ファラの聖戦 ~椿油和え~   作:AKI久

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原作会話集を確認した限り、「神」と呼ばれる人間は一人だけでした。
ユグドラル大陸では神を用いて形容する文化は見られず、その中で“雷神”と称されるのが彼女です。
本作では、その呼び名に見合う格を意識して強者として描いています。

ゲーム的にも、命中224かつ、60ダメージを50%の確率で連続攻撃可能、さらにHP半減以下では先制持ちという凶悪性能でした。
最大HP80の環境で、こんな暴力が振るわれます。

☆100必殺確定勇者武器は内緒です。見切りを持っていないのが悪い。(ヒルダの追撃はどこへ?)

イシュタル
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セリス
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ティニー
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想定外。意思がある? ―グラン歴777年

どこからも明るい声が聞こえる。

勝鬨の余韻が、まだ残っている。

僕の心もまだソワソワしたままでいる。

 

重層的に襲い来る将を退け、聖弓を持つファバルを味方に引き込めた。

まさか、その妹のパティが盗賊をしているとは思わなかったけど。

彼の前任の継承者も、父上と共に戦ってくれていた。

レヴィンの言っていた、父上が遺してくれたものをまた一つ得ることが出来た。

 

後はブルーム王を倒せばレンスター地方の解放ができる。

神器を持つ彼には既に一度勝っている。

このままコノート城を制圧すれば、トラキア半島での戦いは終わりに出来る。

レヴィンたちは南トラキアのトラバント王を警戒しているけど、こちらを攻めてくるようなことはしないだろう。

 

これさえ終われば、いよいよ帝国へ攻めだ。

親戚のリーフ王子も力を貸してくれる。

継承者のシャナンやアレスだっている。

直ぐにでも、邪教から世界を解放できる。

 

遠くから、村人らしき人が駆けてくる。

何度も転び、それでも立ち上がってこちらに向かってくる。

 

「……か、……にげ……‼」

 

大声で何かを叫んでいるようだ。

 

火事場泥棒が出たのかもしれない。

急いで誰に行ってもらうか決めないと。

 

周囲のみんなが、僕の前に立って守ろうとしてくる。

さっきまで肩を叩き合っていたのに、武器へと手が伸びている。

僕も腰の剣に手をかける。

 

「大丈夫。僕だって強くなったんだ」

 

イザークから死の砂漠を乗り越えてここまでやって来たんだ。

ティルナノグに居た頃とは比べ物にならないくらいになった。

 

「それでも、私が間に入ります。

セリス様、それでよろしいですね」

 

オイフェは未だに心配性だ。

嬉しいけど、なんだか気恥ずかしい。

 

ようやく、声が聞こえてきた。

 

「逃げて‼雷様だ‼」

 

―――――

 

斥候を送り、状況把握に努めるようオイフェが指示を始めた。

主戦力を集め、緊急で軍議を開くことになった。

 

地面の上に簡易地図を広げ、皆で輪になる。

 

腕を組んだレヴィンが、口火を開いた。

 

「十中八九、イシュタル王女のことだろう。

雷神と称されている程、強力な魔法戦士と聞いている。

ブルーム王の娘で聖雷トールハンマーの使い手だ」

 

流石、各地を巡り情報を集めてくれていたレヴィンだ。

僕が育ったイザーク外のことは、彼が頼りになる。

 

「イシュトー王子の妹です。

ティニー、辛いだろうが人となりを教えてくれないだろうか?」

 

オイフェが彼女を見ながら、切り出してくれた。

リーダーの僕が言わなきゃいけなかったのに……。

 

「わたしを妹のように可愛がって、お母さまにも良くしてくれました。

生まれつき魔力が高く、トードの末裔や精鋭以外を怖がらせてしまうので、

限られた人にしか会わないように気を配っていました」

 

俯いているが、少しだけ声が明るい。

 

母親のティルテュさんが父上の軍に加入したせいで、家中で冷遇されていたと聞いている。

この前の戦いで生き別れの兄アーサーと再会し、仲間になってくれた。

 

イシュタル王女の人柄はとても良さそうだ。

 

風が地図の端をはためかせる。

 

「領地のマンスターでも悪い評判は聞かない。

地元住民の協力も扇げないかもしれないな」

 

冷静に状況を分析するレヴィン。

視線は地図上を動き回っている。

 

これまで、多くの人達が協力してくれた。

それが無いかもしれない初めての戦いだ。

 

「そんな人なら、帝国の所業にだって反感を持っているはず。

話せば分かってくれるさ。

僕達の仲間にだってなってくれるかもしれない」

 

剣を交えることになったが、イシュトー王子も領民から好かれていた。

恋人のライザ将軍との話だって、人々に知られていた。

 

「セリス、楽観視すべきではない。

彼女は神器を持たないとしても、解放軍の魔導士で並ぶ者はいない。

こちらは必ず継承者で対抗すべきだ」

 

