ファラの聖戦 ~椿油和え~   作:AKI久

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弓家は減収傾向 ―グラン歴754年

足の痛みが無くなった頃、外出許可が僕たちに与えられた。

学校にも慣れ始め、多少のゆとりがあっても良いと判断されたかららしい。

ただし、学園区画だけに限られている。

 

外出と言われても、これまでしたことが無いからよく分からない。

姉さんとティルテュに会いに行く以外で屋敷を出たことがない。

それも馬車に乗せられて揺られるだけだった。

 

王都とヴェルトマーの邸宅を移動する時もワープだった。

外の道を歩くのは、どんな感じなんだろう?

よし、聞いてみよう。

 

「リデールさん、聞きたいことがあるんだ」

 

ロートリッターで頼りになる人だ。

兄さんに神器の管理を任されたこともあるって聞いてる。

 

「なんでしょうか、アゼル様」

 

「外出なんだけど、何をすればいいのかな?」

 

「なかなか難しいことを聞かれますな。

ただ街中を歩き回る、

それだけでも気が晴れるものです」

 

そういうものなんだ。

 

「本来なら、護衛を買って出るべき所です。

ですが、ご自分で街を探検する。

その楽しみを奪うのは忍びありません。

他の騎士には内密にお願いしますね」

 

「探検……探検かぁ」

 

屋敷には様々な探検小説があった。

 

騎士を勇者にする精霊の湖。

恋を求める戦士に速さを授ける岬。

 

秘境を切り開いていく。

そんなロマンをこの王都でも味わえる‼

 

よし、ユリスと行こう‼

 

「アゼル様、もしやユリス様を誘おうとなされていませんか?」

 

「すごいや、リデールさん。

ちょうどそう思ってた」

 

「……それはよろしいのですが」

 

そんな顔をするほどの何かがあるのかな?

 

「男同士というのも乙なものです。

そこで見つけたものをユリス様に披露されてはいかがでしょうか」

 

確かに。

ユリスには驚かされてばかりだ。

たまには、こっちの番だ。

 

「おいおい、面白そうなこと話してるじゃないか。

置いてきぼりなんて水臭いぜ」

 

「レックスが居れば心強いね。

アンドレイ、君も一緒に探検に行かない?

探検には斥候が居なくちゃ」

 

「僕は遠慮する。訓練で忙しい。

精々僕のために情報を集めてきたまえ」

 

アンドレイに頼られちゃった。

 

「分かった。

今回は、僕たちが斥候だね」

 

情報をしっかり集めよう。

 

「アゼル様、お小遣いはお忘れなく。

それと所持金は複数の場所に分けてお持ちください」

 

リデールさんがそう言って、送り出してくれる。

 

―――――

 

僕たちは走って校門を潜り抜ける。

 

振り返れば、士官学校がそこにある。

本当に、出ちゃった。

 

なんだか空が明るくなった気がする。

 

「早速帰りたくなったのか?」

 

「違うよ。

初めて自分の足で外に出たから、なんか不思議な気分」

 

「行軍で嫌になるほど外に行っただろ。

まあ、俺も分からなくはないさ」

 

「レックスも初めてなの?」

 

「いいや、何回かうちから抜け出したことはある。

直ぐに見つかって、連れ戻されたけどな」

 

「なら、正式な外出は初めてだ。

とりあえず、あっちに行こう‼」

 

「それより人が多い所にしよう。

そっちの方が、何かある確率が高い」

 

―――――

 

それから、街の中を歩いて回った。

気になる店を見つけるたびに、入っていく。

 

赤い髪の店員さんが目を引く預かり所*1

戦闘用の武器や装飾品を預かってくれるらしい。

 

街中を歩く時、多くの装備を持ち歩くわけにいかない。

だから、その時に利用してね、って店員さんに教えてもらった。

 

僕は魔導士だからあんまりお世話になりそうにないなぁ。

そもそも、武器って家や訓練場に置いておくよね。

 

次に占い屋*2

おじいさんが僕の顔を見るなり、告げてきた。

 

「エーディンのことが気になっているようじゃ」

 

ズバリ的中させられてしまった。

……まだ誰にも言ってないのに。

 

占いって当たるんだ。

街にはすごい人っているんだね。

でも、お金払わなくていいのかな?

 

それに闘技場*3

ここは士官学校生が近いから、平均的な質が高いらしい。

だから、予想が難しくてヒリつくっておじさんが言ってた。

賭け事はいいかな。お金はあるし。

 

それに、参加者は勝てれば賞金がもらえるらしい。

レックスは参加したそうだった。

 

今の僕だと勝ち抜けそうにないや。

まだ戦いながら魔法が使えない。

兄さんなら出来るんだろうな……。

 

よし、帰ったら訓練だ。

 

―――――

 

一通りの店を見て回った後、レックスが切り出してきた。

 

「秘密基地って憧れないか?」

 

「すごい憧れる」

 

山中の洞窟。

引き潮でしか通れない道の先にあるアジト。

どれも、心が躍る。

 

「先輩から聞いたんだが、

俺たちみたいなのはそれぞれが王都の中に作るらしい」

 

そうなんだ。

ってことは、今までも見かけたのかもしれない。

街中に隠すって言うのは新しい視点だ。

 

「いいね‼

建築はどこにお願いしようか?

