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レックス
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ティルテュ
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入学式翌日、恒例の行事を行う。
石造りの教室に、真新しい制服を着た連中が並んでいる。
俺にとっても面倒だが、ここでは有効な教育だ。
「これから3年間、貴様らを使える将にする教官だ。
名前は名乗らんぞ。ただ、教官と呼べ」
余計な関係は持つべきではない。
「明日、行軍訓練を行う。その説明をしてやる」
年食った奴らは嫌そうな顔をしやがる。
俺も嫌だ。
「徒歩で近場の森へ行って、帰って来る。ただそれだけ」
「荷物は指定したものを詰めて運べ。追加で重くしても良いぞ。
それと各々の得物を1つだけ持っていけ」
「普通なら5〜6時間で終わる。初回だから優しくしてやってる」
慣れてる奴らの表情が緩む。
この程度なら初歩中の初歩。
「騎士科とそれ以外で分ける。男女関係ない。
俺や他の教員が監視につく」
「お坊ちゃん、お嬢ちゃん。
お前らだけは一つの班だ」
ガキ以外は、あからさまに安心した顔をしやがる。
お守りは誰だっていやだ。俺が引き受けなきゃならん。
金髪のガキが吠える。
「末裔を舐めるな‼」
それなりに訓練はしているようだ。
上半身が年の割には発達している。
だが、末裔って奴らは武器ばかり鍛える。
兵士の基礎がなってない。
「上級生からこの訓練について聞くことを一切禁止する」
「準備しろ。今日の授業は終わりだ」
ここからが面倒だ。
ガキどもを見定めなくては。
―――――
生徒たちがそれぞれに分かれる。
俺は教壇で書類をまとめながら観察する。
ヴェルトマーのお坊ちゃんがドズルのを連れて、
最前列の小さいお嬢ちゃんの側に集まった。
「早速だけど、作戦を立てよう」
「おいおい、アゼル。
まずは自己紹介……一人以外のは必要だ」
「それもそうだな、ドズルの公子。
僕はユングヴィのアンドレイ*1。
君たちのは覚えているからいらない。
会議開始だ」
「あんた、生意気よ‼」
「僕はユングヴィを継ぐ者。そう見えるのも仕方ない。
では、共通認識を確認していこう。
それぞれ何を得物にする」
早速、イニシアチブの取り合いか。如何にもだ。
「決まり切ったことを言うなよ。
魔導書3つに斧1つ、それとあんたの弓だろ*2」
「私は、ほそみの剣*3を持っていく。
体力の消耗を抑えたい」
こいつは、少し違う。
下半身を中心に鍛えてある。
「君はそんなもののためにプライドを捨てるのか。
ファラの末裔だろ‼」
「そうよ、ユリス。
重いんだったら、あたしも持ってあげる。
ファイアーにしましょう」
「……あんた何考えてる。
意味わかんないぜ」
血は厄介だ。
捨てられない。
「私にはアゼルがいる。アゼルには私がいる」
「僕‼
どういうこと⁉」
この二人は協力できる奴らか。
集団内で先に纏まっているのは強い。
「正直に言う。
私の体力はこの中で一番下。背も最小。
ファイアーが必要になったらアゼルから借りればいい。
剣なら藪を払うときにも使える」
「理解できない。
本当に君には聖痕が出ているのか?
それが炎の紋章へ仕える者の覚悟か‼」
合理か家名か、貴族らしい対立だ。
「アンドレイ君‼
それは許せないよ‼」
「……私も炎の魔導書を持っていきたい。
でも、今の私には適さない。
訓練を超えるために最適な選択をしないと」
「暗黒教団との戦いでは、移動の方が辛かった。
私は戦えるようになるためにこの訓練を超える。
だから、炎は一旦置いて行く」
「……あんた、もしかして戦に行ったのか?