レヴィンが目を細め、悔しそうだ。

今も聖風フォルセティを使えればよかったのに。

 

「わたしの予想ですが、姉様は神器を携えていると思います」

 

無意識に武器に手が伸びる。

誰もすぐには言葉を続けられない。

 

この間の戦いでトールハンマーの恐ろしさは身に染みている。

ブルーム王が繰り出す雷は、聖痕を持つ者以外でないと太刀打ちできなかった。

アレスと彼の魔剣の守りが無ければ、死者が出ていたかもしれない。

 

「姉様が来ると分かったのは、きっと先触れがあったからです。

戦場に立つときは、領民が巻き込まれないようにこうするんです。

力不足の者が近寄ると危険なので、供回りもいないと思います」

 

「それほどまでに魔力が高いんだね。

……手ごわい相手になりそうだ」

 

喉が渇く。

 

その人を倒す算段なんて、姉と慕うティニーの前では話しづらい。

 

「戦いには、わたしも行きます。

……悲しいですが、逃げる訳にはいきません。

姉様との力量差は理解しています。

ですが、同じトードの末裔です。多少は盾になれるでしょう」

 

ラクチェがティニーの震える肩を抱いている。

 

加わったばかりなのに、辛い選択をさせてしまった。

出来るだけ仲間とのしこりを残さないよう、僕がしっかりしなきゃ。

 

「セリス様、現実的な対策を考えましょう。

魔剣ミストルティンの守りで正面から圧をかけ、

その隙に神剣バルムンクで電撃的に終わらせましょう。

第二の矢として、イチイバル。

その後は、精鋭で魔法の対象を絞らせないように攻め上げましょう」

 

僕にも他の案は思いつかない。

周りを見回すと、みんなも固い顔でうなづいている。

 

そんな中、場違いなおどけた声が聞こえてくる。

 

「こんな時に言葉遊びとは、オイフェは随分老けたな。

シグルドといる時は、そんな風なことは言わなかっただろうに」

 

「なっ⁉

それは偶然です。

からかわないで下さい。レヴィン様」

 

オイフェの反応に空気が緩む。

レヴィンが帰って来てからは、オイフェも肩の力を抜けるようになった。

蜂起して間もなく帰って来てくれて良かった。

 

「そういうことにしておいてやる。

聖雷の確認をしよう。一度倒したとはいえ、甘く見るんじゃない。

私も昔、シグルド達と戦ったことがある」

 

「あの神器は、使用者に速さと絶対的な技量を授ける。

フォルセティやバルムンク程ではないが、人間を超えた速さだ」

 

つまり、シャナン以外で先手を取ることができそうにない。

 

「集団で包囲するのは効果的ではなさそうだね。

距離を詰められる僕やシャナン達だけが伏兵になる」

 

「それでいい。

たが、真に恐ろしいのはそこではない。神憑りの技術だ。

レプトールは、私達とヴェルトマーを相手に対等以上に戦い続けた。

心理的な隙を突かねば、どうしようもなかった」

 

神器の相性と数で勝っていても大立ち回りを演じられるのか。

ブルーム王を見ているとそんな戦い方が出来るとは思えない。

 

「……そうなのですか。

相手に余裕を与えてはならないのですね」

 

オイフェはその時、僕達を連れてイザークへ疎開していた。

父上と最後まで居れなかったことを、悔やんでいるんだろう。

 

「私は後方でいつでも撤退出来る準備をしておく。

その様な敵だと考えておくことだ」

 

レヴィンは善後策まで用意している。

必要だろうけど、そこまでの相手とは思えない。

 

僕達は挙兵してから一度も負けていない。

今回だって、難敵かもしれないが乗り越えられる。

 

「この作戦で行こう。

軽く見ているわけじゃないけど、トールハンマーは一度倒した相手だ。

気負い過ぎずに、みんなで勝とう」

 

僕はリーダーとして、ティニーや地元民に目を配らなきゃ。

 

―――――

 

馬を降り、精鋭部隊と共に森に隠れる。

やけに鳥の声が少ない気がする。

 

魔剣を持つアレスだけが街道の中心で馬にまたがっている。

 

コノート城方面から雷の旗を持った騎馬がやって来た。

ここからでは、最小限の武装をしているようにしか見えない。

アレスに何か声をかけている。

 

敵のはずなのに、アレスも構えていない。

何度かやり取りをして、騎馬は立ち去った。

その背を追おうともしない。

 

「姉様は、確実に雷槌を持ち出しています。

こういう時に、ああやって周囲の被害を減らそうとするんです。

多分、街道が壊れないように移動を願ったんだと思います」

 

肩が震えている。

 

「ティニー、無理はしないで。

今ならまだ後ろに下がれる」

 

自分の手を握り、呼吸を整えている。

 

「……ありがとうございます。

それでも、ここで戦わせてください。

誤りを正す稲妻。トードの誇りにかけて、逃げたりしません」

 

