じ目的をもつ『
わかったら少し休めバカモン。
さて、本当にラストになったけど……最期に君に何の言葉を贈ればいいのか悩むね。
あ、
うん、そうだね。
こんなテンプレくさい言葉を言う日が来るとは思わなかったけど……それもまあ、悪く無いか。
君の目的達成に幸あれ。
追伸
どうしても行き詰まったなら、アンテノーラでも無貌のロキでも無い、自分自身に目を向けな。
「分岐世界の私からの手紙、ねぇ……疑わしいけど、信じざるを得ない内容だね」
アビドスの一件が終わってから数日が経った夜。
身に覚えのない手紙に困惑していたアンテノーラは、その手紙を読み終えた頃そう呟きながら溜め息を吐いた。
何せ急に別の世界の自分を名乗る自分から手紙が届いたと思えば、あらゆる記録にも、アンテノーラ自身の記憶にも残っていないはずの、彼女の名前
一応、黒服や百合園セイアはその名を知ってはいるが……彼らが、こんな迂遠なことをするとは思えない。
「だとすると本物なんだろうけど……そっか、そっちの君は諦めちゃったのか」
そう言ったアンテノーラの声は……手紙にあったような怒りや嘲笑では無く、深い憐憫と同情が篭っていた。
いくら自分の目的だけを見据えているアンテノーラだって、気づいていないわけじゃ無かった。
自分が取る手段によってアリウスの一部生徒に『人殺しの烙印』を背負わせること……そしてそれが、たとえ
それでも尚、アンテノーラは自らの責を成すと言う目的……そして、自らが考える方法がアリウス生の『安心と安全』を築き上げるものであると判断の下、アリウス生によるベアトリーチェ殺しと言う手段を取ることを選んだが……
それによる罪悪感に耐えられなかった『私』がいてもおかしく無いと言うのは、理解できる。
「この方法を受け入れているあたりが、この子……バグリオーニだっけ?が言うところの、『精神状態がイカれてる』ってことなのかな……
だとしても……もう、私は止まる気はないし、君が望む通り止まらないけど』
葛藤や疑念、そしてそれらを飲み込んで初志貫徹を目指す決意を固めたところで……初めてアンテノーラは僅かにだが相好を崩した。
「にしても……ホント、どの世界でも『私』が考えることは同じなんだね。一周回って不気味だよ」
それらはそれぞれの世界のアンテノーラが自らの体を媒体に作り出した
そもそもほぼ全員がアンテノーラと名乗っている時点で、ネーミングセンスも思考回路もほぼ同じすぎるなとアンテノーラは失笑した。
「そう考えるとこの手紙を書いた『私』が特異点とも言えるのかな?まぁ、ベアトリーチェへの殺意だけは同じみたいだけど……
ま、何はともあれこの『私』も覚悟を決めたみたいだ、私だって遅れているわけにはいかないか……エデン条約はまだ先とはいえ、出来ることはいくらでもあるはずだし」
そう言うと同時に、アンテノーラは手紙をそっと畳むと机の引き出しに丁寧に仕舞い……そして、どこか遠くを見つめるように斜め上を見上げると口を開いた。
「もし生きる世界が違っても
願わくば逝き先へは渡し船じゃ無くてクライスラーで逝きたいかな、なんてニヤリと笑いながら呟くと、アンテノーラはこれから自らが盤面とする舞台……トリニティ総合学園を偵察しに、部屋を発ったのだった。
Tips:バグリオーニ……分岐世界の一つに存在している、別時間軸のアンテノーラ。
ベアトリーチェ弑虐において、本編アンテノーラとは違って
その副産物で見た分岐世界でのアンテノーラの在り方を見て自らが採ろうとした所業への罪悪感を覚え、自らベアトリーチェと心中することを決意。
……したものの唯一情報を集めるために関わっていたアリウス生のアツコに思惑がバレ、心中直前にスクワッド達に止められた模様。
秤アツコに勝てるわけは無かった(無慈悲)
尚バグリオーニがいる分岐世界はアンテノーラの世界よりも時系列が前になっており、この手紙を送られていた時点でまだ先生が来る前のお話だったりする。
というわけで番外編兼没ネタ供養として別時間軸のアンテノーラからの手紙を書かせていただきました〜
投稿遅れて申し訳ないです!
前書きでも書いた通り意味わからん固有名詞が多かったと思いますが、ストーリーに本質的に関わるのはぼやけ文字になってるアンテノーラの本名だけですし、別に今見る必要すらないので、今話はなんとなくで読んでくださると嬉しいです!
ちなみにバグリオーニという名前の元ネタは『ラッパチーニの娘』という小説の登場人物からとりました。青空文庫で読めるのでみなさま是非読んでください、ちゃんとこの名前にしてる理由はありますので……
次話は掲示板回のつもりですが、初めて書くので投稿が今回以上に遅れるかもしれません……
その際はご容赦をお願いします。
お気に入りや感想、評価等いただけると作者の執筆速度が上がりますのでよろしくお願いします〜
考察等もお待ちしております〜
番外編に出てきた分岐世界のアンテノーラに関する短編って需要あります……?
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あるよ
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ないんだな、これが