俺たちと同い年だろ」
「覚悟して。
行軍は全く甘くない。
喧嘩してる場合じゃない。
それぞれの得意なことを生かそう」
「……誇りを欠いた作戦はいらない。訓練まで失礼する」
想像より割れなかったな。
「私には体力は無い。
でも、荷造りなら慣れている。
早速準備に取り掛かろう」
「なら、地図は俺に任せてもらおうか。
城から抜け出そうとして、それなりに見慣れている」
「めちゃくちゃ辛い訓練ってことね。
帰ってきたときにエーディン先輩に杖使ってもらえるよう頼んでくる」
「……僕はどうしよう。
そうだ、アンドレイ君以外の荷物の分配を考えるよ。
ユリスとティルテュの水を多めに持つよ」
どこまで有効か、現地で見せてみろ。
―――――
朝もやがまだ残っている。
下士官課程の連中が走っている中、学級に告げる。
「途中で諦めたくなったら、俺たち監視に言え。
死ぬ前に申し出ろ」
「開始」
先に軽く身体を動かしていた騎士科が、真っ先に走り出す。
そこには、ロートリッターで働いていた奴がいた。
その名声でまとめ上げた。
悪くない手だ。実力が伴えば。
次にそれ以外の組が小走りで出発する。
無理についていこうとせず、適正な速度だ。
まとめ役はいないが、共通の標的がいる。
無様を曝さないため、纏まった。
俺の担当は例年通り、お子様たちだ。
「出発前に確認しよう。ご飯はちゃんと食べた?」
「……緊張しちゃってあんまり。」
「代わりに俺が食べてやった。腹いっぱいだ」
「大丈夫よ。エーディン先輩からお菓子もらっちゃった」
「……問題ない」
「……歩く時は同じペースで淡々と行こう。
先輩たちのノートに書いてあった。
僕たちのフロアの書斎にあったから、信じていいと思う」
「ありがとう、アンドレイ。
ルールを守った、上手い情報収集」
「感謝は不要だ。
君みたいな奴でも用意をしてるんだ。
僕だって対策は立てる。
行くぞ。他はもう出発している」
「待って。
靴ひもは二重に結ぶ。足首はしっかり固定しよう。
……あの後は爪が辛かった」
「はは、初っ端から挫かれちまったなぁ」
「うるさい‼」
「でも、おかげで道が踏み固められるし、楽になった」
「今度こそ行くぞ‼」
さて、何人残るか。
―――――
ガキどもから離れて馬を歩かせる。
時々、土を跳ね上げ煽る。
これで乱れるなら、将として不十分。
下準備は年の割に悪くないが、
この程度で揺るがされているようでは駄目だ。
この調子なら、あの銀髪は脱落するな。口数も減った。
湿気が高くなってきた。
木々が視界を塞ぎ、見通しが悪くなる。
ようやく、森だ。
ガキどもを追い越して、見られなくなった位置で下馬する。
馬は他の監視員に任せた
そこからは、監視の目が無くなったように思わせる。
俺にとっても厄介な仕事がはじまる。隠密しながらの監視なんて大変だ。
ここまで憎い教官が側にいたからまとまっていられた。
だが、これからは班員しかいない。
足手まといが引き裂く。
2日前に会ったような奴らだ。直ぐに空気が悪くなる。
例年、ここから消耗が激しくなる。
流石に、殺し合いになったら止める。
だが、そこまでは見守る。
―――――
赤毛のお坊ちゃんが口を開く。
「ねぇ、いったん休憩にしない?」
「まだ……行けるわよ」
「一番遅れているフリージの公女もそう言っている。
ヴェルトマーは軟弱なのかい?」
「俺は休憩に賛成だ。
あのおっさんがいなくなったんだ。息抜きがしたい」
「アンドレイの荷物を整理する時間が欲しい。
背嚢が揺れている」
「必要ない‼
ウルの末裔はへこたれない‼」
「じゃあ、4:1で休憩にしよう。
急がなくてもいつかはゴールにたどり着けるよ」
「ユングヴィの公子はどんなものを詰めてるんだ?