震えは止まっていないが、真っすぐ僕を見つめている。

それに応えなきゃ。

 

「余計な心配をしてしまったね。

一緒に戦おう。僕の背中は君に預けた」

 

「普通、そこは幼馴染の俺にでしょう。

誰も君のことを疑ったりしない。思いっきり背後から魔法を決めてくれよ」

 

おどけた声でレスターが口を挟んでくる。

弓兵なのに、今回は剣まで持ち出している。

 

誰からともなく、笑い声が漏れる。

 

シャナンが潜伏中だと注意してくるが、彼だって笑顔だ。

 

僕達なら、やれる。

 

―――――

 

遠くから人影が現れた。

胸に圧迫感が生じる。

 

マントで手元を隠す、魔道兵らしい装いだ。

 

「本当に一人で来た。ティニー、あの人でいいんだよね」

 

「はい。まだ戦う気ではなさそうです。

今からでも、気を強く持ってください。

魔力圧が来ます。息を止めないで」

 

片手で手首を抑える。

脈が速い。

 

恐れを認め、戦に臨む。

これが生き残る秘訣だとオイフェに習った。

 

「初めまして、フリージ家のイシュタルよ。

貴方が街道を封鎖した解放軍かしら」

 

戦場には似つかわしくない、挨拶だ。

 

アレスが神器を抜き放ち、返答をする。

 

「魔剣をみれば分かるだろう」

 

アレスの馬が駆け出した。

 

―――――

 

瞬間、喉を締め胸を押しつぶす重さが身体にかかる。

 

何かが乗ったのかと思い、後ろを振り向く。

仲間しかいない。

 

「来ます‼ 伏せて‼」

 

手近な草を掴む。

顔だけは相手へ向ける。

 

アレスとの空間に黒い穴が開いた。

トールハンマーだ。あそこから雷が来る。

ブルーム王のより、大きい。

 

神剣を携えたシャナンが、草むらから迷いなく駆けだす。

 

「レスター‼ 万一の時は任せた‼」

 

何を言っているんだ。

 

「伏せて‼ セリス様‼」

 

後ろからティニーに背中を押さえつけられる。

その身体に圧されて大地にひれ伏す。

 

穴へ顔を向けると、視界が白に塗りつぶされる。

 

浮遊感が身体を包んだ。

 

―――――

 

節々が、特に背中が痛い。

焦げた臭いがあたりから立ち込めている。

 

目を開けると、青空だった。

 

なんで、僕は仰向けになっているんだろう。

さっきまで森の中に居たのに。

 

ゆっくりと上半身をもたげ、周りを確認する。

 

地面は抉れ、森だった場所は無くなってしまった。

遠くに街道の残骸がある。

 

所々、仲間が倒れているのが見える。

誰も起き上がらない。

 

神器の余波で吹き飛ばされたんだ。

直接戦ったアレスは大丈夫だろうか。

早く助けに行かないと。

 

一段深く抉れた場所へ目を向けると、馬を失ったアレスが居た。

黒騎士の代名詞の鎧は無く、傷だらけで王女と向き合っている。

 

反して、王女は無傷。

シャナンも飛ばされたのか見当たらない。

 

不意打ちは失敗だ。

兎に角、態勢を建て直さなきゃ。

 

「イシュタル王女、なぜ悪政に加担する‼

聖ヘイム及び聖バルドの末裔たる、このセリスに答えてみせろ」

 

離れた位置のレスターが叫ぶ。

膝が笑い、両手を握りつぶさんばかりに掴んでいる。

 

イシュタルはアレスから視線をそらさない。

 

「俺も継承者だ。会話中に切りつけることなどしない」

 

アレスは剣先を地面に突き立て、騙し討ちをしないと体現する。

 

「時間稼ぎのつもりかしら。

でも、いいわ。付き合ってあげる。

神鳴りからは逃げられないもの」

 

王女は魔導書を構えたまま、髪を払い、レスターへ顔をやる。

 

「貴方がセリス皇子ね。

思っていたよりも、ディアドラ様には似ていないのね」

 

打開策を考えなくては。

 

「ああ、そうだ。腰の剣がその証明さ」

 

弓兵なのに、剣を佩いていたのはそのためだったのか。

影武者になる気だったんだ。

 

オイフェ……。

 

仲間を使い捨てになんて出来ない。

シャナンが戻ってきたら、一斉に斬りかかる。

それしかない。

 

ティニーが腹ばいになりながら、こちらに近づいて来る。

僕も身を隠すようにしゃがむ。

 

隠れても、身体にかかる重さは減らない。

 

「セリス様は引いてください。わたし達が時間を稼ぎます」

 

「なっ‼そんなことは出来ないよ‼」

 

口の前で指を立てるティニー。

声が大きすぎたか。

 

