一番星は消えない   作:ディバル

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009 動き始めた運命

 

 

 

電車に揺られること、2時間近く。俺達は、東京に到着した。俺達が住んでいる施設は神奈川県で、そこから東京まではまぁまぁ……時間がかかる。

 

「着いたね、彼方。東京」

 

「本当に来ちゃったよ」 

 

人の多さが段違い。並ぶ高層ビル。世界が別でも東京は変わらないと実感する。と言っても、俺が東京に行ったのは前世で高校生の時の修学旅行くらいだったけど。俺、地元の方が好きだから。

 

さて、俺達が何故、東京にいるのか。それは、数時間前に遡る。

 

 

 

 

数時間前。

 

「今日は何をしようか」

 

休日。全人類が休める安息の日だ。俺は、いつもの少し遅い時間の8時に起きた。休日はゆっくり寝られるから素晴らしい。と言ってもやることがない。スマホはまだ普及しておらず、ガラケーの時代だ。

 

前世ではYouTubeでショート動画を見て1日が終わる事もあるが、この時代にそんな物はない。娯楽はあるにはあるが、前世の現代には劣る。

 

「どうしたものか」

 

俺は、着替えて朝食を食べながら悩む。そんな時にアイがやってくる。まだ、パジャマ姿である。

 

「おはよう彼方」

 

「おはようアイ」

 

そのまま、アイは食パンを食べ始める。俺は、おにぎりだ。そのまま互いに朝食を食べる。数十分後に食べ終わる。さて……これから何をしようかと考えていると。

 

「彼方。東京行かない?」

 

「は?」

 

いきなり東京と言われて俺の動きが止まった。確かに、ここから行けない距離ではない。電車を使えば時間はかかるが、問題なく行ける。

 

「ダメ?」

 

上目遣いで聞いてくる。それは、ダメだろ。何とか理性を保つ。にしても、いきなりだな。何か理由でもあるのか?俺は、コップの水を飲み干す。一旦落ち着け。飲み終わった後に聞くことにした。

 

「なんで東京に行きたいの?」

 

彼女は、少し首を傾げて考え出す。考えて考えた結果出た答えは。

 

「何となく?」 

 

特に深い理由はないみたいだ。彼は、椅子から転げ落ちそうになるが何とか耐える。興味本位で行きたい感じか?特に理由はないみたいだし。俺が断ったら1人で行く可能性もあるな。……危ないな。過保護と言われるかもだが、アイに何かあったら困る。

 

「わかった。一緒に行こうか」

 

「うん。行こ」

 

てな感じの経緯だ。こうして、俺達は東京に降り立った。

 

「……人、多いね」

 

アイが人の多さに驚いている。最初見る時は驚くよな。俺も驚いた。数十年前にだけど。

 

「アイは行きたい所ある?」

 

俺がそう聞くとアイは考える素振りを見せる。あれ?……これ今朝にも見たような。そんなことを考えているとアイからの返答が返ってくる。 

 

「……特にないかな」

 

ですよねぇ……。もう察していた。本当に興味本位で来たかったみたいだ。と言うか……俺達の今の資金じゃあそんなに遊べない。とりあえず帰る分のお金だけを確保しておこう。

 

「とりあえず歩くか」

 

「うん。行こ」

 

そうして、俺達は歩き始めた。とりあえず有名所から行くか。駅の窓口でもらった東京の地図を片手に目指す場所は東京タワーだ。

 

「……彼方。手、繋ご。……はぐれるし」

 

「………あぁ」

 

彼女から手を差し出された。彼はその手を握り歩く。やっぱり人が多い。これ、しっかりと見てないとはぐれてしまう。互いに携帯を持ってないのではぐれたらマジで終わる。

 

「どこ行くの?」

 

「東京タワー……アレだよ」

 

指差した先、ビルの隙間から赤い塔が顔を覗かせていた。 

 

「……あれ?」

 

アイが少し目を細める。

 

「そう。東京タワー」

 

「思ってたより……遠い」

 

そりゃそうだ。見えてるだけで距離はある。東京は広い。全て回るのは時間がかかり過ぎる。だからこそ有名どころを攻める。無難な選択肢だろう。

 

