当作、及び当話は7thPV公開前に書き始められたものである為、一部キャラの印象が本編と比べて大きくズレている恐れがございます。
ご了承お願い致します。
この話で原作突入前の話が終わります、キャラ紹介を入れたのちに原作突入です。
ワンチャン穏やかめな幕間も入るかも……
D.U.にあるとあるカフェ。
そこはキヴォトスでも屈指の人気店で連邦生徒会の生徒たちからの熱い人気を獲得しており……そして同時に、アンテノーラの肝入りで出店されたいわば彼女の資金源の一つ。
無論アンテノーラの資金源はこれだけではないし、なんなら最初の元手は自らの体を用いて得た人体実験のデータなのだが……それはさておき。
アンテノーラは現在そのカフェにある個室席にて、セイアの時と同じ白一色の出立ちで、とある友人の到着を待っていた。
連邦生徒会の中でも一部署の室長という立場まで漕ぎ着けたエリートにして、それだけでは飽き足らずさらに上昇志向を持つ野心家。
そんな本来かなり忙しいはずの友人が緊急で呼び出してきたこともあり、自分が知る限り最も密談に向いているこのカフェで待ち合わせることになった。
そんな相手の少女の顔を頭に思い浮かべ……同時に、あの策謀家が慌てふためいていると言う事実に胸騒ぎを覚える。
「……嫌な予感がするなぁ。これがセイアが言ってた
先日のお茶会にてセイアから伝えられた「連邦生徒会での大きな動き」。彼女の表情から察するに相当ろくでもない内容なのだろうが……正直、彼女には予想がついていなかった。
強いて言うのであればエデン条約の調印式が行われるのがセイアの予知だとかなり先になっていたことだが……トリニティとゲヘナのことを考えると、何が起きたっておかしくはない。
「……ま、今日は久しぶりにあの子に会えるってだけでもここにきた甲斐はあるかぁ」
そう言って先ほど届いたコーヒーを飲んで待つこと、数分。
もうすぐ待ち合わせ時間を過ぎる……と思うギリギリのタイミングでその待ち人……
「待たせて申し訳ないです、すみません」
「構わないよ。どうせすごく忙しかったんでしょ?……直で会うのは久しぶりだね、
そんな挨拶の後、アンテノーラの悪友……改め、連邦生徒会防衛室長の不知火カヤは、疲れたのかのようにとすんと座ると、予め用意されていたホットコーヒーに口をつける。いたく気に入っているのか疲れでこわばっていた顔が綻ぶ。そんな和やかな時間が僅かながら過ぎ……そして、真面目な表情に切り替わったカヤが口を開いた。
「さて。そろそろ本題に入りたいわけですが……その前に、一つだけ前提を。今から話す情報は秘匿性がかなり高く……万が一にもまだ漏れるわけにはいかないのです。ですので……」
「分かってる。ここにきてるのはゲマトリアとしてのアンテノーラではなく、一個人としての私……と、言えば安心するかな?」
「ええ。私はあなたの目的を知っている以上この情報を
「むしろこれ幸いと悪い計画をするだろうね。彼らは自らの研究や芸術、解釈のためなら手を汚すことも厭わないから……まぁ、好き好んで悪を成していると言うよりは、それが手段として最適だからしている生粋の研究者連中なのであって、愉快犯ではないんだけどね」
「より厄介だと思いますが……まあいいでしょう、端的に言わせてもらいます」
カヤは僅かに手を震わせつつも少し冷めたコーヒーを一口飲み、ゆっくりと口を開く。
「連邦生徒会長が、失踪しました」
「え、えぇ……?嘘でしょ、エデン条約が控えてるこのタイミングで……?」
「残念ながら。これにより当のエデン条約は一度凍結されることが予想されますし……何より、キヴォトス全体の治安は大荒れになるでしょう」
はぁとため息を吐きながら語るカヤを見つつも、アンテノーラは脳をフル回転させながら考える。
確かにセイアの予知情報の時点で、調印式の時期が遅過ぎることはおかしいと思っていたが……にしても、このタイミングで失踪……?あの超人が何も残さずに……
「いや、だから先生か」
カヤには聞こえない声量で呟く。恐らくセイアが言っていた先生とやらも失踪した連邦生徒会長がその後に備えて呼んだ人物なのだろう。つまりキヴォトスを見放したとかそう言うわけではなさそうだが……