「姉様は手加減をしています。

地形が多少変わる程度で済んでいます。

領地が荒れすぎないように制限しているんだと思います」

 

これで……か。

 

一撃で隠れていた僕達を分断したのに。

底が知れない。これまでで最大の脅威だ。

 

「だったら、猶更引けない。

ここで決着を付けないと」

 

僕も腹ばいになり、王女の死角へ向かって動きだす。

相手の様子を伺いながら、見つからないよう慎重に。

 

他の皆も分かってくれたのか、ばれないように行動を始めた。

 

「王女は子供狩りをしないと聞いている。

貴女もその様なこと、するべきではないと考えているのではないか」

 

レスターだけは真っすぐと立ち、意識を引きつけてくれている。

汗がとめどなく流れ、声にも震えが混じり始めた。

 

「ええ……否定はしないわ」

 

「ならば、なぜ立ち向かおうとしない。

聖戦士の末裔ならば、果たすべき責務があるだろう」

 

「だからこそ、法には従わなければならない。

制度を変えるのであれば、手続き通りにしなさい。

上位者が無視する決まりを、誰が守るというの」

 

「その結果、多くの家族が悲しみに暮れている。

肉親への情が無いんだな。

人間を苦しめる法を守る道理がどこにある」

 

聞き入っている場合じゃない。

身体全体を使って、王女の死角へと進む。

 

「……ッ‼

イシュトー兄さまを殺した、貴方達が言うの‼」

 

地面に縫い付けられるような重圧。

苦しくて、顔を上げて呼吸をする。

 

彼女の逆鱗に触れてしまったようだ。

 

速度を上げようとする。

それでも、身体が思うように動かない。

 

「光の皇子、貴方のせいで多くの将兵が死んだわ。

その家族の悲しみを考えたことはあるかしら。

貴方の身勝手な振る舞いで、どれ程多くの悲しみが生み出されたのでしょうね」

 

シャナンが遠くから駆けてくるのが見える。

あと、ほんの少しでいい。

時間が欲しい。

 

「ミストルティンを構えなさい。

もう十分息は整ったでしょう」

 

王女がアレスに向き直る。

魔導書を構え、今にも戦いを再開できる。

 

「イシュタル姉様‼」

 

ティニーが飛び上がった。

膝が震えている。

魔導書を取り出すことすら忘れている

 

「ティニー‼ 生きていたのね‼

父上から失われたと聞いていたけど」

 

王女の顔は喜色に彩られている。

だが、すぐに一変した。

 

「……裏切った、のね……」

 

魔力圧が減った。

今のうちだ。少しだけ大胆に移動を続ける。

 

「ごめんなさい……」

 

「……帰って、きてくれないのね」

 

「……にいさまに出会えました。

かあさまと幼いわたしが、ブルームおじさまに無理やり連れ攫われたことも聞きました。

それなのに、虐め殺された……」

 

「……事情が、事情があったのよ。

言い訳には、ならないわね……。

ティルテュ叔母さんは、もう帰らないもの」

 

この女性には、情も正義もある。

我欲で圧政を敷くだけの人間じゃない。

 

そんな相手に隠れていたら駄目だ。

僕を正しいと信じる皆のためにも、正道を往かないと。

 

地面に拳を打ち付け、その反動で立ち上がる。

 

「僕が、本当のセリスだ‼

ティニーは下がっていてくれ」

 

王女がこちらへと視線を移す。

負けないよう、こちらも目を逸らさない。

 

「兄の仇が何の用かしら。

神器も持たずに立ちはだかるべきではなかったわね」

 

高まった魔力で、視界が揺れる。

呼吸を意識し、何度も深く空気を取り込む。

腹から声を絞り出す。

 

「貴方は尊敬すべき人だ‼

そんな人と戦うのなら、堂々とすべきだと思った。

僕の力が及ばないとしても、聖戦士らしく挑みたい」

 

「蛮地に潜んでいたのに、今更ね。

いいわ。セリス皇子、聖騎士の子に相応しい最後だったと伝えてあげる」

 

全力で駆け出す。

足が地面に引き付けられるようだ。

だとしても、踏み込む。

 

ぎんの剣を抜き放つ。

 

近づくにつれて重力が増す。

それでも、足に力を込める。

 

間合いに入る。

体重全てを一閃に乗せる。

 

これしかない。

 

届け。

 

「そこまでだ、イシュタル」

 

突如現れた女性の杖に弾かれる。

 

返す刀で斬りかかるが、杖のシャフトと鍔迫り合いになる。

そのまま腹を蹴られ、後ろに転がされる。

 

土にまみれた視界を拭い、相手を見据える。

 

王女を杖で守る赤髪の女性。

片手だけが、場にそぐわない規則的な動きをしている。

 

彼女たちの背後に、妖しい少年が佇んでいた。

 

―――――

 

少年が口を開く。

 

「イシュタル、一緒にバーハラへ帰ろう」

 

血が通っていないような瞳。

彼がいるだけで、世界が暗くなったように思う。

それなのに、どこか安心してしまいそうになる。

余計に気味が悪い。

 

王女の後ろ姿だけを見つめ、まるで僕なんて存在していないように振舞っている。

 

「ユリウス様⁉

それに、……なぜこちらに?」

 

あれが、ユリウス皇子。

母上由来の不思議な力を使うとレヴィンが言ってた。

瞬間的に現れたのは、そのせいか。

 

「こんなところで死んではならぬ」

 

状況を把握できていないのか?