「まぁ、歩けば着く」

 

「.....ん」

 

短く頷く。そのまま、繋いだ手を離す気配はない。人の流れに逆らわないように歩く。肩がぶつかりそうになる度に、アイの手に少しだけ力が入るのが分かる。

 

「……離れないでね」

 

ぽつりと、小さく呟く。 

 

「離れないよ」

 

そう返すと、彼女はほんの少しだけ握る力が強まった。ビルのガラスに映る自分達の姿が視界の端に入る。人混みの中、手を繋いで歩く2人。なんてことない光景のはずなのに、妙に意識してしまう。しばらく歩くと、視界が少し開ける。さっきよりもずっと大きく、東京タワーが目の前に迫っていた。

 

「……大きいね」 

 

アイが素直にそう呟く。その声は、さっきよりも少しだけ弾んでいた。中に入る。そして、入場料を払ってエレベーターで最上階へと上がる。最上階に到着。エレベーターから降りて景色を見る。上から見下ろす。

 

「……綺麗」

 

「確かに綺麗だな」

 

ここから東京が見渡せる。まさか、推しとこの景色を見ることになるとは夢にも思わなかった。あいつらと見た景色。と言っても、高校の時の記憶なので完璧には思い出せないのだが。

 

「……思ったより普通だったね」

 

………それは、思った。綺麗なのは間違い無いのだが結局は何処まで行っても景色である。これが夜景だったらまた変わってくるのだろうが、そこまで長くは滞在できない。

 

「お土産見に行くか」

 

「うん。行こ。彼方、案内して」 

 

「俺もそんなに詳しくないんだけどなぁ」

 

何だか、ずっと俺が案内したり説明したりしているな。俺、説明するの下手くそな方なんだけどな。ちゃんと伝わっているか?そんな不安を抱きながらお土産コーナーに到着した。

 

「形が残る物がいいな」

 

「……じゃあさ。お揃いにしよ?」

 

何でそういうことをサラッと言うのかなぁ?しかも、これ無意識だろ?はぁ……心臓に悪い。と言うか俺、よく顔に出ないよな?よかった………顔に出るタイプじゃなくて。

 

「じゃあ……これとかどう?」

 

彼が手に取ったのは東京タワーをモチーフにしたストラップだった。他にもぬいぐるみやペンなどあるがお揃いで分かりやすい物ならこれだろう。

 

「いいじゃん。……それにしよっか」

 

2人で一緒にレジに向かう。初めてのお揃いの物を買った。こっ恥ずかしい気分になった。お土産も買ったので、俺達は東京タワーを出る。景色を見て話してお土産を買う。普通に青春をしているな。でも、まさか東京に来るとは思わなかったな。

 

東京?……なんだ。この拭い切れない違和感。何かを見落としている。なんだ?俺は、何を見落としている?東京……東京。あ………。

 

その時、彼は思い出した。アイがスカウトを受けた場所を。足を止めてしまう。

 

「彼方?」

 

思い出した。アイがスカウトを受けたのは東京だった。そして、アイはこのくらいにアイドルになった。なら……今日がその日なんじゃないのか?その時だった。俺達の目の前にある男が現れる。それは、見たことのある顔だ。そいつがアイに声をかけてくる。目を見開き驚いてしまう。この男は……。

 

「ねぇ君。パフェとか食べたくない?」

 

そう言い、彼がアイにそう声をかけてくる。

 

「話だけでも聞いてくれたら何でも奢っちゃう」

 

斉藤壱護。苺プロダクションという芸能事務所の社長をしている男だ。そして、アイをスカウトしてアイドルにした重要人物だ。額から汗が滲むのを感じる。まさか、今日だとは。いつか来るだろうと思っていたが、まさか今日だとは。

 

だが、逆に考えるんだ。これは、チャンスだ。この男を利用する。アイを救う為に必要なことだ。俺も芸能界へ足を踏み入れる。そこを悩んでいたが、上手くいけば考えていた段階をすっ飛ばすことができるかもしれない。

 

歯車が動き始めた。ここから、運命が変わっていく。それがどんな結末を辿るのかは、まだ誰も知らない。

 

 

 

各章解説と他作品の元ネタ解説いるかどうか。

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