見せて見ろよ」
「やめろ‼
無駄に体力を使わせるな。
黙って深呼吸でもしてろ‼」
「ティルテュ。一旦荷物をおろそう。
足を見せてね」
「僕は、地図を確認しておくね」
騎士科はまだ余裕がありそうだ。前衛だけはある。
魔法科も一人を除けば悪くない。
銀髪のお嬢ちゃんは無理だな。
ただでさえキツそうなのに、この後上級生が待っている。
頃合いを見て姿を出してやるか。
「あまり休みすぎてはいけない。行こう」
ドズルのが、フリージへ視線を送る
「もう少しくらい、良いんじゃないか」
「足手まといは休んでいてもいい」
やっと始まった。
合図の頃合いだ。
「おい、そんな言い方無いだろう」
「事実だ」
「……ごめん……なさい」
「アンドレイ君。僕たちは同じ班なんだ」
「そこまでにしよう。
お互いに靴ひもと正しく荷物を背負えているか確認してから出発」
「……まあ、いいだろう」
―――――
多少は速度が上がった。
だが、雰囲気は悪くなった。
疲労が溜まるほど、悪化する。
この調子だと、魔導士の二人以外は武器での喧嘩を出来る体力が残らない。
今年は楽に済みそうだ。
そろそろ時間だ。
上級生たちも待ちくたびれただろう。
「そこの少年少女。待って頂けないだろうか」
青髪の男が剣を構えて立ちはだかる。
「……もっと言い方は無いのか。
ええい、金目のものを置いていけ」
茶髪の槍使いがそれに続く。
「我らは強盗、バーバリアン。
荷物を置いていけば命だけは助けてやる。」
最後に金髪が剣を抜きながら道をふさぐ。
坊ちゃん達は反応出来ていない。突っ立ってるだけだ。
足元はおぼついていないが、赤い嬢ちゃんは剣を抜こうとしている。
選択は悪くなかったが、使い慣れない武器じゃ身を守れない。
想定が甘い。
初陣では護衛がいたのだろう。
その感覚が命取りだ。
「あ……が、まもる」
不味い‼
未熟な魔導士が、不安定な状態で使ったら暴発する。
応急処置の準備をしなければ。
「サ゛ン゛ダー‼」
「「「えっ」」」
轟雷が襲撃者を襲う。
上級魔法並だ*4。
入学時点でここまでの威力を出せるのは見たことがない。
俺が知っている限りでは、
こいつの兄か、炎の女帝くらいだ。
「前衛、周辺確認‼
アゼル、肩を貸してあげて‼
ティルテュ、魔導書借りるよ‼」
お坊ちゃん達はまだ立ち直れていないな。
減点だ。
「二人とも、周辺確認‼
倒れた奴は気にしない‼
私がとどめを刺す‼」
倒れた青髪を踏みつけ、抜刀目前だ。
不味い‼
神器継承者3人だぞ‼
踏まれた男が叫ぶ。
「これは訓練だ。安心してくれ‼」
「私の名前はシグルド、シアルフィのシグルド*5だ。
君たちの先輩だ」
生きてた‼
神の血ってすごい。
首に剣を当て、肩を踏みながら告げる。
「……なら、妹の名前を言って」
「エ、エスリン」
「そして、その女性は私の許嫁でもある。
レンスターのキュアン*6だ」
「ノディオンのエルトシャン*7。
授業とはいえ、悪人の真似事はするものではないな」
心臓が止まるかと思った。
次の神器の担い手3人を失うところだった。
しかも、2人は留学生。
大戦一歩手前だった……。
隠密に戻らなければ。
赤い嬢ちゃんは足をどけて、手を差し出す。
「申し訳ありません。
こちらも余裕がなかったもので。
お許し頂けないでしょうか」
……変わり身早いな。
「こちらこそ、申し訳なかった。
この訓練は辛いだろう。
その中であれほどの魔法を使えるとは驚いた」
「我らのことは気にせず先に進むといい。
これは例年のお決まりなんだ。気に病まなくていい」
「周りには他にいなさそうだ。安心していいと思うぜ。」
