セリス達はイザークを出立し、砂漠を越え、レンスターを解放してきました。
解放軍の理念とトラキアの国益がぶつかり、本意ではないもののトラキア王国へ攻め入っています。
ここまで、大陸東部の制圧にかかった期間は原作でもまだ一年未満。
……なんか、父親より化け物じみてない? シグルドでも西半分に3年かかったよ?
君、本当に潜伏してた?
セリス
https://guide.fire-emblem-heroes.com/03051001000840-2/
リーフ
https://guide.fire-emblem-heroes.com/04001001000440/
アルテナ
https://guide.fire-emblem-heroes.com/03091003000474/
アリオーン
https://guide.fire-emblem-heroes.com/03091002001002-2/
馬に相乗りしていたコープルが、飛び降りる。
戦場をまだ幼さの残る少年が駆ける。
手を振り、自らの存在を必死に主張している。
その先には、神器ですら容易には突破できなかった重装歩兵群。
「父さん、もう戦うのはやめて‼
解放軍がルテキア城を制圧したんだ‼」
鉄塊の一団が、こちらに構える。
僕は剣を鞘に納め、馬上から両手を上げる。
「コープル⁉
おまえ……無事だったのか⁉」
長い髪と髭を携えた、老将軍が現れた。
無防備な彼を補うように、兵が周囲を警戒している。
指示も無いのに、一切隙が見つけられない。
親子の再会を邪魔するつもりが無いことを示すべく、僕は馬から降りる。
離れた位置で装甲兵が地面に大盾を突き刺し、僕に向けて槍を構えている。
あちらも、戦闘の意思はなさそうだ。
「うん、大丈夫だったよ。
……父さん、今までありがとう。
ぼくがどれだけ守られていたのか、ルテキア城で分かったよ」
侵略した側の僕達に村人から、ハンニバル将軍が人質を取られていると情報がもたらされた。
コープルを捕えていたディスラー将軍は、民からの人望が無かった。
確かに、ルテキア城内には他地方ほどの活気はなかった。
だけど、旧レンスター王国領を支配していたフリージ家のように、贅沢な調度品は城主の館にすらなかった。
それ程までにトラキアは疲弊している。
こんな戦いは、早く終わらせなければならない。
「……そうか」
諦めにも似た、どこか悲しい響きに聞こえる。
「ぼくは、今と未来のトラキアのために戦いたい。
昔のトラキアじゃなくて、皆のために戦いたいんだ‼」
コープルのように高度な杖を使える人材は助かる。
だからこそ、そんな少年を連れて行っていいのだろうか。
トラキアの民は傷ついている。
……それでも、僕達は戦い続けなければならない。
邪神の写し身、アルヴィスを討ち果たすまでは。
「……」
トラキアの盾が、僕を凝視している。
僕は握りしめていた手綱を放し、前に歩み出る。
ここで引けば、ディスラー将軍と同じだ。
コープルを交渉材料として扱っていると思われる。
武器を手放さなければ、相手も安心できない。
僕は、僕達は、解放軍。
侵略者じゃない。聖戦士として戦っている。
「僕はセリスといいます。
コープルを戦の道具として巻き込むつもりはありません。
我が父シグルド、そして父祖バルドに誓います」
深く皺の刻まれた眉が窄められる。
僕を見定めるように、隅々まで観察されている。
「貴殿が解放軍の首魁ですか。
このような無意味な戦、民を苦しめるだけです。
私も共に参りましょう」
兵団の槍が僕から天へと向いた。
将軍の前まで歩み寄り、その手を握る。
手袋越しでも分かるほど、厚く堅い手。
どれ程の戦場を生き抜けば、こうなるのだろう。
「名将と称されるハンニバル将軍が加わってくれるなんて、心強いです。
どうか、経験の浅い僕達をお導き下さい」
大きな羽音が響き、風が僕達に吹き付ける。
空には、一騎の竜が居た。
「私はレンスターのキュアンの娘、アルテナ。
弟のリーフ王子から真実を聞かされ、もはやあなた達と戦えなくなりました。
解放軍の一員として、地槍ゲイボルグを振るわせて頂けないでしょうか」
―――――
軍議を開くよう、ハンニバル将軍から要請された。
みんなへの面通しにはうってつけだ。
それに、彼ならばトラキア王国のことを誰よりも知っている。
前線拠点としているミーズ城に、損傷の少ない首脳陣だけを集める。
先んじて、トラキア王国には停戦の使者も送っている。
ハンニバル将軍は、まず戦の展望について語り始めた。
「アリオーン王子は、焦土戦めいた策を選ぶでしょう」
机上の地図を指し示している。
戦力差からして、戦闘続行はあり得ない。