 

目線でアレスとシャナンに合図をする。

会話が終わり次第、切りかかる。

 

「あと少しで終わります」

 

王女が僕に視線を戻した。

 

皇子はロプトウスの化身の息子。

何らかの闇魔法を使ってもおかしくない。

 

敵の大将の子供、悪いけど王女より優先すべきだ。

剣を握り直す。

 

もう一人の女性が、杖尻で地面を叩く。

一度、軽い音がする。

 

「殿下の御前です。お控えください」

 

凛とした涼やかな声。

赤い瞳に冷えたく見咎められた。

僕達の行動は見張られていた。

 

「私の目を見ろ、イシュタル」

 

皇子が王女へ歩み寄る。

 

「戦の最中です。ご勘弁を。

兄上の仇を討ち、お爺様から続く因縁を断ち切ります。

ここで終わらせなければ、父上まで躯を晒します。

ほんの少しのお時間をいただければ、共に旅行にだって行けるでしょう」

 

皇子の持つ魔導書から、瘴気が漏れ出る。

直視できない。本能が拒絶している。

 

王女の肩を掴み、皇子が強引に目を合わせた。

 

「イシュタル、帰るぞ」

 

背中を伝う悍ましい感覚。

王女の魔力とは違う、不快さに包まれる。

有り得ないはずなのに、皇子の瞳が黒く、蛇のように変化したように見えた。

 

「……はい、ユリウス様」

 

王女の瞳から光が消え、戦意すら失われている。

魔力の重しが無くなった。

 

お互い手をつないでいる。

 

彼らの足元から黒い光が立ち上がり、姿が消える。

杖を必要としないワープだ。

……さっきのも、これか。

 

「……この扱いは無いと思う。

置いてきぼりになるなら、先に言って欲しかった」

 

赤髪の女性だけが残っている。

この人も、継承者なのか。

 

シャナンが合図を送ってくる。

注意を引け、そういうことか。

 

彼女は無防備に僕へ近寄り、手を差し伸べてくる。

 

「痛いところはない?」

 

剣を握る僕へ、ためらいもなく徒手で屈みこんでいる。

こんな相手を、斬れるはずがない。

 

―――――

 

手を借りて立ち上がる。

 

女性にしても低めの身長に赤い髪。

戦闘用というには装飾が多く、王族の社交にしては簡素過ぎるのかも。

見た目だけなら、見習いの侍女のようにも見える。

 

……こんなことなら、オイフェの話をもっと聞いておくんだった。

僕だと服から立場を推測できない。

 

だけど、僕の刺突を防ぎ、あの魔力の重さも苦にしていなかった。

戦闘が出来ないはずはない。

剣だけは手放せない。

 

「ありがとう。君は、誰なの?」

 

「私はズィーベン。聞きたいことはあると思う。

まずは周りの回復を済ませるべき。それでいい?」

 

おもむろに腰から先ほどとは別の杖を取り出す。

大きな魔石が据えられている。

……これも何の杖なんだ。ラナが居れば分かったのに。

 

「信じられないだろうから、無理強いはしない」

 

僕の後ろに顔を向けた。

一瞬、目を見開いたように見えたが、直ぐに元へ戻った。

 

「そこの魔導士、リザーブは使える?

一時的に貸し出してもいい」

 

杖を一度回し、持ち手をティニーへ差し出している。

 

「わたしには出来ません。

ここにはシスターがいないので、誰も使えないと思います」

 

彼女の言う通り、傷を癒す方を優先すべき。

神器との対面で精神もすり減らされた。

仲間たちも吹き飛ばされて怪我を負っている。

 

この人は、僕達と敵対する気がなさそうだ。

少なくとも、今だけは。

 

「ズィーベン、お願い出来るかな?」

 

それにしても変な名前だ。

七番目なんて、偽名としてあからさますぎる。

 

彼女は一歩下がり、杖を身体の前に携える。

魔力が集まり、先端の石が輝きを持ち始める。

 

「やっぱり、お人よしだね。お父さんとお母さんにそっくり」

 

「なっ⁉」

 

僕達の周りに淡く優しい光が降り注ぐ。

目に優しく、あたたかな気持ちにさせてくれる。

 

―――――

 

吹き飛ばされた時についた擦り傷がかゆみを伴って治っていく。

確かに、治癒の杖だ。

ワープやスリープによる騙し討ちではない。

 