「……一アウトローの人間としては、悪くない話ではある。混乱状態ならそれだけ自由に動けるからね。エデン条約も……将来的には復活するだろうから、利用できる可能性はある。ただ……予定が崩れるのは、確かだね」
「でしょうね。あなたはゲマトリアという名前は出さないものの割と
お互い頭を抱えて唸る羽目になっていたところで、アンテノーラはふと目の前の少女を見る。穏やかそうに見えてその内面は貪欲な狼の如き野心と上昇志向。そんな彼女にとって、連邦生徒会長という、超人として憧れを持ちつつもポスト的には邪魔な存在がいなくなった訳である。当然、その地位を目指して動くものだと思っていたが……
「……もしかして、連邦生徒会長って後釜残してたりする?」
「ええ。と言うよりも、そもそも首席事務官が代行を務めるルールがありますので」
「首席事務官……っていうと、七神リンだったっけ」
「そうです。つまりは、彼女が今の連邦生徒会……ひいては、実質的なキヴォトスのトップとも言えるでしょう」
「……なら」
僅かに目を細め、顎に手をやりながらカヤに問いかける。
「七神リンは、連邦生徒会長代行として優秀だと思う?」
その言葉にカヤは逆に目を少し見開いて……一瞬奥歯を噛み締めたような音を立てた後、静かに語り始める。
「そうですね、正直、まったくと言って良いほどの不適格、なんで彼女が……
と、2年前までの私なら言っていたでしょう」
「……へぇ。なら、今の視点なら?」
「対外面や保守的過ぎる面など、確かに問題がある部分も多いとは思いますが……こんな状況下でも連邦生徒会を機能不全にせず回せるだけの事務対応力、そしてそれに耐えるだけの精神力は十全かと。私に欠けているであろう資質を持っている以上、今は口出しできません」
悔しいですが、と頬を膨らませながら呟くカヤの様子にアンテノーラは笑いながら肩に手を置く。
「随分と成長したじゃん。昔なら今すぐにでもクーデターを起こしかねなかったのに……大人になったねぇ」
「……変えたのはあなたですよ、アンテノーラ。私が防衛室の新人として、カイザーの連中に呼び出された時……
「そんなこともあったねぇ。私としては恐怖についての研究の為に襲撃しただけだったんだけど……まさか、あの時震えてた女の子がここまで立派になるとは」
「立派?ご冗談を……今でもなお、その時の縁を切らずに危険団体に所属している人と情報交換している室長の、どこが立派だと?」
「それはそう」
お互いケラケラと笑い合いつつも、アンテノーラは当時のことを思い返す。
当時、複製について研究していた頃────当時から一部観測されていた自然発生の複製より、その在り方について私は積もった感情と媒体、そして解釈が必要だと考えていた。
ならば人為的に発生させられた感情からも複製は作れるのではないか……そう思い、「恐怖」の感情を強制的に起こすべく、カイザーPMCの支店を急襲したのである。あそこなら後ろ暗いことをしている以上、公権力からの調査も嫌って結果的に私の正体もバレない……そう、思っていた。
『あ、あなたは……助けて、くれたんですか?』
襲撃後、その場にいた
正直、自分にとってもどうでも良いし見放しても良いだろうかと思っていた。しかし、着ている連邦生徒会の服、しかも見た様子からまだ入りたてとも言える彼女を、うまく利用できないかと考え……関係を持ち。
互いにカイザー等の情報を交換しつつ、時折チェスで競い合い、謀略について教えて……
結果として、今に至っている。
「ちなみに、今はカイザーについてどう思ってるの?」
「嫌いです。外側から見てやっとあそこの悪辣さがわかりました……防衛室として、常に監視を続けてますよ」
「……ところで、私も監視対象だったりするの?」
「ゲマトリアのアンテノーラとしてはNOです。ですが、初めて会ったあの時みたいにカイザーやヘルメット団、カイテンジャーの本部を襲っている存在としてはYESです。『享神』っていうコードネームまでついてますから」
「それは……悪くない。ある意味、私を的確に表しているかも」
「空を飛び、いたずらに非合法組織やグレーな団体を奇襲する謎の存在……ここだけ聞けば、義賊にすら見えるんですが」
「実際は恐怖に関するデータ収集だからね。ま、空を飛んでることを認識してくれているのは幸いかも」