斧のお坊ちゃんは任務を果たしている。
弓よりはマシか。
―――――
赤いお坊ちゃんが提案する。
「みんな、大休憩を取ろう。
襲撃で精神的に辛いからね」
「反対だ。これ以上遅れては不味い」
焼き焦げた3人へ視線をやる。
「流石に放っておくのは……」
その判断は正しい。
戦中でも無い限り、直系は捨ておけない。
弓のお坊ちゃんも荷物を置いた。
「私たちは大丈夫だ」
「応急処置はできますか?」
「……服を破いて縛ればいい」
「本物の山賊みたい。
斧有りますよ。持っていきます?」
騎士の国出身にそれは厳しすぎる*8。
「おい、斧をそんなふうに言うなよ‼
ユリスこそ、もう少しで目標達成出来るところだったのに残念だったな」
「目標?」
「こいつ、神器に勝つって言ったんですよ。
それに1回負けたとも」
ほそみの剣を取り出し、日の光を刀身にかざすお嬢ちゃん。
「一気に3体、全体の1/4。
……今からでも、行けるか?」
直系たちは身を震わせている。
「ユリス‼
すいません。ちょっとしたジョークなんです」
「私は本気。
神器に負けない女になる。
この人たちは神器じゃない。人間」
「それに、今回吹き飛ばしたのはティルテュ」
声を出す元気が無いのか、小さく手を振っている。
「応急処置をします。
その後はお昼の手伝いをしてください」
「……先輩の力を借りるなと言われなかったのか?」
「山賊志望を水汲みへ行かせることは禁止されていません」
そいつは外国の継承者だ。やり過ぎないでくれ。
―――――
男たちは水汲みに行かされた。
その隙に同僚たちへ合図を送った。
赤髪の嬢ちゃんは魔導書で火をおこし、
銀髪を横にして休ませている。
銀髪を按摩し、少しでも疲れを取ろうとしている。
「戻ったぞ。水なら多すぎるくらいに持ってきた」
「ありがとう。火消と果実茶に使うから助かる」
おもむろにほそみの剣を取り出した。
携帯食の干し肉を刺している。あぶるつもりのようだ。
半日もかからない行軍訓練のはずなのになぁ……。
「アゼル、火の番よろしく。
果物探し。20分以内に戻る」
串を託されて赤いお坊ちゃんが困惑している。
……苦労してるんだな。
「えぇっと、あの子は僕の乳兄弟、コーエン家のユリス。
休んでいるのは、フリージのティルテュ。
僕たちは皆聖痕を持ってます」
「……挨拶ありがとう。
あんな風に扱われたのは初めてだ」
「本当にすいません‼」
「いやぁ、学校ってのは退屈しませんね」
「レックス‼」
「なぁ、弓野郎もそう思うだろ」
「弓っ‼
まあ、いい。
あんなシグルド公子を見るのは初めてだ。斧野郎」
「アンドレイのそんな姿を見るのも初めてだね。
早速友達が出来たんだね。
私は何か月もかかったよ」
「違います‼」
訳知り顔でレンスターの王子が語る。
「戦友という奴だろう。
何と言っても我らと対峙したんだ。
ただの友とは違うさ」
弓の坊ちゃんが黙った。
切り替えるように、騎士の国が口を開く。
「今年の騎士科は有望だな。
ドズルにユングヴィ、朱鷹の娘までいる」
「あはは、ユリスは魔法科です。
重いという理由でこれを持ってきました」
程よく炙られた干し肉が刺さった剣を振っている。
剣の継承者たちは何とも言えない顔をしている。
「まさかこんな形で役に立つとは。
剣も悪くないと学べたよ」
槍の継承者は楽しげだ。
「あいつにかかれば、槍だって吊るし焼きの道具ですよ」
「斧はフライパン代わりにする」
不機嫌そうな顔が、野イチゴを抱えて飛び出してきた。
「カップを出して。
蜂蜜が無いからそんなに甘く出来ないけど、暖かいものは落ち着く。
