ファラの聖戦 ~椿油和え~   作:AKI久

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登場人物が多いので後書きに載せておきます。

原作3章の簡単な流れ

・シャガール王(盟主)、停戦期間を破り駐留していたシグルド軍を攻撃。
・シグルド軍とエルトシャンが戦うことになる。
・シグルド軍、北アグストリアの平定。
・北の小島を拠点とする海賊が火事場泥棒。
・シグルド軍、海賊討伐を実行←今ココ


意味が分からない ―グラン歴758年

略奪に向かった海賊たちは討伐済み。

後は根城に残る大将を討ち取れば終わり。

 

シグルド様を早く休ませてやりたい。

親友のエルトシャン様が死に、嫁さんが突然行方不明*1

あの人には不幸が襲い掛かり過ぎだ。

 

この戦争が終われば探しやすくなる。

その手伝いのためにもさっさと終わらせないとな。

 

だが、悲しいことだけじゃない。

アンドレイの姉貴が見つかった。

エーディン様が神器イチイバル*2を渡したことで記憶を取り戻したらしい。

神器ってのは何でもありだな。

まさか、海賊の親分をやってるとは思わなかったぜ*3

 

「ドバール、これで終わりだよ!!」

 

ブリギッドの掛け声で、仲間と城から離れる。

巻き込まれたら溜まったもんじゃない。

 

後方から轟音が聞こえたと思ったら、横からの爆風に煽られる。

聖弓の一条が城壁ごと抉る。

海賊の頭目らしき男の原形すら残っていない。

俺でも2発耐えられればいい方だな。

 

神器はおっかないぜ。

立ち向かうなんて馬鹿がすることだ。

皆、開いた口が塞がらない。

 

仲間になったってのに、ブリギッドに近づこうとする奴はいない*4

 

―――――

 

アグストリア住民を刺激しないよう、

制圧したばかりのオーガヒル城にシグルド軍が集められる*5

 

シャガール王どころか、エルトシャン先輩までやっちまったんだ。

この国の民はさぞ俺たちを怖がっているだろう。

半年間滞在した南の村々は俺たちの事を知っている。

だが、今回征服した北半分にとっては恐ろしい集団だろう。

 

……シグルド様たちにあの誓いを破らせちまった。

エルトシャン先輩、あんた馬鹿だ。

 

だが、命を賭して主君に諫言する。

その姿勢は騎士だった。

自分の道を貫き通す、格好良かったぜ。

貴方は間違いなくいい男だった。*6

 

「一体なんなのよ~!!

もう、やんなっちゃう!!」

 

場違いな叫びだ。

聞き覚えがある。

だが、ここにいるはずが無い。

 

―――――

 

周りの奴らと声の方へ顔を向ける。

 

長い銀髪を上で結わえた女。

魔法兵らしい薄手の格好だ。

 

やっぱりだ。

 

「あ~!!

レックス!!」

 

こちらに大きく手を振って駆けてくる。

仲間たちは武器に手をかける。

ジャムカ*7は既に弓をつがえている。

 

「大丈夫だ。俺の同期だよ。

シグルド様だって知ってる」

 

皆武器を下ろしてくれた。

このタイミングで来るということは、使者かなにかだろう。

ユリスに付いてきたってとこか。

 

「エーディン先輩もいる!!

なんかワイルド!!」

 

俺からブリギッドに対象を変えた。

走って跳び着こうとするティルテュ。

頭を引っぱたかれた。

 

「あたしはブリギッドだ!!」*8

 

双子なせいで見分けがつきづらい。

しかも数年ぶりの再開だ。

間違えるのは仕方ない。

誰だってそうなる。

 

「痛い!!

海賊の次は何よ!!」

 

近づいてフォローしてやるか。

 

「双子の姉貴だってよ。

学園で聞いただろ*9

神器を受け取って思い出したんだってよ」

 

雷娘は思い出すように空を見つめる。

ブリギッドは拳を構えている。

 

突然、ブリギッドの拳を両手で握りしめた。

 

「良かったね!!

エーディン先輩も心配してたのよ!!」

 

風切り音を立てながら、上下に振る。

神器持ちに気圧されないのかよ。

お前すごいな。

 

「う、うん」

 

元海賊の棟梁が押されてる。

こいつはストレートで警戒するのも馬鹿らしくなる。

ま、こんな時に居れば空気も和らぐな。

 

「ティルテュ!?