王都ならヴェルトマー邸を作ってもらった所が頼れると思う」

 

兄さんに相談しなきゃ。

……でも、兄さんも驚かせたいな。

 

呆れたような声のレックス。

 

「はぁ、お前にはロマンが足りない」

 

「そんなことないよ‼」

 

「いいか、作るんじゃない。

見つけ出して、秘密基地にするんだ」

 

「そんなの押し入り強盗じゃないか⁉」

 

基地は欲しいけど、犯罪は駄目だ。

 

「おいおい、人聞きが悪いなぁ。

一体何を想像しているんだ」

 

「だって……建築せずに基地を手に入れるんでしょ?」

 

「物騒だな。店を探すんだ」

 

「店?

さっき色んな店を見たじゃないか」

 

どの店も秘密基地らしさは無かった。

 

「秘密基地ってのは、秘匿されなきゃならない。

だから、個室かそれに近いものがある場所じゃなきゃならん」

 

……長い時間居ても問題ない所ってことだね。

 

レックスが肩を回し、身体を伸ばす。

 

「探すなら、本気でやるぞ。

覚悟はいいか?」

 

僕も軽く跳ねて、走る準備をする。

 

「ここからが本当の探検の始まりってことだね」

 

「勿論だ、らしくなってきたな」

 

―――――

 

人通りから離れた、日の光も差し込まない裏路地。

 

「こういう小道に”本物”はあるんだよ」

 

路地の入口にいる猫に睨まれた。

 

「いや……これは危なそうだよ」

 

「男は度胸!何でもためしてみるのさ」

 

奥から何かが壊れる音。

急いで僕たちは引き返した。

 

―――――

 

女子生徒に人気の製菓店。そうユリスが言ってた。

紅茶と甘い香りが心をほぐしてくれる。

笑い声と楽器の音も聞こえてくる。

破壊音じゃない。

 

「ここならおやつも食べれていいんじゃない?」

 

レックスが半目で睨んでくる。

 

「お前、

もしかしてエーディン先輩へのプレゼント探しをしてるんじゃないだろうな」

 

「違うよ‼

でも、ここだっていいでしょ。

焼き菓子も美味しいし」

 

……これからそれも内緒で探そう。

 

腕を組んで真剣な顔。

 

「明るすぎる。

もうちょっと……こう……影があった方がぽいだろ」

 

「たしかに」

 

ここには、秘密感が無い。

 

―――――

 

個室のある書店。

膨大な本が影を落としている。

読書のために長くいてもいい。

軽食もある。完璧だ。

 

「ここは⁉

静かで、落ち着いていて……何というか、ぽいでしょ」

 

「確かにぽい。

秘密基地として悪くない。

でも、本に囲まれてると腹が痛くならないか?」

 

「レックスが食べ過ぎたせいでしょ‼」

 

「お静かに」

 

睨まれちゃった。

 

「「ごめんなさい」」

 

「ここは、俺たちにはまだ早い。

もう少し、羽を伸ばせる所がいいな」

 

賛成。

 

―――――

 

夕闇に包まれながら、学園に帰る。

足が重い。

 

「結局、見つからなかったな」

 

「……うん。

何回も注意されちゃったね」

 

「財布、すられたな」

 

「……うん。

リデールさんの言う通りにして良かった」

 

「暫く、行けないな」

 

「……うん。

もっと外にいたいね」

 

学園の門に着いてしまった。

ここを抜けた時は、あんなにワクワクしたのに。

 

初めての外出がこんな風に終わっちゃう。

もっと、なにかすごいことが起きて、

乗り越えて終わると思ってたのに。

 

……そうだ、門限も初めてなんだ!!

 

レックスに呼びかける。

 

「秘密基地が簡単に見つかってもつまらないよね」

 

「……お前の言うとおりだな」

 

「これは俺たちの探検で、秘密基地なんだ。

簡単に終わるほど安くないよな」

 

「大変なのも探検っぽいよね!!」

 

「ああ‼

次は何をするか分かってるよな⁉」

 

「情報集め!!

僕はクラスで聞いてみるよ」

 

「俺は先輩だ。

直系ってのはどこもいけ好かないと思ってたが、先輩たちはサッパリしてる」

 

「よし、僕たちの探検はこれからだ!!」

 

守衛が僕たちを見つめている。

少し、恥ずかしい。

 

走って、食堂に向かう。

 

訓練と探検の準備。新しい目標が見つかった。

外出ってすごい。ユリスに話したいことがたくさん増えた。

*1
通常プレイならそれほどお世話にならない施設。

シリーズ恒例の人物がいる。

*2
カップリング状況や戦歴を確認できる施設。

*3
ここで金策とレベリングを行える。

聖戦では負けてもキャラロストしない。

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