ごはんを食べよう」
既に水を温めていたカップに、摘んだものを入れていく。
潰しながら飲むように指示している。
銀髪のお嬢ちゃんには、
先に果実を入れ、よく潰し、その後に湯を入れ混ぜている。
5人分の干し肉を8人で分け合っている。
雷のお嬢ちゃんの顔色もマシになっている。
この様子なら、森を抜けるまでは歩けるだろう。
―――――
「それでは、私たちは先に学園に帰る」
「無理はしなくていい。
だが、頑張れる所までは行ってほしい。
お前たちも聖戦士の末裔なのだから」
「私はそれほど押し付けないさ。
学園に帰ったら食事に誘わせてもらう」
「エスリン様に言いつけますよ」
「……それでは失礼」
ようやくガキどもだけに戻った。
「なんだか元気をもらえたね。
僕たちのペースで進んでいこう」
「ああ、気持ちの良い男たちだったな。
ほら、俺が荷物多めに持ってやる」
「その前に、アンドレイにお願いがある」
「……なんだ。
言っておくが、これ以上の休憩は無しだ」
「違う。
あなたに斥候を頼みたい」
「なぜだ?」
「あなたは弓兵。
遠くまで見通せる。接近されたら無力。
だから、先に敵を見つけて」
「おいおい、これ以上襲撃は無いだろう。
あの先輩たちもそう言っていた」
「訓練の襲撃は無いと思う。
でも、それ以外は?」
「……さすがにそれは無いだろう。
王都のそばだぜ?」
「そうかもしれない。でも、危険はゼロじゃない」
「斥候は体力を使う。
どこかのタイミングで合流しなきゃいけない。
待つかこっちに戻ってくることになる」
「だから、無理に頼むわけじゃない。
一番体力があって、
冷静に周りを見ているアンドレイに決めてもらいたい。
あなたはどう思う?」
「……正直に言ってそれほど余裕はない。
森を出るまでなら確実に出来る」
「森さえ抜ければ、視界が開けるね。
無理はしないで、アンドレイ君」
「任せたわよ、弓野郎‼」
まだ口は開けたか。
「君までそう呼ぶのか‼
アンドレイだ。
君たちも聖戦士の末裔だ。敬称はいらない」
―――――
日が陰り始めた。
彼らは森を超え、
王都が見える平野までたどり着いた。
休憩からは諍いが減った。
だが、森を抜ける頃にはそんなことすら出来なくなっていた。
中でも弓と銀髪の疲労が著しい。
弓は肩で息をし、銀髪は足まで引きずっている。
斧の坊ちゃんが一番体力が残っている。
一番先頭を歩いているが、全体への気配りを忘れていない。
今こそ、甘い甘い蜜を垂らす。
ゆっくりと馬を歩かせ、気遣うように集団に近づく。
「もう夕暮れが近い。諦めるか?」
「なめ……いわよ。」
負けん気だけは一端なお嬢ちゃんだ。
さらにもう一発。
「暗くなったら、道が見えなくなる。
そんな中、どうやってたどり着くんだ」
「僕が照らします」
魔導士の癖に、案外と耐える。
「無理だ。
第一、体力も魔力も持たないだろう」
「アゼルには私がいる。
道が見えないなら、ゴールを燃やせば良い」
……本当にやりそうで怖い。
追い払うような動作の青髪。
「俺たちは諦めたくないんだよ。黙っててくれ」
切り込む。
「お前ら全員、神器を使えない半端者だ」
顔が下がったな。赤いお坊ちゃん。
前を向かなきゃ疲れるぞ。
図星だな。お坊ちゃん。
歩幅が狭くなった。
弓のお坊ちゃんも顔を上げた。
もはや、口を開く余裕すらないのか。
目だけは生きている
聖痕持ちなんて、何かしら抱えてんだ。
こんな仕事をやってりゃ、いくらでも見えちまう。
勤めて優しい声を心がける。
「継承者がいる。
お前らが頑張らなくてもいいじゃないか」
「だから?
