昔にお遊びで作ったやつが聖剣扱いされてていろいろ気まずい 作:雲野糸
この世には七本の聖剣が存在しているらしい。
雹剣ツララ。
雷剣ヒメイ。
炎剣カエン。
地剣ジワレ。
毒剣ペイン。
心剣ハート。
無剣ノクス。
「……ん?」
それぞれの剣がそれぞれ国一つを滅ぼすあるいは生かす事が出来るほどの力を秘められている。
それらの剣の出自は不明。
その剣を掛けて数多という戦が起こり、そしてその剣の力で数多という戦が平定された。
聖剣は常に秩序と混沌の中にあった。
だからこそその七本の聖剣を畏怖し封印しようとする者もいれば、己の手中に収めようとする者もいた。
だが、その強すぎる力に呑まれたのか、関わった者はみな不幸な死を遂げている。
「……マジで?」
震える俺の姿を見て心配してくれたのか、本屋の店主が「どうしたんだい、
お嬢さん。
慣れない呼ばれ方だ。
転生して女の子になってしまったのは理解しているが、いまだに男である感覚が抜けきっていない。
昔の俺はもっと筋骨隆々の益荒男だった。
今みたいにハンマー一つ振り回す事の出来ない細腕ではなかったし、身長ももっと高かった。
あの頃は良かった。
今よりもどうやら1000年程度昔の話らしいが、あの頃は自由に鉄を打ち剣を鍛え作品を仕上げてきた。
そもそもその時代では戦というのが遠い過去のものとなっていたので、だから俺がいくら剣を鍛え上げ剣を作り上げても、それらはすべて工芸品として扱われる事がほとんどだったが。
……俺が死んだあと、どうやら世界は一度滅んでいるらしい。
そして1000年。
俺が生きた時代の代物はオーパーツ、あるいは古代文明の遺跡として扱われている。
文明は一度リセットされているのか俺の知るそれと全然違うものになっていたし。
何より、この世界には聖剣と呼ばれるものがあった。
聖剣。
心躍る言葉だ。
だが、この世に存在しているらしいそれらの名前が、俺がかつてお遊びで作った剣のそれと同じじゃなかったらもっと良かったのだけど……
「どうしてこうなった……!」
ていうかなんで剣が残っているんだよ。
確かに、確かにあの剣達は丈夫だ。
それこそお遊びで作ったものなので商品に掛けるものとは比べ物にならないレベルで情熱が注ぎ込まれている。
……素材、そしてその製作工程に関してもめっちゃ気合を入れていた。
だからそれが今も残っていて現役なのは別に驚く事ではない。
ただ、なんでそれが聖剣とか大層なものみたいに呼ばれているのかなーっ!
「あ、頭痛くなってきた」
「あまり気にしない方が良いぞ、お嬢さん。確かに聖剣と言うのは恐ろしい代物だが、それでも実在している事が分かっているだけでどこにあるかもわからない、そんなものなんだ。人間族が有している無剣ノクスに関しても、王城でしっかり保管されているしな」
「あい……」
そういう事で頭を抱えている訳ではないのだが、とはいえ気持ちはありがたく受け取っておく事にする。
俺はとりあえず借りていた本を棚に戻し、店を出る。
どうやら心配してくれているらしい店主が店の外まで出てきてくれるが、俺は笑顔で「大丈夫です」と答えてから
俺が遊びで作った剣――いや、現代風に言うのならば聖剣、か。
聖剣は七本だけではない。
それこそ時間だけはたっぷりあったので、たくさん聖剣は作ってきた。
そのうちの一本は空間を歪ませ異空間にそれを保管出来るというもので、そしてその剣は俺が転生し現代にやってきた時に何故か近くに置いてあった。
……その剣を振るうと巨大な乗り物のようなものが出現する。
これは1000年前では割とメジャーな移動手段だったのだが、今の時代だと馬車とかが主になっているのか姿を見る事が出来なかった。
とにかく俺はそれに跨り、発進する。
一瞬で空の彼方へと飛び立った俺は、そこから改めて地上を眺めた。
「うーん……」
大自然が広がっている。
そこにはかつて大地を拓いて築かれた大都市の気配はどこにもなく、だから俺は哀愁のようなものを感じざるを得ないのだった。
「ん?」
と、何やら前方にワイバーンが現れるのが見える。
なんかムカついたので俺は異空間の貯蔵庫から聖剣をいくつか射出し、それを迎撃する。
何か叫んでいるような気がしたが一瞬でずたずたに引き裂かれたワイバーンはそのまま下に墜落していった。
「うーん、弱いな」
この世界、1000年が経過してモンスターも弱体化したのかな?