一番星は消えない   作:ディバル

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001 推しとの日々

 

 

 

 

俺の名前は天城彼方。今はただの小学4年生だ。前世は……誰も興味がないと思うので割愛する。俺は、なんでか【推しの子】の世界に転生を果たした。転生物のアニメや漫画、二次創作は見ていたがまさか自分がそうなるとは思いもしなかった。

 

そんな俺が今、何をしているのか………それは……

 

「ここは、こうするんだよ」

 

「なるほど……」

 

勉強を教えていた。彼女が学校で出されていた宿題に手こずっていたのを見かけたので教える事にした。前世で培った学力があるので今の俺は、高校までの基礎的な問題なら楽に解ける。応用なら……また話は変わってくるが、多分……解けるだろう。

 

「天野くんってさ、めっちゃ頭いいんだね〜」

 

「星野さん……俺は天城だよ」

 

「あーまた間違えた?」

 

関わり始めて少し経ったが彼女は、俺の苗字を何度も間違える。原作でも、自分の子供の名前を間違えたりしていた。この事から彼女は、人の名前を覚えるのが苦手だ。いつになったらちゃんと呼んでくれるのか。そう思いつつ勉強を教える。

 

「ふぅ………終わったね」

 

勉強を教え始めて30分が経過した。出されていた宿題が終わった。彼女は、そう言いながら机に突っ伏していた。教えた感じとしては、そこまで頭が悪いわけではない。考え無しの行動が多いのだ。16歳という若さで妊娠したのがいい例だ。彼女の心理としては、「これまずいかなぁ?ま……何とかなるか。」と言う思考をしていると俺は思う。黒川あかねのプロファイリングの中に「教育レベルは低め」とあるが、それは単純に、アイが中卒で受けた教育の程度、学歴が低いだけで学習能力がないわけではない。

 

「わからない問題があったらまた教えてあげるから」

 

「本当?やったー」

 

体を起こしてそう言いながら微笑む。………推しの笑顔がとても眩しい。それ故にこれから訪れる不幸がどうしても頭をよぎってしまう。世の中には、推しの死に興奮を覚える者もいる……と言うか、前世の友にそう言う奴がいた。俺は、そのタイプではない。推しには出来る限り幸せになって欲しい。

 

親から愛されず、愛を知らないままステージで「愛している。」と嘘をつきながらも必死になってファンを愛そうとしていた。それが、本物の愛になると信じて。そして、そのまま親になり子を愛そうと向き合っていた時に死を迎えた。最後にしっかりと伝えられはしたがその後、双子の人生に大きな影を落とした。

 

一人は、救えなかった事に罪の意識を感じ復讐の為に生き続けていた。もう一人は、自身の大切な人達を奪われて母と同じ道を辿り自身を嘘で塗り固め苦しんだ………俺はその結末も知っている。

 

それの原因を作った父親の存在……神木輝。歪めたのは星野アイだ。他にも色々と要因がはあったが決定的だったのが、アイの一言。彼女も、悪かった部分は確かにあった。しかし、それは命を奪われる程だろうか?…………答えはNOだ。

 

神木輝。彼が直接手を下した事はない。間接的に殺し他者を唆し煽り命を奪い続けた。きっかけはアイだったのは間違いない。しかし、何があっても命を奪うのは悪だ。それは、復讐を果たした星野アクアにも言える事だ。

 

ルビーを守る為とは言えあの判断が最善だったのか?……もっと別の方法があったのではないかそう思ってしまう。

 

「どうしたの?そんな顔して」

 

「……え?」

 

「なんか……怖い顔してる」

 

どうやら……顔に出ていたようだ。昔から顔に出やすいと思ってはいたが、まだそれが直ってないみたいだ。ダメだな………考え事は後にしないと。それに、これから先の人生何も暗い事ばかりではない。楽しい事もある筈だ。俺と言う異物が、神にとってイレギュラーな存在なのは、間違いない。だから、これから先を変えていけばいい。

 

「考え事していただけだよ………ごめんね怖がらせた?」

 

俺は、笑みを浮かべる。彼女を安心させる為だ。それに、アイとは出来る限り友好な関係を築いておきたい。彼女を救う為でもあるが、何より推しと過ごせる時間は楽しいし、幸せな気分になる。それに………今、彼女を推しているのは世界でも俺だけだ。その優越感は悪くない。これから先、彼女は大きく羽ばたく。

 

こうして過ごせる時間は今だけだ。なら楽しまないと損だ。それに、彼女を救う計画に関しては一人の時に考えればいい。

 

「怖くはなかったけど………天野くんはその顔の方がいいよ」

 

「星野さん……俺は天城です」

 

思わず笑ってしまった。先程の安心させるような笑みではなく純粋に笑う。さっきまで真剣に考えてい思考が暗い方向に向かっていたのに今はそんな事がどうでも良く思える程に。いつもの間違いをしそれを俺が訂正する。お決まりの流れができてしまっていた。

 

その時の俺の脳内に某アニメの二人組のやり取りに少しだけ似ているなと思ってしまった。あれの場合、わざと名前を言い間違える。その後に訂正し最後には「わざとじゃあない!?」と締めくくるのがオチだが、アイの場合本気で間違えている。

 

まだしっかりと覚えてられないのは残念だが、今はそれでいい。彼女からすれば本気で間違えているのだろうが、さっきまで暗い気分に落ち込んでいたのに俺を笑顔にしてくれた。

 

やっぱり推しの力は偉大だ。

 

「ふふ……急に笑い出してへんなの」

 

彼女も釣られて笑い始めた。俺達はしばらく笑っていた。こうして見るとただの普通の女の子に見える。

 

だからこそ思う。俺はどうやったらこの子を幸せに出来るのだろう?そう思う事自体、傲慢なのかもしれない。星野アイの人生は、決して順風満帆とは言えなかった。寧ろ、悩んだ時期や不幸が多かったと思う。彼女の幸せはこれからと言う時に終わってしまった。俺は、その先の人生を彼女に歩ませてあげたい………そう願わずにはいられないのだ。

 

 

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