血が無くても戦える。
リーネ様は戦い続けた」
「もし倒れても助けてやれんぞ、お前だけじゃない。
いいのか?」
「それ以上は、馬を奪う」
千鳥足で弓に手をかけやがった。
震えて矢すら抜けやしないだろうに。
無様さに免じて、先に行ってやる。
―――――
夕刻を告げる鐘が鳴る。
学園の中庭でお坊ちゃんたちを待つ。
俺の姿を認めたのか、先に帰って休ませていた生徒達、
それと上級生が集まってきた。
全員既に平服だ。
「あの子達に、何かあったんですか?
あまりに遅すぎます……」
ユングヴィの上級生だ。弟が心配か。
この見世物の辛さを覚えていたか。
流石に直系の汚点は隠すべきだ。
「あいつらがノロマなだけだ」
「アゼル様とユリス様はご無事ですか⁉」
こいつは、今年の生徒だったはずだ。
騎士科で中心的に動いていた。
「王都を燃やすって言ってたぞ」
「教官、それは言いすぎです‼」
「……いや……でも……いいのです。
疲れて心にもないことを言ってしまったのでしょう。
そうに違いない」
……こいつも苦労させられてるのか。
夕日の向こうから、不揃いな5つの影が近づいてくる。
随分時間がかかったじゃないか。
「帰って来た‼」
駆け寄ろうとする桃色の上級生。
「待て。
あいつらに訓練を達成させてやれ」
俺に黙れと吐いたんだ。それくらいはやって見せろ。
―――――
「そこに立ってろ。
指示があるまで休むな。それが兵だ」
「随分遅かったな。他の奴らは昼過ぎには帰って来たぞ」
他の連中のための見世物だ。
これが有れば、他もガキどもを認める。
「ピクニックは楽しかったか⁉
俺は随分待たされたぞ」
「戦場ならこの後に戦闘だ。
赤女、お前はそれで戦えるのか‼
答えて見ろ‼」
「無理です」
声が掠れている。無理もない。
「声が小さい。大声で‼」
「逃げます。時間稼ぎも出来ないので」
「なぜ剣を選んだ‼」
「確実に行軍を達成するためです」
「そうか、それでこのざまか‼
初陣は随分楽だったんだな‼
言ってみろ‼」
「暗黒教団相手でした。
ファラフレイムの前に立って吹き飛ばされました」
……?
「……意味わからん。
仕方ねえから許してやる。
休め‼」
一斉に崩れ出すガキども。
「行軍の後、何をするか教えてやる。
まずは足の確認だ。靴を脱げ」
のろのろしやがる。
「おい、突っ立ってるなら手伝ってやれ」
お嬢ちゃん達には上級生が、男たちには同級生が集まった。
水筒から水を飲ませている。
「血が出てないか確かめろ。出てたら直ぐに治療しろ」
どの足も赤くはなっている。だが、出血はない。
……全く、聖なる血は恐ろしい。
「足を乾かせ。風に当てておけ。
布では拭くな。皮がむける」
「そのまま足を伸ばせ。ついでに腿や腰も叩け。
戦場なら翌日も歩く。生きてればな」
ガキどもは動けていない。
周りの奴らがやってやってる。
「落ち着いたら、飯を食え。
キツくても、絶対に食え。
さもなきゃ、生きて、生き残れない」
「以上、解散。好きにしろ」
背を向けて、中庭から立ち去る。
若者たちがにぎやかにガキどもの面倒を見てやっている。
それでいい。
該当の武器レベルが一段上がっている。
最軽量の装備。神器のステータスボーナス込みでも攻速3位。
聖戦の系譜では特定のスキルか条件が整わないと必殺が発動しない。
FE的には強い主人公の走り。この人だけで序盤はクリアできる。
エスリンの婚約者。
原作で大陸一の騎士団とされるクロスナイツを率いる。