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ディアドラ
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昼下がりの日差しが、並んでいるドレスを照らす。
暑くなってきたのに、このどれかを着るのかぁ。
いつもなら、お勉強か魔法の練習。
それかアルヴィス様とお茶をしているのに。
今は支度室でユーちゃんに待たされている。
朝からご飯が少なめだった。
お昼だって、なんだかパサパサしたものばかり。
扉を開けて、頑丈そうな鞄を持ったユーちゃんが入ってきた。
「ユーちゃん、お茶にしようよ」
ユーちゃんは鏡台に鞄を置いて、中身を確認している。
宝石がたくさんある。キラキラしている。
「駄目。後で苦しい思いをすることになる」
きっぱり断られちゃった。
喉もちょっと乾いてるんだけどな。
「王様と会うのって大変なんだね」
お腹をさする。
必要とは言われたけど、嫌だな。
「今日は楽な方」
ユーちゃんがコルセットを振ってる。
重い生地が擦れる音がする。
「一番きついのは数日こんな感じ。
その時、ヒルダ様は介護されてた」
よく名前が出てくる人だ。
アルヴィス様のお姉さんでユーちゃんの先生。
優しくてすごい人らしい。
いつか会えるかな。
でも、そんな人すらボロボロになるようなことがあるんだ。
ちょっと怖い。
「え~」
「憎いあいつも緩め。
夜は豪華な料理。
マナーだけは気を付けてね」
そう言われると悪い気はしない。
お腹がすいている分、もっと美味しくなる。
テーブルマナーだって、ユーちゃんに教えてもらった。
アルヴィス様との実践も毎日してる。
王様の目の前でも、きっと大丈夫。
「王様ってどんな人?」
そういえばどんな人なんだろう。
話しづらいとご飯が美味しく食べられない。
「情報を仕入れるのが遅い。
報告でしか会ったことはない。
見た目は、優しそうなおじいちゃん」
おでこを小突かれちゃった。
「なら、お孫さんの話題とかどう?」
家族のことなら話しやすいはず。
アルヴィス様もスラスラ語ってくれるし。
会ったこともないのに、お姉さんと弟さんが好きな果物の種類を覚えちゃった。
「いない。
公然の秘密だけど、唯一の息子がこの間亡くなった。
止めた方が無難」
「……そうなんだ。
戦争って大変なんだね」
争いなんて遠くの出来事だと思ってた。
戦場から離れているここでも、影響を受ける人がいるんだ。
「目出度い席には合わない。
代わりに絶対聞かれる話の対策。
なんだと思う?」
ユーちゃんの準備は終わったみたい。
わたしの前に座ってくる。
明るい話題で、聞かれそうなこと。
最近アグストリアが落ち着いたってことしか知らない。
それも担当していた人たちが反乱軍になって、アルヴィス様が忙しくなった。
「今日何しに行くの」
なんで当たり前のことを聞くんだろう?
「王様に挨拶。それとご飯を食べに」
もう一度おでこを突かれる。
「婚約のご報告。
他人の恋は蜜の味。
特に、女と老人には必需品。
馴れ初めだったり、好きな所だったり」
そういうことを話せばいいんだ。
「わたしが空から降って来て、アルヴィス様を放っておけなくなっちゃった」
いつも苦しそうなアルヴィス様。
分からないけど、お仕事が忙しいだけじゃない気がする。
一緒にいる時は、優しい表情になってくれる。
こんなわたしでも、やれることがある。
そう思っていたら、プロポーズされちゃった。
「改めて聞くとユニーク。
私にも判断付かない。
……とりあえず出会いは様子見」
うぅん、他に良さそうな話題。
「じゃあ光魔法の話はどうかな?