だが、何十年にもわたり、レンスター王国どころかグランベルの侵攻すら弾き返し続け、トラキアの盾とまで呼ばれた傑物の発言。
誰もが、耳を傾ける。
「元来、竜騎兵は攻めに強く、守備には向きません。
だからこそ、私のような重装兵が鉄床となる必要がありました。
槌として飛竜を使えないのであれば、取れる手段は限られます」
その言葉で、これまでの激戦が思い起こされる。
重装歩兵に有効な魔法兵は、大山脈の向こうから襲い来るトラバント王の竜騎兵に釘付けにされていた。
お互い打撃力が強い反面、打撃には弱い。
竜騎兵に有効な弓隊を割り振ったが、あの鬣犬王にはそれだけでは足りなかった。
それどころか、なぜか神器を持ち出さない彼相手に、イチイバルの使い手ファバルとリーフ王子達レンスター勢を割かざるを得なかった。
こちらが自由に動ければ、竜騎兵への対処も楽になる。
だが、トラキアの盾率いる重装歩兵団が許してくれなかった。
頑強な鎧と、如何なる国をも跳ね返し続け練磨された兵。
そこに大陸随一の指揮官が加わり、撃退しかできなかった。
僕達の行動範囲は制限されたまま。
剣の神器バルムンクとミストルティンを用いても、将軍を突破しきれず足止めを食らった。
僕達は、図らずも侵略者側。
それに、グランベル帝国からの援軍もあり得る。
なにより、いつどこから天槍グングニルをアリオーン王子が携えて来るのか分からない。
時間をかければ、それだけ不利になる。
戦術で勝てない。
イザークで磨き上げた剣術も、オイフェから習った戦術すらいなされた。
そんなことがあるはずないと、どこかで思っていた。
僕の傲慢さを突きつけられるようで、それが何よりも堪えた。
カパトギア城の先、ルテキア城を落とし将軍を孤立させる。
そんな博打を打つしか無かった。
僕やレスターといった、精強な騎兵だけでの突貫。
重装歩兵にはない機動力を生かすしかなかった。
結果として、人質となっていた将軍の養子コープルを解放し、将軍まで味方になってくれた。
あの時、アルテナ王女まで来てくれたのには驚いた。
会話に集中していたとはいえ、あれほど近づかれるまで気付けないなんて。
重苦しい空気を破るように、フィンさんが笑みを携えて口を開く。
「トラキアの鉄床戦術ですね。
我らレンスター王国も苦しめられました。
ですが、今は矛しかない。負けることはありません」
父上の救援にキュアン王子夫妻と共に参陣し、今までリーフ王子を支え続けた重臣。
僕がコープルを解放している間に、トラバント王との決着を付けたらしい。
主君の仇を討ち、その子女を取り戻せた。
だからこそ、彼は軍議に見合わない表情をしているのだろう。
これまでの戦いでの脅威、トラバント王と将軍はトラキアに残っていない。
神器以外に恐れるものはない。
それでも、ハンニバル将軍は懸念している。
5つに神器を相手取った、名将が。
「だからこそ、第二の策を用いるのです。
アリオーン王子は、トラバント王や私から軍略を学びました。
そして、空の王者としての心意気も」
戦の論理では割り切れないことも存在するということか。
「……将軍、ですが兄上は休戦してくれないのでしょうか。
トラキアには解放軍と戦って得られるものがありません」
トラバント王に幼少の頃攫われたアルテナ王女にとっては、複雑だろう。
彼女は王のことを、父だと心から信じていた。
施策や国の方針に思う所は有ったそうだが、拉致したトラバント王を父と疑ったことはなかったそうだ。
世界からハイエナと称され、神器ゲイボルグのためにかどわかした人物とは思えない。
彼女の情報ではアリオーン王子は父に比べ、開明的だそうだ。
王の方針にも一定の理解を示しつつも、民のことを思う人物だと聞いている。
「もしかして、私達レンスターのことを気にしているのですか。
正直言えば、両親を騙し討ちして姉上を攫った国を信じ切ることはできません。
ですが、同じトラキア半島の人間を苦しめたいとは思いません。
それに子供狩りなどするアルヴィス皇帝を止める方を優先すべきです」
リーフ王子は、ついに仇を討った。
神器を持たぬトラバント王に対し、槍騎士フィンと共に挑み倒したそうだ。
そして悲しみを断ち切るべく、思いを飲み込んでくれている。
……僕も、父上の無念を晴らしてみせる。
ロプトウスの化身たる悪虐皇帝を、この手で。
「……リーフ王子は真っすぐに育たれたのですな。
だからこそ、トラバント王は未来を若者に託された」
アリオーン王子も僕達と停戦してくれるのだろう。
トラキアの民にとって、僕達に勝っても何も得るものはない。
僕達にとっては、帝国との戦を邪魔をしないでくれればいい。
勿論、仲間になってくれた方が嬉しいけど。