レスターが、神雷と対峙して消耗したアレスに肩を貸している。

外傷は無くなっても、息が整っていない。

杖では気力や体力までは戻らない。

 

柔らかな光が消え、杖石の輝きが治まる。

 

「戦争中だから1つだけ。言えることなら、答える。

代わりに、バーハラまでの通行権をちょうだい。

押し通ることもできるけど、そんな野蛮なことはしたくないからね」

 

僕達と交渉するつもりか。

味方なんて、一人もいないのに。

 

「神器は突き付けたままでいい。

直系は、それが無いと話も出来ないからね。

みっともないから、セリス様もこうなっちゃ駄目だよ」

 

彼女の背後には、バルムンクを首筋に突き付けたシャナンがいた。

遠くには、聖光を放つイチイバルも見える。

 

それが当然だと言わんばかりに、彼女は微笑を崩さない。

 

―――――

 

「こんな怪しい奴の言葉など無視すればいい」

 

「初めまして、顔が見えない人。

アイラ王女の息子?それともシャナン王子?

どちらにしても、血には逆らえないね」

 

刃が肌に当たる。

だが、出血はしていない。

神剣の技量があってこそだ。

 

「通行許可は難しい?

ダーナまで行ければ、どうにか戻れるんだけど」

 

意に介さず、僕に話しかけてくる女性。

 

……反応に困る。

 

敵対する気はなさそうだ。

今も背筋を伸ばし、僕を見つめている。

 

それでも、ユリウス皇子と一緒に現れた。

 

「じゃあ、ユリウス皇子の目的についても付ける。

セリス皇子は交渉上手だね。

あの二人の子供とは思えない。育親が良かったんだね」

 

「さっきから聞いていれば、知ったような口を叩く‼」

 

シャナンの青筋が立っている。

 

「これでも私は使者を務めていた。戦場では一秒でも惜しいでしょ。

許可が出せないなら、早くそう言ってほしい」

 

僕だけに話しかけ続けてくる。

 

バルムンクすら気にかけない胆力。

それに杖の回復量からみて魔力も高い。

魔導士としても、十分な技量があるかもしれない。

 

髪色はヴェルトマーらしい赤だ。

それなら皇子が置いて行くはずはない。

 

高度な杖の扱いに、皆を癒す程の魔力。

恐らく、エッダ家の者だろう。

宗教的に暗黒教団とは敵対しているのかもしれない。

 

「……分かった」

 

これ以上考えていても、答えは出ない。

戦う気のない相手を攻めるのは、正しくない。

 

「通行許可を出すよ。シャナンも剣を下ろして」

 

神剣が音も無く納刀される。

 

―――――

 

シャナンは相変わらず、彼女の死角に立っている。

剣を鞘に納めず、いつでも踏み出せる姿勢のままで居る。

 

「セリス様は力が強い。

手がしびれちゃった。軽く動いてもいい?」

 

「構わないよ。

そのままでいいから、皇子の目的について教えて」

 

「いい判断だね。

その方が質問権を有効活用できる」

 

腕を伸ばしたまま手を振り始めた。

対峙した時も、痺れがあったのかもしれない。

 

「帝国は、世界を統一しようとしている。

そのためにあなたたちが必要」

 

「どういうことかな。

敵対集団はいない方がいいに決まっているよね」

 

「あなたたちは、トラキアにも攻め入るつもりでしょ。

帝国唯一の同盟国を滅ぼしてくれれば、世界は二分される。

帝国か解放軍か、その二択」

 

確かにレンスターを解放すれば、トラキアと領土を接する。

だけど、攻め入る必要は何もない。

 

「そんなことはしないよ。侵略軍じゃないんだ。

レンスターを解放したら、西のイード砂漠を超えてバーハラに攻め入るつもりだった」

 

ズィーベンが手を下からゆっくりと持ち上げ、僕に周りを示す。

傷は治ったが、いまだに立ち上がれない者もいる。

 

「それは帝国の望みじゃない。

そもそも、あなたたちにとって現実的でもない。

イシュタル様一人にこの有様。力をつけなきゃ無理」

 

……今の僕達は、不足しているかもしれない。

 

「……それでも、僕達は侵攻なんてしない。

それじゃあ解放軍ではなくなる」

 

「ブルーム王が倒れた好機を見逃す程、トラバント王は穏やかではない。

条約破りをするほど愚かでもないけどね」

 

トラキア王国は、グランベル帝国には攻め入らないということか。

僕達と協定を結んで貰うことは難しいか。

 

「ズィーベンはトラキアが攻めてくると思っているんだね」

 

レヴィンにも、トラバント王を警戒するよう言われている。

帝国から見てもそうなんだ。

 

「あの貧しい国には、他の選択肢がない。

あなたたちにも同じことが言える」

 

……政局を見ている。

僕達にはあまりない視点だ。

 

「ここまでが私の知っていること。

質問はどうする?