王様も得意なんでしょ」
「悪くない話題。
ドラちゃんは光の申し子」
ユーちゃんに初めて教わった時、すぐにオーラが使えた。
その後、ユーちゃんに拗ねられちゃった。
やっぱり、記憶を失う前から慣れてたんだと思う。
「それと額の証も話していい?」
サークレットをずらして前髪を上げ、
ユーちゃんにおでこを見せつける。
そこには聖痕?がある。鏡で見た。
触っても、他と手触りは変わらない。
多分わたしも聖戦士の末裔なんだって。
ユーちゃんの背中にある物と見比べたけど、違う形をしていた。
だから、ファラの一族では無いみたい。
普通、聖痕は見せびらかしたりしないらしい。
そのせいでヴェルトマーでは、わたしがどこの血の関係者か分からないらしい。
王様ならご存じかもしれない。
分かったら、昔のわたしを知っている人とも会えるかも。
「ご飯の時なら多分。
分からなくても気にしないで。
うちは色々な家と関わりがある。
ドラちゃんがお目見えした後なら探しやすくなる」
アルヴィス様の婚約者と分かるまでは、外の人と会わない方がいいらしい。
なんでも、末裔は攫われることもあるんだって。特に女の子が。*1
イチイバルの継承者とエッダ家の女の子もそうなったって教えてもらった。
わたしも拉致の途中に無理やりワープで逃げたせいで、記憶がなくなった可能性があるらしい。
そう言われても実感がわかない。
「そろそろ準備をしよう。
今日は私も同時にする。
覚えていこう」
ユーちゃんがわたしの手を取って立ち上がる。
いつもは先に終わらせてるのに。
やっぱり特別なのかな。
ドレスもいつもより光ってる気がする。
―――――
まずは顔を洗って髪を整える。
普段はユーちゃんが手伝ってくれるのに、一人でやらされた。
やってもらうのが、気持ちいいのに……。
次はシュミーズとストッキングを着る。
いつも着ているものより手触りがいい。
これが無いと、コルセットが擦れて大変なことになる。
改めて教えてもらった。
それからコルセット。
ここはいつもと変わらない。
ユーちゃんに締めてもらった。
これをやると、自然と背筋が伸ばされる。
外食だから普段より緩め。
初めてわたしがユーちゃんのをやってあげた。
ユーちゃんは食べないから、わたしよりきつめ。
勢いよくやって、ユーちゃんを青くしちゃった。
呼吸確認は大事。
それからはわたしの準備を優先する。
パニエやドレスの着用、それからお化粧を施される。
わたしはあんまり動かないから楽ちん。
大きな宝石の付いたネックレスやブローチを各所につけられる。
一気に重くなった気がする。
会う直前に付ければいいのに。
そして、髪を結いあげてもらって完成。
普段は下ろしたままだから新鮮な気分。
最後に全体を確認してもらう。
襟やドレスの皺、髪型が崩れてないかを確かめるんだって。
―――――
ユーちゃんは外から侍女の人を呼んできた。
指示をしながら手伝ってもらって準備を終わらせてた。
わたしよりスカートが短くていいな。
そうしていたら、出発の時間。
馬車に乗って行くって聞いてる。
窓から見える、あの大きなお城に王様が住んでるんだって。
馬車に乗るのは初めてだから楽しみ。
ユーちゃんに手伝ってもらって乗り込んだ。
裾も気を付けるよう言われちゃった。
思っていたより高い位置で驚いちゃった。
車内は意外と狭いけど、クッションは柔らかい。
それに、けっこう揺れる。
歩くよりは早いけど、徒歩の方がいい。
歩きなら車輪の音もしないし、のんびりお喋りもできる。
熱も籠らないだろうし、風も感じられる。
街並みだって、きっとよく観察できる。
ユーちゃんに窓から外を見るよう促される。
夕焼けに染まる街並みは綺麗だと思った。
色々な外観の建物があっても、どんなものかは分からないけど。
お屋敷の中では、考えられないくらい人が歩いてる。
わたしは街には住んでいなかったのかな?
しばらくすると、ユーちゃんがお城を差し示す。
普段見るよりも大きい。
それになんだか固い気がする。
お屋敷にいる方が好きかな。
―――――
お城に着くと待合室に通される。
外から足音もしないし、
お城にはユーちゃんと二人きりみたい。
ここでアルヴィス様が迎えに来てくれるのを待つ。
待っている間に、もう一度最終確認をされる。
そんなにしなくてもいいんじゃないかな。
わたしはおとなしくしていたよ。
離れてわたしの全体を眺めているユーちゃんが、真剣な顔で声をかけてきた。
「ドラちゃん、真面目な話をする」
「どうしたの?
マナーなら大丈夫だよ」
近づいて、重いネックレスの位置を直してくれる。
「それは心配してない。
婚姻について。無理してない?
もし、そうなら言って。
子供を産んだ後なら、自由になれるようにする」
もう一度離れていくユーちゃん。
指を構えて、片目をつぶって確認している。
赤ちゃんのお世話もしてみたいし、
わたしが教わったことも伝えたいな。
「わたしは子供を育てたいな」
赤ちゃんのことはヒルダ様から教えてもらおう。
「……アルヴィス様のこと。
状況的に、他の選択肢が無かった」
またユーちゃんが近寄ってきた。
今度は袖みたい。ちょっとズレてたかな。
「ユーちゃんはプロポーズされた時も言ってたよね」
……もしかしてユーちゃんの気持ちを踏みにじっちゃってた?