「国にとっては利益は有りません。
王が民と土地を守らぬのであれば、国足り得ません。
だからこそ、我らにとって難敵となる」
……僕達は、侵略者だ。
正義のためとはいえ、トラキアに踏み込んでしまった。
言い逃れは出来ない。
フィンさんが口を開く。
「つまり、戦になると将軍はお考えなのですね。
竜騎士だけで我らに勝てる算段はあるのですか。
アルテナ様が戻られた今、あちらには神器が1つしかないのですよ」
槍騎士の言うとおりだ。
だけど、大陸屈指の名将が余計な事を発言するはずがない。
それなら、別の戦力に当てがあるはず。
「……帝国からの援軍が見込めるのでしょうか?」
「セリス様、その通りです。
王都の手前を守るグルティア城を暗黒教団が守っております」
「それなら問題ない。
邪教の本拠地であったイード神殿も攻略した。
この神剣もそこから取り戻した」
シャナンが腰からバルムンクを外し、鞘に入れたまま見せつけた。
闇魔法相手では、光魔法以外の全てが有利を取られてしまう。
教団員は並みの魔導士とは比べ物にならない。
それに、皇子がイシュタル王女に使った不思議な術もある。
決して警戒を緩めてはならない。
「策とは何重にも折り重ねてこそ。
あくまで時間稼ぎでしょう。その城が落ちようが、トラキア兵は温存出来る。
解放軍は、文字通りトラキアと戦うのです」
そして、将軍は結論を告げるように締めくくった。
「私のような盾が無くとも、母なる大地が受け止める」
―――――
南トラキアは、端的に言って貧しい土地だ。
馬で走っていると、平地でも所々緑が剥げていた。
さらにその中央を南北に分ける山脈が貫いている。
そこから吹き降ろす乾いた風が、農作物を悪くする。
ここではイザークに隠れ住んでいた頃よりも、食事が粗末になった。
大陸では南に位置するせいで、冬の現在も雪が降らず、水の確保にすら難儀する。
そんな大地が、ハンニバル将軍の代わりになるとは思えない。
「我らは地を進むしかありません。
しかし、竜騎士は空を往く。リーフ王子、分かりますか」
「先の交戦でも、山を越えてきました。
つまり、奇襲に気を付けろと言うことですね」
「それだけではありません。
補給線を断ち切られかねないと申しております」
これまで制圧したルテキア城とカパトキア城。
それに前線基地としているミーズ城に相手のタイミングで襲撃がいつでもかけられる。
「普段よりも各拠点に防衛戦力を分散させなければならないか。
……それどころか、厄介な手を打ってくるな。将軍はいい教え子を持ったな」
レヴィンは何かに気づいたようだ。
「ですが、こちらには神器が6つ有ります。
バルキリーの杖は効果不明で戦闘には使えませんが、5つなら十分でしょう」
リーフ王子の言うとおりだ。
僕達には、神から与えられた武具がある。
神剣バルムンク。
魔剣ミストルティン。
地槍ゲイボルグ。
聖弓イチイバル。
聖風フォルセティ。
聖杖バルキリー。
それだけじゃない。
多くの戦いを経て、継承者達は以前よりも格段に強くなった。
彼らだけでなく、上級兵種の聖痕持ちも増えてきた。
今なら、あのイシュタル王女にだって対抗できるはずだ。
「だからこそです。
誰にどの程度功績をあげさせるか、それを決めさせようとしているのです」
「僕達に勝てるつもりで居るのですか⁉」
無理だ。
王子がどれだけ強かろうが、複数の神器には勝てない。
戦後のことなんて考える余裕は、トラキアに無いはず。
……それでも、トラキアの手の内を熟知した将軍が警戒している。
考えてみれば、この方は神の血すら持たないのに、僕達を跳ね返した。
トラキアの兵は強い。
その頂点、天槍の継承者である王子が将軍以上でも不思議はない。
「そうであり、そうではありません。
解放軍にそれを突きつけているのですよ」
……どういうことだろう。
防衛戦力の配分を指しているのだろうか。
でも、戦功の多寡で何が変わると言うんだ。
オイフェが、突然口を挟んできた。
「将軍、そこからは私が代わりましょう。
こちらに来たばかりの貴殿では、角が立つ。
セリス様、私達と本気で轡を並べるつもりだからこそ切り出してくれたのです」
諭すように続ける。
「戦後のことです。
武門は信賞必罰。働きの多い者が発言権を得る。
つまり、トラキア戦、いや帝国を討ち果たした後どの程度褒美を得るかです」
「それは先の話だろう。
これまでだって、それぞれが持ちうる力を合わせたからこそ、ここまでこれたんだ」
「その通りです。
これまでは余裕が一切ありませんでした。
だからこそ、今そこをアリオーン王子は突いて来る。
誰かが勝てば、その分の取り分が減る。
特定の血族だけが優遇される。ですね、将軍」