両親のこと、ユリウス皇子のプライベートでも可。

答えられないこともあるけどね」

 

何を聞くべきだろう。

 

トラキアを倒した後の情勢だろうか。

それとも協力してくれそうな有力者だろうか。

 

ユリウス皇子のこともいいだろう。

そこから打倒する糸口が見つかるかもしれない。

答え次第で、ズィーベンの立場も推測できる。

 

口ぶりからして、父上の軍と関係があったようにも思える。

だけど、17年以上前のことで、彼女の見た目と年齢が合わない。

幼い頃、親に連れられて従軍していたんだろうか。

 

「先に通行証の用意を命じて。それが届くまでの時間を使うといい。

相談しても気にしない。それと交換で質問を受け付ける」

 

シャナンの方へ視線を向ける。

未だ油断なく、ズィーベンを警戒している。

 

「それまでは、この子達の面倒を見ておく。

武装はしたままで構わない」

 

杖で周りの仲間達を指し示している。

 

―――――

 

焦げた臭いが、まだ立ちのぼっている。

 

レスターに伝令を頼んだ。

後方で全体指揮をしていたオイフェに急いで許可書を発行してもらう。

 

その際、ズィーベンが自ら身体検査を申し出てくれた。

僕達から少し離れ、ティニーに触って確かめてもらった。

 

軍事用品は、いくつかの高位の杖と光初級魔導書だけ。

レスキューやレスト、ワープの杖、味方の補助ばかりだ。

魔導書で戦うことは出来るけど、明らかに単独での長期戦は想定していない。

暗黒教団に繋がるものも、一切見当たらない。

 

唯一、左腕の長手袋だけは外したがらなかった。

近接戦の得意な女性に見せると言ってきたから、ラクチェに任せた。

彼女が言うには、大きな縫合痕があり、見せたくないのも仕方ないとのことだ。

分けてもらった干し杏子を頬張りながら伝えてくれた。

 

「何を問うつもりだ」

 

バルムンクを鞘に納めたシャナンが声をかけてきた。

少し離れた位置でティニーに話しかけているズィーベンから、目線を外していない。

焼き菓子にも手を付けていない。

 

「迷っているんだ。最善がどれか分からない」

 

聞きたいことが多すぎる。

長々と迷っている時間も無いと思う。

 

「私はお前が決めたなら、何も言わない。

第一、あいつは怪しすぎる。真実を話すとは限らない」

 

ズィーベンはティニーの服についた土を払い、そのまま髪に触れる。

迷いのない、慣れた手つきだ。大きな二つ結びをほどき、櫛を入れる。

 

やがて、長い髪をどうするか周囲の女性と相談し始めた。

その話にラクチェは興味無さ気だ。警戒もしていない。

毒見として、次はどれに手を付けるかばかり考えているようだ。

 

そんなズィーベンの姿を見ていると、シャナンの言うようには思えない。

 

「シャナンは何が聞きたい?」

 

答えは直ぐに帰ってきた。

 

「何故アイラのことを知っているのか。

シグルド軍の中でも限られた者しか立場を知らなかったはずだ。

最終的に、私の存在が露見したとはいえ、

アイラまで王女と知られていたとは聞いたことがない」

 

「直接会っていたのかな」

 

「私も幼く、記憶に抜けがある。

だが、近しかった赤髪はアゼルしか覚えがない。

ヴェルトマーなど、最重要警戒対象だ」

 

だったら、解放軍には居なかったと考えて良さそうだ。

謎は深まるけれど、仕方がない。

 

「ユリウス皇子に置いて行かれたあたり、冷遇されてるのかもしれないね」

 

もしかしたら、ズィーベンを捨て駒にするつもりだったのかも。

 

「その可能性はある。だが、故意という線も捨てきれない」

 

「装備からして、どちらともとれる。

分からないことを考えても無意味だ。

何かあれば、切り捨てる。私がついている」

 

心強い味方がいる。

それだけで、出す答えへの迷いが消えた気がした。

 

「ありがとう。僕が一番聞きたいことにする」

 

―――――

 

ティニーの髪を整えた後、もう一度周辺を回復する杖を使い、兵士の治療をしてくれた。

解放軍で高位の杖を使えるのは、ラナとユリアしかいない。

その二人は流石に神器の相手は出来ないから、ここに連れてこなかった。

 

ズィーベンが言うには、杖より魔法が本業とのことだ。

無理やりセイジからビショップに変えられたとか。

やっぱり、ユリウス皇子に反感を抱いているのかもしれない。

 

その後は、僕達の身だしなみを整えてくれた。

櫛で軽く梳いて、砂を落としていく。

胸元や袖のズレを直していく。

 

髪を中心にしたせいで、彼女の髪油が切れてしまった。

ティニーしか持っていないことを、注意されてしまった。

 