私の発明品はすごいんだよ?と言いつつ、絡繰仕掛の靴を指差すアンテノーラ。その様子に呆れた表情をしながらも、どこか微笑ましそうにカヤは目の前の少女を見つめる。
「とにかく。連邦生徒会長が失踪して、こっちは大騒ぎになっています……次期にキヴォトスに影響は出ますでしょうし、少なくとも現時点でSRTの廃校という案が出てくる程度には影響が出始めています」
「それは……君としては、良いのかい?」
「良くないです、良くはないから反対はしますが……最悪、廃校になった場合は彼女らの一部を防衛室の方で上手く使いたいと思っているところです」
「クーデターでもするのかい?」
「まさか。対カイザーとして、潜入兼急襲部隊を作ろうかと」
「そこで挙げた功績をもって、代行の地位を狙うつもりかな?真っ当で、だけど私欲全開のいい案じゃないか」
「あなたにそこまで褒められると違和感がすごいですね……」
「ま、カヤもそこまで成長できたんだ……私からはそろそろ巣離れしてもらう時だね」
その言葉にカヤは完全に目を見開き……そして、アンテノーラの目的を全て知っている彼女は、少し悲しそうな表情を浮かべる。
「……本当に、
「当たり前じゃん。何回も言ったでしょ、ベアトリーチェのゲロカスさを……あれは殺さないとダメだって」
「そっちではないです……あなたが、ベアトリーチェを弑虐した後に果たそうとする目的についてです」
「……マエストロと言いセイアと言い、君も私の目的達成を嫌がるのかい?」
「はい……あんな目的を達成されるくらいなら、キヴォトスを征服したいとか言われた方がマシです」
「……」
「あなたは、連邦生徒会長に次ぐ優秀な人だと思っています。あなただったら、もっと良い方法が……」
「ないよ」
あまりにも端的に、淡白にアンテノーラは答える。その表情には普段の口調から思われる軽薄さなど伺えず、ただ、ただ穏やかな表情だった。そのどこか超越者然とした姿に思わずカヤは口元を抑え、僅かにのけぞってしまう。
「私は究極的には目的を果たすためだけに生きている。ベアトリーチェの抹殺も、所詮はその中の一部でしかない……それに、私は色々なものを裏切りすぎたし、その責任を取ることもなく逃げ続けてきた」
完全に冷えたコーヒーを飲んで勢いづいた口調を僅かに抑え、さらに続ける。
「
一瞬時間が止まったのかのように静かになり……呼吸音だけが部屋に響く。
「私に、帰る場所なんてないんだよ。だから私はもう、目的と”アンテノーラ”に向かって進み続けるしかない」
堂々した、しかしどこか影を感じるアンテノーラの言葉に……カヤは、ただ頷くことしかできなかったのだった。
Tips:絡繰仕掛の靴……正式名称は「欺神の足」。エンジンが搭載されており、空中を歩くように移動できるようにする代物。アンテノーラ本人による作品だが、メンテはゴルコンダとデカルコマニーが手伝っている。なお見た目についている歯車は回るだけの偽物。
Tips:今作でのカヤはアンテノーラから銃を貰っている。一応連邦生徒会で支給された銃もあるが、アンテノーラに脳を焼かれた今作のカヤがそれを使うことはない。
※上記のカヤの銃に関してですが、多分本編で出すタイミングがないネタかつパロディ寄りなのでここでちょっとだけ設定を書いて供養します。
○カヤの固有武器:蛹を破り超人は舞う(HG)
とある友人から貰ったハンドガン。事務が基本のため戦闘で使われることは少ないが、有事の際に壁やドアを破るためにショットシェルが入っている。
(元ネタ銃:MIL Thunder 5)
と言うわけで、一応ブルアカ本編前最後の話となります。
この先に関してはキャラ紹介を挟んでから対策委員会編1〜2章、及びパヴァーヌ編1〜2章にそれぞれ1〜2話ほど少しだけ爪痕を残してからエデン条約編に突入します、もしかしたら幕間とか掲示板回挟むかもですが。
それと一応以前の回で記載していますが、今作では原作と異なりパヴァーヌ2章がエデン条約編前に終了している設定となります。該当の回でも記載しますがご了承ください。
果たしてアンテノーラの目的は如何に……ぜひこの先も読んでくださると幸いです。
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