なんでここに!?」

 

アゼルも来たみたいだ。

シグルド様たちも側にいる。

皆の前で説明させるか。

 

―――――

 

ティルテュがアゼルに駆け寄る。

アゼルも走って近づく。

幼馴染なんだ、心配してたんだろう。

 

「ユリスの分!!」

 

そのまま跳び蹴りを食らわせた。

両足がアゼルの腹に刺さっている。

 

こいつも体力が付いたんだな。

卒業後も訓練をサボってなさそうだ。

 

「っうぐ!!」

 

アゼルは汚い声を上げて倒れた。

周りの奴らが扱いに困ってる。

仕方ない、俺が場をまとめるか。

 

ティルテュの横を通る。

倒れたアゼルに近づき、屈んで手を差し出す。

アゼルが俺の手を掴む。

 

「家出のバチが、ついに当たったな」

 

顔を逸らされた。

 

「諸悪の根源!!

成敗!!」

 

ケツが蹴り上げられる。

不意打ちで、息がもれそうになる。

 

「痛ったい!!

固すぎんのよ斧野郎!!」

 

アゼルを押しつぶしそうになっちまった。

地面に背中を預け、ティルテュに向かう。

 

「随分なご挨拶じゃねえかパチパチ娘!!

なんでこんなとこにいんだよ!!」

 

腰に手を当て、踏ん反りかえって宣告しやがる。

 

「真実探求の護衛よ!!」

 

何言ってんだ、こいつ。

 

だが、こんなやり取りも久しぶりだ。

暗くなった軍には、ちょうどいい。

 

―――――

 

後ろから声がする。

 

「ティルテュ、君が来ているとはな」

 

首脳陣が揃っていたか。

 

「キュアン先輩!!」

 

俺たちだと分が悪い。

他の奴に事情を聞いてもらうとしよう。

 

アゼルとアイコンタクトをし、身を縮める。

 

「一体何があった。

君は理由もなく暴れる女性ではなかったはず。

ここにいる理由も含めて説明してくれ」

 

助け船を出してくれたな。

頃合いを見て、さり気なく逃げよう。

ゆったりと這ってティルテュから離れる。

 

「シグルド先輩の冤罪を晴らすために、神父様と聖地に行ってました。

そこで真実と神器を授かったみたい。きたない杖だけど*10

帰りに海賊たちが襲ってきたのであたしがやっつけちゃいました」

 

俺たちのマントが踏みつけられる。バレたか。

それにしても、なんか色々ヤバイこと言ってないか?

 

「なんだか城が騒がしかったから来たら、脱走兵を見つけて制裁しました」

 

俺たちを睨みつけ、踏みにじってくる。

 

「……君は相変わらずだな。

つまり、エッダ家の当主と共に来たということか。

ユリスはいるのか?」

 

仲間たちのざわめきが聞こえる。

……ああ、クロード神父のことか。

 

確かに、教会の頂点がこんな所にいたら驚くよな。

しかもここには、聖地ブラギの塔がある。

そのお方を間接的にでも守れた。

これ以上の名誉は滅多にない。

 

「ユリスは居ません。お仕事で忙しいみたい。

最近はなんか家から出られないらしいよ。

お茶会する時間もないみたい」

 

あいつは王の使者として飛び回っていたはず。

それなのに、ヴェルトマー家に居続ける。

なにかがあったに違いない。

 

普通なら妊娠を疑うところだが、

こいつが知らないのはあり得ない。

隠せるはずもない。

 

でっかい失敗をしたか。

いや、そんな奴じゃない。

第一、失敗した使者は命で償う。

 

あの家は怖すぎるぜ。

アゼルを見てると忘れちまう。

 

「あたしは神父様の護衛をかって出たの。

……お姉さまには内緒にして。

今度の巡礼祭には、絶対参加しようね」*11

 

「おめえも家出じゃねえか!!」

 

勢いよく立ち上がる。

マントに足を取られたティルテュが尻もちをつく。

形勢逆転だな。

 

俺たちは変わんねえな。

毎回祭りになると抜け出してる気がする。

あとはユリスと弓野郎が居れば、大脱出-エクソダス-の再演だ。

 

「流石にそれは……まずいよ。

姉さんも心配してる。

シグルド様に頼んで伝令だけはだそう」

 

アゼルが正論でなだめながら、立ち上がらせる。

 

クロード神父が誘拐犯と間違われかねない。

最悪、駆け落ち扱いで嫁の貰い手がなくなる。

 

「アゼルもやったじゃん!!」

 

それを言われたら立つ瀬がない。

俺たちは顔を逸らすしかできねえ。

 

「それはともかく、神父様を守ってくれたのね。

よく頑張ったわね。初陣もまだだったでしょう?」

 

ティルテュに近づき、頭を撫でるエスリン様。

 

レンスター夫婦には助けられっぱなしだ。

 

「うん!!