「流石、スサール卿の孫。気づいておられたか。
多国籍軍で内部争いなど常。傭兵での経験から、アリオーン王子は重々承知されている」
「……たしかに僕達はそういったことにあまり目を向けてこなかった。
それでも、だからこそ、今回も問題ないのではないでしょうか」
将軍が王子の方を向く。
「レンスター王家のリーフ王子は、この戦で目立ち旧領であったルテキア城の人心を取り戻したいでしょう。その思惑をトラキア出身の兵は良く思いません。
加えて、あの城は帝国との玄関口。帝国からの援軍との激戦は必至。
要人であればこそ、配置が難しくなる」
……これが、政治か。
ただ戦って勝つだけでは、いけないのか。
「将軍⁉
その様な発言は、私にお任せください」
「オイフェ殿。
貴殿は戦後も若者を支え、共に育つ余地がある。
私のような老兵こそが、この席に相応しい。
年長に甘えられるのも、今の内ですぞ」
僕達を育ててくれたオイフェすら、若者か。
まだ30代とはいえ、そんな風に扱われるのは初めて見た。
「……はい、お言葉に甘えさせていただきます」
僕の知らないことばかり将軍は教えてくれる。
それを身につけなくちゃいけない。
「他にも、イザーク勢の発言権やアルテナ様の扱い等戦後の火種があります。
それを無視すれば、此度の戦もやりやすい。しかし、その先に影を落とす。
解放軍が足を止めざるを得ない今だからこそ、有効な問いかけです」
「動揺や足の引っ張り合いが起これば儲けものといった所。
なにより、この程度前座に過ぎないのですから」
……アリオーン王子は僕よりも何枚も上手だ。
戦争に政治を持ち込むなんて、考えたことが無かった。
政に触れられなかった、僕達の明確な弱点だ。
だけれど、それすら乗り越えなければ。
皇帝に刃は届かない。
―――――
「竜騎兵団は、どの継承者をも上回る武器を持っています。
指揮官を務めたアルテナ様ならご存知ですね」
「……機動力と組織力ですか。
だとしても、継承者5人には勝てないでしょう」
どんな騎兵も空の王者に行軍速度では勝てない。
荒地を物ともせず、何の障害も無い空を自由に動き回れるからだ。
僕達の中で互角なのは、ペガサスに跨るフィーと竜騎士のアルテナ様だけだ。
将軍は、地図から目を離さずに言った。
「戦わなければ良いのです」
直系とは戦わない。
戦場での常識を、防衛戦でも実行できるのか。
「継承者が城を守るなら、別の城を攻める。
3城全てが守護されているのであれば、王都に向かう軍を狙えば良いのです。
解放軍がワープを使おうが、竜の群れは逃げ続ければいい。
戦費か術者の体力が尽きるまで繰り返せば、自然と状況はあちらに傾く」
超えられない壁を迂回し、脆い部分を突く。
まるで、ハンニバル将軍に対する僕達みたいだ。
しかも、ただの博打ではなく対処法まで織り込まれている。
行き当たりばったりの僕達とは土俵が違う。
思わず、奥歯を噛みしめる。
「こちらに戦力分散を強いた上、時間をかければ帝国から更なる援軍ですか。
レヴィン様が厄介と言うだけはありますね。
防衛戦力に加え、王都とグルティア城を早急に攻め落とす軍も必要になります」
つまり、こちらは4つに軍を分けさせられる。
しかも、そのどれかに神器を持ったアリオーン王子が来るかもしれない。
「残念ながら、まだ懸念材料は有ります。
私の見立てでは、解放軍の神器とアリオーン王子は相性が悪い。
天槍グングニルは、力・速さ・固さ、凡そ戦士にとって必要な力全てを与えます。
手前味噌ではありますが、継承者でなければ鎧袖一触です」
だとしても、飛行兵だ。弱点はある。
「定石通り弓兵で対処、というのも通じないのでしょうか。
将軍の見立てを疑うわけではありませんが……」
「共に訓練を積んだ私が保証します。無意味です。
弓の扱いに長けた者は防衛に回すべきでしょう」
軍議の空気が、さらに冷え込んだ。
「飛行兵は目が命。
兄上や父上、いやトラバント王は天敵に対する見切りが飛びぬけていました。
あれこそ、空を制するダインの血に伝わる秘奥。
私や精鋭竜騎兵でも、その領域には至れません」
アルテナ王女まで、アリオーン王子には弓が効かないと考えている。
「……確かにその通りでした。
フィンに前衛を任せ、僕が狙撃した時も通じなかった」
全ての武具を使いこなすリーフ王子の弓射すら効かない。
イチイバルでも特攻とはならないか。
……歩兵の彼では竜騎士に簡単に距離を詰められてしまう。
接近されてしまえば、弓の神器なんて関係ない。
城の守りを任せるしかないか。
魔導士のティニーなら、届くかもしれない。
フリージの雷でトラキアと戦うことがあったはずだ。
「魔法はどうですか?