「緊急時の栄養補給と傷の手当に使える。

解放後は政治中枢に食い込むのだから、こういうことも覚えて」

 

でも、戦場では余計な気がする。

敵を倒すのに全く役立たないのに、持っていきたくない。

口に出すと怒られそうだから、言えなかった。

 

「セリス様~、戻りました~。

オイフェさんが色んな意味で心配してましたよ」

 

レスターが帰って来てくれた。

大きく手を振っている。

 

―――――

 

ズィーベンが片目を瞑り、指を立てて僕達を見回す。

装備や見た目の点検をしているようだ。

 

「間に合わせとしては悪くない。民衆も見栄えが良い方が嬉しい」

 

そうなんだ。

勝つことにしか意識が行っていなかった。

 

「私にとっては、楽しいひと時だった。

でも、今は戦中。手早く終わりにしよう」

 

ズィーベンは警戒しっぱなしのシャナンをからかい、女性陣に手入れのコツを伝えていた。

その姿は、僕には義務的なものとは思えなかった。

 

ズィーベンが許可書を受け取り、言い放った。

 

「質問を聞かせて。あなたは何を知りたいの?」

 

「ズィーベンは僕達の敵なの?

僕には、暗黒教団の一員とは思えない」

 

驚いたような表情になった。

 

「答えづらい質問。

一般的には、その一味と見なされる。

事情があるからね。敵になるかは、状況次第」

 

明言を避けるような言葉遣い。

何か隠したいことでもありそうだ。

 

「その問題が取り除けた時、僕達の軍に加わってくれないかな。

ズィーベンは悪人には見えない」

 

少し後ろめたそう。

だけど、そう思えるということは、奥底に良心がある証拠。

 

「私はユリウス皇子の味方であり続ける。誓いを立てた。

例え、こんな風な扱いをされたとしてもね」

 

あの少年に忠義を尽くすつもりなのか。

当然のようにイシュタル王女の意思を書き換えるような男に。

人の尊厳すら奪ってしまえる、あんなものを。

 

「少しだけ、昔話をしよう。

あなたとアレス様の父親の話」

 

「共に窮地を助け合うと誓っていた。

国や立場の違いから、対立することになってしまった。

それでも、直接鉾を交えることは最後までしなかったそう」

 

「誰からその話を聞いた」

 

シャナンが柄に手をかける。

ズィーベンは顔すら動かさず、続ける。

 

「質問は一つまで。名乗らない人に答える義理はない」

 

「誓約を守り、敵対を回避することも不可能ではない。

あの三人はそれを体現して見せた。

アルテナ様がここに居れば、キュアン様たちのことも教えられたのにね」

 

リーフ王子の姉にして、ゲイボルグの継承者。僕のもう一人の親戚。

父上を救援するため出征し、キュアン夫妻と共に砂漠に消えてしまったそうだ。

 

「おい、父上をどこで知った。俺は名乗ったぞ」

 

アレスまで口を挟んできた。

さっきまで、父親とそっくりと言われていて撫で繰り回されていたから気になったんだろう。

 

「答えないよ。

代わりに、暗黒教団相手に一番重要なことを伝える。

特に、聖痕持ち以上は必ず守るべきこと」

 

「僕達に出来ることなら約束するよ」

 

僕の耳元に近づき、囁いてくる。

 

「遺体は燃やして。原形を残しては駄目」

 

そんな‼

 

「仲間を罪人と同じ扱いは出来ない。

倒れたとしても、一緒にそこまで歩んできてくれたんだ」

 

僕の大声に、シャナンが腰を落とした。

手で問題ないと示す。

 

「詳しく説明できない。

あなたがこのことを広めてもいけない。

そうすれば、教団は帝国の意思すら無視して排除しに来る。

行く先々の村の井戸に毒でも入れるんじゃないかな」

 

周りにも剣呑な雰囲気が広まり始める。

何か邪教にとって絶対に知られたくないことのようだ。

 

「交友の深かった生者と、その人自身に悲劇が訪れる。

抵抗があるなら、遺体を神器と同程度の管理にすればいい」

 

「……そんなの現実的じゃない」

 

「そうだね。これはただのお節介。

躓くかもしれない石を取り除こうとしただけ。

漏らさないでいてくれるだけでいい」

 

「後味が悪くなってしまった。

そろそろ、バーハラに帰らないと。

砂漠を渡るなんて久しぶり。道中の野盗狩りもあるだろうしね」

 

そういうと、背中を向けて歩き去っていった。

 

僕には彼女が分からない。

だとしても、何かを伝えようとしているのだと思う。

 




今回のイシュタルを見て、どのように感じましたか?
それと、何故遺体を燃やせとズィーベンは言ったのでしょうか?趣味?
他にも様々感じて頂けていたら嬉しいです。

こちらで設定は用意しています。
ですが、皆さまの思ったものが正解で良いのです。
どう考えたかを聞かせていただけると嬉しいです。
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