怖かったけど、頑張った!!」

 

満面の笑顔だ。

 

よく見れば、ローブの所々に切り傷がある。

胴には深い切り込みまである。

神父が杖で直してくれたんだろうが、踏ん張ったんだな。

 

というか、こいつ初の実戦が護衛かよ。

なかなか重いな。

 

「すごいじゃないか。

教主をよく守り切った」

 

キュアン様の発言で、仲間たちも湧き立つ。

 

「すごいねティルテュ!!」

 

アゼルが素直に褒める。

なら、俺は戦士らしくやってやる。

 

気づかれないよう、照れているティルテュの背後に回る。

手を下から上に上げるジェスチャーで周りの奴らに伝える。

 

アゼルも気づいたか。

少ない語彙で褒めちぎって、注意を引いている。

 

仲間たちも足音を立てず、にじり寄る。

それを確認し、俺はゆっくりとしゃがむ。

アゼルはさり気なく、ティルテュの横へまわる。

 

「お祝いだ。飛んで来い!!」

 

膝裏と肩を捕まえ、そのまま真上に放り上げる。

跳び上がる勢いも乗せたおかげで、想像より高い。

 

「うぇ〜え!!

なんで!!なんで!!なんでぇ~!!」

 

なっさけない。

 

キュアン様も駆け寄ってきた。

胴上げに参加するつもりだ。

いつの間にかシグルド様も横にいる。

 

周りには投げだされた武器が転がっている。

ゲイボルグまで大地に刺さってる。

剣、槍、斧、弓まるで激戦の跡地だ。

 

何度も悲鳴を上げさせているうちに、

楽し気な声になってきた。

 

どんどん仲間たちも集まってくる。

 

ジャムカも受け止めるのに参加してる。

こいつ、結構ノリいいよな。

 

他の奴らも俺たちを見て笑ってる。

レヴィン*12なんて楽器まで持ち出して囃し立ててくる。

 

壁を作りがちなアイラ*13も、エーディン様と微笑んでる。

沈んでいたラケシスも楽しそうだ。

 

ブリギッドも困惑混じりだが、まんざらではなさそうだ。

 

血なんて関係ない、こんな緩さが気に入ってる。

家を出て正解だったな。

 

「皆さん……楽しいのは分かります。

ですが、肝心のクロード様はどちらに?」

 

うちのチビ軍師、オイフェ*14の発言で思い出す。

 

投げ飛ばす手が固まる。

皆、周りを見渡す。

 

あの長い金髪を持つ男性は見つからない。

最重要人物が居ない。

 

地面との衝突音。

鈍い音と汚い声。

うめき声だけが聞こえる。

 

遠くから、声変わり前の高い声が聞こえてくる。

 

「おぉ~い。

おいら、お客さんを連れて来たよ~。

シグルド様に用があるんだって~」

 

こいつ、護衛対象を置いてきやがった。

デュー*15が居なきゃ放置のままだったのかよ。

 

靴先で小突くとうめき声が帰って来る。

*1
原作3章途中で息子を置いて居なくなる。

*2
弓の神器。ウル直系しか使えない。

原作では物理威力が同率トップ。

*3
原作でこのようになっている。

*4
ブリギッドはドバールに海賊団頭目の座を追放された。

彼女は義父の方針を継ぎ義賊らしい行動を部下に課したせいで、反逆された。

*5
この海賊の城を制圧すると3章クリア。

*6
ラケシスでエルトシャンに話しかけると形見を渡してこのように行動する。

さもなくば、大量の騎兵と魔剣ミストルティンを相手にしなければならない。

*7
ヴェルダンの王子。囚われのエーディンを逃した。

*8
ブリギッドの一人称は登場した原作3章内でも若干変わる。

本作ではあたしを採用。

*9
幼い頃、家族とはぐれたところを海賊に保護され、生き分かれになった。

ユングヴィ一家は海賊に攫われたと思っていた。

*10
原作でもそんな感じのことを言う。

唯一ステータスにボーナスがかからない神器。

*11
雷上級魔法トローンを持ってくる。アゼルは初級のファイアー。

*12
神器フォルセティの継承者。

国を飛び出していた所、流れでシグルド軍に加入。

*13
イザークの王女。FE的には元祖ソードファイター。

*14
バルド傍系。幼いため戦闘ユニットではない。

*15
盗賊。ゲーム的にとてもお世話になる。




ティルテュ虐は用法容量を守りましょう。

全員載せると多すぎるので一部だけです。

ブリギッド
https://guide.fire-emblem-heroes.com/03002001000551-2/

シグルド
https://guide.fire-emblem-heroes.com/03001001000177/

キュアン
https://guide.fire-emblem-heroes.com/03007001000286/

レヴィン(シレジアの王子)
https://guide.fire-emblem-heroes.com/03010001000287-2/

ジャムカ(ヴェルダンの王子)
https://guide.fire-emblem-heroes.com/03009001000284-2/
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