武器とは違い、空中にも届きます。
魔導士なら近接戦にも、ある程度は対応できます。
なによりアリオーン王子も前衛、魔法耐性は高くないはずです」
「兄上の耐性は戦士として並み程度と言って差し支えありません。当たればの話ですが」
……駄目か。
拳を握りしめる。
「速度に加え、飛竜による三次元での回避行動が出来ます。
例え直撃でも、自前の体力で耐え、機動力と天槍の加護で魔導士を貫くでしょう」
ただでさえ数の少ない魔導士への消耗。
それに、落としきれないのであれば、機動力で逃げられてしまう。
将軍が王女の補足をする。
「王家伝来の腕輪も持ち出してくるでしょう。
窮地に陥るほど、活路を見出せる魔法の装備です。
トラバント王が最後に持ち出した際は、これで雷王ブルーム率いるグランベルを跳ねのけました。
聞くところによれば、聖剣ティルフィングにも同じような効果があるとか」
父上の、神器。
僕はまだ一度も目にしたことが無い。
それさえ、あれば……。
やはり、接近戦の神器を複数用いて倒すしかないのか。
……それでも、この地の覇者に届くのだろうか。
「……兄上に、一度だけ説得をさせていただけませんか。
解放軍に天槍が加わるかもしれません。
そうでなくとも、この無意味な戦争は終わらせられます」
「……姫、アリオーン様は武人として、王として散る覚悟をされているでしょう。
竜騎士ダインの血脈が途絶えれば、トラキア統一の障害が減る。
トラバント王と同じように……」
決死の覚悟を決めた王子に近づけば、アルテナ王女でも落とされてしまうかもしれない。
戦術的に見れば、可能性の低い対話を選ぶべきでない。
息を、深く吸い込む。
「アルテナ様にアリオーン王子と話してもらおう」
皆が僕だけを見つめる。
誰も口を開かず、続きを待っている。
「それでも駄目なら、戦う。
僕とアレス、それにシャナンで王都に切り込もう」
目の前に、嘆いている人がいる。
過ちだとしても、それを見て見ぬふりはできない。
「守備の配分は政治を気にせず、全力で。
そうでないと、トラキアの大地に僕達は勝てない。
未来へ届かせるためにも、今を積み重ねなきゃならない」
僕達は、ただの暴力装置ではいけない。
政治目標実現のため動くのでもない。
解放軍なんだ。
「僕達は何としても、邪神の化身を打倒さなきゃならない。
戦後のことは、僕が責任を持つ。
まずは、トラキア王国を何とかしよう」
不意に、肩が叩かれる。
振り向けば、リーフ王子が横に居た。
「私も行きます。
回復の杖が使える者が必要でしょう。
トラキア半島の王になるものとして、私にも背負わせてください。
神器と打ち合えなくとも、囮にはなれます。
民にとっても、亡き王の仇敵が居た方が分かりやすいでしょう」
原作で神の血を継いでいない人物で唯一、指揮レベル5なのがハンニバル将軍です。
というより、直系でも限られた人物しかこの領域に居ません。
グランベル帝国でも3人、旧アグストリアでもエルトシャンだけです。
……なんでトラキア王国には3人もいるんでしょうか。
貧しい国だけが帝国から独立を保てた説明にもなっていたらうれしいです。
お隣の指揮レベル1の方は継承者ですので問題なかったのでしょう。