「アルヴィス様のこと、好きなの?」
ユーちゃんがしゃがんで、見上げてくる。
「大好きだよ。
面倒臭い兄さま。
その癖、責任感だけは人百倍」
優しい顔。
わたしを撫でてくれる時みたい。
ユーちゃんはアルヴィス様のことも大切なんだね。
「いつも苦しんでいる所ばかり見てきた。
だから、出来れば初恋は綺麗なまま成就されてあげたい。
でも、ドラちゃんにも押し付けられる窮屈さは、出来るだけ味あわせたくない」
わたしの目を見て伝えてくる。
動きは止まってる。
「大丈夫だよ。
わたしもアルヴィス様のこと支えてあげたい。
何も出来ないけど、隣にいることだけで安らいでくれるならそれでいい」
しっかりと目を見て気持ちを伝える。
ユーちゃんなら、これで分かってくれる。
「ありがとう。
……不倫だけは止めてね。
本当にそれだけは駄目だよ」
ユーちゃんは心配性だね。
ドレスの裾を直してくれた。
馬車に乗り込んだときに変になっちゃったかな。
「しないよ~。
お館に居るんだから、他の人と会うこともないし」
「間男はどこから忍び込んでくるか分からない。
監獄にも入り込み、心と身体を盗み出す」
そんな人いるわけない。
「怪盗みたい。
小説の読みすぎだよ」
ユーちゃんのおでこを突く。
しゃがんでいるからやりやすい。
今日はやられてばっかりだったから、お返し。
「しつこかったね。ごめん」
最後に手袋を上げて終わり。
「時間まではあんまり動かないで」
―――――
少しすると、アルヴィス様が迎えに来てくれた。
王様の個人的な書斎に通される。
王様の机は綺麗で、アルヴィス様のみたいに書類が無い。
お仕事が出来るんだろうな。
アルヴィス様のお手伝いをしてあげてほしい。
予め教えられたように、アルヴィス様のななめ後ろに立つ。
ユーちゃんは一番後ろ。
顔を上げると、眉毛まで真っ白なお爺さんが居た。
立派なお鬚も白い。
これが王様なんだ。
偉そうな感じがそんなにしない。
ユーちゃんの言っていたとおり、優しそう。
どこかなつかしさを感じる気がする。
椅子に身体を預けたまま。
顔色もよくないし、体調悪いのかな?
「陛下、私の婚約者を連れてまいりました。
ご報告が遅れてしまい、申し訳ございません」
どこかぼーっとしている王様。
「……ああ、それは構わない」
「ご挨拶差し上げろ」
アルヴィス様が小さく手を動かして、わたしを促す。
彼の少し前に出て、ご挨拶差し上げる。
「ディアドラと申します」
カーテシーも揺れなかった。
練習した甲斐があったね。
「……おまえは、クルトを知っているか」
王様が目を見開いて、わたしを見つめている。
なんだか驚いてるみたい。
クルト?
誰だろう。
もっとユーちゃんに色々聞いておけばよかった。
「ならば、これについてどう思う」
机から一冊の魔導書を取り出した。
自ら光を放っている。
多分、光の魔導書?
でも、あんなの見たことが無い。
どっちかというと、
アルヴィス様のファラフレイムに近い感じ。
魔力で空気が揺れているみたい。
ユーちゃんから、不用意に魔力を高めちゃ駄目って習った。
慣れない人はそれだけで怯えちゃうんだって。
王様はわたしを怖がらせたいのかな?
これが王様の力なのかな。
でも、嫌な感じはしない。
「陛下⁉」
アルヴィス様が驚いている。
こんなに大きな声を出すのは珍しい。
アルヴィス様がさっきみたいに、わたしの一歩前に出てきた。
いつの間にか、ユーちゃんがわたしの前で庇っている。
「おまえはこれをどう思う」
王様がわたしの目の前にいた。
さっきまで机の向こうに座っていたのに。
風がわたしに吹き付ける。
ユーちゃんも王様に今気が付いたみたい。
心配そうな表情で横にずれた。
なら、きっと大丈夫だね。
「明るいです?」
ピカピカ輝いているし。
「持ってみろ」
王様に魔導書を押し付けられた。
触った部分が熱を持つ。
だけど、心地がいい。外の暑さとは違う。
おでこも暖かくなってきた。
魔導書を抱きしめる。
重さなんて感じない。
身体中に力がみなぎってくる。
今なら何でもできそう。
「この子の名前はなんですか?」
王様の顔が喜びに満ちている。
さっきまでとは大違い。
「神器ナーガ*2だ。我が孫よ」
わたしのおじいちゃんって、素早いのね。
空から継承者が降ってくる、なんてミラクル。
これでナーガの継承者問題は解決ですね。
ちなみに、ドラちゃんはアゼルより約1歳下くらいです(原作設定)。